MOURNING IN THE MORNING オーティス・ラッシュ | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-Jan09OtisRush

◎MOURNING IN THE MORNING

▼モーニング・イン・ザ・モーニング

☆Otis Rush

★オーティス・ラッシュ

released in 1969

CD-0343 2013/1/9


 オーティス・ラッシュの1969年のアルバムを今日は取り上げます。

 ここ数回は、1960年代後半のブルーズに少しこだわってゆきます。

 

 オーティス・ラッシュは、1950年代から、いわゆる「シカゴブルーズ」一派として活躍してきたブルーズマン。 

 ロック人間にはAll Your Loveの作曲者として、僕も名前は20代の頃から知っていました。

 大学時代のバイト先に音楽に詳しい人がいて、ゲイリー・ムーアがSTILL GOT THE BLUESでその曲を演奏していた際に話が盛り上がり、彼はしきりにオーティス・ラッシュはいいと言っていたのを今でもよく思い出します。


 活動は長いのですが、このアルバムは、まとまったスタジオ録音のLPとしてはオーティス・ラッシュのデビュー盤ということになります。


 シカゴブルーズは、マディ・ウォーターズやジミー・ロジャーズなどを少し聴いてきているし、ブルーズをあまり知らなかった頃はブルーズといえばシカゴと条件反射的に覚えたものです。

 

 でも僕は、もちろんブルーズはまだまだ入り口をようやく2歩半ばかり入ったくらいでよくは分からないけれど、これを買って聴いて、文献などに当たるまで、オーティス・ラッシュがシカゴブルーズの人であるとは思いませんでした。


 スマートでロックっぽいサウンドですね、これは。


 ブックレットなどを読むと、実はこれ、マイク・ブルームフィールドが作曲をはじめ全面的に制作に参加していて、このアルバムがロック色が濃いと感じるのはそのせいかと。


 録音はメンフィスで行われたもので、ということは前回のアルバート・キングと同じですが、ソウルっぽいというよりは、ロックっぽさを強く感じます。


 

 さらにいうなら、全体的な響きがエリック・クラプトンに似ています。

 もちろん逆で、当時はクラプトンはまだクリームで活動していましたが、だから、もしかしてクラプトンはこのアルバムのような路線を狙ったのかな、と思わなくもないです。

 ただ、1970年代のクラプトンは引きすぎていますが、サウンド面では、僕は聴いてすぐにクラプトンに結びつけてしまいました。


 特に7曲目My Old Ladyは、ヴォーカルだけ変えるとまったくもってエリック・クラプトンの曲で、クラプトンのどのアルバムに入ってたっけ、と、少しの間真剣に思い出そうとしたくらい。

 まあ、でも、クラプトンが特に好きではない人は、だからどうした、といったところでしょうけど・・・


 その曲を含め、マイク・ブルームフィールドは6曲で共作していますが、どれもポップなブルーズといった味わい。

 

 1曲目Meは、ドキュメント番組のオープニング音楽のようにばたっと始まってオーティスのギターがぐいぐい引っ張ってゆく緊迫感漂う曲。

 アルバムの1曲目としてつかみは最高。

 2曲目Working Manは歌メロがつかみやすくポップソングとしてとてもいい。

 そして9曲目Reap What You Sowは、順序は逆だけど、アルバムの中では8曲目から続くスロウなブルーズの流れで、この辺りが本領発揮といったところ。 

 歌詞にアルバムタイトルが出てくるということは、聞かせどころはここということかもしれない。


 5曲目Gambler's Bluesは本格派ブルーズを聴いているなあという感慨に浸れる、歌もギターもホーンも力が入った素晴らしい曲。

 

 オーティス・ラッシュは2曲を書いていますが、うち8曲目My Love Will Never Dieの迫力には圧倒されます。

 スロウなブルーズの正統派といった趣きで、ホーンも決まっているし、歌とコール&レスポンスで鳴っているギターが抒情的ともいえる響き。

 弦を駆けるような激しい弾き方や奇声をまじえて気持ちを表しています。


 最後11曲目Can't Wait No Longerは明るい曲調で、ブラスが引っ張り、女性コーラスも入って、ソウルへの意識を強く感じる曲。

 オーティス・ラッシュのヴォーカルは、魂の力が口の中にこもり外に出きっていないような、すかっと抜けてはいない、重く引きずるものがあるように感じます。

 重たい曲ではそういうものでしょうけど、このように明るくて軽い曲では、明るく成りきれない部分が独特の響きで、そこが味といえるのでしょう。

 

 一方、ギタープレイについて。

 名は体を表すとはよく言われることですが、オーティス・ラッシュのギターはその名の通りラッシュしてくるような響きで、弾きまくるという言葉がぴったり。

 チョーキングとか、B.B.ほどじゃないにしても、ものすごい指の力で弦を曲げてそうだし、歌に負けじと前に出ようとする力を感じます。

 

 オーティス・ラッシュのこのアルバムは、ギターがラッシュしてヴォーカルが沈む、そんなところが特徴と映りました。

 

 聴く前に、パワフルな人だろうなと予想していて、それは当たっていたのですが、ちらと書いたけど、もっと古くさくて土臭い音かといえば、そうでもなかった。

 やはり、ブルーズも時代により音楽が変わろうとしていたのですね。

 1969年といえば英国ブルーズロック大爆発の後ですが、そうした時代背景ももちろん感じます。


 さらっとかけているのもいいし、聴き込めるし、ブルーズはそういうものかと思う部分もあるけれど、ロック人間には聴きやすいアルバムであるのは確かです。


 遅くなりましたが、これは例のAtlanticR&B1000円シリーズの1枚として出ているもので、その点でも聴きやすていいですね。

 僕は11月には買っていて、もうかれこれ2か月CDプレイヤーに入れっぱなし、毎日ではないけど、この2か月でよく聴いたCD上位3枚には入るくらい聴いています。


 オーティス・ラッシュはもちろんもっと聴いてみたい。

 


 ところで、このタイトル、アメリカ人もやっぱり「駄洒落」のようなものは言うんですね(笑)。

 まあしかし、「朝に悲しむ」なんて、駄洒落どころじゃないかもしれないけれど・・・