THE JOHN LENNON COLLECTION ジョン・レノン | 自然と音楽の森

自然と音楽の森

洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森-Dec08JohnLennonInstant


◎THE JOHN LENNON COLLECTION

▼ジョン・レノン・コレクション

☆John Lennon

★ジョン・レノン

released in 1982

CD-0450 2013/12/8


 12月8日。

 ジョン・レノンの日です。

 僕がロックを、洋楽を好きになったのはジョンのおかげ。

 毎年この日は、ジョンの記事を上げています。


 このベスト盤は、ジョンの死後に編集されリリースされたもので、当時のEMIの音源とGEFFENの音源がレーベルを超えて一緒に入っているのが話題を呼びました。

 もっとも、GEFFENからの当時は唯一のアルバムであるジョンの遺作DOUBLE FANTASYからは、ジョンの曲の7曲中6曲が収録されているのですが。


 1989年にCD化された際に、Move Over Mrs. LとCold Turkeyが追加収録されました。

 前者はジョニー・ウィンターに提供した曲を自ら歌ったものですが、実はボツになったテイクであり、ジョニーに「やった」とのこと。

 後者はLPに収録されていなかったのが不思議ですが、でも、ジョンを「美化」したかったのかな、死の直後は。

 僕は大好きなんですけどね、ジョン流のヘヴィメタルとして。


 今回はこのベスト盤から、Instant Karma!を取り上げます。

 他の曲については触れません。

 まあ、言ってしまえばこの曲を取り上げるためにこのベスト盤を選んだわけですが、来年以降も、当初シングルのみリリースだった曲はベスト盤を取り上げると思われます。



 先ずはInstant Karma!のリリースのいきさつについて、「レコードコレクターズ」増刊「ザ・ビートルズ・ソロ・ワークス」から引用します。

 なお、引用者は一部手を加えています。


■1970年1月27日

 Cold Turkeyに次ぐプラスティック・オノ・バンドの3枚目のシングルとして、ジョンが69年11月にリミックスを行ったYou Know My Nameか、Make Love Not Warのどちらかが発売されるという噂があったが、それらに代わって登場したのがInstant Karma!である。

 なお、後に、You Know My Nameはザ・ビートルズのLet It BeのシングルB面として、Make Love Not Warはジョンのソロ作品としてMind Gamesのタイトルで発売された。

 ジョンはこの曲を70年1月27日の朝に作り、その後すぐにアビィ・ロード・スタジオを予約。

 そしてその日の夜にジョージ・ハリスン(ギター、ピアノ)、クラウス・ヴーアマン(ベース、ピアノ)、アラン・ホワイト(ドラムス、ピアノ)、ビリー・プレストン(オルガン)、マル・エヴァンス(手拍子、チャイム)らとレコーディングを行った。

 さらに、共同プロデューサーのフィル・スペクターとともにミキシングも手がけて、わずか1日で完成させた。

 なお、コーラスには、スタジオ近くのナイトクラブで酒を飲んでいた人々(ビリー・プレストンが呼び寄せた)とアラン・クラインが加わっている。

 

 酒を飲んでいた人々を呼び寄せたというのがなんだか面白い。

 アラン・クラインはあのYou Never Give Me Your Moneyの人、悪徳マネージャーですね。


 それにしても、ほんとうに「インスタント」に出来た曲ですが、それは曲が持つ力がそうさせたに違いない。

 そんな曲が朝に浮かんでしまった、もうそこから始まっているのでしょう。

 ドラムスがリンゴじゃないのがちょっと寂しいけれど、でもアラン・ホワイトも大好きだからいいか。


 なお、2月11日にはBBCの人気テレビ番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」に録音メンバーとヨーコ・オノを従えて出演し、歌と演奏を披露、ヨーコはそばでメッセージを書いた紙を掲げるパフォーマンスを行ったという逸話も紹介されています。

 ちなみにこの時は「指パク」、と僕が勝手に呼んでいるのですが、ジョンの歌は生だけど演奏は事前に録音されたもの(レコードか?)を使ったそうです。

 

 当時のジョンはメッセージを発することに執心したアジテイターでもあり、それが受け入れられる時代でもあったことが、この曲を書かせたもう一つの力だったのでしょう。



 続いておなじみ『ジョン・レノン・プレイボーイ・インタビュー』からの引用です。


 JL:ふと思いついた曲。

 誰もがKARMA(因縁)を追いかけていた。

 特に60年代はね。

 だけどカルマというのは、人の過去や未来に影響を与えると同時に、インスタントなものだと、僕にはひらめいたんだ。

 人が今やっていることへの反応が絶対ある。

 そのことをみんなはよく理解しておくべきなんだ。

 同じように僕はアートのひとつの形式としてコマーシャルや宣伝にすごく興味がある。

 とても面白いよ。

 だからインスタント・カルマのアイディアというのは、インスタント・コーヒーのアイディアみたいなもので、何かを新しい形態で示すことなんだよ。

 その辺が僕はとにかくちょいと好きだったんだ。

 

 「因縁」はスポーツでよく使いますが、ううん、正直、ジョンのこの話、僕には今一つよく分からない部分があります。 

  

 そこで、『新明解国語辞典 第7版』で「因縁」を引いてみました、引用します。

 

 いんねん【因縁】(「いんえん」の変化)

 〔「因」は直接の原因、「縁」は間接の原因の意。一切の事象は、この因・縁が相月(アイガツ)して成る、というのが仏教の基本的な考え方〕

 ①宿命による、動かせない環境や関係。「前世からの-と〔運命と思って〕あきらめる/何かの-だ/浅からぬ-〔ゆかり〕/お前なんかに-をつけられる〔=ゆすったりする目的で、言いがかりを言われる〕覚えは無い」

 ②そうなった(深い)わけ。「いわれ-、故事来歴」


 つまり、人は「因縁」がなくても何かの力が作用しあい、影響しあっている、それは昔からの知り合いでも今朝初めて会った人でも、あるいはまったく知らない人でもさして変わりはない、だからうまくやってゆこう。

 というのがジョンのメッセージかな。

 「一目ぼれ」もある意味同じことかもしれない(いや違うか)。


 誰もがKARMAを追いかけていたというのは、混迷する時代に、人々が少しでも落ち着かせるためにその原因を探り出そうとしていた、ということかもしれない。

 何だかわからない敵と戦うのは恐い、それであるならなぜそうなったかをはっきりとさせたほうが戦いやすい。


 この曲は大好きでずっと歌ってきたけれど、今まで僕は、あまり深く考えず、ただ「月や星や太陽のように人々が輝けるよう応援する曲」とだけ感じていた、そんな気がしてきました、うん、きっとそうに違いない。



 僕がこの曲を初めて聴いたのは、1981年、中学2年の多分11月のこと。

 

 1981年10月から、北海道ではHBCラジオでビートルズの歴史を追うラジオ番組が放送されました。

 今でいうナヴィゲイター、当時そんな言葉はまだ日本語にはなかった、司会は星加ルミ子さん。

 僕は当時はビートルズの小冊子で彼女の名前を知ったばかりで、ああこの人が伝説のあの人なんだと思いながら聴いていました。

 放送が土曜日20時からで1時間、記憶にある限り毎週聴き続け、多分12月までの放送、でも11月だったかもしれない。

 そういえば僕はその時からドリフを見なくなったっけ。


 僕は中2の8月からビートルズを聴き始め、10月であればまだLP2、3枚しか買っていなかった頃で、ラジオで録音した曲を含めても50曲くらいしか知らなくて、その番組でビートルズの知らない曲を聴くのも楽しみでした。

 ただ、レコードを買った際に小冊子をもらい、本も1冊買って読んでいたので、213曲すべてについて、聴いたことがなくても一応の知識はありました。

 

 そんなある日、強烈なブギーに乗ったこの曲が流れてきました。


 すごい。

 かっこいい。

 こんなに力がみなぎった曲がこの世の中にあったのか。

 衝撃を受けました。

 おそらく、僕が初めて聴いて最も大きな衝撃を受けた曲だと思います。


 しかし、ジョンが歌っていることは分かりましたが、曲名が分からない。

 番組はカセットテープに録音していたので、番組が終わって、何度も何度も聴き返したところ、歌い出しのところでジョンが「ンスタントカマ」と歌っているのが聴こえました。

 そうか、ビートルズではなくジョンの曲か!


 爾来、今までずっと大好きで、ジョンの好きな曲を5曲選べといわれれば必ず入れますね。

 

 ジョン・レノンは基本ブルーズですよね。

 ブルーズというか、ブルーズから流れてきたブルージーさを自然と表すことができる音楽。

 特に「ホワイトアルバム」からその傾向が強くなり、頂点に達したのが「ジョンの魂」。

 年代的にこの曲もそこにはまります。


 しかもこの曲は速い。

 たたみかけてくるスリルがたまらない。


 ギターで弾いてみると、コード進行が凝っていてかっこよかった。
 A→F#m(×3)→F→G→A、これだけでブルージーな響き。


 もちろん歌メロもいい。

 AメロとBメロは早口だけど、そのパワーをアンセム的に盛り上がるCメロ=コーラスで爆発させている。


 コーラスの部分の歌詞はこうです。

 "Well we all shine on, like the moon and the stars and the sun"

 「僕らは輝き続ける、月や星々や太陽のように」

 シェイクスピアの大仰なセリフのようであるのはいかにも英国人というところでしょうけど、ここで上手いのは、"moon"と"stars"と"sun"の並べ方。

 普通、"sun and moon"というよう"sun"が先にきそうなものを、ここはこの旋律に合う語呂と韻を鑑みて"sun"を最後に持ってきているのだと思う。

 試しに他の順番でこの旋律に乗せて歌ってみると(全部で6通り)、やっぱりこの順番がいちばんよく聴こえます。

 まあ、"on"と"sun"は厳密には母音の音が違うので韻を踏んでいるとは言えない部分があるけれど、でも"on"は"son"になると"sun"と同じ音になるので、強引とまではいかない、納得させられるものではあります。

 

 コーラスは最後のところで、まるで疲れたように声がおとなしくなるのがリアルでいいし、ジョンかっこいいと思わずにはいられない部分。


 ひとつ面白いのは、Aメロのヴァースの3番目のくだりでエルヴィス・プレスリーを真似たような歌い方をするところ。

 しかし当時のエルヴィスはもう「太ったエルヴィス」だった。

 だからジョンは、茶化しているというよりは、かつての英雄だったエルヴィスに本物のロックンロールの魂を取り戻してほしかったのかもしれない。

 僕が歌う時ももちろんエルヴィスの真似をしますね。


 ジョンのブルージーなブギー・ロックンロールの最高傑作にして名曲だと信じて疑いません。


 ただ、ですね。

 この曲、今はあまり人気がないかな、そんな気がする。

 Power To The Peopleのようにメッセージも歌もシンプルではないし(こっちは近年人気が高まっている印象がありますが)。

 

 ところで僕は、中高生時代、ビートルズとメンバーの国内盤のシングルレコードを集めていました。

 当時はまだ中古で1枚300円くらいで売られていてたくさんありましたが、ビートルズの最初に出たジャケットのものはだいたい揃えました(アップルになって出直したものもあるけれどジャケットは古いまま)。

 ポール・マッカートニーのシングルも、1980年まででないのは幾つあるかな、くらいに。

 

 でも、ジョンについては、今レコードの棚を見ると、ImagineとMind Gamesしかありませんでした。

 あれ、もっと買ったはずだけどな、「冷たい七面鳥」という文字を見た記憶もあるし・・・

 というわけで、「インスタント・カーマ!」もありません。

 記事にしたので、この際だから探して買いたい、ヤフオクであるかな。

 


 ところで、このBLOGはアルバムを聴く、飛ばさずに通して聴くことをテーマとして続けています。

 

 しかし最近、今回のように1曲だけについて話したい、ビデオクリップの話はどうだろう、などと考えるようになりました。

 1曲の場合はこのようにそれが入った編集盤を取り上げるということは、違和感はあっても、今までしてきましたが、そろそろ、また違う方法を考えてみようと思い始めています。

 まあ実際、コンサートやテレビの話題などもあるので、それほど強くこだわることもないのかもしれないですが。


 まだどうするか分からないし、普通にアルバムの記事はもちろん上げ続けてゆくので、ひとまずは今後ともよろしくお願いします。