SUDDENLY ビリー・オーシャン | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森-March22BillyOceanS


◎SUDDENLY

▼サドゥンリー

☆Billy Ocean

★ビリー・オーシャン

released in 1984

CD-0379 2013/3/21


 ビリー・オーシャンの大ヒットアルバムを今日は取り上げます。


 クイーンを記事にしてから、心が1980年代に戻っているようで、中高生時代の音楽をいろいろと思い出して聴いています。

 

 ビリー・オーシャンのこのCDは、たまたまCDの棚で目に留まったもので、連鎖的に思い出したのではないけれど、でもこのタイミングで目が合うのは必然のように感じて、CDを何度か聴き、記事を書くことにしました。


 ビリー・オーシャン。

 僕より若い世代の人は、誰それ?、でしょうかね。

 僕より上の世代の人にとっても、そうかもしれない・・・

 活動が目立っていたのは、ほぼ1980年代後半だけだった上に、後にあまり顧みられていないようだから。



 先ずはビリー・オーシャンをWikipediaから抜粋して紹介。

 トリニダード・トバゴ生まれで幼少時代に英国に移住し、1970年代からソウル歌手として活動、7枚目のこのアルバムがアメリカで突然の大ヒット、以降アルバム3枚に及ぶ期間に3曲のNo.1、7曲のTop10ヒットを放った、という人。

 チャート上では十分以上に成功を収めた人と言えますね。

 でも、特に情報を追っていなかった僕は、その3枚以降、突如として音沙汰がなくなり今に至っている、という印象を受けます。

 大ヒットアルバムのタイトルの如し、"suddenly"、突然ヒットし、突如として表舞台から去った人。


 僕が洋楽を聴き始めた頃、ソウルはほとんど死んでいました。

 僕は最初、ソウルというのは、1970年代の黒人のポップミュージックを指すもの、つまり年代限定の言葉だと思っていたくらい。

 「ソウル・ドラキュラ」ってありましたね、小学生の頃、それが良くも悪くも印象的で、そのイメージを引っ張っていたのでしょう。

 まだ洋楽を知らなかった僕は、ソウルといえばスティーヴィー・ワンダーでもありました、というか、それしか知らなかった。

 ここまで話してお気づきかと思いますが、当時の僕は1960年代もソウルとはいわないものだと感じていました。

 実際は、1980年代に入る前から活動していた人の新しい作品に対してはソウルと称していたようですが、80年代に入って出てきた新しい人はソウルとは言われなかったと思います。

 

 当時はまた、ソウル色が薄めでヒットチャートを狙った黒人のポップミュージックである「ブラック・コンテンポラリー」通称「ブラコン」が流行っていました。

 ソウル系のすべてがそこに入るわけではないけれど、まだ洋楽の知識がなかった僕は、「ブラコン」は「ソウル」に取って代わる言葉だと思って暫くは接していました。


 ちなみに、黒人のポップミュージックをR&Bと括るようになりそれが一般的になったのはもう1990年代に入ったくらいからで、それまでは"R&B"はひとつの音楽のスタイル(ブルーズとソウルの中間)を指す狭い言葉として使われていました。

 当時は「リズム&ブルースの死」という名著も出たくらいですが、今のように音楽を聴く人なら誰もがR&Bという言葉を知っているわけではありませんでした。


 ビリー・オーシャンは、実際は70年代から活動していたわけですが、このアルバムで出てきた時は、今の時代に本格的なソウルっぽい歌を聴かせてくれる人、という触れ込みで紹介されていました。

 当時はうちでビデオデッキを初めて買った頃で、物珍しさも手伝い、MTV番組で手当たり次第に録画して聴くのが新たな楽しみとなっていました。

 その頃の僕はもうソウルとはどんなものかの輪郭がつかめてきていて、モータウンのヒット曲集のLPも買い、ソウルのかじり始めくらいにはなっていました。

 

 1曲目Caribbian Queen (No More Love On The Run)

 初めて聴いた時、確かにソウル、うんと黒っぽくて、少しかすれたハイトーンヴォイス、これをソウルフルなヴォーカルというのだな、と子ども心に思いました。

 でも、80年代前半、ヒップホップ革命が起こる前のブラックミュージックのヒット曲って、今の時代にさかのぼって聴くと、やっぱりそれほど黒っぽくはないと感じますね。

 むしろマイケル・ジャクソンのほうがうんと黒っぽいと感じる不思議。

 当時の黒っぽさとは相対的なものだったのでしょうかね。

 だとすれば、当時ロックはロックで、ルーツであるブルーズやR&Bからもっとも離れていた時期、と言えるかもしれない。

 だから余計に英国勢がモータウンの焼き直しに頑張っていた、と考えると納得できる部分はあります。

 この曲も、シンセドラム、取ってつけたようなサックス、浮き上がるシンセサイザーと、もうこてこての80年代サウンド。

 ちょっと恥ずかしいし後ろめたいような気持ちもあるけれど、もうこれだけ時代が離れてしまうと、やっぱり懐かしいですね。

 むしろ離れたから聴ける。

 No.1ヒットとなり、確かにいい歌だとは思いましたが、でもこれは大人が聴く音楽だなあと、当時はそれ以上心が近づくことはありませんでした。


 ところで余談、ビリー・オーシャンには「単語8つの法則」というものがあるのです。

 No.1になった3曲を挙げてみると

 Caribbean Queen (No More Love On The Run)

 There'll Be Sad Songs (To Make You Cry)

 Get Outta My Dreams, Get Into My Car

 タイトルがすべて単語8つの曲なのです。

 しかも、映画「ナイルの宝石」のテーマ曲がWhen The Going Get Tough, The Tough Gets Goingと9単語で3位止まりだった、というおまけまでついています。

 タイトルから"When"を抜けば8文字でNo.1になれたかもしれない(笑)。

 逆に、There'll Be...はSad SongsではなくA Sad Songにしていれば1位になれなかった・・・

 なんて、偶然とはいえ面白い話。


 次のシングルは5曲目Lover Boy、ビデオクリップも録画して観て聴いていたけれど、これがいい。

 低音リフが動く曲がそもそも僕は好き、サビはA→A→D→Eのギターによるコード進行でロックっぽい、ロック人間にも分かりやすい曲。

 もちろん歌メロもいい。

 おまけにこれ、ビリーが馬に乗って海岸を走る白馬の王子風のSFチックなビデオクリップが印象的で、高校時代の朝礼前の音楽談義時間に、最初のシングルでは誰も反応しなかったのが、この曲では話が盛り上がりました。 

 イメージが合わな過ぎた、そのミスマッチ感覚が楽しかったのでしょう。

 だって、前の曲ではタキシード姿でクラブで歌っているだけでしたからね。

 そして誰かが言った、「ビリー・オーシャンって顔が水牛みたいだよなあ」

 当時は冗談で、ビリー・モウシャンと呼んでもいたっけ。

 この曲は僕も気に入ったので、売れていたし、LP買おうか迷ったのですが、店頭で手に取るところまでは進まないうちに気持ちが落ち着きました。

 

 9曲目Suddenly、次のシングル、当時聴いたのはこの3曲まで。

 これはムーディーなソウルバラード、この少し前にヒットしたライオネル・リッチーのHelloの路線。


 アルバムを始めて聴いたのは、3年くらい前かな。

 やっぱり人間、年を取ると昔が懐かしくなり、そういえばそんな人いたなあ、そんな曲あったなあ、と思い出したところでなんだか聴きたくなり、安かったCDを買いました。

 ところが、それから1年もしないうちにボーナストラックが入ったリマスター・リイシュー盤が出て、悔しい思いを抱きながらも買い直しました。

 僕はなんとなく懐かしくなったんだけど、そんな思いは、レコード会社の人も一緒だったのかな(笑)。

 

 アルバムを聴いてみると、なんと、4曲目The Long And Winding Roadが入っているじゃないですか。

 もし当時、レコードを手に取って見るまで行っていたら買ったかもしれない、と今にして思う。

 アレンジはよくあるムード歌謡風で、やっぱりこの曲はこうなるよなあというお手本、良くも悪くも。

 そもそもポール・マッカートニー自身だってこの少し後にこれに近い崩し方で再録音していたし。

 ただ、この曲はソウルフルに歌うと音符が滑らかに続きすぎてさらっと流れてしまい、歌の旋律の劇性が薄れるように感じました。

 

 他の曲もいかにも80年代サウンド、ベースはバキバキ、ギターはペリペリ、キーボードはフワンフワン、それぞれの音が独立しているといった響き、でも思ったほどブラコンっぽくない。

 3曲目Syncopation、シンコペーションを歌にするのは面白い、少しタイミングがずれているけれどそこがインパクトがある男性の歌なのでしょうね。


 知っていた曲はやっぱりいい、昔よりいいと思うのはやはり、音楽にはふさわしい年齢があるのかもしれない、と(笑)。


 心地よいサウンドであるのは間違いなく、ソングライターとして優秀な人のようで曲はいいし、懐かしさ込みで今聴くとかなりいい、気に入った。

 リマスター盤を買ったことで余った旧盤を車に積んで聴いていますが、硬すぎず柔らかすぎず、つまり運転に神経を張りつめるわけでもなくかといって眠くもならない、ちょうどいいですね。

 80年代サウンドが賑やかだからかもしれない(笑)。

 

 リアルタイムでは聴かなかったアルバムでも、まだまだたくさんいいものが残っているはずで、そういうCDのを「再発見」するのも、音楽の楽しみのひとつですね。

 

 まあ僕自身としてはその前に、一緒にリマスター盤を買った次のアルバムに進むとしますか。