Kokomo ザ・ビーチ・ボーイズ | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

20140707Kokomo

 ◎Kokomo
 ▼ココモ
 ☆The Beach Boys
 ★ザ・ビーチ・ボーイズ
  from The Motion Picture Soundtrack "COCKTAIL"
 released in 1988
 2014/7/7

 最近いつも口ずさんでいるのがこの曲。
 夏だから、というのは、まあ半分当たり。

 スペースシャワーTVで「洋楽最強伝説」なる番組があり、懐かしいビデオクリップが流れるので録画して観て聴いているという話はしました。
 最新の回は「リゾートソング特集」。
 その中で、200%予想通り、この曲がかかりました。

 さらに、本家MTVでもいわゆる「クラシック」、80年代頃のビデオクリップを流す番組があることについ先日気づき、そちらも録画して観て聴くようになりました。
 こちらは明確なテーマは掲げていないのですが、ある回は80年代ブリティッシュ、ある時はアメリカンロックと、あるテーマに沿って曲が選ばれています。
 今回観たのはどうやら夏の曲の特集、そこでもやはりこの曲が取り上げられました。

 僕らくらいより若い日本の洋楽聴きにとって、Kokomoは夏の曲の定番となっているようですね。
 まあ、舞台がフロリダのキーウェスト、歌詞の中にキーラーゴ、バミューダ、バハマ、モンセラなど、これでもかというくらいにリゾート気分を盛り込んでいますからね。
 そしてもちろん曲がほんとうにリゾートの雰囲気。
 といって、僕はそのどこにも行ったことはないのですが(笑)。
 


 僕は二十歳ぐらいまでの頃、「若くてとんがったロック野郎がこんな曲を好きになってはいけない」という、信念というか、縛りのようなものがありました。
 この曲がその代表格。
 MTV番組でもラジオでもよく流れていて、No.1ヒットになったという話題もあって録画はしたのですが、でも、曲を耳にする度に、「ううやめてくれぇ」という自分と「いい曲じゃないか」という自分が心の中で戦う、いわば「ジキル&ハイド」状態に陥っていました。

 今にして思えばばかげたことだと自分でも思いますが、若さとは恐ろしいもので(笑)。

 しかし、25歳を過ぎた或る日、いつも観ていたMTVの「クラシック」で流れていたのを聴いて、「ハイド」がいなくなったことに気づきました。

 いい曲だなあ。

 人間、素直にあるべきだ(笑)。

 それから中古でサントラのCDを買い、いまではすっかり愛唱歌になっています。

 ただ、ちょっとした後日談がありまして。
 5年くらい前、この曲の頃は音楽を聴いていなくてこれを知らなかった同年代の友だちにこの曲が好きだと話すと、「二十歳の頃から(正確には21歳)こんなまったりとした曲が好きだったんだ」と驚かれたので、僕が若い頃に感じていたのはあながち間違いではなかったのかな、と思いました。



 この曲にはブライアン・ウィルソンが参加していません。
 もちろんこのビデオクリップには写っていない。
 だから最初は、ビーチ・ボーイズとしての価値半減、と思いましたが、でも後から知ると、ブライアンは60年代にもいないアルバムや曲があるということで、価値半減とまではいかない、ちょっと残念、くらいになりました。
 でも、僕が知っているブライアン・ウィルソンのイメージからいえば、この曲は軟弱すぎて、むしろいないほうが自然なような気もしないでもないですが。

 記事を書くのにWikipediaで調べたところ、録音のドラムスはジム・ケルトナー、そしてスライドギターがライ・クーダーで、これは知らなかった。
 ライ・クーダーは同じサントラでAll Shook Upを録音しているので、その関係かもしれない、レコード会社も同じWarner系だし。
 さらにアコーディオンはヴァン・ダイク・パークスが弾いています。

 マイク・ラヴが主に作ったこの曲、最初のデモにはボーイズのメンバーはいなかったのが、「グレードアップするように」という上層部からのお達しで、ボーイズの3人が加わった、ということです。

 クリップでは、そんなことを微塵も感じさせずに、マイク・ラヴ、カール・ウィルソン、アル・ジャルディーンとブルース・ジョンストンが元気に歌っています。
 パーカッションの若い男性、誰だろう(知らなくて申し訳ない)、ボーイズの息子くらいの年齢の人が張り切っているのが妙に印象に残ります。

 映像ではマイク・ラヴが間奏のサックスを吹いていますが、レコードでは本人ではないようです。

 しかしそれにしてもこの曲、サビの途中でカール・ウィルソンの声がすう~と上がってひとりで歌う部分、最高に気持ちいい。 
 彼の高音コーラスはボーイズのサウンドの決め手のひとつだと思うけれど、それが最高に生かされている。
 最初のデモでは多分マイク・ラヴが歌っていたのでしょうけど、これはやはり、彼のヴォーカル、歌い方や声質があってこそこの歌メロが生きてくるのだと実感しました。
 この部分はほんとうに、口ずさんでいても爽快感を覚えますね。 

 カールが楽しそうに歌う柔和な表情がまたいいですよね。
 特に1'58"のところの表情が最高にいい。

 カール・ウィルソンがバンドの支えだったのかな、と、今更ながらにして思いました。
 ブライアンとマイクはそもそもあまり仲がよくないようで、しかも2人とも勝手に進めてしまうタイプの人間だから(勝手の方向性が違うのですが)、もしカールがいなければ、今まで、もとい、この曲の頃まで持たなかったのではないか、とも思います。

 2012年の最新作THAT'S WHY GOD MADE THE RADIOは僕もかなり気に入ったのですが、そこにカール・ウィルソンがいないことの喪失感が、自分の中では思った以上に大きかった。
 そりゃサウンド的にはブライアン・ウィルソンなのでしょうけど、カール・ウィルソンは、キャラクターとしていい人だな、としみじみ思います。




 映画のサントラだから、当然のごとく、映画のシーンが多数挿入されています。
 主演のトム・クルーズは今でも若作りに見えるけど、やっぱり当時はほんとうに若々しい。
 ビキニ姿の女性がたくさん出てきて、目の保養にもなるかな(笑)。
 バンドの前で演奏を聴く女性が、サーフィンのような仕草をする「振付」があるのがちょっと可笑しい。

 ところが、この映画は観たことがありません。
 どうも、あまり興味がそそられない。
 やっかみ込だろといわれれば否定しませんが(笑)、僕は、青春ものラブストーリー映画は、どうも受け付けられなくて。
 映画の評判も当時はあまりよくなかったと記憶しています。

 しかし、このサントラは、超がつく名曲がもうひとつ、ボビー・マクファーリンのDon't Worry, Be Happyが入っていて、サントラ史に残る重要な1枚とはいえるでしょう。
 日本ではむしろボビー・マクファーリンのほうが今でももてはやされていますが。

 映画はそこそこだけど使われた歌が名曲として残る例は、ままありますね。
 最も有名なのが、エリック・クラプトンのTears In Heavenでしょう。
 彼がサントラを担当した映画『ラッシュ』、曲は大ヒットしてビデオクリップにシーンが挿入されてはいますが、当時、映画はそれほど話題にならなかった、少なくとも僕の周りで観たという人はいませんでした。
 
 もうひとつ古い例を挙げると、ナット・キング・コールのMonalisa。
 1950年の"Captain Carney, U.S.A."という映画に使われたものが、曲として大ヒットし、今に聴き歌い継がれる名曲となりました。

 その映画を『別働隊』という邦題でWOWOWで放送されたのを15年くらい前に観ましたが、登場人物がこの曲を口ずさむシーンで、ああこの曲はここで使われたのかと、驚きを持って知ったものです。
 余談ですが『別働隊』というのは「パルチザン」のことで、日本語で言われるよりパルチザンのほうがむしろ分かりやすいですね。



 Kokomo、まあなんであれ、僕には思い出深い1曲。
 うそ偽りなく、今は大好きな曲で、♪かぁ~もんぷりてぃまま などと口ずさんでいます。



 追伸

 7/8放送の「ベストヒットUSA」は「夏の歌」リクエスト特集でしたが、Kokomoはそこでも3位に選ばれました。
 やはり根強い人気があり、そして夏=リゾートというイメージは不動のもののようですね。