爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー
を、読了しました。
先日は、ちょっと選んだ本が自分には合わなかった(多分に 鼓動 や Blue の後に読んだため、というのが原因とも考えられますが)ので、とにかくライトタッチで気軽に楽しめそうなものを、と探して選んだ1冊です。
このタイトルで、ハードな社会派作品ということはあるまい、と。
↓爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー
小さな映像制作会社であるMHFのデザイン部で働く志村弾。
しかしデザイン部所属とは名ばかりで、実際に行う業務のほとんどはMHFが運営するご当地ヒーロー=マチダーマンのショーのイベントスタッフとしての仕事であった。
ある日、町田で派生した誘拐事件。
さらわれたのは小野寺ひかる君 4歳。
しかし、意外な形で事件は終息し、ひかる君は無事保護される。
ひかる君の証言によれば「正義のヒーロー」が、自分を助けてくれたというのだ。
しかしその正義のヒーローは、ひかる君を救出する際、誘拐犯を殺害してしまっていた。
そのニュースを見ていて志村が驚いたのは、ひかる君が描いたその正義のヒーローの絵が、シャドウジャスティスに似ていたことであった。
シャドウジャスティス……かつてある企業PR用のキャラクターとしてスーツまで制作されたが、依頼主である企業が急に倒産してしまったため、一度も陽の目を見ることもなくお蔵入りになってしまったヒーローであり、志村が唯一MHFでデザインし採用されたキャラクター。
もしや、何者かがシャドウジャスティスのスーツを会社の倉庫から持ち出し、誘拐犯を殺害したのでは?
しかし、似ているとは言っても4歳児の描いた絵である。
本当にシャドウジャスティスかどうかは分からない。
同僚達は、志村の考えを聞かされてもあまり本気にはしてくれなかった。
が、今度はヒーロースーツを着た人物に麻薬の売人が殺害される事件が発生。
そのスーツは、間違いなくシャドウジャスティスのものであった……。
正直、読み始めてしばらくは「あ、またハズレをひいてしまったか?」とやや心配になりました。
事件とは関係ない会社内の描写が、結構続くんですよ。
もちろん「ああ、これは後の展開の伏線を張っているんだろうな」というのは分かりますよ。
でも困ったことに、この会社内のお仕事の様子が、あまり読んでいて楽しくない。
ひどいパワハラが横行している会社で、結構不快(笑)。
作品内に出てくるパワハラ、いじめって筆者の体験談なのだろうか?
というか、この小説は「お仕事小説」なのか「ミステリー」なのかどっちなんだよ、と疑問に思うくらい「お仕事」に関する描写が細かくかつ長い。
主人公の志村もそのつど「気にかけている事柄」が、仕事のことだったり事件の事だったり上司の不審な行動についてだったり、と、割ととっ散らかってコロコロいろいろなことを考えている為、読者としてはストレートに志村の思考・気持ちをトレースしづらく、入り込みにくい。
う~んこれは……と思いつつも読み進めていくと、後半から作品にエンジンがかかってくる。
志村の思考のベクトルがあちこちフラフラしなくなり、事件解決に向けて行動し始めるので、グッと彼の行動が理解し易くなる。
解決編に入ってからは、志村の切れ者っぷりが光る描写の連続で主人公らしい爽快な活躍が楽しめる。
また何といっても、後半になってから登場する仁科というキャラクターが魅力的でした。
有能なのか無能なのか、真面目なのか不真面目なのか、どこまでが計算でどこからが天然なのか、それらが主人公の志村にも読者にも分からないままにぐいぐい行動していく。
やっぱり性格が明るくて行動力があるキャラクターが出ると、作品全体が明るくなったような気がしますね。
作品後半かなり盛り返した感じで、最終的には読後感は結構よかったです。
おまけ
昔作ったやつ。
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