R.E.M. UNPLUGGED 1991 & 2001 | 自然と音楽の森

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20140710REMUnplugged

 ◎UNPLUGGED 1991 & 2001 THE COMPLETE SESSIONS
 ▼アンプラグド 1991/2001 コンプリート・セッションズ  
 ☆R.E.M.
 ★R.E.M.
 released in 2014
 CD-0464 2014/7/10

 R.E.M.の新しいCDが出ました。
 Warner系の再発レーベルRhinoからのリリースです。
 2011年9月に解散した彼ら、未発表曲集や未発表ライヴ音源がCDとしてリリースされることが予想されましたが、今回、MTV Unpluggedに2度出演した模様が、2枚組のライヴ盤として、漸く世に出ました。

 MTVアンプラグドについてはもはや説明不要かもですが、一応。
 アンプラグドは基本はエレクトリックの楽器を使わずに演奏するライヴを収録したMTVの番組。
 1990年代前半にひとつのスタイルとして話題となり、その要素が個々の演奏者の楽曲に反映され多くの人に聴かれたことで、アコースティックギターの魅力が再評価され、今に至っています。
 一応10代の頃からギターを弾き続けている僕としても、それを境に日本でも生ギター熱が再興し、かつてはそうだったように再び生ギターが身近なものになったと感じています。

 ポール・マッカートニーやスティングなど大物がこぞって出演。
 エリック・クラプトンはそのライヴ盤でグラミー賞を獲得。
 マライア・キャリーは本格派の歌手への足場を築き、ニルヴァーナはそのアルバムが名盤とまで言われるようになり、ロッド・スチュワートは生来のエンターテイメント性を評価されました。
 キッスのUNPLUGGEDの邦題が「停電」とは面白い(笑)。
 ライヴが生きがいのボブ・ディランもアルバムを残しており、そしてブルース・スプリングスティーンはいつも通りにテレキャスターを持ち出して"unun-plugged"にしてしまいました。

 アンプラグドは一般のコンサートホールより小さなテレビスタジオで収録するため、演奏者と客の間が近く、一体感そして温かい雰囲気が感じとれます。
 普段はエレクトリックの楽器で演奏する曲をアコースティックで再現することにより、普段とは違う姿に接することも魅力のひとつです。
 ライヴゆえ、ハプニング的なことが起こるかもしれないというわくわく感にも満ちています。
 実際、ポール・マッカートニーはWe Can Work It Outの歌い出しで歌詞を間違え、一度演奏を止めてやり直したりもしました。



 さてR.E.M.。
 1991年の方はMTVで観たことがあるのですが、公式のCDが発売されるのは今回が初めて。
 さらには僕がMTVを観なくなった後の2001年にも出演していたのは、当時はもうMTVを観なくなっていたので、今回のCDが出るまで知りませんでした。

 R.E.M.は、売れてWarnerに移籍してからは、アリーナロックと呼ぶに十分なほどに集客力が上がりました。
 しかし彼らは、大物になっても普通の人と変わらない姿勢であり続けらたことに対して、ニルヴァーナのカート・コベインが生前憧れを示していたように、大きくなったからといって音楽性はほとんど変わらなかったバンドでした。
 もちろん、作曲能力は上がったのですが、それはまた別の話。

 だから、このアンプラグドは、他の大物バンドに比べるとレコードとの違いがあまり感じられません。
 彼らとしても、アンプラグドは自分たちの出発点のようなものであり、いるべきところという思いがあったのではないかと。
 だから、1989年に番組が始まって割と早くに出たのでしょう。
 アンプラグドだから何かを変えてやろうというよりは、自分たちの基本に忠実に演奏して聴いてもらおうという彼ららしい姿勢。
 でもよく聴くと、微妙なニュアンスの違いが随所に感じられ、そこが楽しみでもあります。

 また、演奏が薄い中で生で歌うため、マイケル・スタイプの声が前面に出ることで、彼の歌手としての素晴らしさが分かります。
 当時はサウンドに凝り始めた頃でしたが、だから逆に、アンプラグドで歌うことでマイケルは歌手としての自らの立場を再認識した、ということもあるのではないかと。

 さて、今回はコンプリート・セッションズと謳っていますが、2枚に収められた33曲のうち11曲が、テレビ放送では使われなかった「未発表」テイクです。
 
 Wikipediaを見ると早くもこのCDのページがありましたが、その11曲がどれであるかは明示されていませんでした。
 他のサイトも検索をかけましたが、必要な情報は得られなかった。
 1991年のほうは録画したビデオテープが家のどこかにあるけれど、すぐに出せない場所にありしかもβで調べることができず。
 
 というわけで、申し訳ない、どれが放送されなかった曲かは分からなかったのですが、このまま進めさせていただきます。



 Disc1:April 10,1991

 1曲目 Half The World Away
 Disc1は当時のスタジオアルバム最新作のOUT OF TIMEからの曲が中心となっていますが、1曲目は変化球というか、ボレロのようなリズムのゆったりとしたこの曲から入ります。
 この曲がり具合いがいかにもR.E.M.らしくて納得。
 アルバムがアコースティックな要素を大胆に取り入れていてこの曲はほぼオリジナル通りのイメージで演奏されています。
 オルガンの音色がまるでこっちとあっちの世界をつなぐようで、お盆やお彼岸に聴くといい感じの曲。
 そのオルガンはピーター・ホルサップル、と、この曲が終わり、マイケル・スタイプがメンバー紹介する中で名を挙げています。
 そうそうメンバーは、ピーター・バック、ビル・ベリー、マイク・ミルズとマイケル・スタイプ。

 2曲目 Disturbance At The Heron House
 出世作DOCUMENTから。
 曲名にある"heron"は「大型のサギ」のことで、あ鳥ですよ(笑)、日本にもいるアオサギは英名を"Grey Heron"といいます。
 鳥好きの僕は、そんなあまり有名ではない鳥の名前が出てくるなんて、R.E.M.を聴くのは運命だと思ったものです。
 しかし調べると、"Heron House"とは、アメリカはフロリダの有名なリゾート地キーウェストにあるホテルのことだそうで。
 つまり、ホテルで暴れた人の歌ですかね(笑)。
 ところでこれ、曲名がヴァースの中で一度出てくるだけで、僕は暫くこの曲のタイトルを、サビの中で繰り返し出てくる"Something We Don't Know"だと思っていました。
 オリジナル演奏はエレクトリックギターが通奏低音のように響くのが、ここはアコースティックなだけに細かく刻んだ感じがします。

 3曲目 Radio Song
 OUT...の冒頭を飾る曲。
 オリジナルではラッパーによるラップが入っていますが、ここではそこはやり過ごしています。
 これもオリジナルはエレクトリックギターのカウンターが印象的ですが、こちらではちょっとエスニックな響きのリズムに凝っています。

 4曲目 Low
 OUT...はアコースティックな響きをいかにロックの中で生かすか、それを人がやらなかった方法で実現できるか、という実験精神を、その収録曲をアンプラグドで聴くことでよく理解できます。
 これは曲自体も、もっと長い曲の一部を切り取ったような、どこかから来てどこかへつながっていくその過程のようにも感じられる不思議な響きの曲です。

 5曲目 Perfect Circle
 フルアルバム1作目のMURMURから。
 この曲は90年代に入ってから彼らの中でも再評価されたようで、後にライヴDVDのタイトルにもなっている、意味の大きな曲。
 彼ららしい湿り気のあるうねうねした旋律が、アンプラグドではより克明に刻まれて心に響いてきます。

 6曲目 Fall On Me
 4作目LIFES RICH PAGEANTから。
 その当時の彼らには迷いがあったのが、この曲を得たことで迷いが吹っ切れて前に進めたという重要な曲。
 サビの旋律と対位法によるマイク・ミルズのコーラスは、アンプラグドならではの生々しさがあって素晴らしい。
 僕が選ぶDisc1のベストトラックとさせていただきます。

 7曲目 Belong
 OUT...から。
 この曲もやはり「途中」の感じと「彼岸」の雰囲気があります。
 特にマイケルの喋りが、向こうから聞こえてくるようで。

 8曲目 Love Is All Around
 ザ・トロッグスが1967年にシングル発売した曲のカヴァー。
 というよりこの曲は有名で、僕も、この曲を最初に聴いて、ああこの曲か、と思ったものです。
 彼らも10代の頃に聴いて育ったのでしょう。
 マイク・ミルズが歌いますが、彼はこの頃までは時々アルバムでも歌っていて、バンドとしての姿勢も感じられます。
 それにしてもマイケル・スタイプの後追いコーラス、主役を喰ってしまえという意気込みが十分すぎる(笑)。
 ちなみに最初に聴いたのは、OUT...からのRadio SongのシングルCDを当時買ったところ、B面曲としてまさにUnpluggedからのこの曲が入っていたので、この曲のみCDで聴いたことがありました。

 9曲目 It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)
 DOCUMENTから、彼らの「前期」の魅力を凝縮した曲。
 ヴァースはほとんどマイケルラップだから、ここでも自由な感覚で崩して楽しげに歌っています。

 10曲目 Losing My Religion
 OUT...からのシングル第1弾、彼らの最大のヒット曲。
 マイク・ミルズはベースもアコースティックのものを弾いていますが、ここでは、エレクトリックのベースのどっしりとした落ち着きがなく、余計に不安に聴こえてしまいます。

 11曲目 Pop Song 89
 Warner移籍第1弾GREENの1曲目。
 オリジナルではエレクトリックギターの力強さが魅力であり、チョーキングの音が印象的なだけに、このアンプラグドでは、多少それに勝ってやろうという強引さがないでもないです。
 まあ曲そのものがいいので文句はないのですが。

 12曲目 Endgame
 OUT...の「途中の曲」のひとつ。
 つまりアルバムOUT...は幾つかの核となる曲を「途中の曲」でつなぐことにより独自の世界観を表したものなのです。
 この曲は♪ばっららららららら はぃはぃはぃ と歌いますが、オリジナルより「はぃはぃはぃ」が強く聴こえるのが新鮮。
 これはアコースティックベースの音色がとてもいい響き。
 口笛はマイケルかな、あまり上手くないのかな・・・途中で投げ出してしまったような響きがありますが、まあこれもライヴならではのハプニングということで。


 ところで、テレビで観た番組は確かこの曲が流れたところでエンドロールが入り、画面に関係者の字幕が出て番組が終わった記憶があります。
 ということは、次以降がオンエアで使わなかった曲かな。
 もちろん、順番を入れ替えて、これより前の曲がカットされて後の曲が入っている可能性もありますが、こうなると映像を確認してみたいですね。


 13曲目 Fretless
 1991年の映画"UNTIL THE END OF THE WORLD"に提供された曲で、後に、この次年に出るアルバムAUTOMATIC FOR THE PEOPLEからのシングルCDThe Sidewinder Sleeps Toniteにも収められました。
 暗くて重たく引きずる漢字のこの曲はR.E.M.らしさであり、アメリカ人のバンドには珍しい湿り気なのでしょう。
 彼らのアルバムには収められていない曲だけに、ここに収められて注目度が上がりました。

 14曲目 Swan Swan H
 これもLIFES...から。
 歌の中では"swan, swan, hummingbird"と歌っているので、この"H"は"hummingbird"つまりハチドリのこと。
 飛ぶことができる鳥の中で最も重いハクチョウと最も軽いハチドリを対比させて、鳥=自由を切望する曲、と思う。
 生物多様性のテーマ曲にも使えないかな(笑)。

 15曲目 Rotary Eleven
 Rotary Tenという曲がFall On MeのB面に収められていますが、これはそれの改良版ということで11になったのでしょう。
 ジャズっぽい雰囲気のインストゥロメンタル曲で、意外といえば意外だけど、彼らの音楽性の深さも感じられます。
 そしてやはり映画に使われるような視覚に訴える曲。

 16曲目 Get Up
 GREENから。
 この曲は大好きで、ここで再会できたのはうれしい限りだし、アンプラグドで取り上げるほど彼らがこの曲を好きだったと分かったのもうれしいです。


 17曲目 World Leader Pretend
 最後もGREENから。
 当時のオンエアで使われなかった5曲のうち2曲が当時の最新作のひとつ前のアルバムからの曲というのは、やっぱりアルバムのプロモーション的な部分があったんだなと。
 まあ、仕方ないですね、売ってなんぼも世界だから。
 この曲はアンプラグドで演奏することにより、機械文明への風刺、「裸の王様」的な部分がしみ出ていて、寂しさが強調されています。



 Disc2:May 21, 2001

 1曲目 All The Way To Reno (You're Gonna Be A Star)
 当時の最新アルバムはREVEALですが、日付を見るとアルバムリリースの1週間後にこれは収録されています。
 だからそのアルバムからのこの曲は世に出たての頃。
 この曲は後にシングルカットしましたが、でもやはり、少し変化球で入ってきたのは同じでした。
 なお、この時はもうドラムスのビル・ベリーが脱退しており、3人のミュージシャンを加えての演奏となっています。

 2曲目 Electrolite
 そのビルがいた最後のアルバムの最後の曲。
 そういう思いもきっとあったのだと思いたいです。
 この曲も「彼岸」シリーズの延長かな、歌としてもとてもいい。

 3曲目 At My Most Beautiful
 最新作のひとつ前のUPから、彼らの最も美しい曲。
 ピアノの響きが美しさを引き出していますが、この曲は、どんな形でも心根の美しさ、優しさを感じられるに違いない。

 4曲目 Daysleeper
 UPの最初のシングル、ワルツのいわばディラン風フォークソング。
 この曲ですね、僕は、好きだけど大好きというわけでもなかったのが、ここでシンプルなアレンジで聴くと歌メロの良さを意識されて、今回、それまでと評価がいちばん変わった曲でした。

 5曲目 So. Central Rain (I'm Sorry)
 2作目のRECKONINGからの気持ちがあふれた曲。
 そうか、この"So."というのは"sorry"の略というか、素直にいえなくてこういう表現にしたんだな、きっと、今気づいた。
 オリジナルではやり過ごした細かい心使いにも触れている感じだけど、それはアンプラグドだからというよりは、彼らの年齢によるものかな。

 6曲目 Losing My Religion
 今回、どちらでも演奏しているのはこの曲だけですが、まあ最大のヒット曲だからそれは納得ですね。
 アレンジがほとんど変わらないのは、やはりそういう曲だからでしょう。

 7曲目 Country Feedback
 OUT...からはこれで10曲中7曲が演奏されたことになりますが、そのアルバムが、アコースティックな響きのロックを作り上げたという自負があってのことではないかと思いました。
 この曲の無常観、厭世観、心が弱い時に聴くとあまりにも重い。
 マイケルのヴォーカルも寂しさをなぞってくれるよう。

 8曲目 Cuyahoga
 LIFES...からはこれで3曲目。
 悔しくて寂しい時に青空を見上げたような、そんな曲を歌を中心に再構築して聴かせてくれています。

 9曲目 Imitation Of Life
 REVEALからの最初のシングル。
 スターの生活がイミテーションであることを、自らをさらすことで自嘲的に訴えた強烈なポップソング。
 通奏低音的なオルガンがオリジナルと少し違った雰囲気に。

 10曲目 Find The River
 僕がリアルタイムで聴いた全てのロックアルバムでいちばん好きなAUTOMATIC FOR THE PEOPLEからはこの曲だけ演奏。
 単に年代というかリリースのタイミング(それは1992年)だけの問題かもしれないけれど、残念といえば残念。
 ただ、そのアルバムはアンプラグド的な要素を彼らなりに昇華したアルバムだから、逆に敢えて演奏するものでもなかったのかな。

 11曲目 The One I Love
 DOCUMENTから、彼ら最初のTop10ヒットシングルとなった曲。
 91年にこれをやらなかったのは、前に進みたかったからでしょう。
 01年はそれから10年以上が経ち、彼らの中でも安定してきたのだと。
 オリジナルと違いピアノを中心にしているのがいい響き。

 12曲目 Disappear
 最新作REVEALからですが、前作UPの重暗さを引きずっている。
 これはオリジナルでもアコースティックギターが中心ですが、こちらはピアノが前に出てギターが引き気味なのが面白い。

 13曲目 Beat A Drum
 REVEALから続きますが、この曲は歌詞に"dragonfly"つまり「とんぼ」が出てくる、いかにもお盆を過ぎた8月といった風情。

 14曲目 I've Been High
 同じくREVEALから、この曲のオリジナルはヴォーカルの響きに手を加えていかにも浮いている感じがしますが、アンプラグドではオルガンの響きが浮いた感じを醸し出しています。

 15曲目 I'll Take The Rain
 ほんとうに泣ける曲って、誰にも何曲かあると思います。
 REVEALからのこの曲は、僕の本当に泣ける曲のひとつ。
 今回も、やっぱり、でした(笑)。
 ところで、マイケル・スタイプは英語の俳句を作る人なのですが、下記のこの曲の歌い出しはまさに俳句的な情景なのだと、自分が俳句をやるようになって気づきました。
 "Rain came down, rain came down, rain came down on me"
 それだけなのですが、曲を聴くともうそこで涙が出てしまいます。

 16曲目 Sad Professor
 最後の曲がひとつ前のアルバムからというのは91年と同じ。
 ということは、偶然ではなく、考えがあってのことなのでしょう。
 もうひとつ、REVEALでもそうですが、最後にしてはあまりにも意味が大きく重たいTr15で終わらせるのではなく、少し軽い曲を置くことで余韻を持たせたい、ということかもしれない。
 マイケルの声を延ばす歌い方の無邪気さに、「悲しい教授」の本性が見え隠れしていますが、でもこの曲はどこか愛嬌があり、それがかえって救われた気分になるのがいい。

 R.E.M.のアンプラグドはここに幕を閉じました。



 解散を思い出して泣くようなことはさすがにもうなくなりましたが、でも、Facebookでも記事が頻繁に上がっているのを見ると、彼らが解散したことは、まだ信じられない部分があります。
 そう、いつか再結成してくれることを。

 過去の発掘音源を出してくれることももちろんうれしいですが、当面は、次は何を出してくれるかを楽しみに生きてゆきます。


 今回のYou-Tube映像は、1991年のほうから、Love Is All AroundとLosing My Religionの2曲。
 前者はブラジルの人が挙げたのかな、ポルトガル語と思しき字幕が入っていますが、そこはご愛嬌ということで。