MARY CHRISTMAS メアリー・J・ブライジ | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-Nov29MaryJBligeChristmas

 

◎MARY CHRISTMAS

 

▼メアリー・クリスマス

☆Mary J. Blige

★メアリー・J・ブライジ

released in 2013

CD-0449 2013/11/29

 

 メアリー・J・ブライジのクリスマスアルバムが出ました。

 

 これを取り上げて「復活」します。

 

 今月は頭の中がポール・マッカートニー一色になってしまい、自分でも想像していなかったのですが、コンサートも終わって1週間が経ったし、そろそろポール一色から抜け出す必要があるかと。

 

 前も言いました、実際は他の音楽も普通に聴いていたのですが、気持ちの入り方が浅くて記事に結びつかなかったというのが実情です。

 

 

 

 ここ数年は、秋になると、今年は誰のクリスマスアルバムが出るかを楽しみにしています。

 

 昨年はロッド・スチュワート(記事こちら) が出て、そこからたどり着いたシーロー・グリーン(記事こちら) もよかった。

 

 でも今年は、僕がよく聴く人ではこのメアリー・Jしか出ていないようです。

 

 もちろん僕が知らないだけの可能性もありますが、ボブ・ディラン等大物のクリスマスアルバムが次々と出ていたので、今年はちょっと寂しいですね。

 アメリカのクリスマスアルバムの波も一回りして落ち着いてきたのかもしれない。

 

 メアリー・Jのクリスマスアルバムは「ヒップホップ・クイーン」と呼ばれていたことはもはや半過去のものといった趣きで、正統派ヴォーカリストとして聴かせてくれます。

 

 しかしそれは、僕には多少意外でした。

 言ってしまえば、らしくない、というか。

 ビリー・アイドルはビリー・アイドルらしく茶目っ気たっぷり、ボブ・ディランはディランらしく歌うことで予想されたミスマッチ感覚が実際には歌手としての実力を示した、キャロル・キングはあの声がクリスマスソングによく似合う、という具合に、クリスマスアルバムはその人らしさが出るものだと思っていた節があったので。

 

 とはいえ、ヴォーカリストとしても実力者であることは、逆にこのアルバムで示されたと言えるでしょう。

 

 もしかして、メアリー・Jはそろそろ転換期を迎えているのかな。

 そういえばこのアルバムはレーベルがジャズ系のVerveになっているけれど、単発なのか、それとも移籍したのか、後者だとすればその考えもあながち方向違いではないかもしれません。

 

 1曲目 Little Drummer Boy

 

 ♪らっぱらんぱん ですが、小さな子どもがマーチングドラムをたたくような躍動感はなく、讃美歌風に始まり、夜明けの空を眺めるような雰囲気でスタート。

 途中にマーチングドラムは入るのですが、あくまでも落ち着いたアレンジ。

 プロデュースとアレンジはデヴィッド・フォスターで昨年のロッドと同じですが、イントロのキーボードの音の広がり方と打楽器の音色がいかにもそれらしいです。

 僕が持っているクリスマスアルバムでこの曲が収録されたCDは17枚目、今後も「わが家で何枚目」として記してゆきます。

 この曲はやはりビング・クロスビーとデヴィッド・ボウイが印象的ですね。

 

 2曲目 Have Youreself A Merry Little Christmas

 

 この曲はR&B的味わいを出していて、その点では彼女らしいともいえます。

 Bメロでしっとりと歌い上げるのがいい。

 わが家で25枚目、定番ですね。

 この曲でいいのはジェイムス・テイラー、それを聴いて音楽人生が変わった人を僕は知っているから(笑)。

 

 3曲目 My Favorite Things

 

 クリスマスにしてはほの暗い雰囲気。

 元々は映画『サウンド・オブ・ミュージック』の挿入歌であり、ジョン・コルトレーンの演奏でもよく知られているでしょうか。

 どことなくフランス映画に似合いそうな、少し湿った響き。

 クリスマスソングとしてはわが家で3枚目、キャロル・キングも取り上げていましたが、この曲はメアリーのこれがいい。

 

 4曲目 This Christmas

 

 ダニー・ハサウェイ作曲、ロック時代以降の新しいクリスマスソング。

 わが家では9枚目、ただしオリジナルのダニーはクリスマスアルバムがないので、曲としては10個目ということになります。

 R&B系では定番となっていますが、やはりキャロル・キングが取り上げていて、"Shake your hands for Donny"と語っているのが印象的でした。

 なお、2曲目から4曲目まではキャロル・キングとダブるのは、まあ偶然でしょうね。

 メアリー・Jは、彼女の持ち味なのでしょうね、少しねっとりした感じ、でもとってもいい。

 間奏のピアノがジャズっぽい洒落た雰囲気。

 

 5曲目 The Christmas Song

 

 別名"Chestnuts roasting"ソング、これはわが家で29枚目、こちらも定番中の定番。

 オルゴールのような音色のキーボードで始まる、やはり映画的な響き。

 間奏はジャズ風のギター、そうかやっぱりVerveだからかな。

 ただ、この曲は僕はシェリル・クロウの家庭的な雰囲気が大好きで、メアリー・Jのこれは多少おめかししすぎの感がしないでもないかな。

 

 6曲目 Rudolph, The Red-Nosed Reindeer

 

 そしてこれは大きくスウィングする、ジャズ風ではなくジャズ。

 曲が始まる前に彼女が"Come on bass"と呼びかけてウッドベースが走り出し、それに乗って最初のヴァースを歌い、次に入る前に"Come on drums"とさらに呼びかける。

 やがてビッグバンド風になるこれ、生演奏のリアルさがあっていい。

 そして、さらっとしかし力を込めて歌ってしまう彼女がかっこいい。

 やっぱりね、ジャズを聴かされると、おおこれはと思ってしまいますね。

 わが家では10枚目、ただしクリスマスアルバムがない(ポール・マッカートニー&)ウィングスのRudolph The Red-Nosed Reggaeは含まず、て、やっぱりポールから抜け出せていない・・・

 

 7曲目When You Wish Upon A Star with Barbra Streisand featuring Chris Botti

 

 あまりにも有名な「星に願いを」、しかしクリスマスソングとして取り上げられたのはわが家では2枚目、その稀なもうひとつは昨年のロッド・スチュワート。

 つまり、クリスマスソングとしては最近歌われるようになってきたのかな。

 バーブラ・ストライザンドを迎えてメアリーも引き立て役、それにしてもバーブラの声は良くも悪くも大変な癖があると再認識。

 しかもそれをクリス・ボッティのトランペットがサポート、なんとも豪華。

 

 8曲目 Mary Did You Know

 

 タイトルのごとく、まるで自分に問いかけるかのように歌うメアリー・J。

 クリスマスって、クリスチャンではない日本人にとっては楽しいものというイメージしかないけれど、こうした重たくて暗いクリスマスソングがあるというのは、本来の意味を考えさせられます。

 これはわが家では3枚目、でもやはりアメリカでも明るく過ごしたいという思いは強いのかな。

 

 9曲目 Do You See What I See duet with Jesse J.

 

 クリスマスアルバムはゲストを招くというのも定例化していますね。

 ただ、すいません、このジェシー・Jという女性ヴォーカリストは知りませんでした、英国のシンガソングライターとのこと。

 女性2人で歌うこれは、コーラスというか、まったく違う旋律を重ねて歌い進めるのが迫力があります。

 そして後半で、オリジナルにない重たいコードを入れて展開するのが、デヴィッド・フォスターらしい。

 わが家では7枚目、ただ、これはキャロル・キングの無邪気さ、ボブ・ディランの朴訥に慣れていたので、少々驚いたアレンジではあります。

 

 10曲目 Petit Papa Noel

 

 この曲は僕は今回初めて聴きました。

 フランスの曲でしょうね、歌詞もフランス語で歌っているし、ブックレットを見ると作曲者名もフランス人。

 そしてフランス、というかパリにはまるでつきものであるかのようにアコーディオンが入っている。

 打楽器が入っていない、ギターとヴァイオリンとアコーディオン、そしてストリングスの落ち着いたアレンジ。 

 でも、やっぱり、旋律の進み方はいかにもクリスマスという感じがするのが面白い。

 

 11曲目 The First Noel featuring The Clark Sisters

 

 ノエルが続きます。

 ゲストのクラーク・シスターズも僕は知りませんでした。

 アカペラで歌い出して一巡りしてからは今のR&B風に崩れた感じで進んでゆき、後半はゴスペル風に盛り上がる。

 そういう意味では彼女らしいのか。

 わが家では8枚目だけど、ボブ・ディランとホール&オーツが好きだなあ、これは。

 

 12曲目Da Paz (Silient Night) duet with Marc Anthony

 

 最後は「きよしこの夜」、わが家では38枚目、さすがは入っているもののほうが多いですね。

 マーク・アンソニーも名前しか知らなくて、調べると、プエルトリコ系アメリカ人のラテン/サルサ系の歌手。

 だからタイトルもスペイン語、彼が歌う2番は歌詞もスペイン語になっています。

 ということはメアリー・Jはここではトリリンガル、3か国語で歌っているのですね。

 スパニッシュギターを中心とした、少し明るく開放的な雰囲気になっていて、最後の"sleep in heavenly peace"という言葉では、他の誰の歌よりも天国が優しく受け入れてくれるように感じられる、かな。

 最後の部分の前でまたオリジナルにはないコードを入れていますが、デヴィッド・フォスターはそれが好きなんですねきっと。

 

 

 

 なお、メアリー・Jは、昨年のロッドのクリスマスアルバムにおいてWe Three Kingsに客演していたのですが、今回ここにはそれは収録されていません。

 シーロー・グリーンはロッドに参加した曲が自身にも収録されていたのでちょっと期待したのですが、残念、でも1年経っているし、仕方ないか。

 

 

 ところで、タイトルの"Merry Christmas"の打ち間違いではなく、彼女の名前にちなんでつけられているもの。

 

 

 駄洒落ですね、要は(笑)。

 しかし厳密には"merry"と"Mary"は発音がまったく同じではなく、ついでに「結婚する」の"marry"もそれらとも違いますが、でも、英語ネイティヴの人も音としては近いと認識していることは分かりました。

 

 

 明後日から12月。

 

 そろそろまたクリスマスアルバムを聴き始めるかな。

 愛聴盤は何枚もあるのですが、一方で、毎年気に入るものが少しずつ違ってくるのも面白いところです。

 

 そうだ、パールモンドールのクリスマスケーキを予約しなきゃ。