◎RED
▼レッド
☆Taylor Swift
★テイラー・スウィフト
released in 2012
CD-0307 2012/11/6
テイラー・スウィフトの新譜を今日は取り上げます。
テイラー・スウィフトは、少なくとも1980年代以降では、日本で初めて売れたカントリー系のアーティストではないかと。
もちろん、僕が知らないだけで売れた人もいるのかもしれないけれど。
この新譜もオリコンの総合アルバムチャートで初登場3位、1位(当然J-POP)とは売上枚数が6000枚弱しか違いません。
彼女が売れているのは、若くてかわいらしくてアイドル性がある上に、若い女性にはファッションリーダー的な存在として女性にも受け入れられているのではないかと思う。
確かに見ていると、ファッションセンスが著しく欠けている僕でも、彼女の服はいつも色使いがよく、似合っていてきれいだし、カッコいいとすら思う。
もちろん男性ファンの方が多いのだろうけど、女性に受け入れられるかどうかは大きいですよね。
北海道日本ハムファイターズも、女性のファンがたくさん入ってきたのが根付いた大きな要因のひとつといわれているから。
昨夜、デフ・レパードとテイラー・スウィフトのDVD「クロスローズ」を観ました。
今日の話は、アルバムとそのDVDに沿って進めます。
カントリーのテイラー・スウィフトと一応ヘヴィメタルのデフ・レパードの組み合わせを意外と感じるかもしれないけれど、僕はすんなりと受け入れられました。
なんでも、彼女の母がデフレパのファンで小さい時から聴かされて「洗脳」されていたのだとか。
彼女は母親の胎内でデフレパの名作HYESTERIAを聴いて生まれてきたのだそう。
共演が実現したのは、彼女のマネージメント会社の人がデフレパのリック・アレンの弟で、ある日リックから直接テイラーに電話がかかってきて「オウマイガッ!」だったということ。
世の中意外と狭いんですね(笑)。
テレビ番組を映像ソフト化したものらしく、ライヴとインタビューやバックステージの様子が交互に紹介されていました。
興味深かったのは、デフレパとテイラーの対談。
カントリーとロックは世の中では対極にあると言われるけれど、ジョー・エリオットはそうは感じないという。
僕は、もう聞き飽きたでしょうけど(笑)、ビートルズを最初に聴いた人間であって、彼らはカントリーの曲も取り上げているので、後になって逆にカントリーとロックがそれほど違うと言われていることに驚きました。
この話をすると必ずといっていいほど取り上げられるバーズの「ロデオの恋人」が当時は衝撃的と言われていたのも、実際に聴いてみると、ロックとカントリーが自然と融合しているように聴こえました。
実際、テイラー・スウィフトを聴いても、ロックとあまり、ほとんど、それほど、変わらないと感じます。
僕が好きなクリスティーナ・アギレラであれば、広いポップスのフィールドの中で同じ辺りにいるかな、と感じるかもしれない。
では、カントリーとロックはどこが違うのか。
対談ではそこにも話が及びました。
ひとつ、カントリーは歌い方に特徴がある。
ジョー・エリオットとテイラー・スウィフトのリハーサルの様子を後ろで聴いていたヴィヴィアン・キャンベルが、何か変だったと言い出しました。
楽譜通りに歌ってもなにかずれていると感じたそうで、そんなところにも違いを感じたということ。
ヴィヴィアンは音楽に対して繊細な人なんだ、と思いました。
また、ロックのコーラスは基本的には叫びだけど、カントリーはコーラスのつけかたが絶妙、とはジョーの談。
演奏については、英国人でさえいくらでもカントリー風にすることはできても(まあそもそも「風」だから)、歌い方は一応は学ばないと再現できない、ということでしょう。
ロック系の人は当然ロックの歌い方をしているのは、カントリー系の人のロックのカヴァーを聴くと特によく分かります。
シェリル・クロウがカントリーではないのも納得できますね。
ジョン・フォガティなんて、演奏はカントリーっぽくても歌い方はむしろソウルだし。
ビートルズが、本物のカントリーであるバック・オーウェンスのAct Naturalyをリンゴ・スターのあのとぼけた声で歌ってしまったのは、当時のカントリー界にとってはショックだったのではないか、なんてことも想像しました(楽しい)。
もうひとつ、ロックは変化を求められるけれども、カントリーは同じことを求められる、ということ。
ここで漸くテイラー・スウィフトの新譜の話になるけれど、曲以外は前作とは大きな違いはそれほど感じませんでした。
それはつまらないという意味ではなく、そこがいいのだから、聴き手に対して誠実に音楽を作っているということ。
ロックのほうが大変な部分は、変化し続けなければ評価されないこと。
ロックと名乗っている以上、70歳になってもそれが求められてしまうのは、ある意味酷かもしれない。
まあ最近はそうでもなく、はじめから若い人に売れることは考えず、売れた頃の音を再現して昔からの人に喜ばれるのをよしとするものもあるけれど。
そう考えると、あえて古い曲をやってしまって前作との違いを出したポール・マッカートニーは、やっぱりセンスは衰えていないですね、さすが、今ふと思った。
カントリーのほうが大変な部分は、イメージが変化しない中でも前との明らかな違いを出さなければいけないこと。
考えてみれば、ある意味こちらのほうが大変かもしれない。
並よりよい曲を書き続けなければならないということで、方法としては簡単だけど、いざやると逆にこれほど難しいことはないかもしれない。
1980年代は音楽的に行き詰った、それはマイナス面でしたが、だからとにかく曲のよさ、歌のよさで差別化を図るしかなかったというのは、歌が好きな僕にとっては大きなプラス面だった、なんてことをちらと思い出しました。
テイラー・スウィフトの新譜は、かかっていると気持ちがいいし、彼女の場合は確かに年齢の割には上手いのだろうけど、嫌味がないというか、うまさで聴かせる人ではないと思うので、気軽に楽しく聴けます。
ただ、1作目よりはカントリーっぽさが強くなっているように感じるかな、もちろん大枠では変わらないけれど、味付けが。
DVDの対談で、彼女はカントリーであることには強いこだわりを持っていることが分かったけど、前作が売れて、カントリーを歌うことにより自信が出てきたのかもしれない。
彼女は14歳でレコード契約を取ったのですが、話を聞くと、カントリーを本気で歌いたくなって、両親にナッシュヴィルに引っ越そうと言ったという話にはは驚きました。
親御さんも彼女の才能を見込んでの勝算(というと言葉は悪いかもしれないけれど)はあったのかもしれないけれど、10代でそこまでの積極さには感心してしまう。
彼女を見ていると、積極性が感じられて、それが特に若い女性にはパワーとなるのではないかと思う。
僕だって、彼女は見ているととにかく爽やかで気持ちがよくて好感度抜群。
先ほど、若い女性にはファッションリーダー的に見られているかもしれないと書いたけれど、もうひとつ、オピニオンリーダーというか、彼女の積極的な生き方とそれにより得た成功への憧れもあるのかもしれない。
デフレパとの会談でも、素直で先輩を立てるけど自分が押すところは押す気持ちの強さもあって、身近に感じるけれどスター性もあるという、新しいタイプの人であることを実感しました。
CDのブックレットでは、彼女の生い立ちから今までを写真を交えて紹介していて、身近さを感じさせるのもいいところかな。
アルバムについてまとめると、サビがしっかりしていて、全体的に切なさをまぶしながらも明るく流れていくのは、ポップスとしてそれこそ自然に感じられてなかなかいいです。
僕の場合は、椅子に座って真面目に聴き込むというよりは、それこそ何かをしながらかけたり、レシピ本を見ながら聴くのはいいという感じで、車にも合いそう。
音楽の選択肢はたくさんある中で、こういうものがあるのは積極的にいいことだと思いました。
まだ22歳、これからどうなるのだろう、要注目ですね。
あ、でも、22歳、今年で23歳、ほぼちょうど僕の半分の歳だ・・・
それを言うならジョー・エリオットの1/3、まではいかないか(笑)、失礼しました。
音楽に年齢は関係ない、ということなのでしょうね。