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☆Huey Lewis & The News

★ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース

released in 1983

CD-0337 2012/12/28


 ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの3枚目のアルバム、全米No.1獲得作品。


 このアルバムは、僕が高校生の頃に大ヒット。

 僕が輸入盤LPを買うようになった頃でしたが、輸入盤には歌詞カードがないものが結構あって、買うとがっかりすることも多かった。


 当時、狸小路のエイトビルにあったDISC*UPという小さなレコード店の店長さん、多分当時で40前の若いお兄さんと仲良くなりました。

 或る日、このLPが欲しいけど歌詞カードがあるかどうかわからないので悩んでいると話したら、店長さんはビニールの封を切って開け、中のレコードが入った紙を引っ張り出し、「ほら、あった」と僕に見せてくれました。

 もちろん僕はその場で買いましたよ、わざわざそこまでしてもらって。

 今思うと、店長さんはあることを知っていたのかな(笑)。

 その店はこのBLOGでは初めて出てきたけど、思い出がいっぱいの懐かしい店。

 店長さん、今はどこでどうしているのかな。

 

 ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの音楽は、批判的な意味を込めずに言うつもりですが、まったくもって普通のロックですよね。

 今の若い人が耳にすると、なんでこれが売れたんだろうと思うかもしれない。

 ソウルやR&Bの影響は濃いかな、タワー・オヴ・パワーも参加しているから、でもやっぱりロックの中のロックという感じ。


 このアルバムは、なぜか、と現段階では言っておくけど、音楽通というか玄人筋にも受けがいいですよね。

 大ヒットした売れ線アルバムなのに、どうしてだろう。


 渋谷陽一氏は自著の中で、「ライヴで鍛え上げた本物のロック」という趣旨のことを書いていました。

 ロック音楽のひとつの理想形であると。

 一般的に言えば辛口と目されるピーター・バラカン氏も、これは好きだと自著で書いています。

 なぜだろう。


 ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、もはや産業としかいえないほどに肥大化したロックに抵抗して現れたパンクが取り戻そうとしていた、ロックの原初の力を、別のかたちで取り戻した、とみることはできないだろうか。

 ロックの原初の力を、パンクという過激で聴く人を選ぶ音楽ではなく、誰もが聴ける普通のロックで表現して、より多くの一般の人々に受け入れられた。
 つまり、パンクの心意気を持って普通のロックをやった、その上売れた、そこに意味がある。


 実際、彼らは(全員ではないけれど)、アメリカでデビューする前に英国に渡り、パンクの動きも肌で感じていた上に、エルヴィス・コステロのアルバムに参加したのはもはや有名な話。

 余談ですが、シン・リジィとも交流があったそうで、フィル・ライノットが亡くなった時に哀悼の意を表していた記憶があります。


 しかし、それだけでは通の人には認められないのではないか。

 別に通の人に認められることだけがいいアルバムというわけではないけれど・・・


 ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースには、ソウルやブルーズ、R&Bへの確かなリスペクトを感じる、これでしょう。

 それはパンクの人々がともすれば忘れていた部分。


 普通にやっていて売れたのだから、いわば理想的なかたちなのでしょう。

 それは、聴き手にとっても演奏者にとっても。

 もちろん、曲がとてもいい、これは大切な要因ですが。

 

 今までなんとなく思っていただけのことでしたが、こうして記事にするために文字で表してみて、漸く、僕の頭の中でもつながりました。

 


 1曲目The Heart Of Rock And Roll

 パンクが忘れていたR&Bへのリスペクトを言葉と音で表し切った名曲。

 ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、僕が大学1年の夏に、後楽園球場でブルース・ホーンズビーとのジョイントコンサートを行い、僕も行きました。

 この曲ももちろん演奏しましたが、最後にアメリカの都市名を連呼するところで、"Detroit"と叫ぶところを"Tokio"と呼んで会場が盛り上がったのがいい思い出。

 実は、このアルバムを記事にしようと思ったのは、昨日、雪が降る中で信号待ちをしていて突然、この曲が頭の中に浮かんで口ずさんだことでした。
 その前はフィル・コリンズのSussudioでしたが、このところすっかり1980年アタマになっているのは、ブルーノ・マーズの影響かな(笑)。

 なんであれ、10代の頭が柔らかかった頃にたくさん聴いた曲は、ほんとうに心や体に染み込んでいるんだなあと実感しました。


 2曲目Heart And Soul

 この曲は彼らの数年前に他のバンドで世に出た、カヴァーといえばカヴァーだけどそれらはあまり有名ではないので、結果として彼らの曲として認識されているでしょうね。

 なんとなく「アメリカン・グラフィティ」風のビデオクリップがいかにもアメリカ的だったけど、そうですね、ひとつ大事なこと忘れていた、彼らの大ヒットはユーモア感覚あふれるビデオクリップの力も大きいでしょうね。

 その点でもやはり時代との幸福な関係を築けたアルバムといえますね。


 3曲目Bad Is Bad

 この曲もビデオクリップがあることをだいぶ後になって知ったんですが、ほんと、何曲作ったんだ、でもそれが時代でしたね。

 古くさいR&Bで、高校生の僕は、こういう曲をやるのはやっぱり本格派と思ったものです。


 4曲目I Want A New Drug

 「新しいクスリが欲しい」というけれど、ヒューイもバンドもみないかにもクスリをやらないクリーンなイメージにしか見えなくて、そこに彼らの大きなユーモアを感じるけれど、同時に、クスリが根深く広がるアメリカ社会の病巣を見た気がしました。

 彼らにはクスリのイメージがほとんどないのも、受けがいい部分だったのかな、実際に僕もそこに引かれたし。

 この曲は初めてMTV番組で観て聴いてノックアウトされ、実は、LPを買う前に、この曲の12インチピクチャーシングルレコードを買っていたのです。

 LPより高かったのに買ったのは、レコードを集めることも楽しくなった頃だっだし、なによりこの曲がほんとうに好きだったから。

 もちろん今でも大好き。

 後楽園球場のコンサートでは、この曲が始まる前がクリス・ヘイズのギターソロで、テクニック的に上手いというよりは(上手いのだろうけど)、音楽の流れとして素晴らしかったのもいい思い出。

 そういえば当時のライヴ映像はDVDなどで出てないのかな。

 なお、後に、Ghostbustersがこの曲のぱくりだとして裁判沙汰になり、レイ・パーカー・ジュニアは負けましたね。

 この曲はサウンドが斬新で、ぱくったと言われたのは主にベースラインだと思うけれど(曲自体はそれほど似ていない)、ブラスとの絡みも最高、クールなロックという言葉が最もよく似合う曲でもあります。

 そのサウンドのスマートさは、アメリカ人でありながらやはり英国を経験したことが生きている、そんな気もします。

 僕の中では80年代を代表する1曲、彼らの最も好きな曲。

 5曲目Walking On A Thin Line

 ここからLPのB面。

 いつもいうように当時はLPをカセットテープに録音して寝る前に聴いていたけれど、このアルバムは途中で寝てしまったということがあまりなかった記憶が。

 それだけ楽しくて飽きなかったということでしょう。

 この曲もシングルカットしましたが、シングルカットした曲はLPの中で聴いていた時よりもシングルで出た後のほうがよく聴こえることが多かったけれど、この曲は逆で、アルバムの中で聴く方が好きでした。


 6曲目Finally Found A Home

 アルバムの中の1曲でもAメロもBメロも歌いやすくて印象的というのは、いかにいいアルバムであるかの証左。


 7曲目If This Is It

 LPを買うことに決めたのは、この曲がシングルカットされてヒットチャートを上がってきたことが直接的なきっかけでした。

 開放的で陽気な夏の海辺でひとり彼女に振られて寂しい男。

 ヒューイの演技は演技じゃないけど(笑)、そこが逆に哀愁をそしてリアリティを感じてよかったところ。

 メンバーが砂浜で顔だけ出して歌っていたり、ジョーズが来たりと細かな仕掛けがあほらしいけど面白くて、この曲のビデオクリップは曲のイメージを上手く表しているでしょう。

 クリップが「ベストヒットUSA」で流れた翌日の朝のクラスではその話で持ちきりで、クリップが面白いのはもちろんだけど曲がとてもよかったとみんな言っていました。

 そうなんです、クラスの中でもコステロが大好きで売れ線が嫌いだった人も、いいと言っていた。

 当時からそうだったんだな、このアルバムの存在感は。

 LPを買って、カセットテープで聴きながらイントロのギターを練習したのもいい思い出。

 曲は、ほんとうにいいですよね、懐かしいという気持ちを最大限に刺激してくれる。

 歌メロも最高にいい。

 僕自身の経験では、この曲を知っている人でいいと言わなかった人はいない、誰にも愛される曲。


 8曲目You Crack Me Up

 彼らの曲は、オーソドックスなようでひねりがあるようで、新しい感覚だけどよく聴くと古い、いわば相反する要素を大きな器で包み込んで自然に聴かせてしまう、というのが魅力でしょうか。

 彼らは、ヒューイは歌詞は書くけど曲は書かないというスタイルで、ということは作曲能力に恵まれたメンバーが揃っていたということでしょうね。


 9曲目Honky Tonk Blues

 最後はハンク・ウィリアムスの曲、というのはかなり後になって知ったこと。

 ホンキートンクという言葉を僕が知ったのは、ビートルズのOb-La-Di, Ob-La-Daのピアノがホンキートンクのチューニングになっていると本で読んだことでしたが、それは曲自体がホンキートンクではないと思われ。

 ローリング・ストーンズにHonky Tonk Womanという曲があることは当時は文字情報としては知っていたけれど、当時はまだストーンズは過去のアルバムは聴いていなかった。

 だから、僕が初めて聴いたホンキートンクはこの曲でした。

 まあ、1曲聴いただけで分かったとは言わないけれど、なるほどこういう感じなのかとは思ったものです。

 カントリーですね、そしてこれは。

 ソウルやブルーズとともに、カントリーの心も忘れていないのも、広く受け入れられたところでしょうね。



 なお、今流通している、今回僕が聴いたリイシュー盤は、このアルバムの曲の中から、デモ2曲とライヴ3曲が収録されています。


 

 1980年代を代表するロックアルバムの1枚ですね。


 当時、あのTHRILLERの頃に、本格的ロック側の代表として応援されていたこともあり、パンクの後の動きも落ち着いた頃であり、時代に恵まれた、時代ならではの幸せな大ヒットアルバムといえるでしょう。

 実際、聴いているとどこか楽しい気分にさせられていまう、楽観的、前向きというか。

 しかも、リリースからそろそろ30年という今聴いても色あせていない音楽。

 それはきっと、逆に80年代軽薄サウンドにこびなかったからでしょうね(笑)。


 

 さて、スポーツといえば、NFLも残りあと1週、名残惜しい・・・

 今年はデンヴァー・ブロンコスを一押しで応援していますが、破竹の10連勝、最後も勝ってプレイオフに進んで、そのまま負けずにスーパーボウルで勝ってほしい!



 イーグルスの応援は、また来シーズン、ゼロからやり直し・・・(笑)・・・