It's All Over Now 追悼ボビー・ウーマック | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

20140702BobbyWomack
 
◎It's All Over Now
 ▼イッツ・オール・オーヴァー・ナウ
 ☆The Rolling Stones / Bobby Womack
 ★ザ・ローリング・ストーンズ / ボビー・ウーマック
 
 ボビー・ウーマックが亡くなりました。
 
 先ずは、長いですが、ロッキングオンの音楽情報サイトRO69からの記事を転載させていただきます。
 
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 現代R&Bやソウルを代表するボビー・ウーマックが6月27日に他界した。
 享年70だった。
 ボビーの最新作である2012年の『ザ・ブレイベスト・マン・イン・ザ・ユニバース』をリリースしたXLレコーディングでもボビーの死を確認しているが、死因についてはまだわかっていないとしているとローリング・ストーン誌が伝えている(2014年6月29日時点)。

  音楽一家に生まれたボビーは10歳の頃から兄弟で結成したバンド、カーティス・ウーマック・アンド・ザ・ウーマック・ブラザーズとして活動を始めたが、1960年にはR&Bの立役者ともいえるサム・クックに発掘され、サムのSARレコードと契約。
 当初はゴスペル・レコーディングを制作していたが、その後ザ・ヴァレンティノズという別ユニット名を使って、信心とは離れた恋愛などを扱った内容の楽曲を発表するようになった。
 1964年には"イッツ・オール・オーヴァー・ナウ"がヒットとなったが、これをザ・ローリング・ストーンズがカヴァーし、イギリスでチャート1位になる大ヒットとなった。

  同じ1964年12年に恩人サム・クックが銃撃事件に巻き込まれて他界すると、翌年5月にボビーはサムの未亡人だったバーバラ・キャンベルと結婚し、大きなスキャンダルとなった。
 SARレーベルも閉鎖になり、その後、ボビーはザ・ヴァレンティノズからも脱退し、セッション・ミュージシャンとしての活動に専念することになる。

 この間、ボビーはアレサ・フランクリンの『レディ・ソウル』のレコーディングなどに参加し、ウィルソン・ピケットらからソングライターとしても気に入られることで音楽業界での定評を確かなものにしていった。
 また、この時期、ジャズ・ギタリストのガボール・ザボとのコラボレーションにも携わり、ガボールのためにボビーが書いた"ブリージン"はその10年近く後、ジョージ・ベンソンによってカヴァーされ、ジョージの代名詞ともいえるほどのフュージョン系大ヒット曲となった。
 そのほかにもボビーはスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの『暴動』やジャニス・ジョプリンの『パール』などにも参加した。

 ソロとしては1968年の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』でデビューを果たし、71年にはブレイクスルー作品となった『コミュニケーション』を発表。
 さらに翌年には『アンダースタンディング』やブラック・ムービーの傑作の一つともいわれる映画『110番街交差点』の主題歌"110番街交差点"などをリリースし、また、ザ・ヴァレンティノズのヒット曲"ルッキン・フォー・ア・ラヴ"のリメイクを収録した74年の『ルッキン・フォー・ア・ラヴ・アゲイン』のヒットで、時代を象徴するソウル・アーティストとして広く知られるようになった。

 その後、薬物依存症などの影響で活動のペースを落とし、また、さまざまな健康障害に悩まされていることも伝えられ、糖尿病、前立腺がん、心臓機能障害、大腸がん、肺炎などとの闘病がこれまで報じられてきていた。
 ただ、2012年にはがんを完治したこともボビーは明らかにしていた。

 2009年にボビーはロックンロール名誉の殿堂入りも果たしていたが、この際、スピーチでサム・クックとこの喜びを分かち合いたいと述べ、バラク・オバマが最初の黒人の大統領になったのを目撃するのと同じくらいに嬉しいと語っていた。
 また、「自分にとって重要なものを待ち続けることさえできれば、人生はおのずと変わっていく」とも心境を説明していた。

 なお、ボビーはその後も作品制作を続けていて『The Best Is Yet to Come』という新作をXLからリリースすべく準備していたという。
 アルバムにはスティーヴィー・ワンダー、ロッド・スチュワート、スヌープ・ドッグらが参加していると伝えられていた。

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 僕がボビー・ウーマックを本格的に聴き始めてまだ2年。
 「遺作」となってしまったTHE BRAVEST MAN IN THE UNIVERSEが新譜として出ると聴き、すぐに買って聴いたところ、とても気に入った。
 その時、なにかこう、胸騒ぎのようなものがしたことを思い出しました。
 それはボビー・ウーマックだから、というのではなく、CDを買って音楽を聴いていると、1年に何枚か、これはきっといいに違いないと聴く前から期待値が高まるCDがあるものです。
 これがまさにそうでした。
 なお、THE BRAVEST MAN IN THE UNIVERSEの記事はこちらをご覧ください。

 僕は、あるアーティストが気に入ると、基本的にはすべてのオリジナルアルバムを買って聴かないと気が済まない人間。
 ボビー・ウーマックもそうでしたが、その頃は折悪しく、過去のアルバムが廃盤状態で手に入らない物が多く、一度諦めました。

 しかし今年になり、日本のユニヴァーサルで10枚のソロアルバムが1200円(消費税5%時)で出たので一度に10枚買い、本格的に聴き始めました。

 その10枚より後のアルバムも6枚ほど買いました。
 一部に癖があったり時代に飲まれていたり(そのふりかもしれないけれど)というアルバムはあるけれど、みな気に入ったことは間違いなく、素晴らしいアルバムも多いです。



 しかし、それまでも聴いたことがなかったわけではなく、もはや名盤との呼び声高いTHE POETを5年前に買って一時期毎日聴いていました。
 それを買ったのは、ピーター・バラカンさんの『魂(ソウル)のゆくえ』で大のおすすめだったからでした。
 
 その後にベスト盤を買い、それも車でよく聴いていました。
 でも、よく聴いたのはそれくらい。

 しかし、最初の接触は実は20年前のことでした。
 RESURRECTIONが新譜として出た時に買いましたが、正直、よく聴いたとはとても言えない。
 そもそも買ったのはロッド・スチュワートが参加しているからというもので、実際に聴いても、まだ20代だった僕には響いてこなかった。
 いちばん印象に残ったのが、ジョン・フォガティのCenterfieldのカヴァー、面白い曲に目をつけて面白く聴かせる人だな、と思った程度でした。

 その時にそのアルバムが気に入っていれば、もっと早くから聴いていたのでしょうけど、まあ過去のことは言っても仕方がない。
 僕は常々、音楽には聴くのにふさわしいタイミングがある、と思っており、僕にとってのBWは今年がそのタイミングだったのでしょう。



 僕がボビー・ウーマックについて思ったことをまとめた記事も春先に上げました。
 その「ボビー・ウーマックという人」の記事はこちらです、ご興味があればご一読ください。
 
 それにしても彼のカヴァーのセンスといったら。
 自分の色にしてしまうのは、アレンジの才があることで自然と納得できるようになりましたが、選曲のセンスが面白いですね。
 
 今僕が聴いているのは、亡くなられた記事で枕詞のように出てくる「ラスト・ソウルマン」、まさにその1989年のアルバムTHE LAST SOULMANですが、そこではなんとリヴィング・イン・ア・ボックスのLiving In A Boxをカヴァーしていて驚きました。
 リヴィング・イン・ア・ボックスは流行っていた頃にラジオやテレビで耳にして曲は知っているという程度で、UKの人たちでしょ、くらいしか分からないのですが、それにしてもこれかい、と。

 彼がいかに音楽に対してフラットな心で接していて、気に入った曲への意欲と愛着が深いことがあrためてよく分かりました。



 しかし、本格的に聴き始めて僅か半年で、お別れの時が来てしまいました。
  
 春先にFacebookで、彼がコンサートの出演をキャンセルしたという短い記事が上がっていましたが、それがこのようなことに。
 逆にいえば、体調がすぐれなくてもぎりぎりまで音楽活動を続けていたということになるのでしょうけど、近いうちにまた来日公演があればぜひ行きたかっただけに、残念でなりません。



 私事ですが、ボビー・ウーマックが亡くなられた翌日、親戚が亡くなりました。
 その人は、よく話したり遊んでもらったりという記憶はないのですが、もちろん仲が悪いわけではなく、親族でもある僕は葬儀に出ました。
 
 葬儀に出ると、否が応でも、死や人生について考えてしまいますね。
 まったくの偶然ですが、でも、これで僕には、ボビー・ウーマックの死が身近なものに感じられるようになりました。

 また、丸谷才一さんを読み始めてから2年足らずで亡くなられましたが、僕が年を取ったこともあるでしょうけど、そういうことが続いてしまいました。



 今回のYou-Tube映像は、彼の代名詞的なIt's All Over Nowを2本用意しました。

 亡くなられた時にそのタイトル「みんな終わった」というのは気分を害されるかたがいらっしゃるかもしれないですが、そこは悪しからずご了承ください。

 1本目は、ローリング・ストーンズが自らのサイトで追悼として上げたもの。
 現在彼らは"14 ON FIRE"で欧州ツアー中、ベルギーで収録された最新の映像と演奏です。
 「友人のボビー・ウーマックが今日この世を去った」とミックが話し、演奏が始まります。
 1分強しかない短い映像ですが、今の彼らが分かるし、僕にとっては3月の来日公演を思い出させてくれるうれしい映像です。


 2本目は、映像はスティル写真ですが、ボビーがキース・リチャーズとロン・ウッドを従えた写真で、ストーンズのアルバムDIRTY WORKSの頃だから1985年のもののようです。
 説明によれば、ボビーはストーンズがヒットさせたヴァージョンが気に入らなくて、いつか何か言ってやろうと思い続けていたのが、20年が経って漸く本人に会う機会が訪れた、とのことです。
 演奏がその時のものかどうかは分かりかねるのですが、やっぱりこの曲、ギターの切れが鋭くカッコよくて心地よい、最高のロックンロールの1曲ですね。




 R.I.P. Bobby Womack