葉桜の季節に君を想うということ 再読 | 無敵動画堂高田のブログ

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無敵動画堂 というサークルで、アマチュアアニメを製作している者が、アニメや特撮について語ります。

 通勤中、葉桜の季節に君を想うということ を再読しました。

 

 ↓葉桜の季節に君を想うということ

 

 うん、さすがにこれは、メイントリックは覚えていました。

 一度読んだら、忘れがたいインパクトがありましたからねぇ……。

 

 何でもやってやろう屋 を自称する主人公:成瀬。

 独身で、妹の綾乃と二人暮らし。

 警備員、パソコン教室講師、テレビのエキストラ……と、精力的に数々のバイトをこなし、フィットネスクラブで体を鍛え、出会い系で女を漁ってはその場限りの肉体関係を楽しみ、高校卒業後一時期は探偵事務所に所属しヤクザ組織への潜入捜査まで行っていたという、行動派。

 

 そんな彼はある日、電車への飛び込み自殺を図っていた 麻宮さくら という女性を助ける。

 その時は、面倒くさいと思っていた成瀬だが、助けてくれた(自殺を思いとどまらせてくれた)お礼にと彼女が連絡を取ってきてから、徐々に親密な関係となっていく。

 

 一方、弟分の高校生、清から推薦されるような形で、成瀬は、久隆愛子という女性から、ある調査の依頼を受ける。

 

 最近のこと、愛子の家族が交通事故で無くなった。名を隆一郎という。

 隆一郎は、生前、蓬莱倶楽部という会社の商品にはまって、散財していた。

 蓬莱倶楽部とは、高齢者をターゲットに胡散臭い健康食品や羽根布団などを売りつける悪徳会社である。

 隆一郎が騙されていると分かっていても、これで老齢に達した彼の精神的安息が得られるのなら、と家族は静観していた。

 が、隆一郎が、怪しげな法人を受取人とする保険に加入していたことが分かり、状況が変わった。

 愛子は、蓬莱倶楽部こそが(受取人は別名義の法人だが)保険金の真の受取人であり、保険金を狙った殺人なのではないか? という疑いを抱いたのだ。

 

 調査に乗り出した成瀬は、妹の綾乃や、弟分の清の助けを借りながら、徐々に蓬莱倶楽部の実態に迫っていくが、調査の事をさくらには秘密にしていたが故に、彼女に嘘をついたり、デートをすっぽかしたりする羽目になり……。

 

 という内容です。

 上記、それなりに長文ですが、実際の小説は、もっと複雑な構成。

・蓬莱倶楽部を探る成瀬の活躍を描く、サスペンスパート

・ヤクザ組織に潜入していた頃に遭遇した、猟奇的殺人の謎に迫る推理物パート

・飲み仲間である安藤士郎(72)という老人から依頼された、17になる娘の行方と様子を探る人情物語パート

・借金のかたに、蓬莱倶楽部への協力を強要され、ズルズル深みにはまっていく節子という老婆を主人公としたクライムストーリーパート

・成瀬とさくらの恋愛ストーリーパート

という、別々のストーリーが章ごとに語られる構成。

 当然読者としては、このバラバラに語られている各パートが結び付き、そこで一気に物語がクライマックスを迎える、という構成であることくらいは、分かる。

 分かるからこそ、どう結びつくんだ? と予想(推理)しながら読み進める。

 が、推理しながら読んでいたはずなのに、実際、各パートが結びついた時「こういう事だったか!」と驚かされること必至

 初読でメイントリックを見破った読者、ほとんどいないのではないだろうか?

 

 必至と言えば、タイトルと作品冒頭シーンのギャップに、面食らうこと必至。

 タイトルは、なんか、上品な感じでしょう?

 それが、いきなり出会い系やら風俗やらで性欲を満たしまくりの男が主人公、で始まるわけですから。

 でも、ラストまで読むと、まぁ、このタイトルにも納得できなくはない。(ラストは、成瀬とさくらの恋愛話で、物語が締められるので)

 

 

 やっぱ、メイントリックを覚えている状態での再読は、初読程は楽しめなかったかなぁ。

 でも、それほど、忘れがたいインパクトを持ったトリックだったなぁ、と。

 

 クライマックスの意外な謎解きから一気に怒涛のラスト! みたいのが好きな人には、お勧めの小説です。

 

ただし!

 どうも、メイントリックのインパクトは、読んだ人の誰もが認めているようなのですが、その後の好き嫌いに関してはハッキリと意見が分かれている様子

 好きになれなかった人は、即ブックオフ行き、どころか、本を地面に叩き付けたくなる怒りがわいてくるタイプの真相のようです。

 

 個人的には、怒りがわいたという意味では 東川篤哉さんの 純喫茶「一服堂」の四季 の時の方が怒りがわきましたが(笑)。

 

 ↓純喫茶「一服堂」の四季

  ラストシーンには、ゲラゲラ笑いながら怒り狂うしかない。

 

 さて、次は何を再読するか、と本棚ならぬ、段ボールを漁る私です。