◎THE BEATLES
▼ザ・ビートルズ
☆The Beatles
★ザ・ビートルズ
released in 1968
CD-0432 2013/8/10
ビートルズの2枚組アルバム、通称「ホワイトアルバム」、純然たるスタジオ録音のアルバムとしては9枚目。
今回なぜこれを取り上げたか、途中の曲のところにご報告があります。
既に写真には出ていますが(笑)。
「ホワイトアルバム」は、ビートルズが音楽の理想を求めて設立した「アップル」の第1作目として、1968年11月22日にリリースされました。
アルバムは、ロックの枠にとらわれない様々なスタイルの音楽を自分たちなりに味付けし、「西洋音楽博覧会」と評されました。
実際に僕も、このアルバムで西洋音楽の入り口を学びました。
しかし実際は、各自がやりたいことをやったものにバンドとしての体裁を整えただけ。
この頃はもう、ジョン・レノンがビートルズへの気持ちが薄らぎ始め、というか気持ちの面ではやめていたのだとか。
僕も最初、「アルバムとしての出来」は、散漫とは言わないけれど、まとまりはないアルバムだな、とは感じていました。
しかし、聴き続けて、それを補って余りある1曲1曲の素晴らしさは、何物にも代えがたいものだと分かりました。
ビートルズが稀代のアイディアメン集団だったことが分かり、曲自体の良さを引き出し、より魅力的な楽曲として作られています。
僕は「アルバム至上主義」とよく言いますが、一方で、これほどまでにアルバムとしての流れを無視できる素晴らしいアルバムというのも、そうはないでしょう。
ビートルズはとにかくすごい、もうそれに尽きますね。
さて、2枚組で曲が多くて長くなるので、概説はこの辺りにして先に進みます。
Disc1 (LPのA面)
1曲目Back In The U.S.S.R.
ポール・マッカートニーが、チャック・ベリーのBack In The U.S.A.をビーチ・ボーイズ風に茶化した爽快なロックンロールでアルバムはスタート。
ビーチ・ボーイズのメンバーがほんとに参加しているのか、と当時はまことしやかに噂されたそうで。
この曲は最初に歌詞を読んだ時に大爆笑しましたが、特にBメロが面白い、こんな感じ。
「ウクライナの女性にはマジでやられたね
西側のことなんか忘れさせてくれる
モスクワの女性には歌って叫びたくなるね
(でも)ジョージア(の女性)のことはいつも忘れない」
さらりとGeorgia On My Mindも入っているところがまた楽しくもあり、ポールのアメリカン・スタンダード好きが分かります。
最後のほうでは「バラライカの音を聞かせてくれ」なんてくだりもあるし、歌詞でこれだけ笑える曲はそうはない、もう最高。
この曲はギターソロの音が比較的簡単で、耳コピーで覚えたのですが、最後のヴォーカルのバックに入る高音高速連弾でギターの弦を2度ほど切ったことがある、なかなか手ごわい曲なのです。
単純なロックンロールだけど、コード進行がちょっとひねっているのが味噌。
歌の最後の「ジャジャジャーン」というギターの音、高校時代に友だちの前で弾くとなぜかみんなカッコいいと言っていました(笑)。
ところで、東西冷戦が終結してU.S.S.R.もなくなりましたが、ここで彼らが乗ってきた飛行機のB.O.A.C.も今はB.A.になっていますね。
2曲目Dear Prudence
今の僕は、ビートルズで最も好きな曲を1曲だけ挙げろといわれればこの曲を挙げると思います。
曲は、インドに行ってみんなで瞑想していた時、女優のミア・ファローの妹プルーデンスが小屋にこもって出てこなくなってしまったのを、ジョンが出ておいてよと優しく諭す、という内容。
ジョン・レノンの優しさが感動的、歌詞が最高にいい。
"The sun is up, the sky is blue, it's beautiful and so are you"
なんて素敵なくだりだろう。
サウンドも、エレクトリック・ギターによるアルペジオを基本としていて、多分SGで弾いている薄っぺらいジョージ・ハリスンのエレクトリック・ギターの音色がいい。
ポールのベースは「トリッキー系」のベスト演奏のひとつ。
ところで、この冒頭2曲は、リンゴ・スターが1日だけ脱退した「空白の1日」に録音され、つまりリンゴがいません。
ポールがドラムスも叩いていますが、最後のもこもことしたすかっとしなくてのりきれないソロのようなドラムスは、今となっては、本職のリンゴがいないことをポールなりにユーモアで表しているととれますね。
最後、嵐が去ったかのように静かに最初に戻るのも感動的。
最初に戻るからいいんですね。
3曲目Glass Onion
リンゴがここから戻ってきますが、復帰を祝すかのようにドラムスのフィルインで曲が始まる。
当時は「空白の1日」は公にされていなかったけれど、そのことが分かってこれを聴くと、ビートルズの仲間意識の強さがうかがいしれて感動します。
この曲はジョン曰く「それまで作った曲のごった煮」ということで、歌詞の中にビートルズの知っている曲名や歌詞のくだりが次々と出てくるのが、中学生の僕には単純に面白かった(笑)。
特に面白いのが次の部分。
「僕は君に"The fool on the hill"について話した。
彼はいまだに丘の上にひとりでいるらしい」
いわずもがな、ポールの名曲をおちょくったもので、しかもご丁寧にこのくだりの後に、その曲で使われたオカリナの音が入ったり、これもある意味笑える。
ただし、ジョンはThe Fool On The Hillをとってもほめていたのですが、もしかしてそんないい曲を書いてしまったポールへの嫉妬があったのかもしれない、と。
さらには、"The walrus was Paul"と、『マジカル・ミステリー・ツアー』でジョン自身が扮していたはずのセイウチはポールだなんて平気で嘘を言う、これもポールをおちょくったものでしょう。
しかしポールもポールで、おちょくられているのに平気な顔して一緒に演奏するというのは、常人では考えられない、やはり童顔でもすごいプロ根性の持ち主なんだなあ。
心底穏やかではなかったのかな、でも一方でこの頃のポールはもう自信があっただろうから、ジョンに面と向かって面白いとか言ってたかもしれない(笑)。
歌メロが、美しくはないけれど頭にこびりつく印象的なもので、これは普段でもよく口ずさむ歌のひとつ。
中間部のせり上がるようなポールのベースの迫力が、恐い。
そして何より無表情にのっぺりと冷たく歌うジョンが、恐い。
ところで、花のチューリップといえば僕は真っ先にこの曲を思い浮かべます。
歌詞に出てくるからですが、3年前のサッカーのワールドカップを見ていて、日本のトゥーリオ選手のユニフォームの背中に"TULIO"と名前が書いてあったのが僕には一瞬"TULIP"に見えました、実際に最後の1文字違いですが。
爾来、僕は勝手に、この曲をトゥーリオ選手のテーマ曲と決めさせていただきました。
迫りくる恐さはトゥーリオ選手のイメージに合っていると思うんだけどなあ・・・
4曲目Ob-La-Di, Ob-La-Da
この曲は、昨年6月の「エリザベス女王陛下即位60周年記念コンサート」で演奏された曲。
人前で演奏したのは久しぶりかと思うけれど、きっと来日公演でも演奏するんだろうなあ(笑)。
この曲は、小学6年の運動会のダンスで、歌詞が日本語に訳されたものに合わせて踊った思い出があります。
だから僕はビートルズを聴く前からどんな曲かは知っていましたが、6年にもなるともう女子と手をつなぐのが恥ずかしかったっけ(笑)。
サビの有名なくだり、"Life goes on bra"の"bra"はブラジャーだと10代の頃に本で読んだのですが、最初はまさか、と思いました。
でも、それから、ポールが「ちょっぴりスケベ」な人だと分かって納得。
この曲はポールの「ちょっぴりスケベ」の出発点かもしれない。
ところで、今年の札幌ドームのファイターズ戦では、ファイターズの選手が四球を選ぶとこの曲のイントロのピアノと演奏の最後の部分(笑い声の前)をくっつけた音楽が鳴るのがもううれしくて。
ただ、ファイターズがねぇ・・・以下強制終了・・・
5曲目Wild Honey Pie
ポールがまったく一人で作ったおふざけお遊びソング。
D面のHoney Pieの序章という位置付かもしれないけれど、曲想がまるで違うのがおかしい。
ポールの多重コーラスのうち低音で割と前に出ている声がジョンに似ているのはわざとなのかな。
まだネットもなく情報が乏しかった10代の頃、僕はそれ、ノークレジットでジョンが歌っているんだと信じていました。
ポールは時々サウンドに異様にこだわる曲を作るのですが、これはその走りで、実験的なことをいろいろやっているという点でも重要なアルバムと言えるでしょう。
幽霊の音のようなエレクトリックギターの音が、主たるリズムと離れたタイミングで入るセンスはさすが。
6曲目The Continuing Story Of Bungalow Bill
ヨーコ・オノが初めてビートルズの録音に参加し声が刻まれた曲。
当時はジョン以外の周りの人が緊張でがちがちだったとか。
純粋に曲としては、確かにヨーコさんが歌うのは効果的だけど、ビートルズとしてそれをやってよかったのかどうかというのは結構いわれているところでもありますね。
象に乗って虎狩りに行く男の話ですが、普通に描写してゆけば「鉄道唱歌」並に長くすることもできたとこを、3回でさらっと終わってしまうのが人を食っていて面白い。
虎だから人を食うのか、あ、滑りましたね、失礼しました・・・
この曲もポールのよく動いて歌うベースがとにかくすごくて、単純な曲にいい表情をつけています。
最後だけタンバリンが16ビートになるのも芸が細かい。
「何かあった時のために彼はいつも母を一緒に連れ出していた」というくだりは、いかにもマザコンのジョンらしいところ。
ところで、この曲の「イントロ」に入っているスパニッシュ・ギター、僕が中高生の頃は、いったい誰が弾いたんだろうってよく話題になりましたが、実際はメロトロンに収められたサンプル音源を使ったとのこと。
高校時代によくうちにきて一緒に音楽を聴いていた友だちが、或る日、ラジオで、アルフィーの坂埼幸之助がこのギターを弾いていた、上手かったと報告してくれた、そんな思い出もあります。
しかし、そのスパニッシュ・ギター、僕が最初に買ったUSA盤のCDではなぜか、Wild Honey Pieの後ろにくっつけられたものとしてトラックが振られていました。
僕はずっとBungalow Billのイントロだと思っていたので(そういう人がほとんどだと思いますが)、このギターを試しに練習してみようとCDでこの曲の頭出しをすると、何度やっても、ジョンが"Hey Bungalow Bill"といきなり歌い出すんです。
おかしいと思ってCDプレイヤーのディスプレイを見ながら聴くと、そういうわけでした。
しかし、ということは、もしやそのギター、ポールの曲の後ろにくっつけられているということはポールが弾いたのか、と、当時は思ったりもしました。
7曲目While My Guitar Gently Weeps
ジョージ・ハリスンの、名曲なんて言葉では足りな過ぎる名曲。
この曲は日本ではOb-La-Di, Ob-La-DaのB面としてシングルカットされましたが、中学時代、今は栃木に住んでいるビートルズ友だちOの家に遊びに行った時にそのシングルで聴いたのが初めてで、とにかくものすごい衝撃を受けました。
多分、自分の音楽人生でも、初めて聴いた衝撃がこれより大きい曲はないと思う、それくらいの出会いでした
ジョージの「エイヨッ」という声もカッコいいですが、シングルではそれは入っていません。
ところで、僕は昨年『ビートルズの英語』という本を読みましたが、そこでジョージがこの曲を作るに至ったその思いを知りました。
「でも東洋の概念では、起こることは起こるべくして起こるもので、偶然なんてのはないんだ。
どんな些細な出来事にも、意味がある」
それを読んで、この曲はますます奥が深いと思うようになりました。
エリック・クラプトンの参加については様々な意見がありますが、僕は、やっぱりエリックでよかったと心底思います。
そうじゃなきゃ、エリックをそれほど好きにならなかったかも(笑)。
この曲のギターソロは、高校3年の夏休みのある日、思い立って耳コピーして覚えました。
僕は絶対音感はないしそれほど音感はよくなくて、それまでは何となく適当に弾いていたのですが、大好きなこの曲くらいはちゃんと弾きたいと。
ラジカセでカセットテープを何度も何度も繰り返し再生して音を拾って合わせていきましたが、チョーキングの後の指使いをたまたま発見してからは、思ってもみなかったほどすんなりと進んだことを覚えています。
8曲目Happiness Is A Warm Gun
日本人が苦手な無生物主語のこれ、ジョン・レノンがブルーズをこねくりまわして作り上げた曲。
感覚的にはブルーズだけど、曲はポップソング、でもそれはジョン・レノンという人の音楽への姿勢なのでしょうね。
「僕の指が君の引き金に触れる時」という性的婉曲表現を言うのがわくわくしたというジョン、なんて初心なんだろう(!?)。
でも、ジョンのこと考えると、このタイトルはなんというか・・・
もちろんジョンがこの段階で自分の最期を予期したはずはない、あくまでも一般事象としての表現でしょうけど、でも、よく考えると、銃が一般的であるという事実には悲しくもなります。
(LPのB面)
9曲目Martha My Dear
この曲はLPを買う前にNHK-FMでエアチェックして知りましたが、正直、いい曲だけど、突き抜けるほどすごくいいとは思わなかった。
言ってしまえば、あくまでもアルバムの中の1曲ですからね。
いかにもポールらしい曲で後のソロにつながってゆきますが、だから逆にビートルズらしさが薄いのかもしれないし、ビートルズをまだ聴き始めの頃にポール色が濃すぎるというのも僕が最初はそう思ったところでしょう。
それにしてもポールはホーンが大好き、というのはよく分かりますね、そしてセンスが最高にいい。
"Martha"とはポールが飼っていた犬の名前ですが、僕も自分の犬に「マーサ」と名付けたいと思っていました。
というわけで、6月に家に来たキャバリアに「マーサ」と名付けました。
茶色一色ですが、キャバリアではあまり多くない「ルビー」という色で、あまり多くないというのが決め手ではありました(笑)。
本家BLOGでは先月からもう出ていますが、こちらでは今回がマーサのデビューです。
よろしくお願いします!
ところで余談、絶滅したリョコウバトの最後の飼育個体の名前が"Martha"なんですね、この曲はうちの犬とは関係ないですが、でもこれは記しておきたかった。
10曲目I'm So Tired
疲れているのにカッコいい!
これもジョン・レノン流ブルーズでソロ1、2枚目につながってゆきますね。
歌メロがとにかくよくて、もうそれしか言えないくらい(笑)。
全体的、特にギターが波を打つような感じに響くのは、眠いからかな。
歌詞の中に「ウォルター・ローリーを呪ってやる」というくだりがありますが、ウォルター・ローリーとは英国にタバコを持ち帰って広めた人。
実際に当時のジョンはいろいろあって眠れなかったようですが、眠れないのでタバコを次々と吸うということになり、タバコを持ち帰った人に八つ当たりした、というわけ。
ジョンは生前最後のインタビューでも喫煙者だと明言していました、ついでに、薬(タバコ系のもの)はもうやっていないとも。
それにしても、"I'll give you everything I've got for a little peace of mind"この部分は自分で歌っていても自己陶酔しますね、カッコよすぎる。
11曲目Blackbird
ギターを弾くビートルズ好きには避けて通れない道(笑)。
僕もこの曲は、高校2年の時、時期は忘れたけど、楽譜が家にあったので、一念発起して1日で覚えましたが、弾く度に、ポールの音へのセンスの鋭さを感じますね。
"Blackbird"は標準和名が「クロウタドリ」、ツグミの仲間ですが、北海道でも迷鳥として記録があるので、鳥好き人間としての僕の夢は、いつか北海道でクロウタドリを見ることです。
まあ、英国に行けば住宅街にも普通にいる鳥だそうで、お金を出して英国に行く方がはるかに早そうですが・・・(笑)。
余談ですが、「クロウタドリ」という鳥の名前は小学生の頃に知ったのですが、意味を知らなかったので僕は「苦労辿り」だと思い込み、なんてかわいそうな名前をつけるんだって思いました。
それが、中2の時、この曲を聴いて氷解しました。
「黒歌鳥」だったんだあ、と(笑)。
12曲目Piggies
豚を題材にバロック調の味付けをしたジョージのシニカルでコミカルな曲。
この曲はなんといっても、ジョージの1991年の東京ドームのコンサートで、まさかまさか、演奏されたのがこれ以上ない思い出。
最後のほうに豚のお面を被った誰かが出てきて踊っていたっけ。
この曲の歌メロ、特に流麗に流れるAメロは、ジョージの作曲家としての潜在能力の高さを感じずにはいられない。
13曲目Rocky Racoon
ポールが本格的カントリー調をやってみた曲。
最初の部分はポールがアメリカ風英語で歌っているそうで、そこをうまく言えるか、高校時代に友だちと競ってました(笑)。
ハーモニカも含め、ビートルズの芸の細かさがよく分かる曲。
そしていかにもアメリカ的イディオムのタイトルがある意味おかしい。
歌詞の中に出てくるギデオンの聖書について調べているうちに、僕は、アメリカではホテルの部屋に聖書が置いてある(すべてではないかもしれないけど)、ということを知りました。
このことでポールとその聖書を出しているところがちょっともめたとのことです。
14曲目Don't Pass Me By
リンゴが事実上が初めてひとりで作って発表した曲、作っただけならこの前にもあったかもしれないけれど。
単純な3コードのカントリー風の曲で、リンゴはオルガンも演奏。
カントリー風というのはフィドルが入っているからですが、でも、僕は、それがなければカントリー風とは思わなかったんじゃないかな。
僕はこの曲は最初から歌メロがとにかく大好きで、もう30年以上ずっと、よく口ずさむ曲であり続けています。
リンゴが作ったからといって色眼鏡では決して見ていない、同じビートルズの1曲なのですが、でも、リンゴが初めて作ったから、結局のところ肩入れしている、といえるのでしょうね(笑)。
15曲目Why Don't We Do It In The Road?
ポールがまったくひとりで作り上げたおかしなブルーズロック。
ジョンはこの曲は好きだけどポールのやり方が気に入らなかったらしい。
歌詞が3つのくだりだけで構成され、ほとんどが1つの繰り返しで、歌い方だけ変えて最後まで展開しないで終わるのも面白い。
ポールもやっぱりちょっと変な人なんだな、って(笑)。
ところでこれ、どうして"on"ではなく"in"なのだろう。
やっぱり語呂を考えたんだろうなあ。
確かに自分で歌っても"On"だとしっくりこないから。
または、"road"を平面の「場」ではなく、劇場のような「空間」として捉えているのかな。
ところでこの曲、残念ながら、今のポールには歌えないだろうなあ・・・それくらい鬼気あふれるヴォーカルがすごい。
16曲目I Will
しかしポールのすごいところは、あんな狂気じみた変な曲の後で、これほどまでに心のこもった美しい曲をさらりとやってしまうところ。
正直僕は、ビートルズの全楽曲の中で、歌メロだけをとればこの曲がいちばん好き。
つまり、僕にとっては、世の中でいちばんいい歌、ということになりますね(笑)。
ポールがスキャットでベースを入れています。
この曲には、まったくどうでもいい個人的な思い出が(そればっかりですが)。
東京で仕事をしていた時、ひとりで外に出て回っている間にこの曲が頭に浮かんで人が周りにいない時には口ずさんでいました。
職場に戻ると、いつもかかっていたJ-WAVEでまさにこの曲がかかっていた、その偶然がなんだかおかしくてうれしかった。
はい、それだけです(笑)。
17曲目Julia
ジョンが3フィンガー・ピッキング奏法に挑戦したバラードで、奏法はドノヴァンに教わったのだという。
「ジョンの魂」のLook At Meはこれが進化したものですね。
力が抜けまくったジョンの歌い方は、優しさというものを最大限に表していて、3曲目とほんとに同じ人なのと思うくらい。
歌詞の中の"Ocean Child"は「洋子」をジョンが訳したもので、実母とヨーコさんのイメージを重ねてできたのがこの曲ということでしょう。
曲の中で一度しか出てこない中間部で不安な歌メロになるのが唐突で、慣れない頃には驚いたものです。
ともあれ、優しさに包まれる感覚で1枚目が終わります。
Disc2 (LPのC面)
1曲目Birthday
リンゴのイントロのドラムスが印象的ですが、僕はドラムスは演奏できないので上手いかどうかはいまいち分からないけれど、リンゴのドラムスは曲にいい表情を与えているのは間違いない。
エリック・クラプトンが参加、コーラスにはジョージの元妻パティも。
ということは、あのLaylaはここから始まったのかもしれない・・・
ギターリフがとにかく印象的でカッコいいけれど、ギターソロはないし(短いフレーズが入るけど)、歌自体も腑抜けするほど叫ぶだけ、それもまたポールらしく人を食っていて面白い。
2曲目Yer Blues
当時流行っていたブリティッシュ・ブルーズを皮肉ったもの。
しかも「当事者」であるエリック・クラプトンが参加していることで、自嘲的な面もあるという奥深さ。
この曲は演奏していると楽しいビートルソングの筆頭格ですね。
エリックのギターソロはエリックらしくて鋭いけれど、よたよたしながらもまったくもって感覚だけで対抗するジョンもまたすごい。
今の僕は、この曲も好きな10曲のひとつに挙げると思う。
ところで、1968年はブリティッシュ・ブルーズ・ロックにとって重要な年でしたが、考えてみればこれもその年に出たアルバム。
そこでブルーズを連発するのは、周りに影響されやすいジョンならではであり、このアルバムが1968年のちょっとしたダイジェストになっているのも意味深いですね。
3曲目Mother Nature's Son
ポールが自然が好きそうだと分かって、やっぱり僕はビートルズを聴く運命にあったんだと思ったものです(笑)。
アコースティッ・ギターの弾き語りにホーンだけ入る、やっぱり、ポールは管楽器の使い方、センスが図抜けていますね。
自然がモチーフなだけに、これもきわめてよく口ずさむ歌のひとつです。
4曲目Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey
ビートルズでいちばんタイトルが長い曲がこれですね。
ただ、歌詞の中では"...except for me and my monkey"と歌っていて、本来なら"for"が入ってあと3文字長くなるところだったのが、さすがに長すぎるとジョンは思ったのかな(笑)。
あまりにもファンキーな、ロックンロール以上のロックンロール。
ギタープレイもハードで割と手が込んでいて素晴らしい。
しかしなんといっても最後のポールのベース、悶絶もののカッコよさで、決めのフレーズとしてこの世でいちばんカッコいいと言ってしまいたい。
リッケンバッカーだと思う、このポールのベースの音は。
パーカッションがエスニックなリズム感を表現していて、ビートルズもその方向に進む可能性があったことが感じられ、やはり音楽を広く見ていた人たちなんだなと。
5曲目Sexy Sadie
このアルバムでジョンは「ジョン流ブルーズ」を確立しましたね。
曲の印象をひとことでいえばブルーズなんだけど、でも細かく見るとブルーズをむしろ壊した上で再構築しているのが分かる。
この曲は「師」への怒りを間奏も展開もなしに性急に歌い継ぐのが恐いというか、ジョンの人間としてのすごみを感じます。
フェイドアウト部分で初めて出てくるギターリフがあまりにもかっこよく、その使い方のセンスはさすが。
そしてやっぱりよく口ずさむ曲。
6曲目Helter-Skelter
そしてついにビートルズはヘヴィメタルまでやってしまった。
僕が中学の頃はちょうどヘヴィメタル人気が高まっていた頃で、この曲のおかげで、そちら方面からもビートルズはやっぱりすごいと言われていました。
この曲はとにかくギターを力任せに弾く、それだけ(笑)。
サウンド的には、これだけ重たい曲なのに、ジョンのあの「カジノ」のホロウボディの浮ついた薄いギターの音が個性的な響きを与えています。
今は普通、ホロウボディのギターでヘヴィメタはやらないでしょ(笑)。
テンポが速くてがなっているけれど、やっぱり歌メロが素晴らしくいいのがさすがで、そらで口ずさんでいるとまたこの曲の違った魅力が感じられます。
最後にリンゴが叫ぶ、「指にまめができちまったぜ!」
7曲目Long, Long, Long
ジョージの秘めたる思いを柔和に表した、耐えるというイメージの曲。
スコットランド的な響きなのでしょうね、きっと。
世界的な存在になってもこうしたローカル色が濃い曲が作れるというのがやっぱりすごい。
(LPのD面)
8曲目Revolution 1
シングルはハードロック、こちらはカントリーブルーズ。
やっぱりジョンはブルーズから離れられなかったのかな。
ジョンはこちらをシングルにしたかったようですが、結局はコマーシャルな音を求めたポールとジョージに負けたことが不満だったという。
でも、僕は正直、シングルのハードロックのほうが断然好きです・・・
断っておきますが、僕はジョンだから何でもいい、という人間ではありません、念のため。
まあでも、その辺の感覚がジョンは当時やポールやジョージとはずれていたのでしょうね。
さらにはジョージが台頭してきた頃でもあったし。
9曲目Honey Piie
ポールお得意のディクシーランド・スタイル第2弾。
歌詞もアメリカを意識したものだけど、西洋音楽博覧会だからそれも自然なものと感じる。
ほのぼのとしているようでどこか切ない、味わい深い曲。
そしてやっぱりポールはスタンダードの雰囲気が好きなんだなあ。
10曲目Savoy Truffle
ジョージが作ったグルメソング。
この曲は本などではほぼ必ずジャジーな響きと形容されますが、僕は正直、それがどういうものかいまだにつかみ切れていません。
ジャズっぽい、ということですよね、重たいとは感じるんだけど。
ついでに、"truffle"とは「トリュフ」のことであるのも最近知りました。
ものすごく真面目にヘヴィな曲を演奏している中で、ジョージが「クールなチェリークリーム、ナイスなアップルタルト」と力を込めて歌うのが妙にコミカルで、そうかこれはグルメを皮肉った曲なんだ。
歌詞にOb-La-Di, Ob-La-Daが出てきたり、もうなんでもあり状態。
11曲目Cry Baby Cry
このアルバムのジョンは、なんというか、恐いですね。
それも、怒りまくって湯気が立つような恐さではなく、冷静を装いつつ怨念がたまっていく、ぬめっとしたところが。
表情を変えずに正面からナイフを刺す、みたいな・・・
なぜか入るアコーディオンの音色がまたぬめっとして不気味。
最後のポールがうたうパッセージはポールが考えたものでしょうけど、こういうかたちでまだ2人が「共作」していたのにはほっとするものがあります。
それも込みで、A Day In The Lifeの補遺のような曲かな。
12曲目Revolution 9
サウンドコラージュですね、歌じゃない、でも一応リードヴォーカルはジョンとなっている。
ジョンは、テープのつぎはぎなどで、自身が録音に費やした時間の半分以上をこれにかけたのだとか。
僕は、実は、結構好きなんですよ。
音として楽しめるのはジョンの意図したところだと思います。
この曲についてジョンは、どこから9が来たのか分からないと生前のインタビューで語っていました。
曰く、これ、#9 Dream、One After 909、住んでいた住所にも9が入っていたり、誕生日が9日だし(10月)、と。
でも僕は、普通の人であれば、9日生まれだから9なのではないかと短絡的に思いましたが、そこがジョンはさすがに天才なんだなあ、と。
このアルバムが9作目、というのはしかし、偶然にしてはよくできている。
多分、偶然でしょう、忙しくて何作目なんて覚えていなかっただろうし。
まあともかく、これは9の発音が「ないんぬ」に聞こえるのが面白くて、それだけその発音を真似て口ずさむこともあるかな(笑)。
ところで僕は、アルバムを聴く時は、どんなに嫌いな曲があっても絶対に飛ばさないで聴き通します。
飛ばして聴くのはアルバムを聴くことにならないと思うからです。
もちろんこの考えは人に強要するものではないけれど。
まあでも、そういう考えだから、これも飛ばさずに聴いているうちに好きになったのでしょうね(笑)。
13曲目Good Night
ジョンがジュリアンのために作った子守歌。
Beautiful Boyがショーン君のためだったように。
ほんとうにジョン・レノンは優しい人だったんだなって実感します。
その上旋律も、まるでクラシックのような極上の美しさ。
少年少女の合唱も曲に合っている。
そしてやはり、ジョンではなくリンゴの角が取れた声で歌うから美しい曲に仕上がったのだと思います。
ジョンは「僕には合わない」と言ってリンゴに歌わせたのは照れ隠しもあるでしょうけど、サウンドへの鋭い嗅覚を感じさせるものでもありますね。
もちろん、この歌もとってもよく口ずさみます。
こちらは自分で歌っていて自分で陶酔するほど旋律が美しいから(笑)。
ああ、ほっとした、今日もよく眠れそう。
いかがでしたか!
小林克也風に(笑)。
長くなったのでささっと終えますか。
多分、このアルバム(に限らずビートルズ)は、BLOGを続けている間にまた記事にしたいと思うことがあるでしょうから(笑)。
マーサを家に向かえてから、正確にいえば、新しいキャバリアを家に向かえてマーサと名付けてからほどなくして、ポール・マッカートニーの来日公演が決まりました。
僕は勝手に、マーサはポールの使者だと思っています(笑)。
なんて、犬ばかにて失礼しました。
でも、犬がいない生活は、僕には考えられないですから。
そうそう、マーサが来たことでも生活のリズムが以前と少し変わり、こちらのBLOGの記事を上げる頻度が落ちた、と、弁解がましいですがそう思っています。
いること自体にはもう慣れてきたので、そろそろペースを戻したいのですが。
というわけで、あらためてマーサをよろしくお願いします(笑)。