![自然と音楽の森-Dec21JethroTullChristmas](https://stat.ameba.jp/user_images/20121221/17/guitarbird9091/47/fa/j/t02200147_0360024012339762725.jpg?caw=800)
◎THE JETHRO TULL CHRISTMAS ALBUM
▼ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム
☆Jethro Tull
★ジェスロ・タル
released in 2003
CD-0333 2012/12/21
ジェスロ・タルのクリスマスアルバムを今日は取り上げます。
クリスマスアルバムを取り上げるのは今年はこれが最後でしょう。
今日は冬至。
CDと犬の写真も、微妙に冬至ヴァージョンになっています(笑)。
14曲目Ring Out Solstice Bells
このアルバムを取り上げたのは、直接的にはこの曲が入っているから。
曲名の"solstice"だけでは「至」、"Winter solstice"で「冬至」つまり今日。
この曲ではどちらとは書かれていないですが、クリスマスアルバムに入っているので「冬至」と考えるべきでしょう。
まあ、かなりへそ曲がりのイアン・アンダーソンのことだから分からないけれど(笑)。
というのも、この曲は元々タルの1977年のアルバムSONGS FROM THE WOODに収録されていた曲を、演奏をクリスマス風にアレンジして焼き直したもので、そのアルバムは必ずしも冬とは限られていないから。
この曲はもともとタルの中では歌メロに癖がなく聴きやすい曲で大好きでしたが、クリスマスアルバム用に焼き直したのを聴いた時、やっぱりか、というような思いを抱いた、それくらいぴったりの曲です。
特に、ハンドクラップを多用しているところが、気持ちの暖かさを感じます。
タルの音楽はひとことでいえば、基本はトラッド+ブルーズそこにクラシックと(または)ジャズをスパイスとして効かせた、といったところ。
初期の頃はほんとにブルーズ色が濃かったけれど、だんだんと「本性」が現れてトラッド色が濃くなった、しかしクラシックとジャズのことは片時も忘れない、というものでしょう。
途中でプログレに走った時代もありましたが、それはまたの機会に。
このトラッド+ブルーズというのが、いいんですよね。
ロリー・ギャラガーもその路線ですが、両者とも、英国らしいトラッドとアメリカらしいブルーズがうまく混じり合っていて、どちらの要素も確かに感じる、どちらともいえる、しかし決して中途半端ではな九それ自体がオリジナルというもの。
ヴァン・モリソンもそうですが、トラッドとブルーズは近いのか、と思う部分もありますね。
そんなジェスロ・タルですが、聴いたことがないかたは、何だか妙な音楽をやっている人たちというイメージが大なり小なりあると思います。
僕がそうでしたから(笑)。
リーダーがフルートというのは、やっぱり、何だか変な音楽というイメージを与えやすいですよね。
確かに、ロックの中では変わった響きではあり、ジェスロ・タルはおそらく、キャリアを通してずっと「少し変な音楽をやる人たち」というイメージがつきまとっていたことでしょう。
時代が進んで1990年代、音楽の趣味が多様化し、人々の音楽への考え方や接し方も変わり、より広い音楽が受け入れられるようになった。
その中でジェスロ・タルの音楽を聴くと、ちょっと変わった響きは個性であり特徴であって、こういうのもありなんだと素直に思える。
先見の明とまではいわないし、長いキャリアの中では時代にひよったこともあったけれど(そもそも出発が当時流行っていたブリティーッシュ・ブルーズだから)、彼らが基本的には音楽の本質に向き合って自らの音楽を作り上げてきていたということなのでしょう。
このアルバムは、意外なことにというか、家庭的で暖かな響きがあります。
ロック界いちの奇人怪人といわれる人たちが、まさかこんなに暖かいい音楽をやっているなんて・・・
というのが、僕が想像する、タルを聴いたことがない人がこのアルバムに抱く感想です。
全体的にアコースティックな音作りの中にフルートが鳴り響き、時々出てくるエレクトリック・ギターはマーティン・バレのセンスのよさを感じさせます。
大がかりなロック的なサウンドではなく、クリスマスに家族が集まって演奏するこじんまりとした響き。
しかも、フルートを演奏するのは小学生、男の子でも女の子でもいいけれど、それをみんなで盛り立てる、といった風景を僕は想像してしまう、それくらい身近に感じる響きの音楽です。
しかし一方、イアン・アンダーソンらしさももちろん感じます。
曲は半分がインストゥルメンタル、半分が歌ものですが、歌物はすべて自作の曲です。
White ChristmasもJingle BellsもHave Yourself A Merry Little Christmasもその他有名なクリスマスソングは入っておらず、最も多く歌われている「きよしこの夜」すらありません。
普通は、それらを歌った中に1曲から何曲かオリジナルを入れるというものですが。
さらに「たちが悪い」のは、3曲目A Christmas Song。
通称「チェスナット・ソング」 The Christmas Songとは違う曲ですが、遊び心というか、へそ曲がりというか、もう狙っているとしか思えない。
歌ものがすべて自作なのは、曲自体よりもそれぞれが雰囲気を楽しもうという思いかもしれない。
実際、クリスマスアルバムとして聴くと、どれもクリスマスらしく聴こえて違和感がありません。
もっといえば、既成の概念にとらわれるな、ということでしょうか、それならイアン・アンダーソンの反骨心には合致します(笑)。
ただ、歌はオリジナルでなじみがないので、口ずさもうというものよりは、あくまでも全体の音楽の流れで聴くものであり、声もまた楽器の一部といった響きではあります。
楽器の一部にしてはくせが強い声ではあるけれど(笑)。
一方で、インストゥルメンタルは逆に、5曲目God Rest Ye Merry Gentleman(途中ジャズ的に展開するのがいい)など、トラッド系のクリスマスソングを演奏しています。
ただ、2曲目Holly HeraldはHark! The Herald Angels Singを 、11曲目GreensleevedはGreensleevesを、13曲目We Five KingsはWe Three Kingsをアレンジした際に曲名も変えたものですが、この変え方は、遊び心以上の反骨心を感じますね。
ちなみに、別の記事で書きましたがもう一度おさらいすると、Greensleevesは、元々がクリスマスソングであったWhat Child Is Thisをインストゥルメンタルに編曲したものです。
インストゥルメンタルで他に注目は2曲、どちらもクラシックの曲をアレンジしたもの。
9曲目Pavaneは、フォーレのパヴァーヌを編曲したもの。
15曲目Boureeはジェスロ・タルの1970年のヒット曲の焼き直しですが、元々はJ.S.バッハの「リュート組曲」の一部を抜き出してアレンジしたもの。
しかしこの曲はもはやジェスロ・タルの代名詞的1曲になっているといえるでしょう。
クリスマスの雰囲気にも合いますね。
トラッド、ブルーズ、クラシック、ジャズなどなど、彼らの音楽を通り越して、音楽の奥深さを感じることができます。
かけておいてさらっと聴くもよし、雰囲気を楽しむもよし、奥深い音楽を真剣に感じるもよし。
いろいろな聴き方ができる、かなり個性的なクリスマスアルバムです。
時々聞こえる、イアン・アンダーソンのフルートを吹きながらの唸り声は、すごいかもしれないし、ちょっと恐いかもしれないけれど(笑)。
また、意外と心が暖まると書きましたが、へそ曲がりのようでいて人間の心のつながりを大切にしたいというイアン・アンダーソンの思いが温かく結実したこれは、音楽的にもジェスロ・タルの集大成的なアルバムと言えるかもしれません。
さて、今夜はかぼちゃと小豆を煮て食べて、柚子湯に入ろう。
と思ったけど、今朝の鈴木杏樹のラジオで、柚子ではなくても柑橘類であれば風邪を防ぐ効果があると話していたので、今年は、柚子ではなく、うちにあるすだちを入れてみようと思います。