2022年 アン・テジン監督 リュ・ジュンヨル主演



あらすじ

病の弟のために、盲目の天才鍼医ギョンスは人には言えない秘密を抱えて宮廷で働いている。ある夜、彼は王の子の死を目撃してしまい、恐ろしくおぞましい真実に直面する。追われる身となったギョンスは狂気が迫る中、闇の中で謎めいた死の真相に迫ろうとする。



史劇でミステリー?と敬遠したら勿体無い

韓ドラ好きだけど史劇はちょっと…、

もしくは、韓ドラ好きだけど韓国映画はあまり観たことない、で、イケメンが出ないからと敬遠されていたら勿体無い。是非とも観ていただきたい。


話の構成はいたってシンプル。

宮廷で働いて、病気の弟に良い生活をさせたい。

彼の願いはそれだけなので、序盤は鍼医ギョンスのサクセスストーリーに「いいぞ、がんばれ👍」とハラハラしつつもワクワク。

そこで、世子が謎の死をとげ、その事件に巻き込まれるギョンス。

登場人物も少なくてわかりやすいです。


登場人物


ギョンス(リュ・ジュンヨル)

宮廷の御医軍団の中に鍼医として就職。

いつも史劇で見ている王様たちが飲んでいるお薬が、医局?薬剤室のような場所で凄い人数で管理、調剤しています。ギョンスは耳でその調剤音を聞いてます。

身分の低い者として、宮廷の人たちに直接触れるお仕事の緊張感がすごく、盲人としてのギョンスの目のアップも度々映るのですが、その演技も素晴らしい。

前半のオドオドから、後半の振り切った感じがたまらない。


御医の医長ヒョンイク(チェ・ムソン)

ギョンスの才能を認めて、スカウト。

街で試験をする時に、ギョンス以外は超!いい加減な診断なのも面白かった。その中で病名をズバリ言い当てるギョンスに、盲人だからと差別しないで迎えた医長…。


マンシク(パク・ミョンフン)


盲人ギョンスの先輩としてちょっとお調子者なマンシクが宮廷のイロハを教えてくれる。


チョ昭容(アン・ウンジン)


ギョンスが1番最初に治療したのは、王様の側室、チョ昭容。

相手が盲人だからか、史劇ドラマでは観られない診察の時こんなに脱ぐのね、と拍手暗闇だからよくわからなかったですが。若いのに貫禄たっぷりでした。

お腹に鍼を刺す時のギョンスの緊張する表情も凄い。


ソヒョン世子(キム・ソンチョル)

8年ぶりに囚われた清から帰還。

この事がチョ昭容からしたら、自分の息子と自分の地位が危うくなるのではと目障りで堪らない…。

ソヒョン世子は、この映画ではとても良い人で、

良いぞ〜法子(ポプチャ)〜キラキラとすぐに好きになりましたっ。

ギョンスとの交流も、とても素敵なものでした。

また、清の外交官とのやり取りなどいかに朝鮮が屈辱的な扱いを受けているのかも短いシーンでありありと描かれていました。屈辱を受けつつも、新しい文明を浴びてきたという聡明な感じもキャラにあるので、トータル素敵な世子でした。


カン世子嬪(チョ・ユンソ)

不審死をとげた世子の死の真相を知りたい。

一緒に清に囚われていて、子どもだけ朝鮮に残されていた。

この夫婦の子が出番多いのですが、子役がかなり鍵となります。


領相(チョ・ソンハ)

今、「魅惑の人」も観ているので、頭混乱。

同じポジションでしょうか。最後の最後まである意味目が離せなかったキャラ。


仁祖(ユ・ヘジン)

朝鮮王朝第16代国王。

息子ソヒョンが8年ぶりに帰還すると喜びと謎の不安感に陥る。

「どこから声出してます?」な、声色にビックリ。

執着というべきか、恐ろしかったです。悲しみを抱えて狂人化する王様ではなく、とにかく死にたくないという人間のさもしさ?が表現されていました。


見どころ 


撮影の工夫

眼科医の助言や実際の目の病気を患う患者の経験から追求された撮影法。

太陽、蝋燭、ランタンの仄かな灯りが印象的に。

暗闇の中で、世子が亡くなるシーンも写されます。


宮廷を巨大な監獄のように見せる工夫。

限られたスペースでスリラーを引き出すためとのこと。



色彩もカン世子嬪はパステル調の衣装、チョ昭容は原色と彩度高い色調の衣装。


この太陽の光は、ギョンスにとっては絶望感にも思えてすごかったです。


様々な音

人の歩く音や、生薬を切る、擦る、叩く音。

聴覚が研ぎ澄まされてる主人公の気分になりました。


個人的に1番好きな音は、鍼が身体に刺さるときのプスって音。(嫌な人もいそう)

あー、肩があがった〜、あー、お腹のハリが良くなったわー、って爽快感が脳内にありましたキラキラ

でも、症状をよくない方向にも使われるのが鍼。

鍼は凄いな…、ギョンスの腕も凄いという事か。

ジュンヨルもムソンさんも、かなり鍼の練習をされたそうです。


ユ・ヘジンの動き

初の王様役だったヘジンさん。

特殊メイク無しの顔の痙攣や、身体の動きの繊細な演技が、仁祖のキャラを作り上げていました。


 圧巻の118分

息を殺してのめり込んで観たー、これが全ての感想です。

史劇だけども現代の体制批判(ポリコレノワール)映画と同じで、良し!やっちゃれ、頑張れっ、と勇気がもらえる展開に胸が熱くなりますし、上質なミステリー作品としても楽しめる映画。

こういう作品で、最後圧巻で目頭が熱くなるという初めての経験をしました。

この作品と同じ時代に生きて、映画館で見られてありがとうございました、と監督に伝えたい!


上映終了後は、ご一緒したラテさんとトイレ待ってる中でも「あれってさー…」「ミンチョルとポプチャが!」と興奮。(さすがに個室からは喋らないけど泣き笑い)

梟、をわざわざ高崎に行って観るという謎のブログはこちら下差し


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