チスル
(2012年/韓国/108分)
監督:オ・ミヨル
【ストーリー】
1948年10月、済州島の海岸線から5キロを超えて内陸にいる者は全員射殺するとの韓国軍からの有無を言わせぬ通達に島民たちは面食らう。風評に惑わされた彼らは山中深く逃げ込んだり、銃を手に応戦しようとしたりとさまざまな反応を見せる。そして韓国軍は実際に村人たちの無差別虐殺を開始し、家を追われた人々は洞窟に逃げ込んで命をつなぐ。(シネマトゥデイさんより)
【かんそう】
今まで語られることのなかった済州島4.3事件を描いた作品。
「こういう事件があったんやなぁ・・・」という事を知るにはいい映画とは思いますが、ドキュメンタリーや完全コピーの再現ドラマではないので、突き詰めてこの事件の事を知りたいんや!!という人にとってはちょっと物足りないかもしれません。
この映画は終始白黒で描かれているのですが、美しい映像が多かったです。
たとえば民家を襲ったあとの部屋を映したシーンでは器があちらこちらにちらばっていたりするのですが、カメラを覗いては「違う。もうちょっとこっち」「ちゃうちゃう!もーちょっとだけあっち向けて」など何度も何度も器を置きなおしたのではなかろうか?!というくらいに計算された構図だったし、ほかにも「凝ってるなー」と思う構図がいくつかありました。
また、監督の「鎮魂」「慰霊」という想いが十分すぎるほど反映されている映画だと思うのですが、特にラストのシーンではそれが痛いほど伝わってきました。
監督はこの映画に対して並々ならぬ想いがあったんやろうなぁ・・・というのは観ていて本当にとてもよくわかります。
この映画は悲惨な事件を題材にはしているのですが(語弊があるかもしれませんが)どことなく幻想的な感じもしました。
でも、私が妙にリアリティーを感じたところがあります。
それは島民のリアクションと呑気さ、そして軍警側の若い人たちのやりとりです。
その場にいたわけではないので、絶対そうだー!とは私も言えませんが、たぶん、あんな感じちゃうやろか、そんな事も言うやろな・・・というのは観ていてなぜだかすごく伝わってきたのです。
やはりこの映画は事件そのものを描いたのではなく、この事件の渦中にいた「人々」を描いたものだったのかなぁ、という気がします。
あと、チラシを読んで驚いたのですが、これ、インディペンデント映画なんですね。
インディペンデント映画を対象としたサンダンス映画祭でワールドシネマ・グランプリも受賞しています。
私もその道に詳しくないし、定義もよくわかっていないのですが、これをインディペンデント映画とするなら、クオリティは非常に高いのではないでしょうか?!
いや、商業映画、インディペンデント映画など関係なく素晴らしい出来だとは思いますが。
でも思い返せば・・・確かに予算はそんなに使ってないような気もします・・・
秀作だとは思いますが、好みかどうか、と聞かれたらちょっと私の好みではなかったかなぁ。
ええ男とは思うけど私のタイプちゃうわー・・・みたいな「そんなこと聞いてへんわ!」的オチですんません。
くうこのおまけ
・「チスル」とは済州島の方言で「じゃがいも」を意味する言葉だそうです。
・ここまでくれば別の劇場で上映していた『南部軍 愛と幻想のパルチザン』『南営洞1985~国家暴力、22日間の記録~』も観ておけばよかったなーと後悔ですわ・・・。
うりぼう3つと半分:
ありがとうございました☆