『代々木八幡「關口亭」のポークカツレツについて話そう 』 | グルヒロのすすめ

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『代々木八幡「關口亭」のポークカツレツについて話そう 』

揚げ焼きのカツレツと多量の油で揚げるトンカツはどちらが好み?これはグルヒロにとって大変に悩む選択である。

トンカツは食べる機会が多くあるような気がするが、カツレツとなればトンカツのような専門店は少ない。スライスした仔牛肉にパン粉をつけて炒め焼きにするコートレットと呼ばれる料理がカツレツの原型になったといわれ、コートレットがカットレットに変化してカツレツと呼ばれるようになったともいわれる。

コートレットはフランス語なので一般的にフランス料理店のメニューにあるのか、と思えばステーキやソテーやローストと名が付く料理ならどこの店でも存在するが、カツレツは見かけない。

1980年代の銀座「エスコフィエ」というレストランのメニューには「仔牛のカツレツ」という料理名が存在していたが、その他の店では見かけたことが無い。カツレツは人気がないのか、と思えば仔牛肉を使ったミラノ風カツレツと呼ばれるコトレッタ、骨付きカツレツのコストレッタはイタリア料理店では不可欠の存在である。

日本に存在する外国人のため西洋料理店が誕生し、日本独自に発展した料理が洋食ならコートレットからカツレツに発展した料理は洋食屋には外せない。だから洋食屋メニューの中で「カツレツ」という文字が出現すると「なあんだ、トンカツのことか」などと思い違いをする人がいるかも知れないが、それはもちろんトンカツではない。

「関口亭」のポークメニューは魅力的だ。ポークソテー、トンテキ、ポークジンジャー、そしてポークカツレツである。

心待ちにして待ったその白いひと皿、それは一見トンカツのようであり、カレーソースがかかったカツカレーのようにも見えないこともない。とにかくひとくちそのソースがかかっていない切身を味わってみる。衣はカラリではなく、しっとりとした仕上がりで、やや脂が多い肉質ではあるが、口の中は豚の旨味である肉汁が充満する。

そしてカツレツといえばドミグラスソースである。グルヒロはドミグラスソースに限らず、ソース(醤油、味噌)という究極の料理には人一倍興味がある。ときとしてソースとは主役にとって代わる存在になるかもしれない。渾然一体という言葉があるけれどまさにソースこそ時には主菜と同格であり、主菜を上回り、主菜を引き立たせる料理であると思う。

そのドミグラスソース、店によってすべて異なる。ぼんやりして味わうと、どこかの店でも味わったようなソース味で通過するかもしれない。それはそれでいいと思うけれど、グルヒロにとっては勿体ない味わい方で、ゆっくりと吟味して楽しみたい。

そのドミグラスソースをつけて二切れめを味わう。結論としてそのドミグラスソースはこの店ならではの深い味わいがある。これは言葉で上手く説明ができない。しつこくなく、甘くなく、塩辛さもなく、焦げ臭さもなく、留まるところ過ぎた味付けではないと言うことである。ポークカツレツ以外の料理にもこの店では同じドミグラスソースを使っているはずである。つまり万能選手でもある。

皿の片隅に辛子が添えてある。この辛子をドミグラスソースに少しつけてポークカツレツを味わうとまた異なる美味しさと楽しみ方が加わる。ドレッシングのかかるレタスやほろ苦いクレソン、平打ち麵やニンジンのグラッセなどの脇役も主役のポークカツレツを見事にもり立てている。店ではご飯に豚汁が付く。少し硬めに炊いたご飯とカツレツはよく似合う。そして豚汁はトロトロになった大根に豚の旨味が抽出された味噌汁で旨みとコクが十分に出ている。帰りの電車内で次回は何を食べようか、などと考えてしまった😊