昼休み前に上司に怒られた。
あーまったく何なんだよ!イライラするなぁ。
僕はとりあえず昼食に外へ出た。
すると新しいレストランが会社の側にオープンしていた。
「お、あんなところに新しい店ができたんだ。よし、行ってみるか。」
店に入ると店員さんが出てきて言った。
「お客様、申し訳ございません。残念ながらお客様はご入店いただけません。」
「え?満席なの?」
「いいえ、満席ではございません。」
「じゃあどうして?」
「それはお客様がイライラしておられるからです。」
「はあ?そんなこと関係ないだろ!」
「いいえ。うちのレストランの方針としましてイライラされている方のご入店はご遠慮いただいております。」
「ふざけんなよ!二度と来るか!」
まったく非常識極まりない店だ。イライラしてるから入店できない?ふざけんな、バカ野郎!
結局、僕はいつも行く食堂で昼食を済ませた。
会社に戻ると同僚が話しかけてきた。
「おい、武田。お前、最近できたあのレストラン行ったか?」
「い・・いや、まだだけど・・・」
「あそこ、めちゃくちゃうまいぞ。一回行ってみろよ。」
「あ、ああ・・・」
二度と行くまいと思っていたが、それを聞くとどうしてもそのレストランへ行きたくなった。
僕は次の日、懲りずにまたそのレストランへ行くことにした。でもいざ店内へ入ると昨日の事を思い出してムカムカしてきた。
「お客様、申し訳ございません。憎しみを抱いていらっしゃる方のご入店はご遠慮いただいております。」
「何だって?」
「当店に対して憎しみを持っていらっしゃるようなので、ご入店いただけません。」
「ふざけんな!」
結局、今日もそのレストランへは入れなかった。
同僚はあまりにおいしいので毎日行っているという話を聞かされた。
ちくしょう・・・どうしてあいつが入れて、僕は入れないんだ?
絶対に入ってやるぞ。
次の日も僕はまたあのレストランへ行った。
「ご友人への嫉妬心を抱いてらっしゃるのでご入店いただけません。」
またもや断られた。
どうやら同じ部署でそのレストランへ入れていないのは僕だけだったようだ。
なぜだ・・・なぜ僕だけ入れないんだ・・・。
僕はその日一人取り残されたような気分を味わった。
次の日もまた行った。
「申し訳ございません。会社の部署で孤独感を強く感じておられるようなのでご入店いただけません。」
その次の日。
「また断られたらどうしようという不安感をお持ちなのでご入店いただけません。」
その次の日。
「もうどうでもいいやというあきらめを抱いておられるのでご入店いただけません。」
ダメだ・・・どうしても入れない。
もういい、もう入れなくても構わない。でも僕はどうして僕だけが拒否されるのかを知りたくてその次の日もそのレストランへ行った。
「お客様、申し訳ございません・・・」
「いや、今日は入るつもりはありません。もうこの店へ来ることもないと思います。でも一つだけ教えてほしいのです。どうして僕はこの店へ入ることができなかったのですか?」
「それはこの店のルールがそうだからです。怒りや憎しみや嫉妬、孤独や不安やあきらめなど・・・そういうネガティブな感情をお持ちの方は入れない決まりがあるのです。」
「なぜそんなことをするのですか?お客を選んでいては商売が成り立たないでしょう?」
「その通りです。本来、店はお客様を選ぶ権利などありません。あらゆるお客様に来ていただけるレストランこそ我々は目指さなければなりません。お客様を選んでいては、そのうち誰も来てくれなくなるでしょう。でも仕方ありません。ルールなのですから。」
「誰がそんなルールを決めたのですか?このレストランのオーナーですか?」
「いいえ。このルールを決めたのは・・・あなたです。」
「え?」
「あなたですよ。武田さん。」
「い、いや・・・意味がわからないのですが・・・」
「あなたは日々、色々な感情を味わっておられることでしょう。しかし、ネガティブな感情は極力排除するようにされてませんか?」
「た、確かに・・・ポジティブ思考だとよくいわれますが・・・排除までは」
「いいえ、されてますよ。たくさんのネガティブな感情をあなたは今まで追いやってきました。あなたという店の中に来店させないようにしてきたのです。うちの店には必要ない客だということでね。」
急にその店員の表情が恐くなった。
「すべての感情は、あなたという店に訪れたお客様です。お客は店を自由に出入りできるのが普通です。そして、お客というものは、その店に豊かさをもたらしてくれる大切な存在なのです。入店を許されない客は、その店に良い印象は決して抱かないでしょう。恨みや憎しみを持つ人もいるかもしれません。そして、そのうちその店に危害を加えようとする人も出てくるかもしれません。それと同時に、客を選ぶ店なんかには人が来なくなり、店はどんどん衰退していってしまうでしょう。わかりますか?」
「え、ええ・・確かにそうです。だからと言ってそのことと僕にどういう関係が?」
すると、そのレストランにいた全員が僕の前へ集まってきた。
「な、何なんですか?あなたたちは?」
「私達は全員、あなたという店に入店を拒否された感情なのです。」
「え?」
すると、見る見るうちにそこに集まっていた人の顔が全員僕の顔に変わっていった。
怒っている僕、イライラしている僕、孤独そうな僕、不安そうな僕、・・・・
「そ、そんな・・・バカな・・・」
何なんだ・・・僕が見ているのは幻想だろうか・・・それとも現実なのだろうか・・・
わけがわからなくなった僕は、とうとうその場にショックの余り気を失って、倒れこんでしまった。
気づいた時、僕は会社の医務室にいた。
「おい、武田。大丈夫か?」
心配した同僚が様子を見に来てくれていた。
「あ、ああ・・・」
「会社の近くのあの空き地の前で倒れてたらしいじゃないか。いったいどうしたんだ?」
同僚は、医務室の窓からあのレストランがあった場所を指差した。
「空き地・・・?あ、あれ?あそこのレストランは?」
「レストラン?そんなものないぞ。ずっとあそこは前から空き地だったじゃないか。」
「そんな・・・」
じゃああれはいったい何だったのだろうか?あの一連の出来事は何だったのだろうか?
あれは本当に幻想だったのだろうか?
僕はまるで狐につままれたような気持ちだった。
でも、それでよかったのかもしれない・・・。
あの自分ばかりが目の前に立っている光景を再び思い出して僕は身震いをした。
「どうした大丈夫か?」
「ああ・・・。」
「今日はもう帰ったほうがいいぞ。部長には俺から言っておいてやるから。」
「あ、ありがとう。じゃ、今日はとりあえず帰ってゆっくりさせてもらうよ。」
僕はその日、会社を早退することにした。
帰りの電車の中で、僕はあのレストランの店員が言っていた言葉を思い出していた。
すべての感情は自分という店に訪れた客。客は自由に店を出入りできなければならない。
客を選んでいるとやがてその店はどんどん繁盛しなくなっていく。
そして、拒否された客からは嫌がらせを受ける羽目にもなる。
ここ数日あのレストランで体験していたことは、僕自身が拒否した感情たちが自分たちがされたことをわかってほしくて僕に対しておこなったいわゆる腹いせだったのかもしれない。
確かに・・・せっかく訪れた店で入店を断られるほど気分が悪いことはなかった。
こっちは、客だぞ!金落としに来てやってるんだぞ!
僕が拒否していたネガティブな感情たちも、実は僕に豊かさをもたらすためにわざわざ来てくれたお客様だったのかもしれない。
だから本当は自由に僕の中を出入りしてもらえばよかったんだ。
それらの感情に抵抗したり、拒絶するから、逆にその感情たちが僕の中で暴れ出すのだ。
どうぞどうぞと自由にさせてあげれば、きっと大人しく店の中をぶらぶらして、欲しいものがあれば買って、適当に帰ってくれるのだろう。
そうか・・・僕は知らず知らずのうちに多くの感情を拒絶して、反感を買いすぎていたのかもしれないな・・・。
これからはどんな感情もお客として、温かく迎え入れることにしよう。
そう決めると何だか心がふわっと軽くなって、すごく楽になった気がした。
そして、僕は一人暮らししているマンションに着いた。
「今日は何だか不思議な日だったなぁ・・・」エレベーターに乗りながら一人つぶやいた。
しかし、不思議なことはまだ終わりではなかった。
部屋に着き、ドアを開けた僕は目を見張った。
「な、なんだこれは・・・」
そこには、僕がここ数日食べることができなかったあのレストランのメニューが
部屋中に並んでいた。
ようやく彼らも僕のことを受け入れてくれたんだ・・・そんな気がして笑みがこぼれた。
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感情はあなたとうい店に訪れたお客様のようなもの。
自由に出入りさせてあげればいい。
あなた自身がその感情そのものなのではなく、あなた自身がその感情を創りだしたわけでもなく、
感情とは自然と外から入ってくるもの。
だからあなたはただその感情というお客様をいらっしゃいませと迎え入れるだけでいい。
あなたという店の中を自由にうろうろさせてあげればいい。
あなたはただそのお客に構わず、放っておくだけ。
十分に店内を見て周ったお客様は、満足してそのうち出て行くことだろう。
感情というお客を放っておければ、そこから痛みを感じることはない。
痛みを覚えたとしたら、あなたはそのお客をつまみ出そうとしているか、入ってくるなと押し出そうとしているに違いない。
その感情をつかまえずに、自分の中で自由に、放ったらかしにすること。
すると自分の中がどんどん風通しがよくなっていく。
何が来ても、すーっと通り抜けていく。
今まではどんな感情もつかみすぎていたんだなぁということに気づく。
もうつかまえなくてもいい。ただ放っておけば通り抜けていくから。
すると、どんどん軽やかで、楽な生き方ができるようになっていくはず。
だから、どんなお客様も受け入れていこう。どんなお客様も・・・
・・・・・・・
あの・・・お客様はちょっと店内へは・・・
え?僕?
え、ええ・・・その格好はちょっと・・・
え、ええ・・・
違う、違う!勘違いだって。
これただのペットなんですよ、ペット。
かわいいでしょ?
は、はあ・・・
←ここを押すと、白鳥のエネルギーがあなたに届きます。教師びんびん物語的なものです。
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来年2月11日(金・祝)、横浜での講演会開催となりました。
詳細はまた決まり次第お伝えいたします。
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