◎MAGICAL MYSTERY TOUR
▼『マジカル・ミステリー・ツアー』
☆The Beatles
★ザ・ビートルズ
1967年12月初回放映
ビートルズのテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』のブルーレイが出ました!
今日はそれを記念して、僕なりのMMTの話を。
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1967年夏、ビートルズは、ロック史の金字塔とも言われる大傑作SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BANDをものにした後、次なる目標は、音楽と映像の一体表現でした。
ポール・マッカートニーの思いつきで、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人は、バスで英国内を周り、その様子を台本なしで撮影するツアーに出ました。
それが『マジカル・ミステリー・ツアー』。
映像は、1967年12月26日、BBCで初めて放映されましたが、最初はモノクロで、後にカラーで再放送されたのだとか。
これがモノクロだと意味ないじゃん、と思うんだけど、それが最初だったのは、印象悪くしましたかね。
完成当時は、ポールの独りよがりだ、意味不明、映像の無駄遣い、などなど酷評されましたが、一方でその後につながるいろいろな示唆に富み、さすがはビートルズとの評価も一部得ました。
日本では翌年に、武道館で上映会が行われました。
音楽は、映画のために新たに録音された6曲が、2枚のEPに収められてリリースされました。
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僕は、MMTはビートルズで3枚目に買ったアルバムでした。
ちなみに最初は編集盤のHEY JUDE、次がHELP!で、当時はお小遣いも限られていたので、何を買うか慎重に考え、好きな曲が多いアルバムから買っていったのでした。
ビートルズは中2の頃に聴き始めてすぐに本を読んだり、たまたま当時放送していたラジオ番組で情報を得ていたので、これが「とんでもない」テレビ映画であるとは知っていました。
初めて観たのは、当時、夏休みと冬休みに全国巡業で行われていた「ビートルズ復活祭」でのことでした。
「復活祭」は高校時代までは毎回欠かさず行っていましたが、確か、MMTは初めての時に観たと記憶しています。
というよりも、当時はMMTがどんなものか観たくてたまらず、MMTを上映するから「復活祭」に行くようになったのでした。
僕は、とっても面白いと思いました。
まあ、動くビートルズが見られるだけでよかったのですが(笑)、とにかく異様に気に入りました。
今思うと、多分、気に入った理由の一つは、僕が生まれた年に作られたことがあるのだと思います。
どれくらい気に入ったかというと、βのビデオソフトを買ったくらい。
確か1万円近くしたのだと思う、中学生には大金でしたが、どこからそのお金が来たのか、もはや思い出せません(笑)。
ビデオを買っていつでも見られるようになって、もう何度も見ました。
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一応ストーリーはあって、リンゴが、言い合いばかりしているジェシーおばさんと仲良くやってゆけないかと悩んでいたところ、「不思議なバスツアー」を見つけて参加してみた、というもの。
おばさんは、ジョンの叔父さんとお近づきになり、さてどうなる。
曲芸団、歌手、おかしなバスガイド、レスリング選手、写真家など一風変わった人たちと近所の(?)子どもたちなどが乗り込み、さて、行き先で何かが起こるのか、起こらないのか。
撮影は英国の空軍基地で主に行われたとのこと。
なお、途中の軍隊の幹部のやりとりのシーンでは、ビートルズの映画でおなじみ、ヴィクター・スピネッティがおかしな軍曹の役で出ています。
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ここからは、僕が特に好きなシーン、印象的なシーンの話を。
なお、見てのお楽しみ、すべてはもちろん話しません(笑)。
The Fool On The Hillは名シーンでしょうね。
いかにも英国的な、化石が出てきそうな白い岩の丘で、「愚か者」ポールが、ポーズを決めたり、バカ顔をしながら歌います。
丘からは雲海が望め、その上に太陽が上がってきて、写真を撮る人間としてもこれは引かれますね。
よく晴れの日に撮影できたな、というのも別な意味で感動します。
もちろん歌と映像がとてもよく合っている素敵なシーン。
そしてもちろんI Am The Walrus、
4人が演奏するシーンを見られるだけでも感動なのに、ポールはリッケンバッカーのベースを持っているし、ジョージのストラトはサイケデリックペイント、カッコいい。
ジョンが"I am the eggman"と歌った瞬間に卵のような白い帽子を被って両手を広げて立ち上がったり、"Policeman"と歌詞に出たところで警官が壁の上に立ったり、4人が動物に扮装する、踊る、クリップとしても秀逸な1編ですね。
これは自分で書いていてももどかしい、ぜひ見てください(笑)。
Flyingは、ただ英国の大地を飛びながら俯瞰するように写し出していくものですが、サイケ風の色使いには時代を感じます。
Blue Jay Wayは暗い道端に座ってジョージが歌い、合間にイメージ映像が挿入されていきますが(他の曲もそんな感じ)、ジョージがチョークで描いたキーボードを弾くのが面白い。
しかもジョージは左手がずっとピースサインで鍵盤の絵を押しており、これはきっと隠されたメッセージですね。
バスの中で、ジョンが同乗する子どもをあやすシーンがありますが、ジョンはほんとに子どもが好きだったんだな、と。
"Have a guess"といのが「当ててごらん」という意味だと知りました。
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夜になり、バスの中で飲んで騒いで、アコーディオンに合わせて歌うシーンは、いかにもパブ好きの英国人らしくて楽しい。
特にリンゴはもう出来上がっている感じがするし(笑)。
そして行きついた先は、クラブ。
男性だけが案内され、ボンゾ・ドッグ・ドゥー・ダー・バンドがDeath Cab For Cutieを歌う。
怪しい低音でブギーを歌っていたところ、ステージに艶やかな女性が入ってきて、ストリップを始めて、胸が露わに・・・
中学時代にはかなり刺激的な映像でしたが、ジョンとジョージが食い入るように見つめていて、終わってから子どもみたいに大喜びするのが面白くて、やっぱり彼らも普通の男なんだ、って思ったり。
じいちゃんはテーブルで何か棒状のものを擦るように拭いているのがなんだか怪しい。
ちなみに、女性の胸が露わになったシーンでは、胸の部分が"CENSORED"と黒く隠されます。
これはテレビ対策なのだと思うんだけど、でもそこが逆に、風刺的になっているのもまた面白い、偶然かもしれないけど。
もちろん、見せないのがビートルズの良心。
最後、Your Mother Should Knowのシーンは涙が出るほど感動的。
豪華なショーのエンディングのように、白いタキシード姿で階段を踊りながら降りてくる4人は最高。
明らかに笑いながらやっているし(笑)、プロ意識は皆無。
でもそこが逆にシュールな笑いを誘う部分でもありますね。
階段を降りるジョンのがに股にも最初は笑いました。
ポールは楽しそうに軽やかに動くんだけど、ジョージ体が硬そう。
ジョンは照れくささ丸出し、そしてやっぱりリンゴはこなれてますね。
ポールだけ胸につけた薔薇が黒いのも意味深。
それにしても4人のダンスは笑えます、微笑ましい。
振り付けも覚えきっていないし、爆笑といってもいいかも(笑)。
でも、ふわっと丸く広がるスカートをはいてダンスをする女性がたくさんいるステージを俯瞰で撮るシーンなどは素敵だし、曲がノスタルジックだから、なぜかほろっとさせられます。
なにより4人が楽しそうだし。
ところで、今回ブルーレイを観て(今更ながら)気づきましたが、この曲はテイクがレコードと違うのかな、ポールの歌がレコードとは違って聴こえました、でもそれもまたいい。
最後にHello Goodbyeのフェイドアウト部分が流れるのもいい。
と、結局は最後までとってもいい映画なのでした。
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幻想想的な映像、或いはシュールリアリスティックな映像物語などと言われますが、いかにも英国らしいユーモアは、この後の1969年に始まるモンティ・パイソンにつながるものがあります。
というか、実は僕は、MMTがモンティ・パイソンの影響で作られたのだとずっと思っていました。
映画としてみれば、まあ、B級なのでしょうね。
ビートルズは映像のプロではない上に、単なる思いつきだし、シーンごとの演出ももっときちんとやるべきものでしょう。
でも、プロじゃないから面白い、今流行りのB級だからいい。
ビートルズのようなスターがあんなアホなことをやって身近に感じられるという点では意味が大きい作品だと思います。
そもそも、ストーリーがあると思うから、「あれっ?」となるのであって、シーンごとに楽しむ、もちろんビートルズの音楽を楽しむ、それだけで十分以上に素晴らしい「映画」だと思います。
映画というよりも、大がかりなプロモーション・フィルムと思えばいい。
当時はビデオではなかったのでフィルムですが、そう考えるとこれ以上面白いものはないとも言えます。
ビートルズの先見性はMTVをも予言していたということでしょうか。
これについては、僕はちょうどMTV世代で洋楽に興味を持った頃、既に世の中にMTVが広まりつつあったので、自然とそう考えることができたのは幸運だったかもしれません。
なんていつものように大げさに話していますが(笑)、なんてことない、映像と音楽を楽しめばそれでいい。
とってもシンプルなことをビートルズは提示しているだけなのです。
ああ、もうディスクが2回目の再生に入っている(笑)。
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ブルーレイの限定盤には、『マジカル・ミステリー・ツアー』の2枚組EPレコードがついています。
そして特典映像に、トラフィックのHere We Go 'Round the Mulberry Bushのプロモーションフィルムが収録されています。
若き日のスティーヴ・ウィンウッドの姿が見られますが、MMTを意識したわけではないようで、1967年の年末、放映と同じ頃にリリースされたというつながりかな。
ただいずれにせよ、こんなところでトラフィックが見られるのはうれしいです。
ちなみにHere We Go 'Round the Mulberry Bushとは元々は英国の童謡であるとのこと。
最後に余談。
『マジカル・ミステリー・ツアー』の6輪バス、ミニカーを売ってないかな、と昔から思っていたんだけど、ブルーレイ化を機に出ないかな。
そういえばティレル、昔の言い方だとタイレルのF1で、前輪が小さく4つついた六輪車が話題になりましたが、ケン・ティレルはこのバスからヒントを得た、わけないですね(笑)。
『マジカル・ミステリー・ツアー』、楽しんでくださいね!
きっと自分のお好みのシーンが見つかりますよ。
The Fool On The Hillのビデオクリップとしての音と映像の美、I Am The Walrusのロックバンドとしてのカッコよさ、そしてYour Mother Should Knowの爆笑ダンスシーン、これだけでも見る価値大ありですよ!