Some Guys Have All The Luck ロッド・スチュワート | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

20140403RodStewart

 ◎Some Guys Have All The Luck
 ▼サム・ガイズ
 ☆Rod Stewart
 ★ロッド・スチュワート
 from the album CAMOUFLAGE
 released in 1984
 2014/4/3

 今回も80年代のビデオクリップの話です。
 なんだかすっかりそちらが主になった感がありますが・・・
 80年代には特にこだわっているわけでもないのですが、ただ、80年代に多感な10代を過ごしたので、自然とそこにたどり着く、という精神構造になっているものだと自己分析しています。
 ともあれ、よろしければまたお付き合いください。

 お題はロッド・スチュワート。
 曲の記事はなるべくその時の話題と関係があるものを上げたいのですが、ロッドは先月に、4枚組ライヴ盤LIVE 1976-1999 TONIGHT'S THE NIGHTが出たということで。
 足かけ24年に渡るライヴ音源から選曲されたもので、この曲ももちろん入っていますが、この頃のライヴ音源はほとんど聴いたことがないので、へえ、これも歌っていたんだって新鮮でした。
 ここではしかし、オリジナルのビデオクリップで紹介します。
 ライヴ盤については後日また記事にします。

 音楽の話をしていると、ほぼすべての人がいいと言う曲がたまにありますよね。
 ロッドのこの曲はまさにそう。
 
 僕は、高校時代、朝の授業前にクラスメイトといつも音楽談義をしていたことはここでも何度も書きました。
 この曲もご多聞に漏れず「ベストヒットUSA」で初めて観て聴いたのですが、翌朝の音楽談義は盛り上がりました。
 ロッド・スチュワートって意外とかわいいんだ、とか、映像がカラフルで面白い、そして何より歌がいい、などなど。
 それまでロッドが話題に上ったことはなかったので、みんな気に入ってくれて僕は鼻高々でした。
 当時はビデオデッキを買ったばかりで、録画して何度も観て聴いていましたが、放課後に僕の家に寄った友だちにビデオクリップを見せてほしいと言われたこともありました。
 後日、高校は別だった中学時代からのヘヴィメタル好きの口が悪い友だちも、「ああ、いいんでないかい」と彼にしては珍しく素直に認めていたくらい。



 ビデオクリップ、今あらためて見ると、割と低予算ですかね(笑)。
 低予算ビデオクリップというと先ずはヴァン・ヘイレンのJumpが槍玉に挙げられますが、これだって負けてないかもしれない。
 いや、さすがにJumpには負けるわ。
 前のシングルInfatuationでは映画風の大がかりなものを作っていただけ、余計にそう感じます。
 下世話な話をすれば、ジェフ・ベックまで招いた最初のシングルが思ったほど売れず、予算が制約されたのか、と思ってしまうくらい・・・

 でも、世の中、何が奏功するか分からない。
 このクリップは、お金をかけず、ひたすらロッドの個人芸でイメージに訴えかけているのが大成功といえるでしょう。

 床と壁に白と黒の不規則なパターンが描かれただけのセット。
 ロッドは、アルバムジャケットをイメージさせる黒字に白の水玉模様のシャツ、白のスーツ、ノーネクタイ、そして赤い靴。
 この服装のセンスは、日本人には、いや、一般人には真似できない。
 まあでも、そのセンスも今では多少古臭いのかもしれないけれど(ファッションには疎いのでよく分からないのですが)。

 ロッドはシーンにより幾つか服を換えていますが、いちばんお金がかかっているのはロッドの服かもしれない(笑)。
 数えてみると、最初の私服っぽいのを含めて5通りの服装がありました。

 そしてロッドは歌に合わせてひたすら踊るだけ。
 しかし、この踊るだけというのが、人を引きつけてやまない。
 まずもってかっこいい、その上歌詞に合わせた身振り手振りには仕草が気持ちが伝わりやすい。
 見入ってしまうというのはこのことだと。



 冒頭、Rod Stewartと書かれたカチンコが打ち鳴らされた後、ロッドが「アアッ」と言って口を押える、このシーンが「かわいい」と評判でした。
 当時は、曲は聴いたことがなくてもロッド・スチュワートが大スターであるのはみんな知っているという頃でしたが、そんな大スターのひょうきんな仕草に親近感を覚えたのでしょうね。

 続いて曲が始まり、カラフルな落書きが挟み込まれつつ、最初はロッドの頭上からのカット。
 頭を見るだけでロッドと分かりますね(笑)。
 見上げるとサングラスをしているのは意外な展開。
 ロッドはここから基本的にはずっと踊りながら歌っています。

 歌が始まるとサングラスを外しているのですが(外すシーンは少し後に出てくる)、0'18"でロッドがウインクするのがかっこいい。
 正確には、両目をつむっていて左目だけ開けるのですが、いずれにせよ、凡人は真似しちゃいけない・・・
 左側から撮ると口元のほくろが目立つけれど、それもチャームポイントとして意識していたからこそ。

 0'21"、"Some guys have all the pain"と歌うところで寂しそうな表情をする。
 
 続いて"Some guys get all the breaks"の部分、小刻みに体を揺すっていて、"break"という感じが伝わってきます。
 ここ、よく見るとロッドがどうやら上半身裸なのかな、肩甲骨がはっきりと見えるけど、それより下は写っていない。
 なんだか思わせぶり。

 1'02"、よく見るとロッドは素足に赤い靴だ。
 数年前、日本でも、素足に靴を履く人が話題になりましたね。

 1'05"、黄色い絵の具が爆発したみたいな落書きの前でカンフーのようなポーズをとるロッドが漫画みたいで面白い。

 1'19"で画面がコラージュ(というのかな?)されてロッドが絵みたいになり、横から女性が現れて寄り添う。
 映像が違うことで、これは現実ではなく夢想の世界だと分かる。

 1'57"、暗い背景の中で歌う青いスーツのロッドが分離する。
 このクリップの監督、きっと「ウルトラマン」を見たんだろうなあ、バルタン星人が分身するシーンにそっくり(笑)。

 間奏でまたコラージュされた映像になり、サックス奏者が出てくる。
 この間奏のロッドのダンスが切れ味がよくてひたすらかっこいい。

 2'42"でロッドが腕を回した後で画面を指さす仕草がアイドル歌手みたい、と、当時はアイドル全盛期だっただけにそう思いました(ということはそういうのを見ていたんだな・・・)
 
 2'51"のところ、ロッドが手を打った後くるっと1回転するシーン、ごめんなさい、身の程知らずと分かりつつ、僕は当時真似してしまいました・・・
 やっぱりねえ、僕のような人間でも、男としてやっぱり憧れる部分はあったし、それだけこのロッドはかっこいいんですよね。

 3'05"、"I called you collect"という部分でロッドが右手の親指と小指を伸ばして電話の仕草をする、そうか向こうではこうやるんだって知りました。
 その後で床に膝をつくのがまた意味深。

 3'22"、またアイドルのような仕草で腕を振る。
 青春だなあ、でもロッドはもう40になろうとしていたんだけど・・・こういうところも、高校生に「かわいい」といわしめた部分かな。

 3'30"、"If you were here with me"と歌った後で、さも悲しそうな表情をするロッド。
 仮定法過去だから、現実のことじゃないんですよね、願望と言うか。
 その願いが通じないまま、ロッドはただ踊ることしかできないかのように、ダンスのシーンでビデオクリップは終わります。



 この曲は当時、ロバート・パーマーのヒット曲のカヴァーとして紹介されていました。 
 しかし実際はそれもカヴァーで、オリジナルはソウルのコーラスグループ、パスウェイダーズの1973年のヒット曲。
 僕は、ロバート・パーマーのは1990年代にベスト盤で聴き、オリジナルは数年前にソウルを真面目に聴くようになって漸く聴きました。

 余談ですが、プリテンダーズで有名なThin Line Between Love And Hateもパスウェイダーズがオリジナルです。
 
 面白いのは、3者とも歌詞が違うこと。
 特にロバート・パーマーは、ヴァースの部分はまるで違う歌。
 ロッドはオリジナルに少し手を加えたくらいですが、サビの歌詞に以下の部分を加えて、4者4様といった気持ちを描き出しているのがいい。
 "Some guys get all the breaks, some guys do nothing but compain"

 曲の構成も違っていて、パスウェイダーズはヴァースが先に出てコーラスと普通の流れだけど、ロバート・パーマーとロッドは印象的なコーラスを最初に持ってきています。
 確かに、パスウェイダーズのを最初に聴いた時に、あれっ、となりました。
 それはロッドのに慣れているからでしょうけど、でも、それだけではない気がする。
 やっぱり、曲名の言葉を最初に歌って印象付けることがポップソングとしては大切なのでしょう。

 さらには、「ふううふううううう~」というオリジナルにないきわめて印象的なコーラスを入れていて、ポップソングとしての魅力がぐんと増しています。

 そしてロッドは、歌の最後、コーラスの部分でオリジナルにはない歌詞を付け加えています。
 "If you were here with me, I'd feel so happy I could cry
  You are so dear to me, I just can't let you say Goodbye"
 どうやら、2人はあまりに近づきすぎ、かえってやってゆけなくなったようですね。
 それでも彼女のことを思いやって、僕のほうからサヨナラと言う覚悟をした。
 言葉を正直に捉えると、別れたくない、でも曲の響きは、別れざるを得ない、と感じます。
 
 ロッドは人の曲を自分のものにするのが世界一上手い歌手ですが、この曲はもっと踏み込んで自分の世界を作り上げている。
 カヴァーを越えた名曲といえるのではないかな。

 ロッドは「モテる男」というイメージを敢えて覆したのも、この曲がヒットした要因かもしれないですね。
 他の男の幸せをねたんでいる、ひがんでいるというか。
 「仕事帰りのバスの中、僕はひとりで夢を見る」
 「隣の奴には女性が寄り添っているのに、僕の横は空いている」
 なんてことをロッドが言うなんて予想外だったのでは。
 ロッドも大人になったということなのかな(歌詞は青春だけど)、でも引き出しが多い人であることは分かりました。

 今回の写真は、当時買った輸入盤のドーナツ盤。
 ビデオクリップとシングル盤に使われているのは、間奏のサックスソロが短く編集されたヴァージョンですが、確かこれはCD化されていないはず。
 まあ、カットしたものだから要らないといえば要らない、むしろ余計なものかもしれないのですが、でもシングルやビデオで親しんだので、やっぱりCDでも聴きたいと思うことが今でもあります。
 まあでも、そう思ったらYou-Tube映像を見ればいいのか(笑)。

 この曲は当時、歌詞をほぼすべて聴き取ることができました。 
 僕はヒアリングはまあ普通で、人によっては聴き取りにくいのですが(ジョージ・マイケルの発音が苦手)、だからロッドは分かりやすかったのだと。
 僕がロッドを好きなのは、英語が聴き取りやすい、つまり歌っていることが分かりやすいというのは大きいのではないかと思います。

 これも僕の好きな80年代ヒット曲の50位には間違いなく入りますね、30位かな。
 やはり今回も、記事を打ちながらずっとYou-Tube映像を繰り返し流して聴いていました。


 さて、ロッドのライヴ盤ですが、特に若い頃のはロッドが本物のロックンローラーであることがあらためてよく分かり、思っていた以上によかったです。
 これから暫く聴きたいのですが、4枚をずっとは無理だから、いつ頃から聴くかな。
 やっぱり、Some Guys Have All The Luckが入った年代のものからにしますか。