SLIPSTREAM ボニー・レイット | 自然と音楽の森

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◎SLIPSTREAM

▼スリップストリーム

☆Bonnie Raitt

★ボニー・レイット

released in 2012

CD-0234 2012/4/26


 ボニー・レイットの新譜は、通算16枚目、7年振りのスタジオアルバム。


 ボニー・レイットが大好きです。

 ブルーズウーマンというのか、女性で南部系で少なくとも普通に買って聴くことができるほどに売れた人というのは貴重な存在でしょう。

 まあ、近いといえばシェリル・クロウがそんなに遠くはない人かな。

 ボニー・レイットのほうがはるかに先輩だけど、僕がボニーを聴き始めたのはシェリルより後のことで、そう思ってしまう時点でやはり僕が好きになるのは必然のような気もします。

 でもシェリルよりももっと土臭くて本格的という感じはします。


 ギターももちろんですが僕はボニーの声が大好きで、ハスキー系のよく響く声で、まろやかで気持ちが包み込まれるような声の持ち主、いわゆる癒される声ですね。

 いつも話題に出すローリングストーン誌100人の偉大な歌手で彼女は50位にランクインしていて、アメリカでは歌手としての人気と評価が高いことがうかがい知れます。


 7年振りの新譜が出るという情報を3月に知って心待ちにしていましたが、でも、僕がボニー・レイットを聴き始めたのは5年ほど前のことで、実は僕が彼女の新譜に接するのは今回が初めて、だから余計に楽しみでした。


 届いたCDをかけると、1曲目Used To Rule The Worldのイントロのらファンクっぽいキレのいギターからもう魅了されました。

 2曲目のRight Down The LineはレゲェでBメロの最後の歌メロがとってつけたようで最初は違和感があったけど慣れるとそこが楽しい(笑)。

 3曲目のMillion Milesはフォークブルーズ調、重量感がある響きの中でボニーの声が輝いていて、これができてしまうのはカッコいい。

 4曲目You Can't Fall Me Now、旋律がじわっと盛り上がるバラード風のこの曲はまさにボニー・レイット節。

 5曲目Down To Youは元気が出ますね、アップテンポのポップな曲で最後のギターの盛り上がりは気分爽快。

 6曲目Take My Love With Youはアコースティックギター基調の落ち着いたちょっと切ない曲で、まさにボニーの声がじわっとしみてくる。

 7曲目Not Cause I Wanted To、おとなしい曲が続いてこれはバラードと言える、でも背景に教会音楽が見える、切ない響きの大人の曲。

 なんとなくアルバムの最後の曲っぽい響きで、聴いているとここでひとつ区切りがつくような感じがします。


 8曲目Ain't Gonna Let You Goはボニーの基本ともいえるブルーズ調の南部的な強い響きの曲で、やはりカッコいいと思ってしまう。

 9曲目Marriage Made In Hollywoodはイントロのギターの音からきらびやかな響き、小気味よいテンポのカントリータッチの曲で、ハリウッドとはいいながらもむしろ小市民の小さな幸せを感じます。

 10曲目Split Decisionもアップテンポの元気な曲、タイトルの言葉を歌う部分はすぐに覚えたくらい印象的で、後半のギターの盛り上がりは録音の時にのっていたことが伝わってきます。

 11曲目Standing In The Doorwayはゆったりとした曲の中で揺れるギターの音が情感こもっていて、僕はニューオーリンズっぽい雰囲気を感じましたが、これが出来るの心の余裕もまたボニーの持ち味でしょうね。

 12曲目God Only Knowsはピアノ弾き語りのしんみりとした曲で、やはりタイトルからして教会音楽をしのばせるもので、7曲目で一度区切りがつくと感じたことが流れとしてここで生きてきます。

 僕はいつもアルバムの最後の曲にこだわると書いていますが、若い頃の僕なら、この曲が最後というのは理解しても納得はできなかったと思います。

 でも、今は自分の考えだけに固執しなくなったのか、これでいいと思うし、特にボニーの場合はあの声でしんみりと歌われると、後に残るものが大きいですね。

 またすぐに聴きたいと思うわけで、このほうが効果的ともいえるのでしょうね。



 「音楽性」という言葉は何か曖昧な概念のように感じるので僕はあまり使わない。

 でも逆に、ボニー・レイットのように、ブルーズもカントリーもロックもソウルも何もかも取り込んでうまく消化し昇華して自然に表現している人に対しては、曖昧という言葉は、いろいろあるという意味のほめ言葉になり、だから「音楽性」が広いと表現することにあまりためらいを感じません。


 「スリップストリーム」とは、レースなどで前の速い車のすぐ後ろについて空気抵抗を減らして走る、その状態のことを言いますが、それはボニーのギターの音の響きの爽快さを表したものかもしれない。

 ハクチョウやガンがV字型の編隊を組んで飛んでいくのもスリップストリーム、それは自然現象、やっぱりボニーは「自然」なんですね(笑)。

 そうです、ボニー・レイットの音楽は、かけていて自然と心に届いてくるのがいいですね。


 そしてこのアルバムで僕は、ボニー・レイットという人は存在そのものが音楽である、と感じました。


 暫くは毎日聴きそうです。