(1949年/日本/89分)
監督:木下惠介
【ストーリー】
自動車修理工場を経営して成功した地方出身者の圭三に、元華族の令嬢・泰子との 縁談が持ち上がる。最初は乗り気でなかった圭三だったが、泰子に会った途端、その あまりの美しさに一目惚れ。かくして、ふたりのぎこちなくも微笑ましい交際が始まるの だが…(松竹さんサイトより)
【かんそう】
『女優 原節子のすべて』特集から鑑賞
とっても楽しくて大好きな作品になりました!!!
ほんと楽しかったなー
「お金儲けは得意なんです!」とはっきり言う自動車修理工場経営者・圭三と絶世の美女ばりに美しい没落貴族(?)の娘・泰子との純情ラブコメディー。
圭三は泰子に出会った瞬間もう浮かれていたけれどお付き合いできるとなった途端更なる浮かれよう。
そりゃそうやわな。そうなるわな。わかる。わかるよ。
一方泰子は先に観た『安城家の舞踏会』ではないけれど、落ちぶれてしまった貴族の家の娘でお見合いせざるを得ない状況で圭三とお見合い。
だからかわかりませんがどうも最初はぎこちない。
さてさて、育ってきた環境も、現在住んでいる環境も違う二人が今後結婚までたどりつけるのでしょうか?!
なんだか初々しい二人で、とても微笑ましかったです。
デートで泰子のお友達が出演しているバレエを観に行くのですが、圭三が感動して涙を流したり、その後、泰子の提案で「拳闘」(ボクシングですね)を観に行くと、思いのほか泰子が興奮したり・・・と、ほんとほんわかのほほん。
ですが、やっぱり泰子はどうもぎこちない。
好きになろうと努力している・・・ように見えます。
だって・・・実はこのお見合いはお金のためだったから。
泰子の父が事件に巻き込まれて刑務所に入っており、家そのものも抵当に入っており、そんな中での泰子と「お金儲けは得意ですから!」という圭三のお見合い。
どう考えても純粋なお見合いではありません。
圭三はがっかりするものの、その時はもうすでに泰子の事が大好きであり、絶賛うかれポンチ中だったのでますます泰子に入れ込んでいきます。
泰子は父の「お金のための結婚はするんじゃない」という忠告と、死んでしまった元婚約者の一件、そして自分の気持ちと、圭三からの好意で悩みます。
圭三の人柄に触れて泰子はどんどん彼に魅かれて行ったとは思います。
ですが・・・家の事が・・・
この悩む姿がまた、美しい!!
原節子さんならではの美しさ!!
そして悩んだ表情で発する「あぁ・・おなかすいた」というセリフ!!!
ちょっと必聴のセリフでしたわ。
でもいつまでもこのままではいられません。
圭三がいつまでたっても煮え切らない泰子に本当の気持ちを教えてほしい、と迫ると、結婚にはどうも躊躇している様子、それどころか圭三の事も本当に好きなのかどうか怪しいところ・・・
結婚披露宴の日、泰子を迎えに行くと相変わらずの祖父母の愚痴。
あんたらいつまで貴族気取りやねーん!!
祖父母の愚痴を聞いているうちに圭三はやっぱり自分は泰子さんと結婚しない方がええんとちゃうか、と結婚をやめて田舎に帰ることに。
おぉ・・・新郎が結婚当日にいなくなりますか・・・
圭三の置手紙を読んで泰子もやっと自分の気持ちに確信が持てて圭三を追いかけることに!!
披露宴会場にする予定だったいつもの行きつけのお店に行くと、既に泥酔状態のママさんにあーだこーだと言われる泰子。
圭三が不憫でならないママさん。
「男の値打ちは心意気だよ!」
というセリフがあったのですが、100%そうではないかもしれませんが、それもあるかもなーと思いました。
ちなみに脚本は新藤兼人氏です。
泰子がいくら「あの方の事、好きですわ」「愛していますわ」と言っても
好きだの、愛してるだの、そんな言葉じゃ惚れたことにはならん!!
惚れたって言いなさいよ~
と、ぐでんぐでん状態のママは言います。
そして、とうとう最後の最後に
「惚れております!!」
と渾身の叫びをママさんにぶつけて圭三を追いかけて駅に向かう泰子。
ここでやっと圭三と泰子の階級の差やわだかまり等何もかもがなくなったように思いました。
音楽もそれまで泰子が圭三に弾いて聞かせてあげたショパンの幻想即興曲が流れていたのですが(圭三が買ってきたレコードと言うことで店の中で流していた)、上の渾身の叫びを言い放った瞬間音楽も変わりましたしね。
この二人は幸せに・・・なってるよね、きっと。
とても楽しくて観終った後も顔がにこにこ、心がほこほこしてました。
くうこのおまけ
・原節子さんの「お腹が空いた」も「おぉ!」でしたけど、新喜劇顔負けのこけっぷりも「おぉ!!」と、素晴らしかったです!!
そういや『安城家の舞踏会』でも体を張ったスライディングがありましたね・・・
意外と体を張れる女優さんだったりするのかしら?!
・行きつけのお店でビールを飲むとき、時々カッティングの多いレトロなジョッキが出てくるのですが、あの重厚感のあるジョッキが欲しい。『トレインスポッティング』でも出てきたんですよねぇ。
・結構劇場内も笑いで包まれていたのが良かったです♪楽しいですよね。みんなで笑うの。
うりぼう5つ:
ありがとうございました☆