傍聴者 読了 | 無敵動画堂高田のブログ

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 傍聴者 読了。

 

    ↓傍聴者

 

 折原一さんの ~~者 シリーズの1本。

 ~~者 シリーズってのは、

 実在の事件をモデルとした上で、あくまでフィクションの推理小説として書かれているシリーズです。

 モデルとなった事件を知っていると、なんだかルポを読んでいるような感覚に襲われ幻惑されます。

 でも、あくまでフィクションなので、○○事件の真相を改めて推理する! みたいな作品ではなく、しっかりとフィクションとしての真相、真犯人に辿り着くようになっています。

 また、このシリーズ、どれも 「この作品のモデルは○○事件です」という解説はありません

 ですがまぁ、読めば分かる、というレベルで有名な事件を取り扱っています。

 

 この 傍聴者 のモデルは、2007~2009年に起こった 婚活連続殺人事件。

 

 

 交際した男性から多額の金品を受け取り、その上で次々と練炭自殺に見せかけて殺害していたとみられる女性:牧村花音

 ついに逮捕された彼女だが、男性達の殺害に関しては真っ向から否認。

 そのファッションや数々の大胆な発言から、裁判は、さながら「花音劇場」と化していく。

 

 初公判の日に知り合った4人の傍聴者の女性:野間佳世、ミルク、お良、リリー(いずれも仮名)は、牧村花音の事を傍聴後に語り合う集まりとして『毒っ子倶楽部』を結成する。

 事件について語り合う彼女らの集まりは、やがて 花音を追い詰めたライター:池尻淳之介による犯罪ルポ 『追い詰める―境界線上の女』の読書会の様相も呈していくようになる。

 そこに書かれている池尻と花音の対決の物語とは……。

 

 フリーライターの池尻淳之介は、親友:等々力謙吾の死の顛末に、不信を抱いていた。

 もうすぐ結婚する、と池尻に語っていた彼は、ある日、自宅マンション近くの空き地に停めてあるレンタカーの中で死体となって発見された。

 警察は練炭自殺と見ていたが、それを信じられぬ池尻は、謙吾の母:克代からの依頼もあり、事件の調査に乗り出す。

 謙吾が死んだというのに全く姿を現さない交際相手を探し出すため、池尻は謙吾が利用していた婚活業者の合コンに自ら参加。 やがて花村花音の存在に辿り着く。

 花音は過去何人もの男性と深い交際をしており、そのいずれもが事故や自殺といった形で死亡していたのだ。

 が、殺人を立証できる証拠は無いと言っていい。

 池尻は、確証をつかむため、あえて彼女に接近していく。

 こう言っては何だが、花音は取り立てて美人というわけではない。

 しかし、彼女の不思議な魅力に取りつかれるように、池尻もまた、彼女と深い仲になっていく。

 果たして彼女は本当に恐るべき連続殺人犯なのか? それとも……?

 

 折原一さんといえば、叙述トリックの名手 です。

 で、全員仮名である 毒っ子倶楽部 の4人の傍聴者達……怪しい、怪しすぎます(笑)。

 絶対これ、事件関係者が混ざってるだろ、と思って読み進めていくと、というかそこに気を取られていると、思いもしない方向から、ガツンと来る展開や仕掛けが姿を現してくるので、実に面白い。

 

 過去に登場したシリーズのキャラクターが、そこそこ重要な役で再登場したり、面白く最後まで読めたのですけれど、逆に、過去の傑作に比べると、ややサスペンスが弱くも感じられ、若干の物足りなさもありました。 まぁ、小さな不満ですが。

 

 登場人物である池尻同様、読んでいるとなんだか次第に 花音 という女性が憎めなくなっていくところが実に絶妙、な作品でした。