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☆Neil Young
★ニール・ヤング
released in 2014
CD-0463 2014/6/13
ニール・ヤングの新譜の記事です。
今回のアルバムは、彼が主に若い頃に聴き馴染んだ曲のカヴァー曲集と事前に情報で聴いていました。
超ベテラン大物のカヴァー集は最近流行りのようになっているし、ニール・ヤング自身も2012年にアメリカのフォークソングを自分なりにアレンジしたAMERICANAを出していたので、最初は、またか、と正直思いました。
でも、カヴァー曲集というのは、その人が好きであればあるほど、どんな曲を選んで歌うのかが楽しみなものであり、僕もだんだんと楽しみになって来ました。
いつもいいますが、僕は新譜は事前に内容を調べたりはしないので、リリース寸前の頃は、聴くのがほんとうに楽しみでした。
さて、とても期待していたこのアルバムですが、正直に話すと、最初の頃、これはどうなのだろうという「問題」が2つあり、困りました。
ひとつ。
1曲目、トラック1が、ニール・ヤングが母にあてた手紙の朗読なのです。
最初は、10秒なり15秒なりさっと読んでから曲を始める前振りかと思ったのですが、あれ、まだ読んでるぞ、1分経ったぞ、という具合で結局は2分17秒、まるまる1曲分が朗読なのです。
気持ちや考えとしては分かるのですが、面食らいました。
まあ、CDだからそこを飛ばせば曲から聴けるのでしょうけど、でも僕は「アルバム至上主義」で、アルバムとして聴く以上は、
どんな嫌いな曲があっても飛ばさないと逆に気が済まないので、いつもニールの朗読に付き合っています。
ニール・ヤングの声は好きだから、聴くのが嫌、というわけではなくなったけど、調子をつけるわけでもなく普通に読んでいるだけなので、
面白いかといえば正直、半分くらいかなあ・・・
まあ、「読み聞かせ」だと割り切ることにしました(笑)。
そんな気持ちはこちらとしても受け止めたいですし。
でもやっぱり、余計だと思う人は飛ばすでしょうね。
途中にも朗読が入りますが、そちらは短いです。
もうひとつ。
朗読に続いて始まる曲が、昔のAMラジオのような音質なのです。
書き忘れてましたが、朗読の声も同じようなくぐもった音なのですが、それに続いて1曲目(トラック2)はそういう音なのだと思いました。
ところが、2曲目もそう、3曲目も、と、ついにアルバムの最後までずっとそのAMラジオの音で通していて、驚きました。
『ジョンの魂』のMy Mummy's Deadのように1曲だけしかも最後、というのではなく、すべてがそのような音なのです。
これは、ジャケット写真のように電話ボックスで録音して母に聴かせる、というコンセプトなのかもしれないと思いました。
調べてみると、ナッシュヴィルの"Third Man's Store"にある、1947年製の古いレコード録音機材を使ってモノーラルでライヴ録音されていおり、その「第三の男の店」とはかのジャック・ホワイトが所有するものだそうです。
確かに、コンセプトがそうなだけに、昔風の温かみがある音と感じます。
でも、正直、僕は、普通の音で聴きたい、と最初は激しく思いました。
ただ、今はもう慣れたので、これはそういう意図なのだと理解し、受け入れながら聴いてはいます。
そしてここでジャック・ホワイトが出てくるわけですが、彼はニールと共同プロデュースを務め、2曲では演奏と歌にも参加しています。
ニールとジャック・ホワイトのつながりがいつからのものかを僕は知らないのですが、20年前のパール・ジャムもそうでしたが、ニールの若い人の力を積極的に取り入れようという姿勢には若さを感じますよね。
それにしてもニール・ヤングという人は、いろいろなことを考えて行動に移しますね。
もしかして、昔風の音にするアイディアは、その録音機材の存在を知り、使ってみたくてしょうがなかったのかもしれない。
ハイエンドオーディオへのアンチテーゼみたいなものもあるのかも。
それだとかえってノイズがよく聴こえてしまう、とか(笑)。
まあ、幸か不幸か、僕の家のオーディオはハイエンドではないのですが。
かくなる僕も、音質が最高で曲がつまらない音楽よりは、音質は悪くてもいい曲というほうにはるかに重きを置いていますからね。
聴き始めて4日ほどで、ああこれはこれでいいのだと納得しました。
まあそれでも、今回は不満のようなことを書いたことについて、ファンの方には謝らなければならない部分もあるかと思いました。
でも、僕だって今は気に入って聴いていますのでご安心ください。
手紙の朗読も、本を読んだり料理をしながらかけていると、あっという間に終わってしまいますからね。
1曲目 A Letter Home Intro
これが手紙の朗読ですね。
「あ~」が多いのはご愛嬌か(笑)。
最初のほうで「ジャックという友だちと」と話していますが、そうかそういうことか、ずいぶんと若い友だちだなあ。
ところで、お母さんはまだご健在なのかな。
そうだとすれば、なおのことこの手紙には心が通っていていいなと。
お母さんにすれば素敵な贈り物でしょう。
2曲目 Changes
CDのジャケット裏の曲名に作曲者が記されているのですが、これはOCHSとあり、ネットで調べるとPhil Ochs フィル・オークスというプロテストソング歌手で、ボブ・ディランとほぼ同時期の人でした。
曲も知らなかったのですが、優しくて温かい家庭的な響きの曲です。
オリジナルがそうなのかは分からないので、いつか聴いてみないと。
プロテストソングから始める辺り、彼らしさの片鱗を見た気がしました。
3曲目 Girl From The North Country
これはボブ・ディランの曲、知っていました。
1曲目がフィル・オークスと分かって、このつながりはなるほど、と。
ディランは歌うだろうと予想していたのですが、この曲を選んだのは、「北の国」、つまりカナダ人であることの意識を表したかったのでしょう。
4曲目 Needle Of Death
バート・ヤンシュの曲、一時期凝っていたのでこれも知っていました。
この曲名を見ると、嫌が上でもNeedle And The Damage Doneを思い出してしまいますが、その曲はこれに着想を得たのかな。
曲としては似ていないけれど、"death"につながる内容だし。
いろいろと考えさせられるのもニール・ヤングを聴く楽しさ。
なお、今回の映像は、You-Tubeで見つけたこの曲のレコーディング風景のものです。
スタジオが意外と広いんだなあ、と思ったり。
歌詞をホワイトボードに書いて録音しているのが、プロでもそうなのかと妙に納得もしました(笑)。
口笛を吹くシーンの顔が面白かったり、意外と見応えがある映像でした。
5曲目 Early Morning Rain
ゴードン・ライトフットの曲で、ベスト盤は持っているのですが、残念ながらこの曲は今の僕の頭にはありませんでした。
ゴードン・ライトフットはカナダ出身のシンガーソングライターですが、同郷の仲間として頑張ってきたという意識がある、と読みました。
そして、GLの叙情性がニールは好きなのかも。
ハーモニカも入って気持ちがいいですが、今日は早朝に土砂降り、札幌はもう8日間雨が続いています・・・
6曲目 Crazy
ウィリー・ネルソンの1961年の曲、これは知らなかった。
ニール節になっていて、ウィリー・ネルソンの曲とは気付かなかったし。
感情を抑えようとしているけれどどこかから漏れ出している、そんな曲。
口笛が入るのも、少ない楽器の中での工夫が見て取れます。
7曲目 A Letter Home Intro
再び手紙の朗読。
ご丁寧にも、前の曲が終わったところで、レコードの針が上がるノイズが入っていて、芸が細かい。
そうか、英語の本の読み聞かせのヒントにはなるかな。
朗読は30秒ほどで終わり、今回はトラック番号は変わらずに曲が始まります。
Reason To Believe
ティム・ハーディンの曲、というよりも僕の場合はロッド・スチュワートの名唱でおなじみの曲。
オリジナルもベスト盤を買って聴いています、念のため。
よく聴くとピアノが入っているのですが、電話ボックスでピアノは無理だろというツッコミはこの際なしで(笑)。
でも、ギター中心の曲に敢えてピアノを持ち出す辺り、趣向を凝らそうとする意欲が染みついているニールらしいですね。
ラグタイム風の軽妙な仕上がりですが、やっぱり、いい歌ですね。
♪ さんむわんらぃきゅぅ~ と思わず口ずさんでしまいます。
今回の僕のベストトラックはこれかな。
8曲目 On The Road Again
再びウィリー・ネルソン、1980年の新しめの曲、これは知らなかった。
て、あれっ、1980年だともうこんな古臭い音ではなかったはず・・・というツッコミもなしにしますか(笑)、意味がないですね。
思い出って上書きされることが時としてありませんか?
中学時代の友だちと聴いたと記憶していた曲が、調べてみると高校時代に世に出た曲だった、ということが僕も幾つかあります。
まあ、このニール・ヤングはそういう意図ではないでしょうけどね。
何より、まだまだご健在のウィリー・ネルソンへの敬意でしょう。
この中ではいちばん元気に歌っています。
そしてコーラスにジャック・ホワイトの声が。
9曲目 If You Could Read My Mind
再びゴードン・ライトフット、彼の曲が2曲あるのは興味深いですね。
この曲は、もちろんというか、知っています。
3年前にタワレコの半額セールワゴンにGLのCDがあり、試しに買って聴いてみたところとても気に入り、他2枚を買い足して集中的に聴いていた時期があり、この曲はその中にもありました。
しかし、この曲はまた別のことで知られています。
ホイットニー・ヒューストンがNo.1に送り込んだジョージ・ベンソンの曲Greatest Love Of AllのBメロが、この曲のBメロの盗作だとして問題に。
確かに似ていると思いますが、それ以外の部分は似てはいません。
そのことも多少絡めて、GLの中でも特に好きな歌なので、ニール・ヤングが取り上げてくれたのはうれしいです。
そうか、ゴードン・ライトフット、またCD出してきて聴こう。
10曲目 Since I Met You Baby
1950年代のR&Bシンガー、アイヴォリー・ジョー・ハンターの曲。
僕は知りませんでしたが、曲はアメリカではよく知られているそうです。
ブギーピアノに乗った小気味よい曲で、チェンジ・オヴ・ペースには最適。
このピアノの弾き方がニール・ヤングの味なのだと再認識。
11曲目 My Hometown
この中で僕がいちばんよく知っている曲。
ブルース・スプリングスティーンのBORN IN THE U.S.A.の最後の曲。
高校時代はそればかり毎日聴いていた頃がありましたから。
もっとも最後だから、2回に1回はたどり着く前に寝てしまっていたかも・・・
それはともかく、曲として新しいものはありましたが、自分より後に出てきた人の曲も取り上げるのがいいですね。
ニール・ヤングも自分自身がまず音楽が大好きであることが分かるし、後輩でも敬意を持って接する姿には人間としても尊敬できますね。
この曲はよほどアメリカ人の郷愁をくすぐるようで。
20年以上前、「FMファン」でアーティストが好きな10曲の特集をしていた時に、ティナ・ターナーがこの曲を選んでいたのが印象的でした。
そしてその時も、新しい曲でありティナの後輩の曲なのに取り上げるんだ、と驚いた記憶もあります。
バンドではないのでボスのオリジナルよりは独白調が強くなっています。
面白いのは、冒頭の部分の歌い方。
"I was eight years old and running with a dime in my hand"
という歌詞で、歌が始まって4小節目(1小節目は4拍目で入る)の部分。
ボスは"dime in my hand"の歌詞を当てて♪ だ~いむ いんまい はんどと歌うのですが、ニールはここで"in my hand"という歌詞を当てて♪ い~んまぁい はんどとゆったりと歌っていることです。
ちょっとした違いだけど、そのちょっとを変えるのが結構大変そうで、自分らしく歌いたいというニールの気持ちがよく伝わってきます。
そしてこの曲の場合、僕が高校時代に夢中になって聴いたことが重なり、他の曲とは違う懐かしい響きがあります。
そうか、僕も年を取ったんだな、と。
12曲目 I Wonder If I Care As Much
最後はエヴァリー・ブラザースの曲、これは大好き。
エヴァリーだからもちろんジャック・ホワイトとのデュエット。
でも、ジャックの声が高くて、最初は女性かと思いました。
やっぱりエヴァリーの曲は歌心に満ち溢れていますね。
ビートルズがお手本にしたのも、歌い方以外でもよく分かります。
そしてこれを最後に入れたのは、フィル・エヴァリーが今年1月に亡くなられたことへの思いもあるのかな、そう思いたいです。
繰り返し、結局のところは問題も解消され、ほぼ毎日聴いています。
僕の場合、ニール・ヤングは、好き、以上に相性がいいのでしょうね。
他の人の曲を歌っても、ニール・ヤングのものとして引かれてしまうから。
ニール・ヤングは、一昨年、カヴァーアルバムの後すぐに2枚組のオリジナルアルバムを出したのですが、今回ももしかして序章なのか、と期待をしてしまう。
この年になってもまだ、過去の復刻音源を含めて毎年何かを出し続けているのは、ひとりの人間の生き方としてはもはや驚異ともいえますね。
ぜひニール・ヤングを人間国宝に、という思いを新たにしました。