※この記事は過去記事の再構成です
諸君、ご壮健かな。
機動戦士ガンダムUC。
この誰もが心惹かれる作品。もちろんその主人公は、若者たち。
バナージ・リンクス。
ミネバ・ラオ・ザビ。
重い宿命を背負った二人。しかしそれを打破し、新しい時代を開かんともがく姿は、多くの人の心を打っただろう。
そして、その二人をまとめて敵に回す、もう一人の主人公。
フル・フロンタル。
私も含め、大人になってしまった少年たちは彼に夢を重ねる。それは、なぜか。
彼が彗星のように現れる3年前に、身も心も闘いの中で燃え尽きた男がいる。そう。
シャア・アズナブル。
彼は「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の中で、その熱い伝説の幕を閉じる。そのあまりにも熱くそしてどこか寂しい輝きと重なるものは、誰もが通り過ぎる時期。そう。
青春時代。
その青い時代の幻影を追って、人は生きる。熱い時代を胸に抱えているからこそ、今を生きられる。そんな手の届かない幻が彼、シャア・アズナブルなのだ。
シャア・アズナブルの人生は、熱く激しい、誰もが過ぎる青い時代。そこに、視聴者は過ぎ去ったあの時代を重ねる。もはや実感がなくなったあの頃を。
フル・フロンタルにとっても、シャア・アズナブルは過去の存在。彼自身の過去であろうがなかろうが、自らの記憶なのだ。
私も似たようなことを感じることがある。
今では大人しくなってしまったが、あの頃の自分は躍動していた。それはもはや粉飾された虚構かもしれない。しかし過去の幻影に対し憧れに似た感情を持ち、今の自分を律し鼓舞するのだ。
フル・フロンタル。
彼はあのシャア・アズナブルをも過去の幻影と押し流し、さらに人々の思いを吸収して躍動する。
我々大人になってしまった少年は疲弊している。だからこそ、彼の姿はまぶしくも、達したい高みに思えるのだ。
(過去のコラム)
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