何年ぶりかの文学作品
『友情』武者小路実篤
もともと歯医者で読み始めたのだが、治療が最後、という日に本棚から忽然となくなっており、代わりに同じ武者小路実篤の「愛と死」が置いてあった・・・・
同じ実篤でもちゃうやん!!!
友情はどこ行ったん?!
と、いうことで続きが気になり図書館で借りたんですけどね。
主人公の野島という男が友人の妹:杉子にめっちゃ惚れてまうのだが、当の杉子の心は?!
という話なのだが、野島が杉子の表情や言葉で一喜一憂する姿が、恋をしたことがある者なら必ず共感できるであろう、というものであった。
また、野島という男が人間的に不器用なもんだから、同じように不器用な私個人としてはかなり「わかるわぁ・・・」の連続だった。
ここに大宮という野島の友人が主要登場人物として入ってくるのだが、彼は非常に聡明で男気があり、友情に厚い、まぁ~いい男なのである。
大宮が登場してからは3人の間で友情、恋愛話が繰り広げられる。
私は杉子の家(野島はもともと杉子の兄と友人の仲)で行われた卓球の場面が大好きだったなぁ。
ちょっとばかし笑っちゃったもの。
もう・・・杉子とうっきうきで卓球をする野島の浮かれポンチ具合が手にとるようにわかるのよ。
「神様!この時間を止めてくれ!!」と思う野島の気持ちもよくわかる・・・・
そして話のラストではあの卓球が野島の一番の幸せタイムだったね・・・とも思ったりしたものだ・・・
それくらい卓球の場面はキラキラ輝いたものだった。
また、後半はずーっとある男と女の手紙でのやりとりで構成されているのだが、ここで恐るべし姿が暴露される。
そうやねん。恋は盲目・・・てよう言うたもんやわ。
好きな人の実際の心や姿なんて好きで好きで追いかけている時って見えないものよねぇ・・・と思わされる展開になっている。
最後の最後には・・・もう・・・・「野島・・・がんばれよ・・・」という気持ちが自然と沸き起こったわ。
友情を大事にする気持ちも恋愛にどうしようもなく振り回される姿もよーくよーくわかるこの小説。
そう思うと今も昔もそういう「感情」は変わらないものなのかもしれないね。
文学作品ではあるが、意外と読みやすく読書の苦手な私でも一気に読めたので、読書苦手な方にもお勧めです。