FOOTLOOSE オリジナル・サウンドトラック | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森-July10FOOTLOOSE


◎FOOTLOOSE

▼フットルース

☆Original Motion Picture Soundtrack

★オリジナル・サウンドトラック

released in 1983

CD-0424 2013/7/10


 今回は、何をいまさら、と言われかねない1枚(笑)、映画『フットルース』のサウンドトラック。

 ここで聴くのは1998年に出た15週年記念盤で、4曲のボーナストラックが追加収録されています。


 もうひと月以上前。

 もうおなじみ「ベストヒットUSA」で、1984年のチャートの特集が組まれ、20位からカウントダウンで曲を紹介していました。

 懐かしいのなんの。

 僕が高校2年、前の年にビデオデッキを初めて家で買い、ビデオクリップを録画して観て聴くことに最も熱が入っていた、そんな年でした。


 上位5曲は

 Jump ヴァン・ヘイレン

 Against All Odds フィル・コリンズ

 When Doves Cry プリンス

 Foootloose ケニー・ロギンス

 Ghostbusters レイ・パーカー・ジュニア


 お気づきでしょうか。 

 5曲のうち4曲は映画の曲、違うのはヴァン・ヘイレンだけ。

 この年は、MTVとの相乗効果もあってサウンドトラック盤がピークを迎えた年として小林克也さんも締めくくっていました。

 今回の記事としては余談になりますが、小林克也さんは、フィル・コリンズのその曲を「苦みがある大人のバラードで甘いだけの曲とは違うのがいい」と評していて、なるほどさすがはうまいこと言うなあと大納得しました。


 その番組を見た翌日(録画で見ているので水曜日ではない)、当然のことながらその5曲が頭の中で繰り返し流れてきました。

 翌日の段階ではGhostbustersで盛り上がったのですが、数日して頭に残ったのはFootlooseでした。


 それからひと月ほどが経っているはずなのに、この曲はなぜか毎日数回、音楽を聴いていない時にそらで思い出して時々口ずさんでいます。

 いつも口ずさまないのは、仕事中に思い出すことが多いから(笑)。


 そして昨日、漸く、このサントラのCDを出して聴きました。

 普段ならすぐに聴いてすぐに記事にするのですが、サウンドトラックの場合、その時の気分には合わないアーティストの曲も入っていることがあり、すぐに手が伸びなかった。

 まあ、それはいい点でもありますよね、裏腹というか、いろんな傾向のアーティストの曲が入っているのでBGM的にはいいともいえますし。


 ともあれ、Footloose、ひと月も頭の中で引っ張るなんて、僕もよっぽどこの曲が好きなんだなと再確認しました。

 僕は当時、この曲の12インチシングルレコードを買いました。

 12インチシングルレコードが流行りのようになっていて、ジャケットは大きいし曲も多くて、商品として引かれました。

 ただ、ビデオクリップを録画するようになっていたせいか、LPは当時は買いませんでした。

 アルバムとして初めて聴いたのはやはりCDの時代になってから。

 しかも、すぐにではなく、今回聴いている15周年記念盤が初めて、つまりCDの時代になってから10年以上が経ってからのことでした。

 まあ正直、20代の若い頃はまだまだ10代の頃の流行りものにはなかなか手が出せませんでした。

 20代というのは前に進んでゆく年齢なのでしょうね。

 懐かしくなるようになると、人間、年を取ったなあ、と実感するのではないかと。


 映画『フットルース』は、No.1ヒットを2曲生み出し、最も成功したサウンドトラック盤の1枚でしょうね。

 売り上げ枚数では『サタディ・ナイト・フィーヴァー』にははるかに及ばないものの、音楽シーンや若者への影響という点ではむしろ逆ではないか。

 サタディのビー・ジーズはきらびやかさが印象に残りますが、フットルースはなんというか、曲が身近で分かりやすいように感じます。

 奇しくも、どちらも同じく労働者が仕事以外の楽しみを見つけるというモチーフですが、前者は日常と非日常が完全に分断されているように感じる一方で、後者は両方があってこその生活というか。

 

 映画は当時、サントラがヒットした割には面白くないなどと言われていた記憶がありますが、1984年は僕もまだ劇場にはあまり行っていなくて、プリンスの『パープル・レイン』は行ったけれどこれは観に行かなかった。

 もう30歳を過ぎてからWOWOWか何かで録画して初めて観ましたが、面白くないと言われていた記憶があった割には普通に面白い映画だとは思いました。

 


 1曲目Footloose / Kenny Loggins

 ケニー・ロギンスは繊細な心持を歌にしみこませて表現するのが上手い人。

 この曲も、一見するとアップテンポの軽快なロックンロールだけど、爽快かと言われると何か後ろに引かれる思いがあるし、元気なだけではないのが曲としての味わいが深いところ。

 なんて能書きを言ってみて、やっぱり僕は当時、ビリー・ジョエルじゃないけれど、「ロックンロールが最高さ」と心底思ったものです。

 複雑な思いを重ねながらも、サビに入るところで吹っ切れて、"Cut it loose"=「やっちまおうぜ!」と宣言して曲が前に進んでゆくのがカッコいい。

 サビの部分でバックに流れるギターの音がスリリングでキレ味抜群で旋律もいい、かっこよすぎる。

 当時はオールディーズ復古趣味が流行っていて、オールディーズ的な懐かしい響きがあるけれど、一方で斬新さも感じる不思議な、絶妙な曲。

 この曲は最近では、マクドナルドの限定のアメリカンバーガーのCMで使われていたけれど、イメージが合うようで合わないようで、僕には微妙でした。

 というのも、僕はどちらかというとこの曲にはストイックさを感じていたから。

 遊びに行こうというのがストイックというのはこれいかに、ですが、なんというのかな、欲望を抑えながら表現しているのはずっと感じていたので。

 ただ、ハンバーガーが車に乗って移動する映像とこの曲のミスマッチ感覚が面白くはあったけれど。

 もうひとつ、この曲は空耳でもおなじみ。

 2ndヴァースの"You're yearning burning for some"の部分が「ヤモリにやられた父さん」と聞こえるものですが、数ある空耳の中でも僕が特に好きなものがこれ。

 ヤモリってしょうもないものにやられたな、というタモリのコメントが面白さに追い打ちをかけていた。

 爾来、ヤモリを見るとこの曲が頭に浮かぶ、といいたいのですが、北海道にはヤモリは生息していません、残念ながら(笑)。

 ともあれ、ロックンロール史に残る名曲といっていいし、僕が特に好きで思い入れが強い80年代ソングスのひとつでもあります。



 2曲目Let's Hear It For The Boy / Deniece Williams

 デニース・ウィリアムスはこの曲で知りましたが、当時の小林克也さんは、ソウルの世界では結構のベテランで実力派であることを説いていました。

 割と若く見えたのでしょうね、なんせ曲が若々しい。

 おまけに、地の声はしっかりしている中で高音になるとコケティッシュな声になるのが特徴的でより若々しいと感じさせる部分。

 彼女のデビューアルバムを4年ほど前に初めて聴きましたが、確かに素晴らしく、いつか記事にしようとずっと思っていますが、そのいつかが近づいたかな(笑)。

 このアルバムから2曲目のNo.1がこれですが、もちろんとってもいい曲で大好きだけど、これが1位になったのはやはり時代を感じますね。

 この曲では、サビの後半の低い声で"Maybe he's no Romeo"と歌う部分の歌詞と歌い方が昔からなぜか妙に大好きです。



 3曲目Almost Paradise / Mike Reno (of "Loverboy") & Ann Wilson (of "Heart")

 ラヴァーボーイのマイク・レノとハートのアン・ウィルソンのデュエット。

 ラヴァーボーイは僕が洋楽を聴き始めた頃は盛りを少し過ぎたくらいで、僕はMTV番組で観て聴いたことがあるくらい、いまだに1枚しかアルバムを聴いたことがなく、ベスト盤すら持っていない、だから多くは語れません。

 一方ハートはこの頃はどん底、この後でかのHEARTで大復活をするのですが、これはそのきっかけになったのでしょう。

 僕もこの時はハートは昔流行ったバンドとしか認識していなかったんだけど、後に大復活して、そういえばあのデュエットの人、と後から頭の中でつながりました。

 映画のサントラではこの後も人気バンドのメンバー同士によるデュエットの佳曲が幾つか出てきましたが、これはその先鞭をつけた1曲。

 また、1980年代は、大物同士によるデュエットが流行りましたが、この曲はその流れにも乗っていたということでしょう。

 ところで、この曲は今記事を書くのに調べていて知ったのですが、エリック・カルメンが作曲しているんですね(もうひとりと共作)。

 70年代にはアイドルとしてもてはやされたエリック・カルメン自身も、この後『ダーティ・ダンシング』のサントラで復活を果たすわけですが、このサントラはあらためて重要なアルバムだったといまさらながらにして思いました。

 歌詞の中で"Knocking on heaven's door"と歌っているのが、なんというか、にやりとさせられますね。



 4曲目Holding Our For The Hero / Bonnie Tylor

 ボニー・タイラーはこの少し前に「愛のかげり」Total Eclipse Of The HeartでNo.1を獲得し注目されていた頃。

 パワフルでハスキーなその声から「女ロッド・スチュワート」などと呼ばれていたっけ。

 しかしこの曲にはなんといっても、「スクール・ウォーズ」のテーマ曲として麻倉未稀がカヴァーし日本でも知られたところとなっている、と言ったほうが早いでしょうね。

 「スクール・ウォーズ」は僕も再放送で見ましたが、お涙ちょうだいが過ぎるかもしれないけれど、確かにいいドラマではあった。

 今でも伝説のドラマとして取り上げられるし、ケーブルテレビなどで再放送もされるので、この曲はいまだに日本でもよく知られているでしょう。

 そのことを頭に置いてこの原曲を聴くと、もうどう聴いても歌謡曲にしか聴こえない(笑)。

 哀愁を帯びた歌メロはもちろん、劇的な流れ、演奏が軽いこと(つまりロック的じゃない)、などなど、アレンジは洋楽としては「やりすぎ」じゃないか、と。

 もしかして初めから日本を狙っていた、と勘繰ってしまいたくなるほど。

 女声コーラスなんて、節も歌い方も日本からの逆輸入としか思えない。

 それにブラスはうるさすぎ、と、ソウルを聴くようになって思う。

 逆にいえばアメリカでシングルヒットしなかったのもよく分かる。

 僕もこの曲は大好きだけど、そういうことを考えると、聴いていると多少恥ずかしくはなりますね。

 ただ、テンポが速くて歌メロがいい曲は日本にはあまりなかったので(僕が耳にした限りでは)、この曲はある意味、その後のJ-POPのヒントになったのかもしれないですね。

 それにしても、80年代のシンセドラムスは、今聴くと、おかしいやら、悲しいやら、違和感の塊で、それがもてはやされていたというのも不思議な時代でした。


 5曲目Dancing In The Sheets / Shalamer

 シャラマーのこの曲もシングルヒットしたけれど、ビデオクリップがなかったのでベストヒットでは12インチシングルのジャケットの静止画の向こうから曲が流れてきました。

 シャラマーはこの曲しか知らないけれど、実は今の今までずっと英国のバンドだと思っていました。

 つまり音的には1980年代英国勢による黒人音楽の焼き直しのような響きで、黒人のはずなのにあまり黒っぽくない。

 そしてシャラマーのメンバーだったジョディ・ワトリーは後にソロとなり大成功を収めたことも、直接的ではないけれどこのサントラの影響力の大きさが分かります。

 ところで、当時はブルース・スプリングスティーンのDancing In The Darkも流行っていて、僕がそれを学校のクラスで口ずさんでいたところ、クラスメイトが「Dancing In The Sheetsを歌ってるの」とからかわれたのですが、やはりそれだけこのサントラがヒットしたということでしょうね。

 まあ、同時に、ボスがいかに日本では人気がなかったか、ということでもあるのでしょうけど・・・(笑)・・・



 6曲目I'm Free (Heaven Helps The Man)

 ケニー・ロギンスがもう1曲、これはLPのB面1曲目ということかな。

 疾走感があって切ないロックンロールの佳曲だけど、コーラスもキーボードもギターソロのギターの音色も、悲しいくらいに80年代サウンド(笑)。

 


 7曲目Somebody's Eyes / Karla Bonoff

 カーラ・ボノフはまだまったく聴いたことがありません。

 この曲も実は、今回聴き直すまで忘れていましたが、だから今ここで初めて聴いたようなもの(笑)。

  もれうかがうところによれば、カーラ・ボノフは個性的な人だそうで、だからありふれた80年代ポップスのこの曲では何かを語るものでもないかな。

 いい曲だとは思うけど。



 8曲目The Girl Gets Around / Sammy Hagar

 サミー・ヘイガーが入っていたことも今回聴くまで忘れていました。

 まあ、1998年に買って数回しか聴かなかった上に、6曲目までは高校時代にどこかで聴いて覚えていたその印象が強かったからでしょうけど、それにしても大好きなサミーを忘れていたなんて、喝だこりゃ(笑)。

 サミー・ヘイガーは当時はまだ日本では「アメリカンロック野郎」以上の認識ではなかったでしょう。

 確かこの翌年、もう1年後かな、サミー・ヘイガーの来日公演がチケットの売り上げが悪くて中止になったという記事を「FMファン」で読みました。

 僕は「ベストヒットUSA」を見ていてアメリカンロックが大好きだったのでサミー・ヘイガーは当時から知っていましたが、日本で人気があるかどうかまでは世の中を知らなかったので、あんな有名な人でもコンサートが中止になるんだと驚いたものです。

 しかし、その後にデヴィッド・リー・ロスが抜けたヴァン・ヘイレンに加入したと聞いてさらに驚いたのですが(笑)。

 曲はやはりいかにもサミー・ヘイガーという真っ直ぐで熱くてギターサウンドがいいロックンロール。



 9曲目Never / Moving Pictures

 ムーヴィング・ピクチャーズは名前を聞いたことがあったくらいで曲は知りませんでした。

 ラッシュのアルバムを思い出すのは言うまでもないけれど(笑)。

 しかし、この曲は知っている。

 MIEが日本語訳でカヴァーして、やはり何かのドラマのテーマ曲としてヒットしましたよね。

 実は、僕は、MIEのその曲は知っていたけれど、それがまさかFOOTLOOSEのサントラに入っていた曲だったなんて、このCDを買って聴くまでまったく知りませんでした。

 つくづく、このサントラは日本のためにあったんだ、は言い過ぎだけど、日本でも広く聴かれていたのでしょう。

 そして、今の日本は洋楽がなんだか日常生活からは遠い存在になっているように感じているけれど、80年代前半はまだまだ洋楽がその辺に転がっていたんだな、とも思いました。

 これまた歌謡曲的で、ここでこうして聴くと妙に恥ずかしいものはありますね(笑)。

 オリジナルのLPはここで終わり。

 ただ、僕は、アルバムとして聴き通すと、この曲が最後というのは、途中で放り出されたような感覚になりました。



 ここからはボーナストラック。



 10曲目Bang Your Head (Metal Health) / Quiet Riot

 クワイエット・ライオットはこの少し前にスレイドのCum On Feel The Noizeをカヴァーして全米No.1に送り込んでいましたが、確かそれはヘヴィメタルと呼ばれる音楽で初めてのNo.1ヒット曲だったと記憶しています。

 この曲はそれが収録された大ヒットアルバムからですが、映画では使われているのでしょうね。

 ヘヴィメタルが広がりつつある当時を彷彿とさせる選曲ですが、この中にあっても違和感がないのがサントラの幅の広さでしょう。



 11曲目Hurts So Good / John Cougar (John Mellencamp)

 ジョン・メレンキャンプがジョン・クーガーと名乗っていた頃の大ヒット曲。

 この曲「青春の傷あと」は、僕がビートルズ以外の洋楽を聴き始めた頃、J.ガイルズ・バンドの「堕ちた天使」の次に大好きになった思い入れがとっても深い曲。

 そんな曲がおまけで入っているのは、おまけ以上のうれしさがあります。

 映画に使われていたんだ、いかにもそういうモチーフの曲ではあるし。

 ところで、この曲のギターのイントロは、やっぱり、マイケル・ジャクソンのBlack Or Whiteのそれに似てますよね。 

 こっちが先です、念のため、ただし、「似ている」以上のことを僕は言うつもりはない、それも音楽の楽しさのひとつとだけ言っておきますが。



 12曲目Waiting For A Girl Like You / Foreigner

 フォリナーの「悲運の」大ヒット曲も収録。

 この曲はビルボードではなんと9週連続2位という、名誉だか不名誉だか分からない記録を打ち立てた。

 ちょうどその頃、オリヴィア・ニュートン・ジョンのPhysicalが10週連続1位を記録していた。

 でも、ロック系の人気が高かった当時の「ラジオ&レコーズ」誌を基にしたベストヒットでは逆にこちらがオリヴィアを抑えてずっと1位を記録していました。

 フォリナーも僕はこの曲で知りましたが、洋楽の奥深さ、幅広さを知った曲でもあります。

 この曲については(つまらない)思い出があるのですが、いずれきっとアルバムも取り上げるでしょうから、その話はその時に。


 13曲目Dancing In The Sheets (Extended 12' Remix)

 最後はシャラマーのリミックス。

 先ほどベストヒットでは静止画だったと書きましたが、それがこのジャケット、うまく話がつながりました。

 書き忘れていたけれど、この曲はサビの最後でタイトルを歌うその音が完全終止ではないつまり「ド」の音で終わっていないのが面白くて興味深かった。


 

 繰り返しになるけれど、正直いえば当時はただ大ヒットしたサントラ以上には思っていなかったんだけど、こうしてじっくりと聴いてみると、僕が昔思っていた以上に意味や価値の大きなアルバムなのだと思いました。

 当時の音楽の流れを凝縮していて、今から見るとこれ1枚である程度当時の音楽をつかむことができるのは音楽を語る上で資料的な価値がある。

 さらには、ハートやエリック・カルメンが後に復活することで、このアルバムはいろいろな種を蒔いていたということにもなります。


 おまけに、リアルタイムで体験した僕としては、懐かしさの玉手箱でもあるし。


 ずっと聴くと恥ずかしくなるかもしれないけれど(笑)、たまに聴くのはいいですね。

 これからもそのような存在であり続ける、そんな1枚だと今回は思いました。