RAISED ON RADIO ジャーニー | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-August19JourneyRaised


◎RAISED ON RADIO

▼Raised On Radio ~時を駆けて~
☆Journey

★ジャーニー

released in 1986

CD-0434 2013/8/19


 ジャーニー9枚目のオリジナルアルバム。


 先日の「空耳アワー」でジャーニーの曲が取り上げられていましたが、僕ははっきりとは覚えていない曲で、弟と話しているうちにこのアルバムの中の曲だと分かりました。

 このアルバムはよく聴いたはずなのに覚えていないというのはなんとも悔しく、出してきたCDをそのまま聴き始めたのがこの記事につながりました。


 ジャーニーについて、前々回のビートルズの記事で、中学時代からビートルズを一緒に聴いていた今は栃木県にいる親友がビートルズの次に夢中になった、というようなことを書きました。

 その時点ではまだその「空耳アワー」の前でしたが(北海道は東京より1週遅れで放送されます)、これまたいい偶然。


 このアルバムは僕が初めて買ったジャーニーのLPでした。

 ジャーニーは好きでしたが、この前作のFRONTIERSをその友だちがLPを買っていたので、僕もカセットテープに録音させてもらって聴いていたので、これが初めてでした。

 このアルバムの頃は僕は浪人生、友だちは高校を出てすぐに就職、でもその年は逆に別々の学校だった高校時代よりはまたよく会うようになりました。

 この頃は友だちも忙しく、逆に僕がカセットテープに録音してあげました。

 僕は当時はもう車を運転するようになっていて、このアルバムは車の中で友だちとよく聴いた1枚です。


 ジャーニーはこれが3年ぶりのアルバムでしたが、絶頂期を迎えていたバンドが3年もアルバムを出さないというのは、当時はとても長く間があいたと感じたものでした。

 今なら3年は普通ですね(笑)。

 80年代は、まあプリンスのように毎年出している人もいましたが、アーティストがアルバムを出すペースはまだ2年に1枚が平均くらいでしたね。

 ただ、その間にスティーヴ・ペリーがソロアルバムを出してヒットさせていたので、ジャーニーが表舞台からまったく消えたというわけではなかった。


 ジャーニーは、このアルバムの前の1985年に、映画『ビジョン・クエスト~青春の賭け』のサントラに提供したOnly The YoungがTop10ヒットしていて、それがこのアルバムの布石になっていました。

 僕はその曲が大好きで、タワーレコードで輸入のドーナツ盤を買ったくらいですが、残念ながらその曲はここには収められていません、だからその曲はまたの機会に。

 ちなみにそのサントラからはマドンナのCrazy For Youが大ヒットしました。

 

 このアルバムはだから大きな期待を持って臨みました。


 しかし、実際に聴くと、何か少し違うと感じました。

 ジャーニーって、音にこんなに間が多いバンドだったっけ、というのが第一印象でした。

 もうひとつ、ジャーニーってこんなにもアメリカンロックっぽい音を出すんだ、というのも軽く驚きました。


 ジャーニーはこの前作とOpen Armsくらいしか聴いたことがなかったけれど、そこからの印象で、僕は、音の隙間を埋め尽くして宇宙的な広がりを感じさせる音を出すバンド、というイメージが出来上がっていました。

 Only The Youngも基本的にはその路線で、いかにもジャーニーらしい、そこが気に入った部分のひとつでしたし。


 このアルバムは、上手く言い表せないんだけど、楽器と楽器の間(ま)、声も含む、を無理に音で埋め尽くそうとはしてない、だから音空間に間(ま)があると感じました。
 

 しかし、何かが違うことは、LPを買う前からなんとなく感じていました。


 ジャーニーのそれまでのアルバムは、音のみならずアートワークも宇宙を感じさせるものであり、タイトルも、FRONTIERES、ESCAPE、DEPERTURE、EVOLUTION、INFINITYなどなど、宇宙をイメージさせる概念的なひとつの単語をつけていた。

 それがここではRAISED ON RADIOと、単語ひとつではない上に、「ラジオに育てられた」と、いってみれば普通の人間的な言葉で語り掛けているところが、なんとなく何かが違うと感じられた部分でした。

 アートワークの作風はそれまでのイメージを踏襲してはいますが、でも正直僕は、違和感のようなものを感じはしました。


 バンドがイメージを変えようとするのは、たいてい、内部で何か問題があった時でしょう。

 ジャーニーも、当時は今のようにネットがなく情報が少ない中、バンドメンバーの不仲の噂を聞いてはいました。

 

 イメージを変えようとする時には基本に立ち返るのも、人間、よくあることだと思いますが、彼らも、音楽を楽しみながら聴き育ったラジオを見つめ直すことで、原点に立ち返ろうとしたのかもしれない。

 そういえばクイーンも、こちらは事前にでしたが、いろいろあってメンバーがソロアルバムを出した80年代に、ラジオをテーマにした曲を発表していましたね。

 クイーンのそれがあったので、ジャーニーのこれも「80年代ノスタルジー」の一環として受け止めました。


 しかし、ノスタルジーというのもそれまでのジャーニーとはイメージが違う部分だとも。

 ジャーニーは未来に向かって歌っているようなイメージがあったから。


 このアルバムを聴いて、ジャーニーはこんなにアメリカンロックっぽい音だったっけ、と感じたのも、ラジオをテーマにとり原点に返ったことと関係があるのかもしれない。

 音に間(ま)が多くなったのももちろん、昔のヒットソングはそういう音だったはずだから。

 言ってみれば、地に足が着いた音。

 

 そう考えると、この変化は理解し納得できます。

 

 1曲目Girl Can't Help It

 イントロの裏から入ってくるようなピアノの音が印象的で、そこはああやっぱりジャーニーと思ったのですが、聴いてゆくうちに、以前よりアメリカンロックっぽいと感じていました。

 でも、後にCDを買い直して聴いたところ、当時思ったほど違いは感じられなくて、もしかしてジャーニーを聴いたことがない人が今から振り返ると、僕が当時感じたほどの違いは感じられないかもしれない。

 それも時代なのかな、と思うけれど。

 スティーヴ・ペリーのヴォーカルは相変わらず素晴らしく、波打つように劇的に流れる旋律をスケール感大きく歌いきっています。

 終わりの近くでそれまでにないきわめて印象的なパッセージが入り、ほとんどそこのために曲が進んできたというくらいに曲のイメージを決定づけています。

 後にシングルカットされ中ヒットしましたが、ビデオクリップでスティーヴ・ペリーが燕尾服のような裾のジャケットを着ていたのが妙に印象的でした。

 この曲は最初から好きだったけど、大人になって、今になって聴くと若い頃よりもぐっといいと感じます。


 2曲目Positive Touch

 もうひとつ感じたのが、音が大人になったというか。

 ジャーニーがこんなにサックスの音を響かせるなんて。

 サウンド全体も大人というか、西海岸のプロのサウンドという感じもします。

 この曲はアルバムの中のつなぎですね、いい意味で。


 3曲目Suzanne

 シェリーの次はスザンヌか、と当時は話題に、ならなかったかな(笑)。

 スティーヴ・ペリーのソロの大ヒット曲Oh Sherrieのことですが、そういえばペリーはソロでジャーニーとは違う地に足をついた歌をやっていて、それをバンドにフィードバックしたということなのかな、と今更ながら考えた。

 この曲はサビのタイトルを歌った後のうねうねした歌メロが妙に印象的。

 シングルカットしてこれも中ヒット。

 

 4曲目Be Good To Yourself

 ジャーニー復活を告げるべく、アルバムに先んじてシングルカットされTop10ヒットを記録した曲。

 でも、正直、僕は、この曲がとっても気に入ったわけではなかった。

 繰り返し、Only The Youngがとても気に入ったので、それに比べれば、というか。

 それでも聴いてゆくうちにだんだんと気に入ってきて、歌詞カードを見て覚えたりも。  歌詞の中にボクシング・グラブが出てきて、やはりここでもジャーニーは宇宙から帰って即物的になったな、と感じました。

 この曲はニール・ショーンのギターソロも素晴らしいのですが、2分22秒のところから出てくる旋律が、その部分だけ、何かのテレビ番組のテーマ曲として割と最近使われていたような気が、でも思い出せない。

 そしてやっぱり、スティーヴ・ペリーのヴォーカルには圧倒される。

 この曲は、先日の「ベストヒットUSA」の小林克也さんによれば、ビデオクリップ全盛の中で敢えてクリップを作らず、曲がよくてラジオでかかればヒットすることを証明した、とのこと。

 当時の僕はビデオクリップ人間だったから、クリップがないのは大いに不満でしたが、今となってはそれも評価されているのは面白い。

 

 5曲目Once You Love Somebody

 白状すると、ここから後は、今回聴いてあまりよく覚えていなかった・・・

 当時は友だちと車でも聴いたし、よく聴いていたはずなんだけど。

 まあでも、当時は今ほど何かを考えながら聴いたりはしていなくて、流行りもののひとつという感覚もあっただろうし、記憶が衰えたという以上にそんな気がします。

 この曲は今聴くとブラコンの影響が強いですね。

 ペリーが歌わなければソウルバラードになっていたかもしれない、というくらいに。


 6曲目Happy To Give

 イントロのキーボードの音が秋を感じさせる、これからの季節にはいい、いや、まだ暑いかな。

 今年も残暑は続くのかなあ・・・

 それはともかく、ゆったりとした曲だけど、若い頃には覚えにくいタイプの曲でもありますね。

 つまり、この曲も覚えていなかった・・・


 7曲目Raised On Radio

 ここからLPのB面。

 これがですね、それまでと違う、アメリカンロック路線を象徴するかのように、ブルージーなハーモニカの音で始まる曲。

 すぐにアップテンポのジャーニーらしい曲にはなるんだけど、こうしたルーツミュージック的な側面を見せてくれたのは大きい。

 歌詞の中でBe-Bop-A-Lulaとか言っているし。

 まあでも、当時既にアメリカンロック人間と化していた僕としては、ジャーニーもアメリカンロックだったかと分かって妙にほっとしたものがありましたね(笑)。

 よく聴くと音がサミー・ヘイガーとつながっているし。


 8曲目I'll Be Alright Without You

 この曲はLPで聴いた頃に確かに覚えたんだけど、何年かして、どのアルバムに入っていたかを忘れてしまい、このアルバムをCDで買い直して10年ぶりくらいに聴いた時に、ああこのアルバムだったんだと。

 それくらいジャーニーらしい曲といえるのではないかな。

 サウンドとしてではなく歌としてはこの中では最も印象に残りやすい曲かな。

 まろやかな音色のギターソロはやっぱりブラコンの流れを感じる、いかにも80年代という曲。

 ミドルテンポの明るいけれどちょっと切ない曲、スティーヴ・ペリーにはよく似合いますね。


 9曲目It Could Have Been You

 この曲は一転して覚えていなかった、ここから先は、ですが。

 イントロのちょっとファンキーなギターの、リフといっていいのかな、それもやっぱりブラコンの流れ。

 先ほどからブラコンと書いているけれど、ジャーニーの場合は感覚的に黒っぽさはなくて、自分たちの感覚にうまく取り入れているという感じ。

 それもまた、大人の音になったと感じさせる部分です。 


 10曲目The Eyes Of A Woman

 覚えていなかったので、タイトルを見てどんな曲か予想したところ、予想通り、ミディアムスロウテンポの、やはり大人の音路線のおっとりとした曲。

 まあ、ペリーの歌い方とそれを生かした歌メロの作り方は、他のバンドに比べると宇宙的な広がりは感じさせるんですけどね。

 ところで、10年後の次のアルバムは、この辺の路線をもっとジャーニーらしくしたと考えれば、このアルバムもつながっているんだなあ、とあらためて思いました。


 11曲目Why Can't This Night Go On Forever

 空耳で使われていたのはこの曲、というわけで覚えていなかった。

 ついでにいえば、どんな空耳だったかも覚えていない(あまり面白いと思わなかったのだと・・・)

 最後はジャーニー流のバラードをスティーヴ・ペリーが熱く力強く歌い上げる。

 この曲は宇宙的な広がりを感じさせますね、それまで通りにやってみたのかもしれない。

 バラードを最後に置くのはジャーニーの得意技ともいえるけれど、僕はこれ、アルバムの最後っぽくないと感じました。

 

 

 現行のリマスター盤には、Girl Can't Help ItとI'll Be Alright Without Youのライヴヴァージョンが入っています。

 

 

 ジャーニーはこのアルバムで地球に戻ってきたわけですが、でも、ここでうまく立て直すことができなかった。

 

 この後、スティーヴ・ペリーが脱退しバンドは一時解散状態に。

 ジョナサン・ケインとニール・ショーンはバッド・イングリッシュなどで成功、しかし長くは続かず。


 このアルバムのちょうど10年後、スティーヴ・ペリーが復帰しTRIAL BY FIREという素晴らしいアルバムを出しはしましたが、結局、ペリーはまた脱退。

 ジャーニーは現在もヴォーカリストを変えて活動を継続している一方 現時点ではそれがペリーにとってジャーニーの最後の作品となっています。

 

  このアルバムが出た頃は、まさかジャーニーがそんなにすぐに終わってしまうとは思ってもみなかった。

 やっぱり、バンドメンバー同士の問題というのは、外からは分かりにくい、分からないものなのでしょう。


 スティーヴ・ペリーは、一度復帰はしたものの、気持ち的にはこのアルバムで気持ちが切れたのかもしれない。

 現在では、ジャーニーといえばスティーヴ・ペリーというイメージが強いですが、彼が辞めたことで、ジャーニーのブランドイメージが保たれている、と考えることができそうです。

 

 今のジャーニーも音楽としてはいいと思いますが、やっぱり、ヴォーカリストが違うのは。どのバンドでも大きな問題なのでしょうね。


 このアルバムは、後半を覚えていなかったとは言いつつ、結構好きで、たまに聴きたくなります。

 

 今回聴いて、ますますその思いが強くなりました。