LYNYRD SKYNYRD レイナード・スキナード | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-April29LynyrdSkynyrd


◎LYNYRD SKYNYRD (Pronounced Leh-nerd skin-nerd)

▼レイナード・スキナード

☆Lynyrd Skynyrd

★レイナード・スキナード

released in 1973 

CD-0235 2012/4/29


 レイナード・スキナードのデビューアルバム。


 レイナード・スキナードは、オールマン・ブラザース・バンドと並ぶ「サザンロック」の代表格でしょう。

 サザンロックは、ブルーズやカントリーをはじめとした様々なアメリカ音楽の要素を色濃く反映して雰囲気を残した、いかにもアメリカを感じさせるロック。
 サザンロックの音の特徴は、「ワイルドさ」「泥臭さ」「リズムの粘つき」「ウェットさ」「うねり」の要素がほぼすべて揃っていることだと思います。

 僕は若い頃、スキナードはロック聴きの間では大変有名な2曲しか知らず、30歳になるまではあまり聴こうと思いませんでした。
 特に嫌いだったとかそういうわけではなく、接点がなかったのと、リマスター盤が出ていなかったのが大きかったかな。

 最初の接点は意外にもメタリカで、1998年の編集盤アルバムGARAGE INC.において、スキナードのTuesday's Goneをカバーしていたのを聴いて少し気になり始めました。

 その曲はそれから少ししてあの「9.11」関係でアメリカで放送禁止になりましたが(詳細後述)、たまたまちょうどその頃にリマスター盤も出たこともあって、この1枚目をついに買って聴き始めました。

 それまでは、まあこの手の音楽の「ワイルドさ」からして、もっとガリガリとざわついて雑然とした響きの音を想像していました。

 しかし、いざこのアルバムを聴くと、それがまったく逆で、ワイルドさがありながらもシャープで、音がきめ細かく輪郭もくっきりとしていて「きれいな音」であり耳に心地よい、むしろすっきりとして洗練されたといっていい音を出していたことに驚きました。

 それを可能にしたのが、プロデューサーのアル・クーパーの存在でしょう。
 アルは、ボブ・ディランなどのとのセッションを経験し、自身が歌ったブラッド・スウェット&ティアーズを経て、ソロでもアルバムを出しつつ、プロデューサーとしても才能を発揮し始めた頃。

 彼は、さまざまなアメリカ音楽のよいエッセンスを活かしつつ、ポップで聴きやすくてカッコいい(ここ意外と重要)音を作る才に長けている人。

 このアルバムは、BS&Tの1stとともにその魅力が最大限に発揮されていますが、アルが関わったこの2枚は、僕にとってもとりわけのお気に入りのアルバムです。

 このアルバムが「きれいに」聴こえるのは、アルが、サザンロックの「じとっと」した中に、微妙に乾いた感覚をまぶしたことが奏功しているように思います。
 ハードでソリッドでシャープでしかも荒い、この音は聴いていて気分がすかっとしますね。
 しかも、彼らもかなりポップな曲を書く人であり、それもよく生かされています。

 もうひとつ、このアルバムは、あまりジャムっぽいところがなく、要するにアドリブの要素を極力排し(と思われ)、ギターソロも含めてきっちりと枠に収めて聴かせているのが、僕のようなポップス上がりの人間には聴きやすい部分でした。

 実は僕は、ジャムセッションとかインプロビゼーションの応酬とかがやや苦手で、やっぱり歌を聴かせてほしいと思う人間であり、だから最初はそうした先入観もあってスキナードは縁遠かったのでした。
 まあしかしそれは逆に、「計算ずく」ということでもあって、この手の音楽に求めがちなスリルや面白みがないと感じる人もいらっしゃるかもしれません。

 そして、このアルバムとは直接関係ない部分でもうひとつ感じるのは、「ハードロック」と「ハードなロック」の違いです。

 彼らは決してハードロックに分類されるものではないと思いますが、僕が好んで聴く音楽の中ではかなりハードに攻めてくバンドで、これより「ソフト」な音のHR/HMバンド~いわゆる産業メタル~はいくらでもあります(笑)。
 まあ、ジャンルで聴くわけではないのですが、このハードさは、僕が好きなタイプのハードなロックと言えます。



 1曲目I Ain't The One、跳ねる、粘る、うねる、いきなりエンジン全開!
 間の多いギターリフと歌メロの絡みとの間の取り方が最高にカッコよく、ギターソロはなんだか適当に始まったように思えてでも最後ユニゾンで収束するところなんか、カッコよすぎ。
 ギター弾きならこんな風に弾いてみたい!
 そしてレス・ポールの音がまたカッコよすぎる!
 とにかくなんでもかんでもカッコいい曲。
 僕は最初にこれを聴いた時、この曲が始まって5秒で、「このアルバムは素晴らしいに違いない」と確信しましたが、そういう点、1曲目としてもかなり秀でた曲です。
 ただし、ロニー・ヴァン・ザンドの声は、もっとストレートに攻めてくるものを予想していたのですが、意外と「うねうねくねくねした」歌い方だったのが、ちょっと意外でした。
 もちろん今はそれはそれで好きですが。

 2曲目Tuesday's Gone、彼らを聴く直接のきっかけとなった曲。
 「9.11」関係で、正確にいえば「放送自粛曲リスト」に入ったこの曲ですが、あの「9.11」が火曜日だったことと、歌詞にも「火曜日は風とともに行ってしまった、俺の彼女も風と一緒さ」というくだりがあるのが主な理由だったようです。

 ちなみにカンサスの名曲Dust In The Windも同様の指定を受けたようです。

 曲は割とシンプルなR&Bスタイルのワルツのバラードで、鉄道で彼女の元を去るという、ブルーズにはよくある心象描写の曲。
 イントロの旋律を雰囲気たっぷりに奏でる太い音のギター、それを受け、曲の節目節目に出てくるエレクトリックギターのアルペジオによる高音のキメのフレーズが、まるで祈りの鐘を鳴らし続けているかのようで、とても印象的。

 こんなにまでも雰囲気がある曲というのもそうはなくて、もっとというと、雰囲気だけで既に名曲のレベルに達している曲ですね。
 じっくり聴くと、涙ぐむことすらあります。
 ビリー・パウエルが奏でる間奏のピアノも、物語をなぞるようなまさに名演。
 放送自粛になったのですが、歌詞をよく噛み砕いて聴くと、むしろ鎮魂にはいい曲じゃないかと思うんだけど、どうだろう・・・
 真の名曲とはこのことですね、というのはそろそろ僕の常套句になってきたかな(笑)。

 3曲目Gimme Three Steps、打って変わって跳ねるように軽快でかなりポップな曲。
 イントロから続く軽やかなギターと小気味よく動き回るベースはまさに軽快にステップを踏む様子を表わしていて楽しい。
 なお、歌詞に、興奮などで心が震える様子を表した、"Shaking like a leaf on tree"というくだりがありますが、これは向こうでの慣用表現であることを後に知りました。

 僕は樹木大好き人間なので、こういうくだりには過敏に反応してしまいます(笑)。


 4曲目Simple Man、ダイナミックかつ感傷的なR&B風バラードの内容は、かつて母に「シンプルな人間になりなさい」と諭された、というもの。
 大きなうねりに大きく包まれるダイナミックな曲。

 5曲目Things Goin' On、今度はラグタイム風のいかにも楽しくて洒落た音作りで、ホンキートンク風のピアノが踊っています。

 このラグタイム風の音というのは、当時、1973年度オスカー受賞作品である映画「スティング」のサウンドトラックがヒットしていたことも、ちょっと頭をかすめます、直接関係はないかもしれないけど。


 6曲目Mississippi Kid、さらに雰囲気が(良い意味で)崩れ、思いっきりカントリーブルーズ。
 アコースティックギターを下地に、スライドギターが舞い踊る中、ロニーのキザっぽい歌い方が面白くて効果的。
 この曲のみアル・クーパーも作曲に関わっていますが、ほんと柔軟取り混ぜたアメリカ音楽の魅力にひたることができるのは、バンドの音楽性とともに、アルのセンスの良さもあるでしょう。

 緩い曲を真ん中辺に2つ続けたのも、メリハリがあってよい流れ。

 7曲目Poison Whiskey、さて、目を覚ましたのか(笑)、当たりが強くて粘つくハードなロックに戻って、ラストの名曲に向けて盛り上げてゆくかのような雰囲気に。
 ギターリフが強烈で、かつ、リズムギターもよい表情をつけています。
 しかし曲が進むとホンキートンクピアノが踊り出し、重たい中にも軽やかな雰囲気を醸し出すのは、酔ったからかな(笑)。
 このウィスキーは、スコッチじゃいけません!
 絶対にバーボンじゃなきゃ!!
 と思って辞書をひくと、その通り、通常、英国とカナダで醸造されたものはwhisky、アメリカとアイルランドで醸造されたものはwhiskeyと綴る、とあります。


 8曲目Free Bird、ラストは名曲中の超名曲。
 ゆったりとしたバラード調の曲は、ロック界の「至宝」。
 教会風の荘重なオルガンで曲が幕を開けるところからして既に、誰もがこれは名曲だと実感できるところでしょう。
 しかしラストはテンポアップして、ギターバトルが5分以上続きますが、このギターのスリリングさはイーグルスのHotel Californiaと双璧をなすものでしょう。
 こうなったらもう陶酔するより他はない!
 曲を終わらせるのにフェイドアウトしかやりようがなかったのも、この場合は肯けるところです。
 これも彼女の元を去って「鳥のように自由に」なるという曲ですが、2つの名曲が同じようなモチーフなのは興味深いところです。

 
いやぁ、ほんと、名盤、傑作、大好きです。
名曲が入ったアルバムというのも決して多くはない中で、真の名曲が2曲も入ったアルバムというのも、そうざらにはないでしょうし。

 このアルバムは、ビートルズとそのメンバーとレッド・ツェッペリンを除けば(笑)、1970年代の全ロックアルバムTop10に入るくらいに大好きな1枚です。

 あまりにも大好きで、リマスター盤を買ってからさらに、旧盤CDを中古で見つけて買っていつも車に積んであるくらいですから(笑)。


 ところでこのアルバムが面白いのは、CDの背にはLYNYRD SKYNYRD (pronounced 'leh-'nerd 'skin-'nerd)と記されているのですが、Amazonでは()内をアルバムのタイトルとして表記していることです。

 ロックのバンド名は、BeatlesやByrdsのように、主に母音の綴りを変えて同じ発音にすることが多いですが、このように母音をすべてyにしているというのも面白い例です。
 しかしその結果、読み方が分かりにくくなったので、CDにはわざわざ(レイ・ナード スキ・ナードと発音する)と説明しているのは親切というか面白い。

 名前を読めて言えなければラジオでリクエストもしにくいでしょうからね(笑)。

 でも、じゃあ、Amazonのリンクのようにそれがタイトルなのか、と言われれば、それは違うような気もするのですが・・・


 ともあれ、久しぶりに聴いたけど、ほんとうにロックって素晴らしいなあと実感できる1枚であることを再認識しました。