◎EP. COLLECTION
▼EP.コレクション
☆The Beatles
★ザ・ビートルズ
(The Inner Light was released in 1968)
CD-0330 2012/12/15
ビートルズのEPを集めたCD15枚組のボックスセット。
僕は時々、主に1曲を紹介したいがために編集盤CDを取り上げることがあります。
今回は、The Inner Lightについて主に話したくてこれを選びました。
CDについては最後に説明しますが、予告通り、ジョージ・ハリスンとインド音楽について語る、昨日のラヴィ・シャンカルの奇っ時の続編としてお読みくださればと思います。
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ジョージ・ハリスンがシタールに興味を持ったのは、映画「ヘルプ! 4人はアイドル」の劇中でシタールが使われていたからだと言われています。
実際、アメリカ盤サントラのビートルズの曲ではない映画の挿入曲にシタールが使われています。
いきなり余談、ジョージ・マーティンの本によれば、HELP! のサウンドトラックは、映画の監督のリチャード・レスターがなぜかマーティンを気に入らず、知らない間にマーティンが外されていて、自分が関われなかったことは今でも残念だと記述しています。
もちろん、ビートルズの曲についてはマーティンがプロデュースしていますが。
その後、アメリカツアーで知り合ったデヴィッド・クロスビーにラヴィ・シャンカールの音楽を聴かせてもらったことがきかっけで、自身でも演奏してみることになったという。
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ビートルズ自身が演奏するシタールの音が初めてレコードに刻まれたのは、言うまでもない、1965年のアルバムRUBBER SOULの中のNorwegian Wood (This Bird Had Flown)、「ノルウェイの森」。
リードギターに当たるパートをシタールで弾いてみたというもので、腕試し、肩慣らし的な意味もあるかもしれないけれど、最初にレコードでその音を聴いた人はきっと、驚き、新鮮に感じたことでしょう。
僕はその曲は、中学2年の頃にNHK-FMでエアチェックして聴きました。
その時点で、LPを買った時にもらったビートルズを紹介した小冊子を読んで、この曲にはシタールが使われていることは知っていたので、ああ、これがそうか、と思いました。
だから初めて聴いた人の感じ方が分からないのですが、予備知識を持つことも良し悪しだなと思います。
ただ、先述のHELP! のアメリカ盤サントラにはシタールが使われていたので、アメリカのビートルズのファンは、シタールの音自体は初めて耳にしたわけでもなかった人も多いことでしょう。
それにしても不思議ですよね、ノルウェイという北欧の国が言葉として示されているのに、南国インドの楽器の音色が、なぜかノルウェイをイメージさせる。
まあ、どちらもステレオタイプのイメージかもしれないけれど。
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次は、1966年のREVOLVERに収められたLove You To。
まだジョージがラヴィと出会う前のことですが、タブラとタンブーラというインドの楽器はインド人のミュージシャンが演奏しています。
ジョンは不参加、ポールはコーラスだけ、リンゴはタンバリンで参加、普通のロックの楽器はジョージが演奏しています。
以前、「タモリ倶楽部」で、シタールを演奏してみようという話題の回がありました。
そこに出ていた日本人のインド音楽演奏家兼研究家によれば、ジョージのこの曲はインド音階にかなり近いけど微妙に違う、惜しかった、と言いながらこの曲を本格的なインド音階に直して演奏して聴かせてくれたのは興味深かった。
詳しくは忘れてしまいましたが(DVDに焼いて保存してあるけど)、オリジナルよりも抑揚が抑えられていて、逆にいえばオリジナルはポップソングとして印象に残りやすいものになっていると感じました。
でも、それを聴いて、やはり本物は違うんだなあ、ロックはいわばイミテイションの世界なんだな、との思いを新たにしました。
ただ、本物に接するきかっけになることはロックの価値や意味が大きいところだと思い、そこを否定するものではありません。
しかしそれにしてもジョージは研究熱心というか、ビートルズに追われながらの生活の中で、新たな挑戦を始めて、演奏したことがない楽器の練習をしていたわけだから。
ジョージが人間的に優れたところのひとつは、粘り強さでしょうね。
ところでこのLove You Toは、いつ聴いても、何度聴いても、いまだに聴いても、歌の中では"Love To You"と歌っているのは皮肉屋ジョージらしいところですね(笑)。
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次にシタールが入った曲は、1967年、SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BANDのWithin You Without You。
この段階でジョージはもうラヴィ・シャンカルとの邂逅を果たしていました。
この曲も小冊子に加えて、ジョン・レノンが生前最後のインタビューの中で絶賛していたことを先に読んでから聴いたので、最初からなんだかすごい、素晴らしいと思いました。
でもこれは、予備知識がなくてもそう思ったと思う。
この曲は絶妙で、架空のショーの中でジョージとインド人のミュージシャンが共演するという設定にすることで、西洋音楽のポップスの中に無理なくインド音楽が入り込んでいます。
その点が、REVOVERでやや唐突ともいえる中に出てくるLove You Toとは少し違いますね。
ただ、REVOLVERは、何でもありという前例を作ってしまったことが、今となっては評価が高い部分ではありますが。
なお、同アルバムのGetting Betterは、シタールは入っていないけれど、ジョージが演奏するインド楽器のタンブーラが入っています。
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そして最後が1968年のThe Inner Light、アップルに移る前の最後のシングルLady MadonnaのB面曲。
ジョンとポールがコーラスで参加しているだけで、演奏はすべてインド人演奏者によるもの。
しかし、アップル時代以降は、ビートルズでもソロでも、インド楽器が入った曲がないのは、意外といえば意外。
本物のインド音楽に触れたことで、自分のやったことに疑問を抱くようになったのかもしれない。
単に飽きただけ、というのは、粘り強そうな性格のジョージには想像しにくい。
まあそれ以上に、自らの音楽に自信を持ち、意欲的に創作活動を始めたこともあるのでしょうけど。
◇
ビートルズ以外でシタールが入った有名な曲といえば、ローリング・ストーンズのPaint It, Blackでしょう、ビルボードでNo.1にもなっているし。
ブライアン・ジョーンズがシタールも弾きこなしていて、アルバムでもシタールの音を聴くことができますね。
ちなみに、インド音楽風のロックを「ラーガ・ロック」Raga Rockということはビートルズを聴き始めた頃に知ったのですが、でも、僕は、その言葉がビートルズ以外で使われている文章などには接したことがありません。
そういえば1990年代にクーラ・シェイカーがインド音楽っぽいことをやっていたっけ、今思い出した。
アルバムは聴いたことがないけれど、MTVでよく流れていました。
◇
さて、今回のお題はThe Inner Light。
この曲は素晴らしい。
中学時代に初めて聴いた時、目の前が開けるような感覚に陥りました。
まずもって歌メロが素晴らしい。
当時はまだそれほどたくさん、というかビートルズ以外の洋楽はほとんど聴いていなかったけれど、でもこの曲が、普通のポップスとは作りが違うということは感じました。
例えば、この曲にギターのコードを当てはめて弾き語りをすることを想像してみると、やはり普通のポップスとは何かが違うと感じるはず。
曲の流れというか、音の移行が滑らかではないというか、サビがなかったり(そういう曲はありますが)、要するに西洋の音楽のルールを無視して思いついたままに音にしてみた、という感じがします。
高校時代、僕の家は学校から近かったので放課後によく友だちが遊びに来て音楽を聴いて音楽の話をしていたのですが、そのうちのひとりが、だんだんとビートルズに強い興味を持つようになりました。
その友だちが家に来た或る日、僕が、買ったばかりのLPをカセットに録音したRARITIESのVOL.2をかけていて、The Inner Lightが来たところで2人とも意識が曲に引き込まれました。
友だちは初めて聴いたらしく、なんて変わった曲なんだろうというようなことを言いました。
僕は、「インドの田舎の朝みたいな曲だよね」と言うと、友だちもほぼ100%同意し、「音しかないのに国と地域と場所と時間までイメージが限定されるのはすごいよね」と言いました。
道端には背中にこぶがある黒褐色の牛が臥せていて、、農機具を持った中年の女性が畑の中に立ち、空気がまだひんやりとしていて、かすかにもやがかかり、草の葉には朝露がつき、未舗装の道路を時々トラックが通り、背後には林、地域はインドの北東部で半島状に突き出た部分ではなく大陸側の地方。
これが僕たちが想像したこの曲の舞台でした、違うかもしれない、それこそステレオタイプかもしれないけれど。
しかもこの曲は最後の方で、"The world without traveling"と歌っていて、そもそも考えることにより何でもできると歌っていて、まさに聴く人にそのようなイメージを抱かせようというジョージの意図がある曲であり、バカ正直な高校生の僕たちは、その通りにイメージで旅をしたのでした。
昨日の記事で、高校時代にインドに行きたいと思ったことがあると書いたのは、この曲にいわば感化されたからでした。
ただ、実際はいまだにインドに旅行したことはないので、それこそジョージが言うように「行かないで旅をする」まま今に至っているのですが・・・
いいことなのでしょうかね、そうじゃないよなあ、ジョージは、そうは言ってもやっぱり実際にインドを訪れてもらいたいと思っていただろうなあ。
この曲はとても大好きですよ。
ビートルズの曲を好きな順に上から30曲挙げろといわれれば入る、もう少し上かもしれない。
ビートルズが好きな人を1000人集めて213曲を好きな順に並べろといわれれば、この曲がいちばん上に出てくるのは僕じゃないか、というくらいに大好きです。
まあ、真面目に順位づけをしたことはない、仮想の話ですが(笑)。
◇
10年くらい前かな、ケーブルテレビで「サタディ・ナイト・ライヴ」が放送されていて毎回見ていました。
番組の中で、ビートルズが再結成するというコントがありました、年代はおそらく1973年頃の番組。
ジョン・ベルーシがジョン・レノン、ダン・エイクロイドがポール・マッカートニーの役だったと記憶しているけれど、再結成するに当たり、マネージャーから4人に条件が出されました。
ジョージ・ハリスンへの条件は「インド音楽をやらないこと」。
その時、ビートルズのインド音楽の要素を「要らない」と思う人が少なからずいることが分かって、なにがしかのショックを受けました。
もちろんアメリカンジョークなのでしょうけど、それが受けるというのは、そういう意識があるのかなと。
まあ、音楽は聴く人それぞれだから、いるからといってどうとは言わないけれど、僕は、インド音楽もビートルズの大切な要素だと受け入れてずっと聴いてきています。
でも、ここに紹介したジョージの3曲は、インド音楽だどうだという以前に、歌として素晴らしい。
みな口ずさむのにいい旋律を持っていて、演奏がどんなかたちであれ、いい歌には違いないのは、口ずさんでみれば一発で分かります。
インド音楽風だからといってそこが見逃され聴き逃されているのであれば、歌メロにこだわる僕としてはいささかの寂しさを覚えます。
歴史のifの話になってしまうけれど、ジョージ・ハリスンは、もしビートルズにいなくても、シンガーソングライターとしてそこそこの人にはなっていたと想像します。
もしかしてNo.1ヒット曲を出すくらい、名盤といわれるアルバムを複数枚作れるくらいに。
結局は、ラヴィ・シャンカルの追悼の記事を通して、ジョージ・ハリスンを語ることになりました。
ジョージの命日も11月29日だから、よかったのかな(笑)。
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このEPボックスがレコードで出たのが僕が中学時代、ビートルズを聴き始めた頃で、当時どうしても欲しくて家内アルバイトをしてなんとかお金を作って買いました。
CDの時代になって同じ体裁で出直したものも買いました。
すべてのEPが収められているため、MAGICAL MYSTERY TOURももちろんあります。
ここに収められているThe Inner Lightは、初めて世に出たステレオヴァージョンとして話題にな、だからこのCDを取り上げたのでした。
ほんとはRARITIESにしたかったけれど、それはまだCD化されていない。
PAST MASTERSも考えたけど、それはまた今後、別の1曲だけ語りたい記事で使うかもしれないので、これを選んだというわけでした。
さて、記事を書いてCDを聴いて、あらためて、シタールが欲しくなってしまいました(笑)。