◎LONG WAVE
▼ロング・ウェイヴ
☆Jeff Lynne
★ジェフ・リン
released in 2012
CD-0300 2012/10/23
ジェフ・リンの新譜です。
新譜が出ました、という言い回しは今回は避けました(笑)。
ジェフ・リンの新譜は、主にアメリカン・スタンダードからオールディーズと呼ばれる辺りまでのカヴァー曲集。
最近はほんと、大物というか大御所のカヴァー集が多いですね。
いつも言うけど、僕はいろんな歌を聴きたいので、それはそれで楽しみだけど、でも正直、その人が好きであればあるほど、オリジナルの新曲を聴きたいという思いも強くなり、ちょっと困ってしまいますね。
それはともかく、全11曲、一聴してすぐに分かったのはたった2曲しかなかった。
そこで今回は、Wikipediaで全11曲のオリジナルについて調べてまとめてみました。
僕自身も知りたいですからね。
1曲目She
エルヴィス・コステロで有名なあれですね。
シャルル・アズナヴールの1974年の曲、そうだったのか。
シャルル・アズナヴールは父がシャンソンも少し聞いていたので名前だけは小学生の頃から知っていましたが、曲は1曲も知らなくて、このたび漸く1曲覚えました。
2曲目If She Loved You
1945年のミュージカル「カルーセル」の曲。
3曲目So Sad (To Watch Good Love Go Bad)
エヴァリー・ブラザースの1960年の曲。
いや実はこの曲が入ったオリジナルアルバムのCDは持っていて(Warner系の例の(チープな)紙ジャケ5枚組の中の1枚)、しかもCDの1曲目なのですが、覚えていなかった。
そういわれればまごうことなきエヴァリーの曲だな。
このアルバムはストリングスやサックスなど一部を除き歌も演奏もすべてジェフ・リンがひとりでこなしていますが、この曲は当然というか、ダブルトラックでハモっています。
4曲目Mercy Mercy
ドン・コヴェイの1964年のヒット曲。
惜しい、この次のアルバムのCDを僕は持ってる、これは聴いたことがなかった。
5曲目Running Scared
これは知ってる、ロイ・オービスンの1961年の大ヒット曲。
トラヴェリング・ウィルベリーズつながりのこの選曲はうれしいですね。
ボレロのリズムに乗せ、ロイのあの「トレンブリング・ヴォイス」を真似しようかどうしようか寸前でとどまっているような歌い方が面白い(笑)。
ちなみに、サイモン&ガーファンクルのThe Boxerの歌詞の中に"running scared"と出てきますが、それはきっと(間違いなく)この曲を意識したものだと僕はずっと思っています。
6曲目Bewithced, Bothered And Bewildered
1940年のミュージカル「パル・ジョーイ」からの曲。
Wikipediaを見ると、ロッド・スチュワートとシェールが古風な服装をしたシングルのジャケットが写っていたけれど、ということはロッドも例のアメスタシリーズで歌っていたんだな。
覚えていない・・・
どうも今回は、僕の曲の覚えの悪さが露呈されてしまうようですが、仕方ない、事実なんだから、受け止めよう。
7曲目Smile
1936年のチャップリンの映画「モダン・タイムズ」の曲に歌詞をつけて歌として膾炙しているもの。
これはそういわれて、ああそうだったかも、と思ったくらい。
これはかなり有名だと思う、僕が知らないだけ。
8曲目At Last
1941年のミュージカル映画「オーケストラの妻たち」の挿入曲で、かのグレン・ミラー・オーケストラが録音しています。
その映画は観たことがないけど、観てみたい。
9曲目Love Is A Many-Splendored Thing
1955年の映画「慕情」の挿入曲。
名画ですよね。
僕は高校3年の時に、父が昔の映画が好きだった影響で映画が好きになったのですが、たまたまその頃、夜中に「慕情」をテレビで見ました。
でも、よく分からなかった、というか半分寝てたような・・・
高校生だから仕方なかった、また観たい映画のひとつですね。
なお、この曲は特に、アレンジが映画とは離れたいかにもジェフ・リン節になっています。
10曲目Let It Rock
チャック・ベリーの1960年のヒット曲。
一聴してチャック・ベリーと分かったけど、歌メロは覚えがない曲でした。
もちろんというか、僕が持っている2枚組の編集盤には入っているのですが、ほんとつくづく自分が嫌になる・・・
11曲目Beyond The Sea
この曲はインターナショナル・ボーナストラックですが、多分、これが入っていないものを買う方が日本では困難だと思います。
曲は、1946年のフランスのシャルル・トレネの"La Mer"に英詞をつけて広まった曲。
というわけで、ミュージカルが多いのは、ELOの音楽を考えるとなんだか大納得ですね。
ロイ・オービスンとエヴァリーそれにチャック・ベリーを忘れないのもジェフ・リンらしくていいところ。
そしてドン・コヴェイといういわゆるソウル系も目立たないけれど押さえているのは、ジェフ・リンという人が見えてきますね。
このアルバムの特徴はなんといってもその音。
昔のラジオのようにスカッと抜けていないもやっとした感じの響きで、音だけでも郷愁にひたってしまう。
アナログで録っているのかもしれない、音と音の間みたいなものがそんな感じを受けるけど、逆にデジタルでこれができるのであればそれはそれですごいとも思う。
ただ僕は、最初は、そこまでやるかとちょっと戸惑ったんだけど、でも慣れるとこの音はいいですね。
一方でジェフ・リンの感覚は、少なくともオリジナルよりはうんと新しくて、古い歌をそのままやるということではない、あくまでもジェフ・リンの感覚で歌い通していて、今の人間にはほっとする部分。
ただし、ウィルベリーズをはじめとした辺りほどには音のポップさが強調されていない、少し落ち着いた響きではあります。
しかし驚いたのが、27分しかないこと。
ビートルズより短いじゃないか(笑)。
ここまで短い新作アルバムは、CDの時代になって以降で僕は初めて。
僕は古いアルバムのCDをよく買うので慣れているけれど(先日買ったレイ・チャールズのオリジナルアルバムも32分くらいしかなかった)、お金にうるさい人は、短すぎると文句でもいうかもしれない。
でも、短いからちょっとした間に聴きやすい、何度も聴きやすい、とも言えます。
それにしても、聴いていてあっという間に終わってしまう。
日本盤にはボーナストラックがもう1曲入っていますが、それでも31分がやっとでしょう。
ちなみに日本盤のボーナストラックはデル・シャノンのJodyで、かのRunawayのB面曲だそうです。
失敗した、国内盤を買うべきだった・・・
大物の古い曲のカヴァーアルバムという今の流れには乗っているけれど、ジェフ・リンらしさも際立つ、面白い1枚といえそうです。
タイトルの"Long wave"とは、「地表を伝わる波長の長い地震波」とのことだけど、音楽の波が昔からずっとこの地上に漂っている、という意味だと僕は解釈しました。
CDに貼られたシールにはこう書いてあります。
"JEFF LYNNE'S SALUTE TO THE AWESOME POWER OF MUSIC"
ジェフ・リンは古い音楽への畏敬の念を抱いており、それがあるからこそ音楽をやってこられた、ということでしょう。
ジャケット写真も古い映画、例えば僕が好きなイングリッド・バーグマン主演の『ガス燈』のような雰囲気、いいですね。
ジェフ・リンさすが、という1枚です。