劇場版「騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!」
感想です。
思いっきりネタバレなので、そういうのが苦手な方は、スルーして下さい。
福井県立恐竜博物館で楽しむコウ達リュウソウジャーの前に、6500万年前からタイムスリップしてきたリュウソウ族の美女:ユノが現れる。
そして、その過去の地球には、巨大隕石が迫りつつあると彼女は訴える。
しかしそれは実際に地球に起こったことであり、それにより恐竜が絶滅してしまったことも、コウ達は知っていた。
そこへタイムスリップ現象を引き起こす能力持った 始祖マイナソーが出現。
ユノと、コウ達5人を6500万年前の地球に連れて行ってしまう。
そこで、迫りくる隕石を見たコウ達は驚愕する。
実際に地球に落下したと思われる隕石よりも、はるかに巨大ではないか。
あんなものが衝突したら、恐竜が絶滅、どころか、地球そのものが宇宙から消滅してしまう。
しかし、隕石を阻止しようにも、6500万年前の地球では、相棒である騎士竜たちがいない。
一体どうすれば……。
ユノは、悩むコウ達に、巨大ロボ:キシリュウジンの存在を明かす。
それはユノの父:ヴァルマが、ドルイドンと戦うために作り上げたものだった。
そして、現代でコウ達が何度か遭遇している、謎の鎧の戦士:ガイソーグもまた、ヴァルマが作ったものであることを知るコウ達。
しかし、強大な力を手にしたヴァルマは、その力に魅入られ、支配者として君臨せんとしていた。
果たして、リュウソウジャーの5人は、暴走したヴァルマの野望を打ち砕き、キシリュウジンを手に入れ、隕石を破壊できるであろうか?
そして、再び現代に戻ってくることができるであろうか?
迫力満点の特撮シーン(巨大戦)が開巻いきなり展開され、まずはグッと引き込まれた。
つかみはOK。
全体的に『画』の力がある映画で、映像的にはかなり満足度が高い。
が、内容は無茶苦茶。
全体的に脚本が荒く、
・6500万年前にタイムスリップ!
・リュウソウジャー誕生の秘密が明かされる!
・巨大隕石の阻止と、コウ達が無事現代に帰ることができるのか?という多重のサスペンス要素
といった、魅力的と思われるアイディアが、殆ど活かされていない。
・恐竜博物館で、ズラッと並んでいる恐竜の化石を観ているメルト(ブルー)に話しかけるアスナ(ピンク)
アスナ「メルト、何を観ているの?」
メルト「恐竜の化石さ……」
……いや、そりゃそうだろ。
恐竜の化石がズラッと並んでいるブースにいるんだからさ。
脚本家は、このやり取りを書いて、自分で「なんかこの会話は、不自然だ」と、思わなかったのか!?
・ユノは一体どうやって、自分が6500万年前からタイムスリップしてきた、と知ったのか?
自分が全く知らない異世界に迷い込んだ、ということは分かるだろうが……。
誰から説明を受けたわけでもなく、自分の意志で来たわけでもなく、なのになぜか自分が6500万年前からやって来たということを正確に把握してしまう女……。
でも、どうやら恐竜が現代では絶滅していることすら、まともに把握していなかった様子。
なんでそんなにストーリーの都合に合わせて、知っていることと知らないことがあるの?
・現代と過去とがやたら行き来する、分かりにくいストーリー運び
・6人目、リュウソウゴールドが、EDのダンス以外には登場せず。(変身前のカナロはちゃんと出番があるが)
ただ、これはさすがに、何か事情があって、こうせざるを得なかったんだろうな。
・どうやったら現代に戻れるのか? というサスペンスだが、隕石を破壊したら、時空のゆがみが生じ、「あそこに飛び込んだら、戻れるかもしれない!」と、何の根拠もないのに決めつけるリュウソウジャー(笑)。
そして、事実、コウ(レッド)を除く4人はそこに飛び込んでいって、無事帰還。
いや、これ、並のご都合展開のレベルをはるかに凌駕しているぞ。
なんで隕石を破壊したら時空のゆがみができたのか不明(でかい爆発があったら、そこにはホイホイ時空のゆがみが発生するのか? この世界では)
なんでそこに飛び込んだら現代に戻れるという発想に至ったのかも不明(時空のゆがみに飲み込まれる、とか、全く別の世界に飛ばされる、とか、時間を超えても元の現代に戻れるとは限らない、とか、そういう可能性を一切無視し、とにかく飛び込んだら元の時間に戻れる、という大前提で話が進んだ)
・一人残されたコウ(レッド)に対し、落下してきた隕石の破片が地上に激突した爆発に飛び込めば、そこには時空のゆがみが生じている可能性があり、現代に戻れるだろうと言い始めるヴァルマ。なんで?
隕石の欠片が落ちて大爆発が起こっているところに飛び込んだら、普通は死ぬだけだぞ。
・で、実際、成功して現代に戻ってくるコウ……。
・強大な敵に対し、クライマックスで勢ぞろいした戦隊ヒーローが大活躍! という基本フォーマットを崩し、レッドだけがガイソーグと対決、他の4人は隕石破壊に向かう、という展開のため、いつも通りの定番の盛り上げ、もない。
少々脚本がガバガバでも、戦隊ものは、いや、ヒーロー物は、この「クライマックスでヒーローがカッコよく強大な悪を倒す」というシチュエーションさえ、しっかり描けていれば、そこそこは楽しめる、という「強味」がある。
が、何故か今回の映画、そこすら崩すという異色展開に挑戦しているのだ。
で、異色展開なりの、独自の面白さを発揮しているのか?と考えると……
とにかく、観ているものを唖然とさせる、超絶ご都合展開の嵐!
映像の方はマジでかなり素晴らしい出来。
が、あまりの内容が酷くて……。
ちょっと、私の中では、ゴレンジャーから始まる歴代スーパー戦隊劇場版の中でも、ワーストに近い印象。
いや、映像が素晴らしかったから、そこはプラス評価してあげたい気持ちもあるのですが……。