前から読みたかったんですが、なかなか読む機会が訪れなかった
スクイッド荘の殺人
読了しました。
最寄り駅の図書館が一向に入れてくれる気配がないので通勤途中で途中下車して別の図書館に行って、借りました。
↓スクイッド荘の殺人
東川篤哉デビュー20周年記念作品にして、「烏賊川市シリーズ」の最新作。
デビュー作の「密室の鍵貸します」が、この「烏賊川市シリーズ」の1作目にあたる作品なんですね。
発売当初はそれほどのヒット作とはならなかったそうですが、それでも2009年までに5本の長編が発表されている。
2010年11月に東川篤哉の代表作となる「謎解きはディナーのあとで」が発売され、発売後半年で売上100万部を突破する大ヒット。
この「謎解きはディナーのあとで」が短編形式だったからか、以降、すっかり東川篤哉=短編の名手となってしまった。
実際それらの作品は面白いのだけれど、長編形式でスタートしたこの「烏賊川市シリーズ」や、「鯉ヶ窪学園シリーズ」といった、すでに何作か書かれていたシリーズも、以降は短編中心となり、何と今回の「スクイッド荘の殺人」は、烏賊川市シリーズ13年ぶりの長編、とのこと。
大企業の社長:小峰三郎から、ボディーガードの依頼を受けた私立探偵の鵜飼杜夫。
何やら脅迫状めいたものが届いたのだということだが、社長業を営む小峰三郎には敵も多く、送り主は特定できないという。
宿代や食事代は小峰三郎もちということで、大喜びで、小峰とその内縁の妻:霧島まどかのクリスマス温泉旅行に同行する鵜飼杜夫と助手の戸村流平。
行く先は、ゲソ岬にあるスクイッド荘。(スクイッドは、英語でイカの意)
が、その日の天気はあいにくと大変な大雪。
鵜飼達一行は、スクイッド荘へ向かう途中、雪で事故を起こした車を発見するが、大雪の為、救急車を呼んでもすぐには来れそうもない。
傷を負い、気を失っていた運転手の青年を車に同乗させ、スクイッド荘へと運ぶ鵜飼達。
青年の持ち物を調べたところ、名を黒江健人というらしい。
その名を聞いた小峰三郎は明らかに動揺した様子だったが……。
大変面白かったのですが、やや、ミステリー愛好者受けというか。
多くの凝った仕掛けがされていましたが、その凄さに気付かぬまま読んでも、なんとなく楽しめてしまうので、気付かないままに読了してしまった読者も多いのでは?
例えば、冒頭で その語り部が誰なのか分からないままに、バラバラ殺人の、死体遺棄の様子を目撃した? というシーンが描かれる。
ミステリー愛好者ならば、
語り部は何者だったのか? そしてその人物の話の聞き手となっていた人物は何者なのか? 本当に目撃したのはバラバラ殺人の死体遺棄の様子だったのか? それらの要素が何処でどのように本編に絡んでくるのか? と、気にしながら読み進めると思います。
でも、特にミステリー愛好者でなければ、あまり気にせずに普通に読み進めるかもしれない、と思うんですよね。
例えば、ゲソ岬のスクイッド荘、です。
一見すると普通のホテルなのですが、その実、本館から小道が10本出ていて、それらがそれぞれ離れに繋がっているという、上から見るとまるでイカのような構造、という特殊なホテルなのです。
ミステリー愛好者ならば、
この構造が、何かこの後起こる事件に、トリックに、大きく関わってくるのでは? と、気にしながら読み進めると思います。
でも、特にミステリー愛好者でなければ、あまり気にせずに普通に読み進めるかもしれない、と思うんですよね。
例えば、大雪です。
ミステリー愛好者ならば、
この積雪という状況が、何かこの後起こる事件に、トリックに、大きく関わってくるのでは? ミステリーに積雪といえば、足跡トリックと相場は決まっている! と、気にしながら読み進めると思います。
でも、特にミステリー愛好者でなければ、あまり気にせずに普通に読み進めるかもしれない、と思うんですよね。
例えば、殺人事件が起こった際に、被害者が最後に残した言葉です。
もろに、ある人物の名前を、最後に言い残します。
ミステリー愛好者ならば、
単に犯人の名前を言った、以外の意味を見出だそうとすると思うんですよ。 そのままの意味ではなく、暗号なのでは?とか、別の言葉だったのを、聞き間違えているのでは?とか
でも、特にミステリー愛好者でなければ、あまり気にせずに普通に読み進めるかもしれない、と思うんですよね。
で、困ったことに(?)作中の登場人物達は、特にミステリー愛好者ではない読者の如く、いちいち難しいことを考えない! 変な深読みをしたりしない! 起こったことを素直に受け止め、素直に行動するんですよ!
普通ならそんな推理小説は全然面白くない筈なのですが、この作者の場合、ドタバタ喜劇が楽しくて、面白く読めてしまうんですね。
で、ややネタバレ含めて書くと、
例えば、殺人事件が起こった際に、被害者が最後に残した言葉について。
もろに、ある人物の名前を、最後に言い残します。
ミステリー愛好者ならば、単に犯人の名前を言った、以外の意味を見出だそうとし、色々推理するでしょうが、作中の登場人物が、特に推理を繰り広げない。 犯人の名前を言ったのだろうという前提で、そこを特に疑うことも無く行動するのです。
なんとなく読み進めているだけ、の読者は、登場人物たち同様、あまり深く考えないままに頁をめくってしまうのでは? と。
それが、解決の段になると、あまりに意外な真相が出てくるんですね。
で、ドタバタ喜劇の中で、しっかりとヒントというか、真相の前振りはされてあったりするのです。
で、そこで「おお、そうだったのか!」と、膝を打つのは、「考えた」読者だけだと思うのですよ。
なんとなく読んでた読者は、「へぇ~こんな真相だったんだ」と、思いはするでしょうが、あまり膝を打ったりはしないと思うんですね。
どこが謎で、何を推理すればいいのか、を分かり易く明示しないと、なんとなく読み進めたという人には、「それなりに面白型けど、やや物足りない」という印象を与えてしまうのでは?と。
そんな心配をしてしまったりして。
おまけ
ブログの内容とは、全く関係がありません。
昔作ったやつ。