劇場版「仮面ライダービルド」感想(ネタバレ有) | 無敵動画堂高田のブログ

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劇場版「仮面ライダービルド Be The One」
感想です。
 思いっきりネタバレありと、ちょっと辛口感想になりそうなので、そういうのが苦手な方は、スルーして下さい。
 

 
 東都、北都、西都に、新たな知事が就任した。
 彼等は、その就任演説において、忌まわしき戦争の象徴である仮面ライダーの撲滅を宣言。
 そしてその演説を聞いた人々は、何かに憑りつかれたかのように、ビルドを襲い始める。
 ビルド殲滅作戦の発動であった。
 実は3知事は、エボルトと同じく異星生命体=ブラッド族であり、その目的は地球の滅亡であった。
 今や日本中がビルドの敵だ!


 この映画を観て分かった事……上堀内監督って、本当に真上からのショットが好きなのね……って、んなこたぁどうでもいい!
何と言うか、あらゆるところでちぐはぐさを感じる映画でした。

 仮面ライダービルド という作品は「戦争」を描いているのですが、やはり「仮面ライダーで戦争を描く」という事には各方面からの反発があったのか、実際には戦争は殆ど描かれていません。
 「戦争」という言葉だけがやたら繰り返されるにとどまっています。
 戦争が起こったら、
人々の生活はどうなるのか、
生命や財産がどれほど脅かされるのか、
そして敵国を憎めという国家の方針のため、どれほど人々の精神がゆがめられるのか
そういった描写は皆無と言ってよく、完全にゲーム感覚、他人事、という描写です。
 その是非は今回は問いません。
 今回のブログは、あくまで映画「仮面ライダービルド Be The One」がどうだったのか、という点についてのみ書きます。
 TV版が、戦争についてそのような描写なので、「忌まわしき戦争の象徴である仮面ライダーを忌避する想いが人々にあったからこそ、あっさりブラッド族の洗脳にかかった」とか言われても、まるで実感がわきません。
 TVにおける戦争描写と、今回の映画の設定が、まるでちぐはぐで噛合っていないのです。

 そして、ブラッド族に洗脳された人々がビルドを襲い、必死にビルドが逃げ回るシーンですが、『画』自体は非常によく出来ていて、スケールも大きく、楽しいシーンに仕上がっています。
 やがてストーリーが進み、一人、絶望の淵に立たされるビルド=戦兎……というシーンになっていくのですが、群衆から逃げ回っているシーンは、どう見てもドタバタコメディのノリで演出されており、ビルド=戦兎も何だか割と楽しんでいるように見えます。
 当然ですが、絶望しているシーンの戦兎の感情にまるでついて行けません。
 絶望している戦兎のシーンは、大量の雨を降らしたりして、どシリアスムードで演出されています。
 主人公の置かれている状況を描写するシーンのノリと、主人公が、結果的にどのような心情に追い込まれたかを描写するシーンのノリが、まるでちぐはぐで噛合っていないのです。

 そして今回のメインの敵 史上最強の仮面ライダー=ブラッド ですが、登場するや否や、その放った一撃は 仮面ライダーエボルにあっさり弾かれてしまうという……。
 お願いだからさぁ! 史上最強の敵仮面ライダーなんでしょ? ちゃんとそういう描写を見せてよ!
 その後、クライマックス手前で、一応ビルドジーニアス(ビルドの最強形態)を圧倒するシーンはあったけれど、それも、ブラッドが強いというより、単に戦兎が精神的に参っているところを、なぶっているようにしか見えず……。
 多分、エボルが単にその気になっていなかっただけで、彼がその気になれば、ブラッドは簡単にやっつけられたでしょ?
 どこが史上最強の仮面ライダーやねん。
 触れ込みと実際の作品における描写がまるでちぐはぐで噛合っていません

 そして、この作品の最大の見せ場、盛り上げどころは、戦兎と龍我の合体変身による、仮面ライダービルド・クローズビルドフォームの登場なわけですが。
 クライマックスにして、コミカル演出。
 これが本当に、結構いい感じでコミカルなノリに仕上がっていて、
地球滅亡寸前に最後の希望として現れた最強ヒーロー という激燃え展開の筈なのに、
そういうムードが微塵も感じられない 素晴らしく明るく楽しいシーンに仕上がっています。
 シチュエーションと実際のシーンのノリがまるでちぐはぐで噛合っていません

 なんかもう、全編こんな調子で、もしスタッフが
「フフフ……これぞ、シリアスとコミカルのベストマッチ!」
とか思ってやっているんだとしたら、私はかなりドン引きです。

 キャラクターのコミカルなお遊びはやらなければならない
 「戦争」というテーマを盛り込んだシリアスなシーンはやらなければならない
 ヒーロー物として、「最強の敵」「地球滅亡の危機」「相棒との合体による最強ヒーロー登場」という燃える要素を入れなければならない
 という義務を果たそうとして、悩んだ末に残念ながら今回は失敗し、ちぐはぐなイメージの作品に仕上がってしまった、というのなら、まだ許せます。
 というか、そういう事なんでしょう。

 そして、映画全体を支配するちぐはぐ感ともう一つ、大きな残念ポイントが、個人的にはあります。
 ヒーローもの映画としてのサービスが、決定的に不足している、と感じざるを得ないのです。この映画。
(長くなってしまったので、続く)