SAMMY HAGAR & FRIENDS サミー・ヘイガー | 自然と音楽の森

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◎SAMMY HAGAR & FRIENDS

▼サミー・ヘイガー&フレンズ

☆Sammy Hagar & Friends

★サミー・ヘイガー

released in 2013

CD-0443 2013/10/4



 サミー・ヘイガーの新譜です。


 ヴァン・ヘイレンを辞めてから、日本での影がすっかり薄く(!?)なってしまったサミー。 

 もちろんアルバムを出し続けていて、僕も買って聴き続けています。

 同じく元ヴァン・ヘイレンのマイケル・アンソニー、と組んだサイドプロジェクト的なバンド、チキンフットはアメリカではかなり売れました。


 今回は、サミー・ヘイガー&フレンズと題し、多彩なゲストを呼んで作り上げたアルバム。

 これがいい!

 それまでのが良くないというのではないけれど、僕個人としてはヴァン・ヘイレン脱退後でいちばん気に入ったかな、チキンフットを含めても。


 ゲストが多彩、音楽もまた多彩。


 先ず強烈に思ったのは、サミー・ヘイガーもやっぱりブルーズの子だったんだな、ということ。

 サミーはヴァン・ヘイレンに入る前からMTV番組で何曲か知っていたくらいでしたが、その中からでも元々ブルージーなロックをやる人であるとは思っていました。


 このアルバムを聴くと、ほんとはもっとブルーズっぽいことをやりたかったのかもしれない、と。

 この際だからサミーにもブルーズをやってもらいたい。

 今回は残念ながらいないけれど、ジョー・ボナマッサと共演なんてことになれば、素晴らしくすごいだろうなあ。


 ブルーズ以前に、やっぱりサミーはアメリカの音楽の人なんだなあ、とも。

 つまりは、ルーツ色が今までにないほど濃く出ているのがこのアルバム。


 プロジェクト的なアルバムだから音楽も趣味の部分が強く出るのだろうけど、それが意外と意外、当たり前といえば当たり前。

 「永遠のロック小僧」であるサミー・ヘイガーという人は、どちらでもあり得るからやっぱり面白い人ですね。

 


 1曲目Winding Down 

 いきなりエレクトリックギターのスライド奏法が効いたカントリーブルーズ調の曲。

 僕はもうここで心をぐっと掴まれた口、これはいいと。

 それもそのはず、この曲のゲストはなんとあのタジ・マハール。

 ギターのみならず歌も歌っていて、サミーのブルーズへの思いとタジ・マハールの若手への寛容さ、落としどころがちょうどいいブルーズに仕上がっています。


 2曲目Not Going Down 

 ゆったりとしたテンポで堂々と構える曲で、ミシシッピー川の船に揺られているような雰囲気(行ったことないけれど・・・)

 歌の間に入る女声コーラスと揺らぐエレクトリックギターがいい。

 ゲストはビル・チャーチ&デニー・カーマッシ。

 ビル・チャーチはモントローズ時代からサミーを支えているベーシストですが、その前にヴァン・モリソンと何枚か一緒に仕事をしていて、その中に僕が大好きなTUPELO HONEYがあることが、Wikipediaを調べていて分かりました。

 デニー・カーマッシもモントローズで一緒でしたが、彼はそれ以上にハートが大復活した時のドラマーとして僕には印象深く、後にハードロック系のセッションに多く顔を出すようになったHR界の名ドラマー。

 つまり、亡くなったロニー・モントローズに捧げる、ということなのでしょう。


 3曲目Personal Jesus

 マイナー調のブルージーな重たい曲、それもそのはず、「個人的なジーザス」の曲。

 で、どこかで聴いたことがあるような気がしたのでWikiを見ると、ディペッシュ・モードの曲らしい。 

 ああ、ディペッシュ・モードはMTV時代に嫌というほど見て聴いたけど、いまだに接点がないのです・・・

 イントロのギターが何かを呟くような奏法で面白い。

 ゲストはニール・ショーン、マイケル・アンソニーとチャド・スミス。

 ニール・ショーンは言わずと知れたジャーニーのギタリストですが、サミーの「舎弟」でもあります。

 マイケル・アンソニーはサミーがヴァン・ヘイレンを辞める時に引っ張り出したあの高音狂のベーシスト。 

 チャド・スミスはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのドラムス、というよりこの場合、この2人はチキンフットのメンバー。


 4曲目Father Sun

 アコースティックギターのワルツで始まる前半はカントリーというよりはトラッドの雰囲気。

 後半はエレクトリックギターが入ってくるんだけど、その部分が微妙にサイケで、なんとなぁくビートルズにつながっているような曲。

 ゲストはデニー・カーマッシとアーロン・ヘイガー、後者は息子さんかな。

 ああ、それでこの曲名か、父は息子にとっては太陽のように輝いている、と。



 5曲目Knockdown Dragout

 思わず体がつんのめる強烈なシャッフルにかけ声が入る元気一発の曲。

 でも、サミーはこんな歌い方をしていて、血管切れないのかな、そろそろお年が心配・・・

 なんて、「永遠のロック小僧」には関係ないですね(笑)、それにそういう姿がファンにはうれしいのだし。
 ゲストはキッド・ロック、ジョー・サトリアーニとデニー・カーマッシ。

 キッド・ロック、また出てきましたね、バディ・ガイに続いて・・・そろそろ聴かないと。

 ジョー・サトリアーニはスティーヴ・ヴァイの先生でもある偉大なギタリスト、なんて説明も要らないか。

 

 6曲目Ramlin' Gamblin' Man

 ヴァン・ヘイレンのサミー加入2作目のOU812のFinish What Ya Startedはやはりサミーの影響が大きかったんだと思わせるサウンド、小気味よいロックンロール。

 オリジナル、これは知っていた、ボブ・シーガーの曲。

 でも、ボブ・シーガーはもっと酒臭かったような・・・(笑)。

 そういえばサミーは、酒は飲むのかもしれないし酒を歌った曲もあるけれど、酒には負けない、むしろ健康なイメージがある。

 サビのサミーのヴォーカルとコーラスの受け渡しが気持ちいい。

 ゲストはデヴィッド・ラウザー、モナ・ネイダーとヴィック・ジョンソン。

 デヴィッドはサミーのソロ時代を支えたドラマー、ということは分かりましたが、他の2人は分かりませんでした。

 

 7曲目Bad On Fords And Chevrolets

 スピード感あふれるサミー・ヘイガーらしいハードロック。

 ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンが歌詞に出てくる一方で、アメリカの地名が幾つか出てくる。

 やはりそれがサミー・ヘイガーなのでしょうね。

 ゲストは前の曲の3人とロニー・ダン、彼はサミーと交互に歌っています。

 サミーのヴァン・ヘイレン加入前を思い出したような曲で、ギターを中心としたドライヴ感がサミーの魅力であることがあらためてよく分かります。 

 特にこの曲は車がテーマですからね。


 8曲目Margaritaville

 本格的なスパニッシュ、へえ、こういう芸もあったんだ。

 サミーのヴォーカルはこういう緩い雰囲気にも割と合う、それも意外だった。

 最初に聴いていちばん印象に残ったのがこの曲だけど、僕はどうも、普通のポップスの中でラテンをやられるとえらく気になるたちのようで(笑)。

 ゲストはトビー・キース、カントリー界からも招いていて、やはりアメリカ。

 と思って今度はブックレットをよく見ると、これはジミー・バフェットの曲。

 そうか、タイトルだけヒットしたということを知っていたけど聴いたことがない曲でして、こういう曲だったんだ。

 アメリカではかなり有名で、この通りを訪れる人が多いのだとか。


 9曲目All We Need Is An Island

 やはりちょっとラテンっぽいリズム感、カントリー色が濃いアメリカのロック路線。

 心がふわっと浮く感じがなかなか気持ちいい。

 ゲストはナンシー・ウィルソンとミッキー・ハート。

 「我々に必要なたったひとつのものは島」、休暇に思いを馳せているのかな、パラダイス指向の曲。

 先に後者、ミッキー・ハートはグレイトフル・デットのドラマー、ということが分かりましたが、写真を見て、そういえば僕のリアルタイムで大ヒットしたデッドのTouch Of Grayのビデオクリップに出ていたっけ、顔を見て思い出した。

 そしてナンシー・ウィルソン様が! 

 様なんてつけていますが、僕にとっては初代のロック女性アイドルだった人ですから(笑)。

 大学2年の時、3年だったか、コンサートに行って、ずっとナンシーばかり見ていた思い出が・・・

 ところで、アン・ウィルソンではないところがいろいろと気になったり・・・

 10曲目Going Down

 ゲストは3曲目と同じ、ニール・ショーン、マイケル・アンソニーとチャド・スミス。

 とくれば、チキンフットのアウトテイクという感じがしないでもない。

 ただ、チキンフットはギターの音が鋭利に過ぎるのが僕は微妙に微妙なんだけど、サミーのソロとなるとサミーのギターの音なので、こっちのほうが聴きやすいかも。

 わざわざ"Live in studio take"と書いてあるところに、バンドとしてやることの楽しさと自信のほどを感じます。

 "Down, down, down"と繰り返すところのメロディが頭にこびりつくのはさすが。

 

 さて、この後2曲はボーナストラック。

 ということは10曲目が本編最後ということなんだけど、でも、まるで最後っぽくないのは、始めっからボーナス込みで聴いてほしいのかな。


 11曲目Space Station #5 Live From Ronnie Montrose Tribute Concert

 ボーナストラックの1曲目は「初回限定盤ボーナストラック」とある特別なものだけど、それもそのはず、2012年4月の「ロニー・モントローズ・トリビュート・ライヴ」からのライヴテイク。

 メンバーは、サミー、デニー・カーマッシ、ビル・チャーチそしてジョー・サトリアーニ。

 曲はもちろんモントローズ、1枚目から。

 胸が熱くなる。

 でも、歌のほうはじめっとしていない。 

 ロニーに贈るには突っ走る方がいい、と腹に決めて演奏している。

 だけどやっぱり、最後にサミーがメンバーを紹介するところは、胸が熱くなる。


 12曲目All We Need Is An Island

 これは日本盤のみボーナス、8曲目のアコースティック・ヴァージョンだけど、デモだから当然のことくナンシー・ウィルソンがいないのが残念。

 

 このアルバムを聴いて思った。

 アメリカンロックなんてものはもうないのかもしれない。

 昔は、カントリーっぽい要素、ブルーズっぽい要素、ラテンっぽい要素などを薄めてロック側に引き入れていたのが、今はロックのほうが本格的にそちらに近づこうとしている。

 

 なんて固いこと言わない、アメリカの音が好きな人であれば、このアルバムは気に入るのではないかな、と。

 なんせ、"V. O. A."=Voice Of America、それがサミー・ヘイガーですからね。

 やっぱりサミーの書く曲は、僕には分かりやすく親しみやすくていい、それも再確認できました。

 その上で、カヴァー曲が今回はいい、つまりみんないい曲ですからね。


 聴いていると明るく楽しくなり、ほっとする、そんなアルバムです。