LET IT BE ザ・ビートルズ | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森-Jan06BeatlesLetItBe


◎LET IE BE

▼レット・イット・ビー

☆The Beatles

★ザ・ビートルズ

released in 1970 

CD-0341 2013/1/6

 

 本題の前に、昨日はPCが不調で記事を上げることができませんでした。

 12月30日におかしくなり、だましだまし使っていたのですが、昨日の夕方、ネットはつながるけど写真の編集ができないというそれ以降最悪の状態に陥りました。

 しかし、半ば諦めつつ再起動を何度かしているうちに、PCが勝手にハードディスクドライヴのチェックか修復か何かを行った結果、12月30日の時点まで戻ることができました。

 1日飛んでしまったので、明日も記事を上げてペースを戻すつもりでいますが、そのためには今日の夜にまた書かないと。



 ビートルズの名目上の最後のアルバム。
 実質的にはABBEY ROADのほうが後に録音されまたことは、今となってはよくしられたところでしょう。


 1969年、ポール・マッカトニーは、ビートルズが世界的な成功を収めた結果、あまりにも大きな存在になりすぎたことを反省、原点回帰をもくろみ、小さな会場でコンサートをしようと提案します。
 しかし、ジョン・レノンは、そんなことしても混乱を招くだけだとビートルズがあまりにも大きな存在になった現実を受け入れないポールの理想主義に異議を唱えました。

 この話は2人の意識や認識の違いが垣間見えて興味深い。
 ポールはやっぱりライヴが好きなんだなというのは、その後の活動をみてもよく分かりますね。
 映画「レット・イット・ビー」の屋上ライヴは、人前で演奏したいというポールの思いを、少しでもかたちに表そうとしたものでしょう。


 1968年から69年にかけ、ビートルズは多くのセッションを行いましたが、その録音素材は数多の海賊盤やANTHOLOGYで聴くことができます。
 

 一度はジョージ・マーティンの手でアルバムとして仕立て上げられ、GET BACKとしてリリースも検討されていましたが、結局はお蔵入り。
 それから4人はABBEY ROADを録音し、先にリリースされました。

 しかし、レコード契約などの関係もあり、一度埋もれた曲をなんとかレコードとして世に出すべく作業が行われることになりました。

 プロデューサーは、それまでのジョージ・マーティンではなく、かのフィル・スペクターが務めることになりました。
 ポールはジョージでいきたかったけれど、他の3人がフィルを押し、その意見が押し通されたというかたちになりました。

 フィルを中心として、膨大な録音素材から使えるものを選別し、フィル・スペクター風の味付けで発表されたのがこのアルバム。

 しかし、このアルバムが発売される前の1970年4月、ポール・マッカートニーはビートルズからの脱退を宣言します。
 そしてビートルズは終わりました。


 とまあ、このアルバムの逸話は、書籍やネットなどで情報がたくさん出回っており、より深く知りたい方はそちらを当たっていただければということで、ここは僕なりに簡単にまとめました。


 ここからは僕の思いを語らせていただきます。


 僕は、このアルバムを聴く前に、マーティン先生がプロデュースした幻のアルバムGET BACKをカセットテープで聴いていました。
 いわば海賊盤ですが、当時の「ビートルズ・シネ・クラブ」、今の「ザ・ビートルズ・クラブ」が通販で売っていたものでした。
 僕はビートルズを聴き始めてファンクラブに入会し、早い段階でそちらを聴いていたので、後にアルバムを聴いて、違いに戸惑いました。


 今回の記事は、GET BACKとLET IT BEの違いについて、僕が思ったことを話すというかたちで進めてゆきますが、以降、本文中では、GB=GET BACK、LB=LET IT BEに収録されたヴァージョンとして書き記してゆきます。




 1曲目Two Of Us

 中学時代のビートルズ友達Oとよく歌った歌。
 演奏がギター1本で雰囲気が出せる上に、イントロのギターフレーズが簡単だけど印象的で、仲間内で演奏するととっても楽しい曲。
 僕らは基本的に、Oがジョン、僕がポールを担当していましたが、僕のほうが少しだけ音感がいいので、そのうちOは、分かりやすい主旋律を歌い、僕がコーラスをつけるというかたちになり、どちらがどちらの担当というのはなくなりました。
 ビートルズのコピーバンドとしては、本来であればしっかりと役割分担があるべきでしょうけど、でもこうして自由に歌うことができるのもビートルズのいいところだと思います。
 この曲はジョンの旋律のほうが音をとりやすいのでOはジョンを歌い、僕がポールを歌いましたが、Bメロのポールが歌う部分だけは、Oがどうしても歌わせろというので譲りました(笑)。
 この曲はGBでは全体的に緩やかでのどかな雰囲気。
 LBの歌い出しの"Two of us riding nowhere" の"riding"がGBでは"going"になっていますが、僕は、"riding"の場合、「アイ」という二重母音の響きがこの流れの中では強すぎる気がします。
 ただ、LBの最後の口笛と、ポールが独唱する最後の部分の"out ahead"というジョンの低音コーラスがGBには入っておらず、全体的にはLBのヴァージョンのほうがいいかな。
 まあいずれにせよ、とにかく歌メロが歌っていて素晴らしい。



 2曲目Dig A Pony

 この曲は絶対にGBのほうがいい。
 なぜなら、GBのほうは、8小節のイントロの後に、サビの部分の"All I want is you"というコーラスが2小節入ってからジョンが歌い始めるところが、LBではそれが入らずいきなりジョンが歌い始めるから。
 このアルバムはおしなべて、正式に発表されたレコードのほうが、こぎれいにまとまって少しタイトなものが採用されていますが、この曲ついては件のコーラスがあるものは正式に出すには耐えられないと判断されたのでしょうかね。
 正直、曲の流れを変えているこれは暴挙といいたくもなりますが、まあファンには分からない事情がいろいろあるのでしょうね。
 僕はこの曲が大好き、ギターリフがなんといってもカッコいいし、ジョージの上の方で鳴るギターも気持ちいいし、歌メロもいい、何よりワルツでハードなロックをしてしまうのが変わっていていい。

 もし僕がバンドをやるなら、これは演奏したい筆頭格。



 3曲目Across The Universe

 この曲はこのセッションが始まる前に録音されていましたが、ビートルズより先にWWFのチャリティアルバムに提供され、後にここにも収められたという、少し経緯が違う曲です。
 WWFのほうは鳥の羽ばたきのSEなどが入っていて、キイがD#で演奏されており、一方LBではSEがなく、キィがD♭となっていますが、実は同じテイクで、テープの回転数を変えただけのものです。
 この曲、どちらもギターのチューニングを変えるかカポをはめないと演奏できないのが昔から悩みの種でした。
 ところが、LET IT BE...NAKEDでは、キィがDのヴァージョンが入っていて、テイクは同じでもこれがオリジナルと思われますが、ここで漸く普通にギターで弾くことができるようになりました。

 なお、この記事では、この曲以外ではNAKED...については無視して話を進めさせていただきます。
 この曲は、歌メロがいいのはもちろんだけど、まさに宇宙を感じさせる深淵な歌詞もいいし、アコースティックギターの演奏もいいし、サンスクリット語の一節をサビに入れるのも印象深くていい。

 あまりにも愛着がありすぎて、冷静さを失う歌ですね(笑)。



 4曲目I Me Mine

 この曲もGBには入っていませんでしたが、それもそのはず、1970年になってから、ジョン以外の3人で録音された曲。

 つまりこの曲は、まったく新規に録音したビートルズの最後の曲ということになりますが、そう考えると感慨深いものがあります。
 しかもそれがジョージの曲であるのは、ジョージ・ハリスンのその後の飛躍を予見したかのようにすら感じます。
 全体的にどことなくラテンの雰囲気があるのが不思議。
 ビートルズいちといえるメランコリックな哀愁漂う曲ですが、その辺はジョンやポールにはない味わいでしょうね。
 ワルツで始まりメランコリックに進んで、中間部でロックになり、ギターをかき鳴らすように激しく鳴らすところは、最初に聴いてあまりに意外な展開で鳥肌が立ったくらい。
 おまけに歌メロが最高によくて僕もよく口ずさむ。
 ジョージ・ハリスンが作曲家としての評価がどのくらいか、僕は知らないけど、もし評価が低いのだとすれば、それは残念なことだと、僕はこの曲を聴く度に思います。
 ジョージ・ハリスン自身も自伝はこの曲の名がつけらているのは、気に入っているのでしょうね。



 5曲目Dig It

 ジャムセッションですね、これが楽しい。
 LBでは"Like a rolling stone"のところからフェイドインしてきて、"Dig it"を繰り返す部分でフェイドアウトしていますが、GBでは前も後ろもその倍くらいあります。
 GBでも最初はフェイドインして入ってきますが、最後は疲れ切ったように演奏がぶつっと終わります。
 これはフルで聴きたいですね。
 ただ、短くしたのは、こんなお遊び的な曲は当時はビートルズのイメージには合わないと判断され、あくまでもダイジェストとして入れたと考えると納得はできるし、僕もそう思いました。
 これはGBのほうが好きだけど、まあ、仕方ないかな。



 6曲目Let It Be

 ビートルズといえばこの曲、というのが、ビートルズやロックを聴かない人にはもはや定着したイメージでしょうかね。
 この曲は、マニアにもそうではない人にも一様に受けがいいのは、それだけ完成度が高いということなのでしょうね。

 僕は、サビで"Let it be"と4回繰り返して歌う部分、そのひとつひとつの気持ちの入り方が違うのが感銘を受けます。

 最初は自信がないけど募る思いを言葉として表してみた。

 2番目はそれを祈りの言葉に変えたいと願う。

 3番目は願いを込めすぎて気持ちが高揚してしまいどうなるか分からない。

 4番目でそれに気づき冷静さを取り戻そうと自分に言い聞かせる。

 そんな思いの移ろいを、たった3音節×4回の中で感じます。 

 いずれにせよ、祈るというかたちをロック音楽の中で最もよく表した曲でしょうね。

 GBにはこれはシングルヴァージョンがそのまま入っていました。
 僕が最初にエアチェックして聴いたのは、間奏に派手なギターソロが入ったアルバムヴァージョンでしたが、当時はギター弾き始めの頃で、GBを聴いていささか不満でした。
 ただ、大学生になったくらいかな、なぜか突然、シングルヴァージョンのほうが好きになり今に至っています。
 シングルヴァージョンのギターソロは音が目立たないけれど、旋律が曲の流れにはまっていてきれいでいいと思います。
 なお、アルバムヴァージョンは最後のリフレインが1回分、8小節長くなっているのも大きな違いです。



 7曲目Maggie Mae

 ジョンがリヴァプール訛りで歌うトラディショナルソング。
 もちろん僕は、その訛りも真似をして歌いました(笑)。
 これはGBとLBで同じですね。
 トラッドだけどコーラスをつけていてそれがとてもよく、上も下もどちらを歌っても気持ちがいい。



 8曲目I've Got A Feeling
 ここからLPのB面。

 この曲はLBにある「対位法」、ポールとジョンが違う旋律を一緒に歌う部分がGBにはありません。
 僕は、GBを聴く前に、レコード屋でもらった、ビートルズの曲を解説した小冊子を読んでいたのですが、「対位法」の意味が最初は分からず、後でLBのレコードを聴いて漸く分かりました。

 そりゃそうですよね、最初に聴いた方には「対位法」がないんだから(笑)。

 今ならネットですぐに調べられることですね。

 この曲は、なんというか、ハードで、ハードロックという音楽に分類されるものとは違うロックのハードさがよく分かります。

 その上歌メロもいいし、ギターワークもベースも最高にいい。
 そしてこの曲では、"Everybody had a wet dream"という歌詞、「誰でも夢精をする」、高校時代には話題になりました。
 ビートルズのように当時ですら神格化されつつあった存在でも、やっぱりロックはリアルなものなんだって思いました。
 この曲はGBのものは、途中のチョーキングの部分も不安定だし、全体的に緩すぎ、何より対位法がないので、LBのほうがいい。

 


 9曲目One After 909
 これはもともと1963年に録音されてボツになっていたものを、このセッションの時にジョンが引っ張り出して再録音した曲。
 古いヴァージョンはANTHOLOGYで聴くことができますが、僕は断然、クールでシャープでソリッドな新しいほうが好き。
 GBとLBはどちらも同じテイクだったと思います。
 これもある意味ハードロックだけど、当時はそんな状況の中、気持ちはのっていなくても、演奏は一級品を聴かせることができるほど、ビートルズはバンドとしても成長していたことがこの曲を聴くとよく分かりますね。

 7thコードが強烈で効果絶大、ブルージーなロックンロール。



 10曲目The Long And Winding Road

 LBのレコードのヴァージョンでは大胆にストリングスが導入されたことで、ポールがフィルや他の3人と対立したのはもはや知られた話。
 GBのものは5人で演奏されたヴァージョンで、ポールがピアノ、ジョンが6弦ベース、ジョージがアコースティックギター、リンゴがドラムスそしてビリー・プレストンがハモンドオルガン。
 いかにもバンド的な雰囲気で身近に感じる演奏です。
 しかしLBではジョージのギターがまるまるカットされていて、レコード上ではジョージは参加していないことになってしまいました。
 ビリーのハモンドもポールのビアノもジョンのベースもフィル・スペクターのストリングスに埋もれてしまっています。
 最後にジョンがちょっとした意地を見せ(!?)、ベースのグリッサンドの音が目立って聞こえてきすが。
 そして何より、GBでは間奏でポールがフェイクヴォーカルを入れていて、これがまたとっても味わいがあるのに・・・
 GBのバンド的雰囲気は身近に感じると書きましたが、LBの大仰なアレンジは、なんだかビートルズが遠いところに行ってしまったという感慨を抱かずにはいられないですね。
 もっともフィル・スペクターは逆で、ビートルズはビッグな存在だから、ちまちまとしないで派手にやるべきと考えたのかもしれないけれど。

 確かに、レコードを商品として考えると、これくらいのはったりはあってもいいのかもしれない・・・

 それに間奏のストリングスの旋律はそれはそれでいいからなあ。

 いやでもやっぱり、これは5人のヴァージョンで出してほしかったなあ。

 そうすれば、この曲をアコースティックギターで弾いてみようという人がもっと増えたかもしれないし。

 ただし、ポールは、1991年の来日公演の際にこの曲を歌った時、間奏にはストリングスの旋律を再現したキーボードを入れていて、自分の考えより世の中のイメージを優先させていました。
 僕は、間奏で語り出すんじゃないかと期待したんですが・・・
 この曲についてジョンは、「ポールの最後の輝きだ」と語っていたのですが、それは最大級の賛辞だと思うし、ジョンもこの曲は好きだったのはうれしいですね、涙が出そうなくらいに。


 

 11曲目For You Blue 

 ジョージのカントリーブルーズ。
 僕はこれ最初から大好きだったけど、ブルーズを本格的かつ普通に聴くようになって、この曲の意味がますます大きくなってきた感があります。
 LBの正式なレコードのヴァージョンには、GBのものでは聴こえる、12小節ごとに2小節入るギターのアルペジオの音が入っていないのは寂しい。
 この曲はギタープレイとしてもジョージの最高の演奏のひとつだと思うし。

 ジョージの歌い方もGBのほうがフェイクが多く気持ちが入っていると感じられ、後でLBを聴いて、なんてお行儀よく歌ってるんだ、とすら思った(笑)。

 ただ一方で、間奏の、エルモア・ジェイムズがどうたらこうたら、というジョージのセリフはLBにしか入っていないけれど、それはそれでまた聴くのが楽しいから、この曲は引き分けかな。
 この曲も歌メロが素晴らしくいいですね、よく口ずさみます。

 ほとんど裏声になりそうでならないところが歌っていて面白い。


 

 12曲目Get Back

 GBにはシングルヴァージョンが入っており、一方LBアルバムに入っているアルバムヴァージョンには、演奏が終わってから、ジョンが「オーディションに合格したかな」などと語って拍手が入る屋上セッションのMCが入っています。
 僕はこれもアルバムヴァージョンを先に聴いたのですが、こっちは、好きかどうかでいえばアルバムのほうが好きですね。
 前の曲もそうだけど、語りが入っていると楽しいから。
 ただ、ギターで演奏の練習には、最後にリフレインが続くシングルヴァージョンのほうがいいですね。
 なお、GBではアルバムの最後に、曲の最後のリフレインの部分がフェイドインしてきてフェイドアウトして終わりますが、それは、シングルでカットされたその先、といった感じです。


 

 このアルバムは1970年に発売された以上、10年"decade"で区切ると70年代ということになります。
 でも、録音はほとんど1969年までに終わらせていたので、僕の中では、1970年代といわれると違和感があります。
 何よりビートルズは1960年代の象徴ですからね。
 まあ、10年で区切ることにあまり意味はないのかもしれないけれど、いずれにせよ、最後、一時代の終わり、ということを聴く度に意識せざるを得ないことは確かです。


 ただ、これはいわば「でっち上げた」アルバムであるだけに、渋谷陽一氏は確か「しょうもないアルバム」と言っていたと記憶しています。

 でも僕は最初から、そう思ったことはありませんでした。
 確かに、演奏は緩いし集中していないし笑い声が多いし、などなど問題は多々ありますが、音楽として僕にとって最も大事な部分、すなわち「いい歌」ばかりが並んでいるのは確かだと思います。
 このアルバムが好きになれるかどうかは、音楽としての完成度よりも歌としていいことをどれだけ優先するかに依るでしょうね。

 

 そして演奏も、作りが粗いだけ余計にロック的な醍醐味を感じますね。
 

 歌って気持ちいい歌の宝庫。

 演奏して楽しい曲の塊。

 それがこのアルバムです。


 今年こそ、映画「レット・イット・ビー」のDVDなりブルーレイなりが発売されてほしいですね。


 映画としては確かにつまらないかもしれないけれど、ポールとジョージがけんかしているかもしれないけれど、あの屋上ライヴは圧巻だし、写されている姿はリアルだし、映画ではなく、ドキュメントとして貴重だから。

 そろそろ関係者も腹をくくって、いい映像で出してほしいですね。


 しかしそれも、Let it be...なのかな・・・