◎ORANGE EXPRESS
▼オレンジ・エクスプレス
☆Sadao Watanabe
★渡辺貞夫
released in 1981
CD-0372 2013/3/9
渡辺貞夫の、代表作、なのかな、ヒット作であるのは間違いないアルバムを本日は。
先日記事を上げたドナルド・バードを聴いて、もしかして僕はフュージョンっぽいのが聴けるお年頃になったのかな(うへっ、自分で言って気持ち悪い・・・(笑)・・・・)、と思い始めました。
他に1枚、フュージョンに分類されるであろうCDを同時に買っていてそれも気に入った上に、記事にするかもしれないのでネタばらしになるけどいうと、ドナルド・バードをもう1枚買ってそれも気に入りました。
今回の渡辺貞夫は、そのことを考えるのに、家にあるCDを聴き直してみた、そんな話です。
僕がビートルズを聴き始めた中2の頃、ちょうどこのアルバム、表題曲がヒットして話題になっていました。
本人が出ていた確か資生堂のCMの影響も大きく、そこに映し出された渡辺貞夫という人は、純朴で優しそうで素敵なおじさん、いいなあと思いました。
CMで見るようになり、父が渡辺貞夫が好きだと知りました。
といってLPは持っていなかったのですが、父は1970年代にエアチェックをよくして聴いていた人で、その中にナベサダもあったのでしょう。
父はベニー・グッドマンとライオネル・ハンプトンが好きで、マイルスより後のジャズは分からないと言っていた人でしたが、ナベサダは特別だったのかと。
ちなみに父は、オープンリールデッキに一度番組ごと録音し、その中から要る曲だけカセットに落として聴いていて、僕も洋楽を聴くようになり、そのやり方を踏襲しました。
CMで聴くOrange Expressは確かにキャッチーな曲で、僕も好きになり、ドーナツ盤をまずは買いました。
それから、もう1982年、中3になっていたと思うけれど、輸入盤専門のタワーレコードなるレコード店が札幌にあると知り、初めて行った時に、このLPの輸入盤があったので買いました。
日本人なのに輸入盤がある、というのが、妙に感動しましたね(笑)、そういう時代でもあったし。
ちょうどビートルズのレコードを買い集めていた頃で、中2の9月から中3の7月まで11か月間、僕はほんとうにビートルズとメンバーのソロしか聴いていなかったのですが、何事にも例外はある、これがその唯一の例外でした。
当時はビートルズばかり聴いていたわけですが、でも、中学時代だからだんだんと大人へ向けての思考が発達する頃で、ジャズのLPを買った自分が妙にうれしかった、そんな思い出も。
ただ、僕はジャズだと思って買ったわけですが、でもフュージョンといえばフュージョンなのでしょうね。
つまりは、僕のフュージョンの始まりがこのアルバムということでしょう。
実際、そういう時代の音楽ではありますね。
渡辺貞夫自体は、始まりはもっと普通のジャズだったのでしょうけど。
CDを買ったのは数か月前のこと。
本家BLOGでこのことに触れて、そういえばCDは持っていないんだ、つまりもう四半世紀以上聴いていないんだ、懐かしい、ということで最新リマスターのBLU-SPEC CD盤を買いました。
それにしても、今聴くと、この頃は何か希望に満ちていたような、そんな甘酸っぱい思いがこみあげてきますね、まさにオレンジのように。
実際に音の広がり感が、ゆったりとしつつ前を向いている、そんな気持ちにさせられます。
その頃からほとんど成長していない僕自身はどうなのかと思わなくもないんだけど(笑)、聴くと気持ちが若くなる、そんな音楽も存在するような気もします。
1曲目Orange Express
というわけで僕がフュージョンでいちばん好きな曲はこれということになるのかな。
ナベサダのサックスが奏でる旋律が、ほんとうに歌、ただ歌詞がないだけ、でもそれじゃ歌と言わないのだろうけど、ハミングで口ずさんだり口笛を吹いたりを自然としたくなる曲ですね。
と思ったやっぱりというか、この曲はマイアミ・サウンド・マシーンが歌詞をつけてカヴァーしていました。
ということを、実は僕は、少し前に本家BLOGで知ったのですが、それから家にあるCDを聴きました(あるのに知らなかったのは、まあよくあること・・・)
キィを少し上げていること以外は、だいたい予想通り、いい意味で、楽しい歌に仕上がっていますね。
原曲はBメロの最初の音がとても低いんだけど、キィを上げることによってそこが自然に歌えている、もちろんグロリア・エステファンの歌唱力の賜物でしょうけど、いいですねこれ。
原曲に戻って、当時は知らなかったのですが、ブックレットを見て知った、ギターはジョージ・ベンソンなんですね。
ジョージ・ベンソンも僕が小学生時代にCMに出ていて名前と顔だけは知っていましたが、まだ2枚しかCDを持っていなくて、これから聴いてゆくことになるでしょうね。
"express"というのがまさにピッタリ、ちょっと急いだ、でも何か気持ちに余裕がある曲。
2曲目Ride On
このアルバムのキーボードと編曲はデイヴ・グルーシンが努めています、ということも、CDを買ってブックレットを見て知りました。
まったくもって当時は、ただ聴いてただいいと思っていただけ・・・でも、音楽とは、本来はそれでいいのかもしれないですけどね(笑)。
それはともかく、この曲を聴くと、当時深夜放送でよく見ていた「白バイ野郎ジョン&パンチ」を思い出します。
なんだか好きだったな、あの番組、根底に人間を見つめる優しい視線があって。
その番組の音楽はデイヴ・グルーシンではなかったと思うけれど、でも、映画やテレビの音楽で名前をよく聞く人ではあり、同じ時代、同じ空気を感じる音楽ではあると思う。
そしてもうひとつ、確かナベサダはスクーターのCMにも出てましたよね。
"Ride On"というタイトルはそこにもつながってゆきます。
小気味よく、ゆっくりと街中を進む感じがいい曲ですね。
ベースはマーカス・ミラー。
ううん、楽器を弾く側の人間としてすごいベーシストであるのは知っているけれど、まだリーダー作は聴いたことがない。
3曲目Call Me
この曲は当時ものすごく感動しました。
バラードですね、切ない曲、やはり歌詞はないけれど、サックスを通して感情が伝わってくる。
今聴いても、歌詞をつけてソウル系の男性歌手が歌うと映えるんじゃないかなと思う。
自作というのがまた敬意が増す部分です。
4曲目Good For All Night
この曲はタイトルを見なければ完全に朝をイメージする、爽やかな朝。
徹夜明けの朝なのかな。
ちなみにCall Meは典型的な夜のイメージ。
5曲目Bagamoyo / Zanzibar
渡辺貞夫さんがアフリカに行ったテレビ番組や雑誌の記事を何度も見たことがあるように、アフリカがお好きなんですよね。
この曲、前半は、ステップの向こうが白み始めたというまさにアフリカの大地のイメージの穏やかな曲。
打楽器が少しずつ盛り上がったところで、後半の曲が始まる、この間が絶妙で、飛び出してくるサックスの旋律が素晴らしくて、当時1曲目以外では、いや、1曲目以上に大好きになりました。
"Zanzibar"といえばビリー・ジョエル、52番街、でも僕はビリーを後で聴きました、あれはバーの名前でしたが。
この曲はいいですね、大人になってますますそう感じるようになりました。
6曲目Straight To The Top
デイヴ・グルーシンの曲、というのはCDを買ってから知ったんだけど。
そう聞くと、もうこれは都会的なテレビドラマの世界にしか聞こえない。
リズムもジャズらしいタメがなく真っ直ぐだし。
それにしても、どうして、音楽には、時代の空気が刻み込まれるのだろう。
7曲目Mbali Africa
もう1曲、アフリカを題材にした曲が。
主題が始まっていきなり入るソプラノサックスのものすごく高くて伸びた音にぐぐっと心を掴まれる。
そうか。
今思えば、僕は、ポリスやポール・サイモンやピーター・ガブリエルの前にアフリカ的な響きの音楽に接していたんだな。
そこからすぐにアフリカ音楽に心が向いたわけではない、いわばワープしたような状態だけど、僕のアフリカ音楽のルーツはナベサダだったんだ、間違いなくトトじゃない(笑)。
今になって納得しました。
さて、やっぱりこの音楽は世間一般にはフュージョンと言われているのでしょう。
でも僕は、フュージョンと断言されてしまうのは、いささか心的抵抗があるのは否めません。
音楽が聞こえていないのではなく、ジャズとして僕が生まれて初めて買ったレコードだからという、あくまでも個人的な事情による身勝手な言い分であるのは分かっていますが。
この後の2枚を僕は当時LPを買いましたが、そのうち聴かなくなってしまいました。
今から聴くかな、渡辺貞夫、やっぱり好きだな、人として。
フュージョンが聴けるかもしれない、と思い始めたこともあるし、ちょうどいい。
最後にどうでもいい余談。
今回の犬とCD写真、ポーラですが、僕がこの写真に込めたシークレットメッセージが分かる方は、NFL通の方とお見受けします(笑)。
(弟がまた犬用の服を買いました)。