FLEETWOOD MAC フリートウッド・マック | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-April14FleetwoodMac





◎FLEETWOOD MAC


▼ファンタスティック・マック


☆Fleetwood Mac


★フリートウッド・マック


released in 1975


CD-0230 2012/4/14


Fleetwood Mac-02




 昨日に続いてフリートウッド・マックのアルバム、昨日のひとつ前の作品を。




 この2枚は僕の中では不可分な存在なのです。


 だから2日続けて記事にしました。




 理由はごくごく単純で、僕はこの2枚を同時に買ったからでした。


 大学1年の夏休み、札幌に帰省していた時、もう9月が近かったかな、お盆の後だったとは思う、札幌のタワーレコードに行ってこの2枚のCDを一緒に買いました。


 多分当時は2枚で4000円くらいしたんじゃないかな、もっとかな、かなり思い切った買い物だったなあ(笑)。


 


 「噂」をかねがね聴きたかったことは昨日話しましたが、このアルバムから2人のアメリカ人、リンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスが加入したということで、流れとしてこれも聴いておきたいと思ったのでした。




 その前に、僕がフリートウッド・マックと出会ったのは、いつものことですが「ベストヒットUSA」でHold Meを見て聴いたときでした。


 でもそれはヒットした頃を過ぎていて、年間チャートか過去のヒット曲を振り返るコーナーか何かで、サビの部分を短く流していただけでしたが、いずれにせよこういうポップな曲は好きだなと思ったところで「噂」の噂を聞いていつか聴きたいと思ったのでした。




 さて、この2枚の話に戻ると、僕は「噂」よりも「ファンタスティック・マック」のほうをより気に入ったのでした。


 「噂」はすごいアルバムだと構えていた部分があったのかな、近寄り難いと感じたのかもしれないし、恐かったのかもしれない、ものすごく期待値が高かったので最初はそこまでいいとは感じなかったのかもしれない。




 逆にこのアルバムは、期待値は普通くらいだったけど、それをはるかに上回る気に入りよう、こんなにも素晴らしいのかと感激しました。


 まさにファンタスティック、当時のワーナー・パイオニアの人はうまい邦題をつけたものです。


 


 どこがいいって、とにかく楽曲が素晴らしい。


 やりたいことをやっているんだけどまだ発展途上で多少のぎこちなさはあるけど、それを上回る勢いがあってそこがロック的面白さであると感じました。 


 さらには、これは後知恵ですが、「噂」のようなどろどろした部分がなく、少なくとも仲良くやってゆこうという親和的なものが感じられ、むしろ爽やか、当時は僕も一応は二十歳で若かったからその爽やかさが真っ直ぐに伝わってきたのでしょう。


 


 曲の話をすれば、このアルバムから参加したスティーヴィーは早くも最初のここで2曲の彼女を代表する曲を書いています。


 


 4曲目Rhiannon、僕が最初に聴いた時、この世の中に妖精ってほんとうにいるんだと錯覚しました。


 歌詞は観念的なファンタジーの世界、ピアノとギターの不思議な響きはまるで足が宙に浮いているようであり、この世のものではないような雰囲気。


 おまけに歌メロが最高に、ほんとうに最高に素晴らしい。


 ミック・フリートウッドはほんとに表情豊かなドラマーだと思う、この曲のヴァースの部分でのスネアの使い方が独創的。


 スティーヴィーの声も最高にいい、ほんとうにこの世に存在するのだろうかと思わされるような名曲ですね。


 この曲は、口ずさむよりも少し大きな声で歌うのが好きですね、特に車の運転中に。




 8曲目Landslide、後にカントリー系のアーティストが何人もカバーするようなこの曲こそがスティーヴィー・ニックスが加わったことの意味ではないかと。


 ただし僕は最初に聴いた時は、なんかカントリーっぽいなんとなくいい曲だな、くらいにしか思っていなかったのですが、後になってこの曲がアメリカでは大変人気があると分かったのは僕には意外でした。




 ニックスの曲はもう1曲、6曲目Crystal、これは当時は仲が良かったことを象徴するかのように、作曲者ではないリンジーが歌っています。


 これはむしろ最近のニックスのアルバムに通じる落ち着いた曲ですが、考えてみれば作曲者ではない人が歌うというのは今となっては珍しく貴重な曲ですね。






 リンジー・バッキンガムは共作を含めて3曲しか書いていません、まだ少し控えめにしていたのかな。




 1曲目Monday Morning、実は僕がいちばん好きなマックの曲がこれなのです。


 このアルバムが素晴らしいと思ったのはひとえにこれが1曲目だからであり、これを聴いてもう5秒くらいでこのアルバムは素晴らしいに違いないと確信しました。


 この曲は特に展開が凝っているということもなく淡々と真っ直ぐに流れていくだけですが、起承転結があっていい意味で教科書にきれいにまとまっている曲だと思います。


 いい意味だからそれは面白くないということではなく、この曲はそうした細かいことを一切口にはさむ余地がないほど歌メロがきれいで素晴らしい。


 素材の良さがすべてですね。


 もちろんきわめてよく口ずさむ曲ですね、もちろん月曜日の朝に(笑)。




 9曲目World Turningはクリスティン・マクヴィーとの共作だけど、かなりハードでモダンなブルーズといった趣で、僕はこれを最初に聴いてあまりのカッコよさにぞくぞくしました。


 男女で交互にヴォーカルを分けるブルーズというのも少なくとも当時の僕は知らなくて、こういう曲があったんだって感激したものです。


 ただ僕は最初これ、スペルを読み間違えてWorld Tuningだと思っていたのですが(笑)。


 クリスティンもリンジーという優れた作曲家が入って刺激を受けたのでしょうね。




 最後の11曲目I'm So Afraid、それまで穏やかで明るい曲が並んできた最後の最後になんだか不安になるような曲が入っていて驚きました。


 僕はいつもいいますがアルバムの1曲目と最後にはとことんこだわるほうで、このアルバムを聴いて唯一納得できなかったのが、この抑圧的な暗い曲が最後にある、それでアルバムが終わってしまうということでした。


 もちろんそれは後付けの結果論だけど、それは次のアルバムを暗示していたのかもしれない、とも。


 ただし曲自体はとってもいいと思うし好きです。






 3曲目のBlue Letterはカバー曲のようですが僕はオリジナルを知りません、もしかして外部のソングライターの曲かな。


 でもこの曲はリンジーがいかにもマックらしく歌っていてアルバムにはとってもよくなじんでいます。






 残りの4曲はクリスティ・マクヴィーが一人で書いています。


 クリスティンはここまで鳴かず飛ばずのバンドをなんとかしようと尽力してきて、少し前のアルバムで良くなりかけたところでメンバーの脱退があったりと苦労をしてきた人ですが、2人のアメリカ人が入ることにより化学変化が起こったのか、彼女自身の作曲能力も一気に開花した感があります。




 2曲目Warm Ways、これを最初に聴いた時、まさに"Warm"という言葉がぴったりのサウンドに酔いしれました。


 サウンドのみならずクリスティンが編み出す歌メロ、そして歌い方、もう何もかも温泉上がりのような雰囲気で(笑)、英語は音が意味を表す言語であることがよく分かります。


 昨日も書きましたがなんとなく流れてなんとなく収束するクリスティンの曲のよい面が出ている曲かな。




 5曲目Over My Headはフェイドインして始まるのが面白い。


 これはタイトルの言葉を歌う部分のリフレインを思いついた時点で勝ちという感じで、特に凝った曲でもないんだけどそれがとっても印象に残ります。


 曲が淡々としているだけに、スティーヴィーのコーラスが目立ったり、リンジーの落ち着いたギターが聴かせてくれたりと、バンドがいい方向に進もうとしているのが分かります。




 7曲目Say You Love Meはシングルカットされて惜しくも11位を記録した曲。


 この曲についてはなんとなく流れてはおらず、メリハリがあってシングル向きですね。


 最後の最後、"Fallin', fallin', fallin'"とそこまで出てこなかったコーラスでフェイドアウトするのもいいアイディア。


 イントロのピアノを聴くとラジオ体操を思い出す(笑)、それくらい元気になりたい時に聴くにはいい曲。




 10曲目Sugar Daddy、このアルバムのクリスティンの曲はいい意味で似たような感じで統一感があっていいですね。


 逆にいえばそれだけにWorld Turningがインパクトが強いともいえるのですが、クリスティン節が炸裂しているのもこのアルバムの魅力の一つでしょうね。


 


 今回は1曲目から順に触れていなくて読みにくいかもしれないと思います、申し訳ない、ご了承ください。




 繰り返し、このアルバムはロック的な面白さ、楽しさに満ち溢れています。


 後追いで聴く人間は次のアルバムが大ヒットしたことは分かっているのですが、でもおそらく、当時の人も、このアルバムには大きな可能性を感じたのではないかと僕は思っています。


 そのくせ落ち着いて聴き込める部分もあって、そのさじ加減がまた素晴らしい。




 なんでもビートルズの話を持ち出さないと気が済まない僕ですが(笑)、ビートルズに喩えるとRUBBER SOUL的な魅力がこのアルバムにはあります。


 何より、曲がほんとうに素晴らしい、ほんとうに。




 僕は今でも、やっぱり「噂」よりはこちらのほうがより好きですね。


 特に、キャロル・キングとジェイムス・テイラーのコンサートの後でまた聴く機会が増えたアルバムでもあります。