◎OCCAPELLA!
▼オッカペッラ!
☆Jon Cleary
★ジョン・クリアリー
released in 2012
CD-0253 2012/6/27
ジョン・クリアリーは、以前記事にしたファッツ・ドミノのトリビュート に参加していたことで知りました。
Wikipediaで調べると、ジョン・クリアリーは英国人で、ニューオーリンズの音楽の憧れてアメリカに移り住んだという人。
ニューオーリンズの音楽は僕ももっと深く聴いてみたいと思っている、でも現段階では思っているに毛が生えたようなものでなかなか踏み込めないけど、憧れのようなものはあります。
しかしそんな状態だから、この記事はきっとうまく書けないと思います、予めご承知おきください。
この新譜は、5月のことだけど、Amazonの購入履歴のおすすめで画面に出てきて、ジャケットを見て一発で買おうと決めたもの。
Amazonのおすすめはうまいですよね(笑)。
でも、それで買って気に入った、それまで聴いたことがなかったアーティストも何人かいるので、次に何をおすすめされるか、今や楽しみでもあります。
もちろん、毛が生えたニューオーリンズへの憧れがあってのことで、この素敵な絵のジャケットはそれを後押ししてくれたというところ。
このアルバムはしかし、実際に聴いてみると、ほぼ100%、ジャケットの通りでした。
簡単にいえば、ジャズとソウルの間の音楽という感じ。
ジャズだって曲だけとればブルーズだったりR&Bだったりするわけで、ジャンルというより形態というか、その辺の感覚の音楽です。
ジョン・クリアリーはWikipediaではR&Bに分類されていますが、そうか、今はこういう音楽をR&Bというのか、と分かりました。
僕のような古い人間は、R&Bといえば「ソウルの前でブルーズの後、ロックの叔父」というイメージしかなかったので、それが分かったことが僕には大きかった。
それにしてもこのアルバムはとにかく楽しい!
音楽って「楽しい」ものなんだ、ということを再認識させられます。
曲はすべて他人のペンによるもので、「ニューオーリンズの男爵」と僕が勝手に呼ぶアラン・トゥーサンが半分以上の曲に関わっています。
裏ジャケットにはこう書かれています。
"HAVING FUN WITH THE SONGS OF ALLEN TOUSSAINT"
「アラン・トゥーサンの歌で楽しみましょう!」
1曲目Let's Get Low Downは「ニューオーリンズの顔役」とやはり僕が勝手に呼ぶドクター・ジョンとボニー・レイットがヴォーカルで参加しているのがうれしい。
曲は確かにニューオーリンズ風なんだけど、でもどことなくシャープな感覚であるように感じます。
2曲目Occapellaはその通りア・カペラの気持ちが浮いてくるようなひたすら楽しい曲。
聴いていて日本のシャネルズを思い出しました。
ところでこの"Occapella"について、"capella"はイタリア語の辞書で礼拝堂であると分かったけど、"oc"という接頭語が見つからないのできっと造語だと思います。
3曲目Poor Boy Got To Moveはレゲェ。
1990年代前半のJ-WAVEのような雰囲気だと思いました。
当時は職場でよくJ-WAVEを聴いていて、特に日曜の午後から夕方を思い出させる雰囲気でなんだか懐かしい。
4曲目Everything I Do Gonh Be Funky、wikipediaを見直すと彼はR&Bの他にFunkとも書いてあった(笑)。
テンポが遅いファンクで、しつこくない程度に粘っています。
5曲目Southern Nightsはグレン・キャンベルが歌って大ヒットしアラン・トゥーサン自身も録音しているニューオーリンズを象徴する名曲中の名曲。
ギターが奏でるちょっと寂しげなイントロの音が、ザ・バンドの「南十字星」のジャケットのように海辺で夜にたき火をするような雰囲気。
でもそこには今はひとりしかいない、孤独を積極的に楽しむ、そんな曲で、このアルバムの白眉といえるでしょう。
6曲目Viva La Moneyはギターと思われるイントロの旋律が不気味に迫ってくる。
いや、不気味は言い過ぎ(笑)、なんとなくまとわりついてくるような感じで、僕はこの手の曲はかなり好きです。
7曲目Wrong Number、これは古い人間の僕がイメージしていた8/12のR&Bバラード。
8曲目Popcorn Pop Pop、楽しいという点ではいちばんの曲。
ジョン・クリアリーの声は少ししわがれているけど高音ものびやかだし低音も落ち着いていて、僕はかなり気に入りました。
でもこの曲は、子どもっぽく歌おうとしているのかな、なんだか間抜け、そこが楽しい。
9曲目What Do You Want The Girl To Do、アコースティックギターがいい雰囲気ですが、このアルバムは基本的にはヴォーカルとすべての楽器をジョン・クリアリーひとりで何曲かにゲストが参加しているだけということで、彼の多才ぶりが分かります。
10曲目When The Party's Over、これも1990年代J-WAVEだなあ(笑)。
1990年代は音楽の趣味が多様化し、いい意味で聴き手も演奏者も何でもありになったと思うんだけど、それはメガヒットとは違う音楽が認められたということで、手作り感覚というか、まさにそんな感じ。
11曲目I'm Gone、これはアラン・トゥーサンの曲だけど、誰かが歌ってヒットしたのかな、いかにもオールディーズ風のポップソング。
12曲目Fortune Tellerはピアノ独奏によるインストゥルメンタルで、ファッツ・ドミノ→ドクター・ジョン→と続くニューオーリンズのピアノの系譜に名乗りを上げた、というところかな。
ニューオーリンズの音楽をやっているジョン・クリアリーだけど、やはり英国人ということで、土臭さがなくむしろ洗練されています、華やかといってもいいくらい。
もっと簡単にいえば、お洒落な感じですが、お洒落は僕には似合わないので、ここまでその言葉は出さなかったのです・・・(笑)。
J-WAVEを喩えに出したように、日本人の感覚には受ける音楽ではないかと僕は思いました。
もちろん、大ヒットするなどというのは考えにくいけど、1990年代から20年を経て日本でも音楽がより身近になり、街中のジャズ系のライヴが増えた世の中、これはとってもいいと思いますよ。
今のところ国内盤が出ないようですが、まあ出すだけでは売れない世の中だろうけど、なんとも残念なところです。
音楽として、音として楽しい上に、基本的にネガティヴな曲もないので、ほんとうに楽しいアルバムです。
これは肯定的に言っていますが、特に今月は新譜が次々と出て聴きたいものがたくさんあるのですが、エアポケットのように一瞬だけ聴きたいものが思い浮かばない、でも音楽をかけたい、という時はこのところずっとこれをかけています。
つまり、なんだかんだでよく聴いている、すっかり愛聴盤となった1枚です。