単なる提灯記事は、スクープの価値がない。
朝日の記者は、どこまで実態を知っているのだろうか。
そう思わざるを得ないような記事が一面を飾っている。
「公害紛争を出張解決」の下に、「国の調整委 機関を短縮 使いやすく」との小見出しがある。
「国の公害等調整委員会が現在扱っている公害紛争は23件で、このうち今年度新たに申請があったのは8件。だが都道府県に寄せられる大気汚染や騒音を巡る公害の苦情は約9万千件(07年度)。裁判所が新たに扱う公害訴訟と調停の数は年平均で200件近くあるという。」
この部分は正しい。
だからと言って、
「これまで東京でしか行っていなかった公害紛争処理手続を、今春から、原則として委員らが現地に出向いて行うことにした。」「公調委は、新年度から首都圏の1都3県を除く地域には、できるだけ委員らが出向いて手続を行う。地元の公民館や商工会議所を使うことにする。」「新年度予算案に盛り込まれた現地調査費用も、08年度と比べて2.6倍となった。」「これらにより、処理手続を効率化し、期間を4ヶ月程短縮したい考えだ。公調委は『利便性を高め、より多く利用して貰いたい』としている。」
これは、何だ。
この公調委にどれだけの国費が投入されているか、委員の報酬のみならず、事務局の人件費などを合計すると、とてつもない金額になる。
年間数件しか利用されない制度。
制度発足時には意義があった制度でも、時代の変化で役割を終えることがある。
スクラップ・アンド・ビルド。
固定化した制度ではなく、もっと柔軟な対応が出来る柔らかい制度に変える必要がある。
そもそもこれだけの国費を投入して維持するようなものではない。
裁判をより機能させる。
裁判外の準司法手続を担う総合的な機関に統合する。
民間の裁判外紛争処理機関を充実する。
こうした方策を実施しなければならない。
この制度は思い切って止めるべきである。
そう、私たちは、提言していた。
組織・権限の温存のための弥縫的な改善策に過ぎないのに、朝日は、こうした自民党の部会での議論をまったく勉強しないで、役所筋から流された情報をスクープのように報道している。
これは役所に対する提灯記事であって、とてもスクープには値しない。