◎THE DEFINITIVE COLLECTION
▼デフィニティヴ・コレクション
☆Bobby "Blue" Bland
★ボビー・ブルー・ブランド
CD-0292 2012/10/3
ボビー・ブルー・ブランドの1957年から1976年までの音源を集めた編集盤ですが、ほとんどは1966年までのものです。
ボビー・ブルー・ブランドというブルーズマンの名前を知ったのは、つい最近のことでした。
ローリングストーン誌が選ぶ史上最も偉大なシンガー100人の記事 を本家BLOGで上げたときのことです。
たまたまですが、その記事を上げたのがちょうど1年前の2011年10月3日のことで自分でもちょっと驚きましたが、つまり僕はボビー・ブルー・ブランドという人を知ったのがまだ1年前のことだったのです。
今まで知るきっかけがなかったわけではないことが聴いてみて分かったのですが、それにしても僕は鈍い。
先日、弟が買ったCDをかけるといって流れてきたのがブルーズで、僕は聴いたことがない響きの人、誰かと聞くとそれがボビー・ブルー・ブランドでした。
弟はブルーズは割と興味があるみたいですが(ソウルはないみたい)、それにしても急なことで驚いて聞くと、札幌ではFMのAIR-Gで毎週月曜日1時(日曜日25時)から放送しているラジオ番組「ヘヴィ・メタル・シンジケート」で曲が流れていたからだ、ということで半分納得。
ボビー・ブルー・ブランドは、「RS誌100人の歌手」で44位に入っています。
100人の歌手の話は何度もしていますが、ボビー・ブルー・ブランドは、その記事を書いた時に僕が名前すら知らなかった中では最も上位にいる人でした。
しかし、昨年はブルーズの波が来ていたけれど、すぐに聴くことはなく今に至っていました。
だから余計に、弟が突然聴いていたのには驚きました。
聴いてみると、確かにブルーズだるけど、ポップなセンスを持っているというか、土臭さをあまり感じません。
かといってB.B.キングのようなモダンさというか跳ねた感じもなくて、いわゆる「どブルーズ」とB.B.の間くらいの感じがしました。
曲調も3コードの単純なものから普通にポップソングっぽいものもあって多彩です。
ソウルに近づいている、そうですね、特に時代が進んでいくとそれが感じられます。
1960年に録音された7曲目I Pitty The Foolのホーンの使い方はもうソウルに足を踏み入れていると感じます。
1960年を挟んだ頃の録音が多いだけに、そういう流れにあったんだということが理解できます。
BBBのヴォーカルも、ブルーズといえばブルーズで間違いないですが、少し高い声で、やはりどこか洗練されたものを感じます。
シャウトはするけれど取り乱すことはない。
声がこうだから音楽もそうなったのか、その逆かは分からないですが、
よく知った曲が2曲ありました。
2曲目Farther Up The Road
Farther On Up The Roadとしてエリック・クラプトンなどで有名なあの曲ですね。
ゲイリー・ムーアもライヴで歌っていたし、最近ではスティーヴ・ミラーがぜんぜんブルーズっぽくなく歌っていました(それが実はよかったのですが)。
この曲、作曲者はDon RobeyとJoe Veaseyの2人ですが、レコードとして最初に世に出たいわゆるオリジナルはボビー・ブルー・ブランドだったのですね。
割とよく知っていて口ずさむ曲だけど、虚を突かれたというか、接点はあったのにやり過ごしていたんだなって。
15曲目Ain't No Love In The Heart Of The City
あ、これ知ってる!
ホワイトスネイクがカヴァーしていて、今でもコンサートで必ず演奏しているデヴィッド・カヴァデイルの大のお気に入りですね。
思い出すなあ、1988年の代々木のホワイトスネイクのコンサート。
当時はヘヴィメタルがブーム。
特に人気のある人はアイドル並みの扱いを受けていて、ホワイトスネイクではエイドリアン・ヴァンデンバーグの人気が高く、コンサート会場でも「えいどりあぁぁん」という女性の甲高い声が響いていました。
コンサートに一緒に行ったヘヴィメタ好きの悪友、明らかにそういう女性客を邪魔だと怪訝そうな顔つきをしていました。
コンサートは、当時の最新作で人気爆発したいわゆる「サーペンス・アルバス」の曲は大盛り上がり、それ以外はそこそこから少し上位に盛り上がっていた。
でも、確かアンコールで演奏されたAin't No Love In The Heart Of The Cityの時は、会場が静かになりました。
僕は予習をしていてこの曲は好きになっていたので、演奏してくれてうれしかったけれど、曲が終わって、近くにいた、当時で30歳くらいの女性が、「なにこの曲でこんなに盛り下がるの」と誰にでもなく周りに文句を言っていたのが今でも印象的です。
古くからのファンだったのでしょうね。
売れすぎることの弊害というものを感じました。
まあそれも含めていいコンサートでしたが。
長くなりましたが、弟がこのCDを買った理由も分かりました(笑)。
ホワイトスネイクのは気持ちを込めてゆったりとやっているんだけど、こちらは、それを聴き慣れているので、少し焦り過ぎ、ちょっとテンポが速い、と感じました。
でも素晴らしい曲であるのは間違いない。
この曲のオリジナルが聴けてよかった。
他幾つか。
5曲目Lead Me On、歌メロの感じや全体の流れがなんとなく「与作」みたい。
冗談のようでほんとにそう感じたのですが、ブルーズがポップになるとそういう方向に行くのかなと思いました。
13曲目Call On Me、14曲目That's The Way Love Is、1962年に録音されたこの2曲はほとんどソウルといっていい感覚。
おまけに歌メロがよくて、でも、どこかで聴いたことがあるような、ないような、ソウル創生期の曲という趣きがあります。
アメリカ北部のシカゴで録音されているのですが、そのせいか、後のサザンソウルよりはモータウンに近い感じもします、思い過ごしかもしれないけれど。
以上3曲はDeadric Maloneという人が書いた曲ですが、もちろんというか僕はこの作曲家を知らなかった。
なかなかいい曲を書く人だなあ、これからまたどこかで出会いたい。
音楽としてはかなり聴きやすいブルーズです。
先ほどまではいまいち曖昧に書いていましたが、ソウルとブルーズの中間の味わいが確かにあります。
僕は音楽をたくさん聴いてきたわけではないし、ブルーズ系に力を入れて、さらに普通に聴くようになったのは昨年のことだから、こういう中間的な音楽があるのは知らなくて、そこが新鮮でもあります。
進化論関係の本を読むのが僕は好きですが、鳥と爬虫類の中間の化石を見つけたようなある種の興奮がありますね。
て、やっぱり大げさか(笑)。
しかも、中途半端ではなく、それはそれでひとつの音楽世界を確立しているように感じるのは、歌手として、音楽家として、ボビー・ブルー・ブランドという人が本物であり、しっかりとした音作りをしているからでしょうね。
でも、やっぱり、本格的なブルーズの曲は、やっぱり本物のブルーズとして響いてきます。
すごいですね、さすが、伊達に100人の44位ではないですね。
アルバムも何か聴いてみたくなりました。
ブルーズはやっぱり奥が深い!
ところで、先ほど化石の話をしましたが、ボビー・ブルー・ブランドはご存命で、御年82歳、それを知って何かほっとするものを感じました。
まだ歌っておられるのかな、そうであるならうれしい。
またひとつ、いい音楽を見つけました!