『代々木八幡「關口亭」のトンテキついて話そう 』 | グルヒロのすすめ

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『代々木八幡「關口亭」のトンテキついて話そう 』

と言うことで、また「關口亭」まで出かけた。前回ポークカツレツを食べながらその懐かしく、どこか家庭的で・・けれどどこか新鮮な香りと味に、つい先ほど眺めたばかりのポークメニューリストを思い出しながら次回食べるのならトンテキだなあ、と思っていた。

トン=豚、テキ=ステーキを合体させて豚肉のステーキのトンテキが生まれた。とくに説明をするような意味ではないと思う。発祥は四日市内の中華料理店といわれ、豚肉を焼くときに肉の焼き縮みを防ぐために包丁で切り込みを入れた様子が野球のグローブに似ていることから四日市ではトンテキを「グローブ」とも呼ぶそうだ。

味は十人十色なので本人が旨い、と思っても他の人が同調するとは思わない。グルヒロの食べ物についての感想はあくまでグルヒロ個人的な見解であり、グルヒロが旨いと言っていたから、同じ料理を食べてこれは旨いんだ、と思う人はミシュランが星を付けているから美味しいと同じのような気がする。生まれてこれまでに生活してきた環境が人それぞれ異なるのは当たり前であり、自分は他人と全く同じ環境だなんて奇跡に近いし、だから自分に合う、合わない料理や食べ物があるのは当たり前のことではないかと思う。

わざわざ「關口亭」まで出かけてグルヒロのブログを見て、ポーク何とかという料理を食べても印象に残るような料理ではないと思う人はこの店の料理は高額料理である、と思うかもしれない。しかも客が立て込んでいる店でもある。

それでまたグルヒロが代々木上原まで出かけたのは、食べたポークカツレツの印象が良かったことに、メニューに掲載されているトンテキという、あまり他では見かけない名前の品目に興味が出て、「關口亭」の衣をつけない豚肉料理はどんな料理がでてくるのだろうか、そんなことを考えていると食べに行った方が早いと思い出かけた。

ステーキは個人的に厚切りが好みであるけれど、肉厚でも味がよくても肉質が硬いは駄目。食感は柔らかく、しかししっかりと噛み応えがあり、噛むと肉汁が口中に溢れてくるのが理想形、でも焼く調理人の技術は大きい。自身で製作するときは豚肉に塩で下味をつけて粉を全体にまぶし、焦げ目がつく手前まで焼く。仕上げにしっかりとした味のソースをかけまわす。

こうした個人的な考えを持って「關口亭」のトンテキに挑んだ。ランチ時なら価格の廉価な豚メニューがあるのだけれど廉価だけに早々と売り切れてしまう。しかし廉価なランチ料理は店側も高額で質の良い材料をランチ時にも提供するほどお人好しではない。深く考えなくともそれなりの肉質ではある。残るは調理人の実力で旨さを補うことになる。

「關口亭」のトンテキに限らずランチ用に使用する豚肉の多くは高価な鹿児島産ではない。もちろん鹿児島産だから他の豚肉よりも良いとは断定できないけれど、「關口亭」に限れば値段がランチ時に比較すると倍近く、高価になるけれど(もちろん高価ではないと思う人もいるだろう)鹿児島産の濃い肉質豚のほうが数段美味しい。

トンテキを注文するとはじめに黒い大皿でニンニク風味のドレッシングかけレタスの上からチーズを振りまいた、ランチなら主菜の皿に脇役として添えられるレタスがちょっと心を動かすような準主役として登場してくる。当たり前の付け合わせにスポットライトを当てる演出ができる店。これなら客も納得できるはずだ。だからこのレタスサラダが提供されると注文した客の誰もがいきなり箸を手に持って食べ始め、あっという間に完食する。それから主菜の皿をじっと待ち続ける。

ランチに限らず「關口亭」では主菜には白米ご飯と味噌汁(豚汁)が付き、ランチ以外では香の物(大根、かぶ、きゅうり)が付く。ナイフ、フォークではなく店の箸で食事をする。だから肉は初めから包丁でひと口大に切り分けてある。

やがてこの店ならではの白い大皿にトンテキが運ばれてきた。トンテキの下に多量のタマネギのスライス、タマネギが春のせいで辛味が抑えられ柔らかい。豚ロース肉の上には玉ねぎを摺おろしたソースがかかり、にんじんのグラッセと平打ちのパスタにクレソンが添えられ、ランチならこれにレタスが参加する。

トンテキの見た目は以前に食したポークカツレツのほうが見栄えがする。タマネギの摺おろしは美観的にはドミグラスソースにはやや劣るけれど(個人の意見)トンテキにはタマネギの摺おろしがよく似合うと思う。

この店の料理にはドレッシングを始めにんにくを多く使う。このタマネギの摺おろしにも多量のにんにくが入っている。鹿児島産豚肉は他の豚肉とは異なり、肉質がよく弾力があり、欠点ではあるが、やや脂味は多い分、味としてはいわゆるジューシーに仕上がっている。肉の中心部に微妙なピンク色を残した調理人の焼き方で見事である。

店内は比較的若い年齢層の客が多く、食事は先ほども述べたように端を使って食事をする。豆腐、ワカメの味噌汁ではなく、やや脂身の多いロース豚肉を使い、味わいはコクのある仕上がりの豚汁である。それからパンではなく白米である。

実家に子供が帰って来たらこういう手料理を作れる親をみんな求めている、そういう家庭的な店ともいえる。もちろん独り者の爺だってワインやビールを飲むこともできる。泥酔者はいないし外国人もいなかった😊