◎GRAVE DANCERS UNION
▼グレイヴ・ダンサーズ・ユニオン
☆Soul Asylum
★ソウル・アサイラム
released in 1992
CD-0435 2013/8/22
今日はソウル・アサイラムです。
最近、1990年代の音楽が妙に懐かしい。
1980年代の音楽は「ベスト・ヒットUSA」で頻繁にかかるしよく聴くので、気持ちが簡単に戻ることができる。
しかし、90年代の曲となると、ほとんど、めったに、かからない。
もうかれこれ毎週欠かさず見続けて半年以上が経つけれど、1度もかかったことないんじゃないかな。
それは、「ベストヒットUSA」が1980年代のうちに終了していて(確か1989年が最後で僕もその放送を録画してある)、90年代はもう番組がなくて関わりがないこと、そして番組の主なターゲットが僕らのような80年代をリアルタイムで見ていた人だからでしょう。
もうひとつ、90年代の音楽を10代に聴いて育った人は、まだ社会の中心とまでは至っていないことも関係あるかもしれない。
だから、90年代の音楽は、自分の意志で聴くもの以外は懐かしい、となる。
ソウル・アサイラムは、90年代前半にケーブルテレビでMTVを見ていた頃によく流れていて、CDを買って聴くようになりました。
当時はオルタナティヴがブームでしたが、僕は名前は知らなかったけれど、当時既に地味にライヴ活動を重ねてきた10年選手で、MTVの世界ではオルタナの元祖的な扱いを受けていました。
元祖と言われていたのは、ギターサウンド、ギターの音の歪み方がヘヴィメタル的ではなくうねりがあって多少濁った音と、パンク的な精神が感じられることからでしょう。
ずっと忘れた存在だったのですが、先日、突然思い出し、CDを棚から出して聴き、それから少し聴いています。
なぜ突然思い出したかは、曲の説明で書きます。
当時はよく聴いていましたが、しかしブックレットをささっと見る程度でよくは知らないので、今Wikipediaで調べて観ました。
ソウル・アサイラムは、ミネアポリスで結成されたバンド。
メンバーはヴォーカルでギターのデイヴ・パーナー、ギターのダン・マーフィー、ベースのカール・ミューラー、そしてドラムスのグラント・ヤングで、ベースのカールが数年前に亡くなったと何かで見たけれど、もう7年も前のことか。
このアルバムは彼らの6枚目、ビルボードHot100の最高位11位、3百万枚を売った。
プロデューサーがマイケル・ベインホーン、へえ、知らなかった、今更だけど。
サウンドガーデンのSUPERUNKNOWNやオジー・オズボーンのOZZMOSISを手がけた人で、でもオジーのそれは本人(オジー)が気に入らなかったのだとか。
さらに、このアルバムにはなんとハモンドなどでブッカー・T・ジョーンズが参加しています。
これは知らなかったし、当時はまだソウルを聴いていなかったので、知っていてもそのありがたみがよく分からなかったと思う。
それにしてもこのBLOGはブッカー・T・ジョーンズがよく出てくる(笑)。
音的にはハードロック的なオルタナで、上記の他の2枚とも共通する響きがあり、僕は普通に好きでした。
普通に好きというのは、1990年代のグランジ/オルタナの時代になると、それまでのハードロックやヘヴィメタルとは違ううねりのような重さがある音楽は、僕と同年代くらいの人は結構受け入れられない人がいた、でも僕は大丈夫だった、という意味。
僕の弟は6歳下ですが、その弟ですら、グランジ/オルタナの音はだめだ、と言っていますから・・・
僕は、あくまでもその音楽、そのアーティストが好きになるかどうかだけを聴く判断基準に置いています。
といいつつ、やっぱり90年代以降は、聴く気になれないものが増えはしましたが。
今聴くと、オルタナの中では最も古いタイプという感じはしますね。
1曲目Somebody To Shove
超高音のギターリフ(ちょっとだけガンズのSweet Child...に似ている)を受けてうねりのある重たいギターが始まり、短いイントロでデイヴが歌い始める。
この曲はMTVで初めて見て聴いた彼らの曲ですが、その時はまだCDを買うつもりはなかったけれど、でもいいことはいい、とは思っていました。
デイヴのヴォーカルは壊れそうで壊れない、素っ頓狂になりそうでならない、パンクの影響は感じられるけれどあくまでも内面だけ、という歌い方。
かなり変わった声の持ち主で鋭角的に響いてきます。
心の中で塊になっているフラストレイションをまとめて吐き出したという感じの勢いがある曲。
2曲目Black Gold
ああ、懐かしい。
これは確か3番目のシングルじゃなかったかな、MTVで流れていた、聴いた回数が多いような記憶が。
もし違うとすれば、このアルバムでかなり気に入ったということでしょう。
アコースティックギター中心のしっとりとした曲で、スタイルとしては1曲目との違いが大きいけれど、どちらも彼ららしいと初めて聴いた時に自然と受け入れられた。
小さ目にまとめたニール・ヤングのような曲。
3曲目Runaway Train
このアルバムを聴きたくなったのは、これです。
僕はこの夏から、蛍がいる公園に行くことが多くなりました。
北海道の蛍はヘイケボタルで、内地でおなじみのゲンジボタルよりもはるかに小さいもの。
ある日ふと、そういえばこの曲に蛍が出てきたなと思い出しました。
"Call you up in the middle of the night, like a firefly without a light"
「夜の夜中に君を呼び出してみた、まるで光らない蛍のように」
ヘイケボタルは日の入りから2時間ほど光るので、だいたい21時頃以降は光らなくなる、だからこの主人公が訪ねたのは21時以降ということでしょうか。
蛍が光るのは繁殖行動のためですが、光らない蛍のようにというのは、そういうつもりはない、という意味かな。
ただ、22時だと普通の人は真夜中とは言わないから、やっぱり午前2時前後ということかな。
この歌詞が僕にはとても印象的でした。
、欧米の人は虫を愛でることはないと聞いていて、でもこのデイヴ・パーナーという人は、喩えとはいえ虫を描いていることに、何かこう感じ入るものがあったのです。
ビートルズのSun Kingの前に入る虫の音のイントロは、欧米の人にはただの雑音にしか聴こえないらしいですが、僕は、何という種類の虫だろう、おそらくコオロギの仲間で、日本にはいない種類かな、などと聴く度に考えます。
まあそれはともかく、この曲はビルボード最高5位の大ヒットを記録。
アンプラグドの流れもあった時代、アコースティックギター主体の、感傷的なミディアムテンポの曲で、歌メロが最高にいい。
2回目のヴァースの後半で何かをこらえきれなくなったかのようにヴォーカルがフェイクするのがたまらない。
歌詞もまた素晴らしく、何かを失った虚しさ、寂しさ、悲しさ、でもそれをこらえなければいけないという強がり、よく伝わってきます。
(そうか、当時は失恋したばかりだったから共感したのかもしれない)。
この曲を聴いてアルバムのCDを買うことを決め、聴くとアルバム全体も気に入りました。
この曲について忘れてはならないのは、ビデオクリップ。
何らかの理由で失踪した子供たちの実名入りの写真を合間に挟み、視聴者に行方不明者発見の協力を仰ぐというもので、実際に数名が見つかったのだという。
歌詞自体は子どもというよりは青年の話だけど、子どものような心を失ってしまった象徴としてこのビデオクリップを思いついたのかもしれない。
不思議と、曲のイメージに合っていましたが、人間の「こころ」を強く感じる曲ですね。
僕の中でも、1990年代の名曲として大きく残っています。
ちなみに、僕がもう1曲知っている蛍が歌詞に出てくる曲は、R.E.M.のKing Of Comedyで、それはリリースがこれより後なので、言葉へのセンスが細やかなマイケル・スタイプは、これを聴いて"firefly"という単語が頭に残ったのかもしれない。
ただ、R.E.M.のそれは言葉遊び的な意味合いが強くて、この歌詞のように抒情的なものではないけれど。
4曲目Keep It Up
曲が80年代風、音は90年代風のポップロック。
このアルバムは素晴らしいんですが、3曲目までがあまりにも素晴らしいので、ここから先は普通にいいアルバムという感じかな。
もちろん僕は好きだから聴いていたけれど。
5曲目Homesick
タイトルの通り、いきなり「あ~」と歌い出して、ちょっと寂しげな曲。
基本はアコースティックギターで上にエレクトリックギターが乗っかるという曲は僕の基本でもあり、安心して聴けます。
6曲目Get On Out
これもいきなり歌い始めてギターが派手に入るアップテンポの煽るような曲。
当時はそうは思わなかったけれど、今回聴いて、大元がカントリーっぽい響きであると感じました。
7曲目New World
アコースティックギターのバラードで、そうかこの人たち、この人はニール・ヤングがあまり遠くないのか、だから好きになったんだ(笑)。
もしくは一度解散して再結成したCSNという感じの曲かな。
8曲目April Fool
僕は今年、本家BLOGで「エイプリル・フールの曲」という記事を4月1日に上げたのですが、その時はこの曲のことは忘れていた。
ブラック・サバスを彷彿とさせるギターリフで始まる70年代ハードロック風の曲で、こういう音楽が好きな人というのはなぜかほっとする(笑)。
9曲目Without A Trace
アップテンポのアコースティックギターが中心となった曲で、いかにもアメリカンロックといった響き、というか、アメリカンロックと言われる人はほぼ必ずこの手の曲があるのではないか、という感じ。
そこに元気なエレクトリックギターが入って曲をかき回す、基本は明るい曲。
歌詞の中に"Grave dancers union"と出てくる、これも、アルバムタイトル曲が存在せず、歌詞の中にタイトルが出てくるという例ですね。
ところで、「墓で踊る人の組合」とはなんとも不吉なタイトルだ、と当時は、そこだけ、気にかかっていました。
ジャケットの写真は、金髪の女性と子ども二人が街を歩く後ろ姿で、お父さんを亡くしたのかな。
余談ですが、子ども2人が裸だから、前を向いていたら今の日本ではアウトかもしれない、でも後ろはどうなんだろう・・・
それはともかく、この曲が表題曲だとすれば、かなり前向きで明るい曲であり、不吉というイメージはないし、聴いていて気持ちが沈むようなものでもない。
この記事を書くのに取り出して、この曲を思い出した時、ニューオーリンズの葬送を思い出しました。
マーチングバンドを引き連れて街を巡る葬送の列の後ろで踊る人々、音楽も、行きは落ち着いた曲だけど帰りは明るい。
このタイトルにはそういう意味があるのかなと思い、記事を書くのにWikipediaを調べると、その通り。
実はこの曲のタイトルの言葉の前に"New Orleans"とちゃんと歌っているのを、僕はそこは聴き取れなくて今まで知らなかっただけだったようです。
このアルバムのテーマは喪失感なのかな、でも、失くした向こうに新たな希望が見えてくる、というメッセージを発しているのだと感じる。
アルバムタイトルを歌っていることもあり、後半の要となる曲。
10曲目Growing Int You
よくよく聴くと、ギターのダン・マーフィーは上手いですね。
テクニック的にというよりは(もちろんそれもだけど)、歌に表情をつけるのが上手いギタリストで、系譜としてはポリスのアンディ・サマーズ、R.E.M.のピーター・バックの人でしょう。
この曲も歌に対してよこからちゃちゃを入れるようなギターが面白い。
曲は疾走系で、フックが効いていていい。
後半の壊れそうな歌がまた気持ちを感じる。
11曲目99%
ハンドマイクを通してねちねちと歌うような声が印象的。
ギターの低音リフで攻める、全体のイメージはジミ・ヘンドリックス風、そうでしょやっぱりロックをやるギタリストは憧れる、やっぱり基本はハードロックでしょう。
12曲目The Sun Maid
最後はアコースティックギター弾き語り風のバラード、ストリングスが後半に入る。
前のような激しいハードな曲をやった後で、まるで童謡のようなこんな曲が入る、この両面性が魅力なのでしょうね。
ところでこれ、僕が聴いていたのを横で耳にした弟が、「ムーミン谷のテーマ曲みたいだ」と笑いました(オルタナ好きじゃない弟なので・・・)
弟は時々言い得て妙ということを言うのですが、うん、でも確かにムーミン谷のイメージがあるわ、この曲(笑)。
優しさをそのまま音にしたような曲で、お墓で踊っても最後は心温まる曲で終わります。
真面目な話、このアルバムは、流行っていた頃に聴いてからぱたりと聴かなくなり、聴いた覚えもない、93年に買ったから94年くらいまでは聴いていたと思うけれど、もう19年振りに聴いたことになるんだ。
もうそれだけ時間が経っているので当たり前かもしれないけれど、19年前に聴いた時よりも、うんと古臭く、オーソドックスなロックに聴こえました。
当時よりも今のほうがいいと思ったかもしれない。
それくらいいいアルバムですね。
ところで、Soul Asylum=「ソウル収容所」という名前で、ソウルミュージックが好きだからそういう名前にしたのだろうけど、このアルバムからはソウルっぽさ、ソウルからの影響はあまり感じなかった。
今回聴いてもそう。
しかし、ソウルという看板を掲げていることで、聴く側は無意識にソウルをイメージしてしまう、或いは期待を。
でも、ソウルは感じない。
と、考えると堂々巡りになってしまうのですが、このソウルという言葉は聴く者に不思議なイメージを与えているのだと思います。
音楽にコクが出る魔術のような言葉、といえばいいのかな(笑)。
ソウルを収容した、だから表には出さないけど内に秘めた思いとしてソウルがある、という意味かもしれない。
ソウルが大好きな今となっては、このバンド名もまた積極的に好きなところです。
つくづく、1990年代が懐かしい。
僕としては、このBLOGでもう少し90年代を押してゆきたいです。
ただ、次は多分違うと思うんだけど・・・(笑)・・・
90年代の音楽も大好きです。