NEW JERSEY ボン・ジョヴィ | 自然と音楽の森

自然と音楽の森

洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

自然と音楽の森-Dec26BonJovi4th


◎NEW JERSEY

▼ニュージャージー

☆Bon Jovi

★ボン・ジョヴィ

released in 1988

CD-0336 2012/12/26


 ボン・ジョヴィ4枚目のアルバム。

 もうこれで完全にトップスターになったという1枚ですね。


 今回は主に言いたいことが最後にあるというか、先にその話をするとアルバム紹介ではなくなるので、早速アルバムについて。


 このアルバムはいわば壮大な仕掛けというか、贅肉がつきまくっている音楽ですね。

 豪華絢爛、豪快にしてけれんみの塊。

 落ち着こうと思って聴く音楽ではないですね。

 ジョン・ボン・ジョヴィのヴォーカルも「暑くて熱くて厚い」に拍車がかかっています。

 アメリカンロックもここまで行ってしまったか、といったところ。


 もちろん、当時はそういう時代であった、今だから言える部分ではあります。

 当時の日本はバブルが始まった頃であり、海外へより多くの目が向けられ始められ、人々の心が浮ついていた頃だから、そんな日本の雰囲気にも合っていたのが、日本でも大きく受け入れられたところでしょう。


 ところで、Wikipediaを見ると、ボン・ジョヴィは「アメリカンロック」とは決して言われていないですね。

 むしろ「グラムロック」という言葉があるくらいだけど、このアルバムはその要素も拡大されたのでしょう。

 まあ、いいんです。

 丸谷才一さんによれば、自分の考えを発表する時はひとに笑われることを覚悟するくらいの心意気が必要だということだから。


 このアルバムは出てすぐに買って聴きました。

 前作との2年の間に状況が変わっていて、当時はもうCDしか買わなくなっていました。

 当時はLPの高さの縦長の箱に入ってCDが売られていましたが、このアルバムは縦長のプラスティックのケースにジャケットを模した細長い紙が入っていて、レトルトのご飯を開けるみたいにビニールをはがして紙とCDを取り出して聴きました。

  

 実は僕、当時は、このアルバムはあまり好きにはなれなかった。


 やはり作り込み過ぎと感じたのがひとつ。


 もうひとつは、シングルヒットを狙える曲が幾つもある、それはいんだけど、そういう押しが強い曲が多いがゆえに、流れを味わって楽しもうというアルバムには映らなかったこと。

 いいアルバムというのは、アルバムの流れの中で聴くからこそという曲も必要というのが僕の持論。

 いい意味で手を抜いた「休憩時間」でもいいくらいの曲があるからほうがアルバムとしていい場合も多々あります。

 このアルバムは、すべてに力を入れ過ぎているように感じました。

 まあ、それがボン・ジョヴィらしいといえば、そうなのでしょうけど。


 "New Jersey"というタイトルも、大胆不敵というか。

 ニュージャージーといえばやっぱりブルース・スプリングスティーンというのが当時のイメージだったけれど、まだ4枚目の若造はそこに挑戦してきた。

 ボスへの敬意はあるに違いないんだけど、でも、僕はボスを敬愛していたので、生意気な奴らだ、と(笑)。


 3枚目にはまだあった野暮ったさ、田舎臭さを、メタル的質感を強めた厚い音で強引に消そうとしているのも、不自然に感じた。

 前作が売れ、大スターとしてあるべき像を促成栽培したようなイメージがあります。

 

 当時の時代背景や彼らの勢いを鑑みると、エンターテイメント音楽の集大成というべき1枚かな。

 90年代になり、音楽に自然さやシンプルさがより求められるようになると、自然さとは対極にあるヴィメタル系が衰退してゆきました。

 ボン・ジョヴィはカントリー的要素を強めて上手く生き延びたというか、もちろん豪華さもそこそこ(以下)に落としてのことだけど。


 アートワークは結局、3枚目の壁の落書きのイメージを踏襲してきましたね。

 なんとなく、青春の傷つきやすさのようなものを表したのかなと思うけれど、そう思わせるだけただの落書きよりは進歩しているところ。

 ただ、僕はやっぱり、積極的にいいアートワークとは言えないけれど。


 もちろん当時はそれでもそれなりに聴きはしました。

 アルバムの流れを楽しむと書いたけど、そうではない時、車の中などでは、逆にこれだけいい曲がこれでもかこれでもかと出てくる、そんなアルバムはあまりないので、そこはすごいと評価していた部分ではありました。


 それに今はアルバム至上主義者ではなくなったので、まあ、元気でいい曲が揃ったハードロックを聴きたい時にはたまにかけるかな。

 今回は2年振りくらいに聴いたけど。



 1曲目Lay Your Hands On Me

 もうどうしようもないくらいコテコテのロック的要素を集めまくった曲ですね。

 "Satisfaction's guranteed"なんて手あかが付いたロック的イディオムも出てくるし。

 でも、これはいいですね。

 アンセム的に盛り上がる曲でもあるし、サビというかタイトルを歌う部分は歌メロもよくて、今でもたまに口ずさみます。

 曲のイメージも前作の事実上の1曲目であるLet It Rockの延長上にあって、すんなりとアルバムに入ってゆける。

 アルバム1曲目としても最高にいいけど、でも、1曲目から贅肉の多さに圧倒されます。


 2曲目Bad Medecine

 この曲こそ、今聴くとやりすぎというか大仰というかあざといと感じるなあ・・・

 当時もそう思っていたんだけど、時代の流れの中にいたので、まあこういうものかとは思っていたけど。

 基本ロックンロールだけど、いじりすぎというか、デスモンド・チャイルドが「ロックを知らない」と揶揄されたのも分かる気はします。

 まあでもそこそこ以上にいい歌だとは思う。

 しかし、僕はこれを好きとは言えない、なんとなく、なんとなく恥ずかしくて・・・


 3曲目Born To Be My Baby

 歌謡曲ロック一直線。

 やっぱり歌メロがいい、デスモンド・チャイルドらしいというか。

 この曲にはビデオクリップに仕掛けがあって、メンバーがなんとなくばらばらに演奏を始めたところ、誰かが(ジョンだったかな?)NGを出して、気を引き締めてやり直すというもの。

 現場の裏を見せているようだけど、もちろん演出であろうことは当時から感じてはいました。

 この曲は、最後のジョンの押し殺したような嘆き声が、それまで聴いたことがないような熱い嘆きで驚いたものです。


 4曲目Living In Sin

 これもサビはいいね。

 ジョンひとりの曲だけど、そういえば後のBLAZE OF GLORYにつながってゆきますね。


 5曲目Blood On Blood

 再びDC登場。

 こうして比べると、自然ではないと感じる要素はDCがもたらしたものが大きいのかな。

 青春まっしぐら。

 当時は大好きだったけど、僕も年を取ったし・・・(笑)・・・


 6曲目Homebound Train

 一方でアメリカンロック的イディオムのこんな曲もある。

 イントロのブルーズ風のスライドギターが鉄道っぽくてなかなかいい。

 しかしバンド演奏が始まるとメタル的な厚い音に。

 この曲は実は今回聴くまで覚えていなかった。


 7曲目Wild Is The Wind

 この曲はDCに加えてダイアン・ウォーレンも曲作りに参加。

 ちょっとしたドラマ風の劇的な曲で、これはサビだけ覚えていた。


 8曲目Ride Cowboy Ride

 この曲が当時は僕の周りでは「問題作」として話題になりました。

 2分弱しかないいわばお遊びの曲で、レコードをかけた時のノイズの音から始まり、カントリー風のギター弾き語りの曲。

 ジョン・レノンの「ジョンの魂」のMy Mammy's Deadを意識したのは間違いないと思う。

 問題になったのはしかしそこではなく、こんなお遊びを入れていいのかということ。

 僕は、これがなければもっと聴かなかったと思う。

 アルバム至上主義者としては、こういう曲があるからこそいい。

 まあいずれにせよ、いろいろと考えていたことはよく分かる1曲。


 9曲目Stick To Your Guns

 こちらもジョンのソロにつながる曲で、やっぱりサビは強烈に印象的。

 カウボーイへのこだわりは、アメリカ人として自然なことなのかもしれないけれど、当時は違和感がなかったといえば嘘になります。

 ところで、アメリカの銃規制は進むのかな・・・


 10曲目I'll Be There For You

 ビートルズのDon't Let Me Downに似ている。

 全体的にブルージーな雰囲気、演奏が止まって歌が起こるところ、ヴァースの部分のバックのギターの音の出しなどなど。

 ビートルズバカの僕だから、そこに気づいてうれしかった(笑)。

 この曲は大好きですよ。

 雰囲気があっていいし、口ずさむのもいい、"When you breathe I wanna be the air for you"なんて臭くてたまらない歌詞がまたいい(笑)。

 ボン・ジョヴィの曲の中でも五指には入る。

 しかもこれは、当時よりも30代を過ぎてからより好きになった、珍しいといえば珍しい事例。

 ボン・ジョヴィなかなかやるじゃん、と思った曲ですね。


 11曲目99 In The Shade

 この曲は全く覚えていなかった。

 ちょっとだけ前のアルバムを引きずった感じかな。


 12曲目Love For Sale

 最後のこの曲も問題作。

 ハーモニカも入ったカントリーブルーズのジャムセッション風の曲で、ジョンの歌い方も笑いをまじえて緩く自然体でやっている。

 そこが問題。

 この曲だけをとれば後にもつながるし、意味は大きいと思うんだけど、この作り込んだアルバムでこの自然体が不自然に映りました。

 もしかして自然を装っただけかもしれないけれど・・・

 でも僕は、8曲目同様、こんな曲があるからこそ楽しくていいと思った。

 思ったけど、この2曲は評価が分かれるところでしょうね。


 まあ、何も考えずに聴くと、曲の良さに圧倒されるアルバムではありますね。

 最後まで、ほめているのかどうか分からないけれど・・・

 

 

 「121212コンサート」の話。


 ボン・ジョヴィは、ブルース・スプリングスティーンといわば「同郷共演」を果たし、お互いの曲に1曲ずつ招き合って歌いました。


 それを見た弟が、こんなことを言いました。


 ジョン・ボン・ジョヴィは、音楽の授業などの場で、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンと同列で語られたいと思っているのだという。


 思うのはもちろん自由。


 でも、レコード売上枚数だけで語るものではないし、ロックへの影響力でいえば、彼は確かに後発で不利だとはいえ、ディランとは比べようがないし(そんな人は一握りしかいないけど)、僕は正直、そこまでではないと思う。


 121212でのボスとの同郷共演では、どうみても同じではなく、やっぱり先輩と後輩の域を出ないというのが少なくとも視覚からの印象でした。


 ジョン・ボン・ジョヴィは、ディランやボスにあるようないい意味での悪さがないですよね。

 彼は、ロックミュージシャンにありがちな破滅的な人間ではなく、その対極、バンドのマネジメントも自分で行い、周りには気を遣うスマートな人、いわゆるいい人だという。

 それ自体はとっても素晴らしいことだけど、やっぱり、いい意味での悪さがないと迫力に欠けるかな。

 カリスマ性、そうそう、それが足りない気はする。

 

 ただ、同郷共演で先輩後輩に見えたのは、ボスを立てようというジョンの人柄なのでしょうけど。


 もうひとつは、かつてはヘヴィメタルだったことが後を引きずっているのかな。

 これについてはそうではないと、メタル系も好きな人間としては思いたいけれど、そういう見方をされてしまうことも多少なりともわかっているつもりではあります。


 しかし、今のアメリカを支える超大物であることには違いない。

 僕のリアルタイムで出てきた人がそこまでの存在になったのは、個人やバンドの好き嫌いとは別に(好きといえば好きですもちろん)、うれしい部分ではあります。