BEACON THEATRE*LIVE FROM NEW YORK ジョー・ボナマッサ | 自然と音楽の森

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◎BEACON THEATRE * LIVE FROM NEW YORK 

▼ビーコン・シアター・ライヴ・フロム・ニューヨーク

☆Joe Bonamassa

★ジョー・ボナマッサ

released in 2012

CD-0310 2012/11/11


 ジョー・ボナマッサ。

 昨日に続いて白人ブルーズギタリストの、この秋に出たライヴ盤の新譜を今日は取り上げます。


 ジョー・ボナマッサは初めて聴きました。

 それまで、名前をどこかで聞いたことがある、くらいの人でしたが、きっかけは、プロデューサーのケヴィン・シャーリー。

 ジョン・ハイアットの新譜のプロデュースがケヴィン・シャーリーで、さらにたまたま同じ日に買ったロバート・クレイ・バンドの新譜もケヴィン・シャーリーだったことから、他にどんなものをプロデュースしているのか、ネットで検索したところ、ミックスなども含めてそれまで関わったすべての作品を紹介したサイトに行きあたりました。

 その中に、ジョー・ボナマッサの一連の作品があり、ぜひ聴いてみたいと。

 

 少しさかのぼって、ジョン・ハイアットの最新作のひとつ前の2010年のアルバムを(まだ記事にしていないですが)、ケヴィン・シャーリーがプロデュースしていることを知り、買ってみたのが今につながっています。

 なんといってもケヴィン・シャーリーは、復活アイアン・メイデンを手がけている、リック・ルービンの次に僕には特別な存在のプロデューサーだから。

 

 ジョー・ボナマッサはたまたまこの秋にライブ盤の新作が出たばかりで、先ずはこれを買ってみました。



 白人のブルーズはブルーズなのか、ロックなのか、白人に本物のブルーズはできないのか、などという話を昨日少しだけ書きましたが、やっぱりブルーズロックがデフォルトらしい僕には、これはきわめて素直なロックとして響いてきました。

 ロックのギタープレイとカッコよさの原点はやはりブルーズなんだろうなあ。

 シャープでソリッドでスリリング、攻撃的で音圧が高く、ドライヴ感あふれる爽快な音楽。

 と、かなり強引に1行でこのアルバムの魅力をまとめてみました。

 

 でも、今の人たちは、ブルーズでもロックでもあまり気にしないで、いいと思ったものを聴くのでしょうね。


 演奏するほうも、ブルーズが大好きだけど、魂を売るのではなく、自分らしく表現したい。

 1990年代前半、エリック・クラプトンがブルーズに溺れた姿をさらけ出したこと(必ずしも悪いとは言っていません念のため)、及び本家のブルーズが復権した後は、そういう姿勢でブルーズに臨む若手が増えているのではないかという気がしてなりません。

 

 ロックはブルーズから離れてゆくことで成り立って行った音楽ですが、考えてみれば、1990年代後半に同じことがまた起こった、というわけですね。

 だから、白人の若手のブルーズがロックとして響いてくるのは必然といえそうです。



 2枚組のこのアルバム、19曲のうち8曲はジョー・ボナマッサ自身が書いた曲(共作あり)、4曲はゲストの曲(後詳述)、他がカヴァー曲という構成。

 オリジナルが多いのはやはり新しい感覚かな。

 さらには、ブルーズといえばこれという定番的な古い曲がなくて、昨日も書いたけど、ブルーズは古い曲の焼き直し中心という僕の考えはもう古いようですね(笑)。

 オリジナル曲はやはりみないいけれど、歌といよりは全体の曲として聴かせるものであり、あくまでもギター中心という感じはします。



 カヴァー曲で興味深いものを。


 なんといってもうれしいのは、1枚目の5曲目、ゲイリー・ムーアのMidnight Blues。

 僕にとって、ブルーズが一気に近づいたのがゲイリー・ムーアのSTILL GOT THE BLUESでした。

 この曲はその続編ともいうべきAFTER HOURSに収録されていますが、この2枚が、ブルーズへの扉を開いてくれた。

 まあ、その割にそれから20年近く経ってようやく本格的に聴くようになったわけですが、ブルーズは敷居が高いという思いもずっと抱えていて僕のようなものが気軽に聴いてはいけないものという邪念が若い頃にあったことは、今となってはちょっとばかり後悔している部分です。

 まあ、後悔しても始まらないし、音楽は聴くにふさわしい時や年齢があるというのが僕の持論だから、僕にとってのブルーズは、40歳になって、少しは大人になってから聴くものだったのでしょう。


 ジョー・ボナマッサは1977年生まれ(僕より10歳も若いのか)、ゲイリー・ムーアのブルーズは10代の頃に出てきたものだから、大きな意味があったのでしょう。

 黒人っぽくやるのではないスマートなやり方でブルーズを表現したゲイリー・ムーアを聴いたことと、ブルーズが表舞台に戻ってきたことを感じて、自信につながったのかもしれない。

 Wikipediaで見ると、彼は12歳の時には既にB.B.キングの前座をやっていたということです。

 

 このライブの音源が録音されたのはちょうど1年ほど前の2011年11月だから、ゲイリー・ムーアが亡くなったことへの哀悼の意味も込められているのでしょう。

 大好きなゲイリー・ムーアがブルーズとして認められたことはうれしいですね。

 最初に聴いた時、多少大げさにいえば、涙が出そうになりました。

 また、これを聴いて、ゲイリーの2枚のブルーズアルバムが僕にとっては大きな意味を持っていること、しかも年を追うごとに意味が大きくなっていることも感じました。



 もう1曲、感動的にうれしかったのは、2枚目の1曲目、Bird On A Wire。

 レナード・コーエンの曲ですが、僕がこの曲を知ったのはネヴィル・ブラザースのカヴァー。

 1990年、メル・ギブソン主演の同名映画のテーマ曲として流れていたものをMTV番組やラジオで聴いてとても気に入り、ネヴィルズ初体験CDとなったものでした。

 ジョー・ボナマッサもオリジナルではなくネヴィルズのそれを聴いて知ったんじゃないかな、年代的にも、そういえばSTILL GOT THE BLUESと同じ年だ。

 ここでのアレンジは、ゴスペル風に味付けされたリズム&ブルーズ、荘重な響きで胸を打ち、元々大好きだった曲がさらに格式が上がったように感じました。


 どうでもいいことだけど、ネヴィルズのこの曲の話をすると、当時の彼女のことを思い出してしまう・・・

 やっぱり年を取ったのかな(笑)。



 1枚目の3曲目Cradle Rockはロリー・ギャラガーの曲。

 やっぱり黒人のブルーズも白人のブルーズロックも何でも聴いていたことが分かる、なるほどの選曲ですね。


 1枚目8曲目はベス・ハートをゲストに招いたI'll Take Care Of You。

 ブルック・ベントンが書いたものをボビー・”ブルー”・ブランドが歌った曲で、古いブルーズといえばそうなんだけど、ブルック・ベントンはソウル歌手としても成功するし、ボビー・ブランドも歌手としての評価が高いし、この辺の選び方のセンスがまた面白い。

 ベス・ハートは次の9曲目Sinner's Prayerでも歌っています。



 他のゲストは、僕が特に大好きな2人がそれぞれ2曲ずつ歌っています。


 2枚目2曲目Down Around My Place、3曲目I Know A Placeはジョン・ハイアット。

 これはケヴィン・シャーリーつながりかな、それともそれ以前から好きだったのか。


 Down...は、僕がジョン・ハイアットを大好きになるきっかけだった前作DIRTY JEANS AND MUD SLIDE HYMNSの中でもとりわけ印象深い曲。

 CDを買って最初はブックレットも何も見ないで聴いていたのですが(だから余計にゲイリー・ムーアの曲が驚いてうれしかった)、この曲が流れてきたところで頭の中に電流が走り始めました。

 いいんですよ、これも荘重な雰囲気で。

 変な言い方だけど、すごく得した気分(笑)。


 一方のI Know...はまだ知らない曲で、これは急いでジョン・ハイアットも聴き集めてゆかないと・・・(笑)・・・

 ところで、どちらも"place"と入った曲を選んだのは何かの意図なのかな、と。



 2枚目5曲目Walk In My Shadows、6曲目Fire And Waterのゲストはポール・ロジャース。

 実はですね、ジョー・ボナマッサの声質がポール・ロジャースに似ているんですよ。

 ということに、本人が出てきてはっきり気づきました(笑)。

 高音になると似てないけど、普通に歌っているところは、若干線が細めだけどポール・ロジャースに似ている。

 わざとなのかな、ヴォーカリストとしてはやはり憧れていたから、とか。

 しかも本人を招いてしまうなんて、うれしかったでしょうね(笑)。


 どちらもフリーの曲ですが、バッド・カンパニーを選ばないところが完全にロック側には来ていないという証拠であるようにも感じます。

 或いは、まだうんとブルーズ臭かった時代のブルーズロックがとにかく大好きなのか。

 それにしてもFire And Waterは、円熟味とすごみが上手い具合に溶け合った名演、名曲だと再認識させられました。

 ジョン・ハイアットに続いて、とっても得した気分になりました(笑)。


 

 ケヴィン・シャーリーのおかげで、アイアン・メイデン→ジョン・ハイアット→ジョー・ボナマッサと音楽がつながってゆき、支流としてロバート・クレイ・バンドにもたどり着きました。


 ロバート・クレイ・バンドのところでも書いたけど、ジョー・ボナマッサやロバート・クレイ・バンドが気に入ったから、同じケヴィン・シャーリーがプロデュースのアイアン・メイデンを聴いてみようと思う人は、いるかな、ほんの少しはいるだろうことは想像できないこともないけれど、やっぱり少ないかな。

 それよりは、アイアン・メイデンが好きだから、同じプロデューサーのジョー・ボナマッサやロバート・クレイ・バンドを聴いてみよう、という人のほうが多そうな気はします。

 まあ、かくなる僕がそうですからね(笑)。
 その一方通行性を考えると面白くもあるけれど、そうしたつながりは、音楽を聴いていても楽しい部分のひとつですね。


 ジョー・ボナマッサもだけど、ケヴィン・シャーリーも、今後はブルーズ系に手を広げてゆくのであれば、これはすごい楽しみ。


 ところで、このライヴはDVDとBlu-Rayも出ているのですが、映像も観てみたくなりました。

 値段もそれほど変わらないので、だったら最初から映像を買えばよかったのか。

 でも、僕はあくまでもレコード(録音されたものという意味)主義だから、レコードが出ているものは、映像だけを買うというのはできない。

 結局、両方買うのか・・・

 

 ともあれ、またひとり、追いかけなければいけない人が出てきてしまいました(笑)。