BORN IN THE U.S.A. ブルース・スプリングスティーン | 自然と音楽の森

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◎BORN IN THE U.S.A.

▼ボーン・イン・ザ・U.S.A.

☆Bruce Springsteen

★ブルース・スプリングスティーン

released in 1984

CD-0226 2012/4/2

Bruce Springsteen - 02


 ブルース・スプリングスティーンの、あれ、何枚目だ、(と今ここでwikipediaを見ないで指折り数えている)、7枚目のアルバムだ。


 先週の「ベストヒットUSA」では、ブルース・スプリングスティーンの新譜からの新しいビデオクリップWe Take Care Of Our Ownを流していました。

 新譜は先日記事にしましたが、それはアルバム1曲目で、僕はいい曲だと元々思っていましたが、映像つきで見るともっといい曲、素晴らしい曲だと思いました。

 この辺りの感覚はいかにもMTV世代という感じが、僕自身もしました(笑)。


 ブルース・スプリングスティーンは日本では人気がないですよね。

 僕は、本家BLOGでも何度かボスのアルバムの記事を上げていましたが、おしなべて反応がよくなく、アクセス数も音楽記事の平均より少な目のものがほとんどです。


 

 今回取り上げるこのアルバムは、僕ら前後の年代の人にはもう何も言うことがない大ヒットアルバムですね。

 僕は、このアルバムが出る前にBORN TO RUNとDARKNESS ON THE EDGE OF TOWNそれにNEBRASKAを買って聴いて大好きになっていたのですが、そこに来て高校2年の時にこのアルバムが出て大ヒットし、大好きを通り越して、僕の基本のひとりと言えるまでの存在になりました。


 でも、このアルバムは初めから人気があったかというとそうでもなく、少なくとも高校のクラスでは僕以外に聴いている人はいませんでした。

 高校3年になってから、1学期の期末テストの後かな、クラスの誰かにこのLPを貸して帰ってきたところで別の誰かに次貸してと言われて貸し、それが戻ってきたところでまた貸しと、このアルバムは確か6人の手に次々と渡って、家に1週間ばかり帰ってきませんでした。

 こうしてこのアルバムは、僕が買ったLPで最も多くの人に貸した記録を打ち立てたのでした。

 余談ですが、このアルバムは46分テープでは入らないよ、と、貸す時に僕は一言添えていました(笑)。

 

 そう書くと人気があったのではないか、と思われるかもしれません。

 しかしそうとも限らなくて、マイケル・ジャクソンのTHRILLERは3人に貸したところ、うち2人が後から自分でもLPを買っていましたが、このLPは貸した人が買ったという話はついぞ聞かないまま卒業しました。

 ブルース・スプリングスティーンの場合、アメリカで売れているという情報があったのでちょっと興味はある、というところでLPを買ったやつがいて目の前で受け渡しされているのだからついつい借りて聴いてみた、でもあまりしっくりこなかった、といのが実情ではないかと。


 今日は4月1日ですが、僕はエイプリル・フールというのが実は好きではなくて、今日も普通に書きます。

 ただし、エイプリル・フールという場を借りて、いつもよりも勝手に思っていることをより強く書いてゆきます(笑)。


 ブルース・スプリングスティーンはなぜ日本では人気がないのだろう。


 僕の周りでボスが大好きという人はひとりもいなくて、ネットで知り合った人でも、あくまでもいい音楽の一環としては聴くけど僕のように大好きとうるさく言う人にはまだ会ったことがありません。

 ボスの場合はオール・オア・ナッシング的で、僕のように大好きな人は大好きだけど、そうじゃない人は聴かない人が多いのではないかなと、まあ好きだからCDを2、3枚持っているという人は少なそうとも思います。

 

 まあそもそもアメリカンロックは日本では人気がないと僕は思っているのですが、前にトム・ペティでも同じような話をして、トムの場合はどれもが帯に短したすきに長しだけどこれという有名な曲がないのが大きいのではないかと考えました。


 ボスの場合は、アメリカンロックである以上にアメリカを背負って立っているような姿勢が、日本人からすると引いてしまう部分かもしれないですね。

 先週のベストヒットでも小林克也さんがアメリカの実情を訴える歌詞について言及していましたが、ボスの場合はもう、枕詞というか避けて通れないものになっていますね。

 それがうっとうしい人にはうっとうしいのでしょうね。


 ボスはBorn To Runがロック史に名を刻む名曲だとアメリカンロック人間である僕は強く思っていてそこはトム・ペティと違う部分だけど、でもやっぱりボスの歌は日本人にはとっつきにくいかもしれない。

 ボスはバンドとしての音を大切にしライヴで映える曲を主眼として作っているので、曲だけ取り出すとあまり輪郭がくっきりしてなくて全体の音の中で流れてしまうと感じられるかな、と。

 ただし、弁護すれば、ボスの曲はその中では歌メロははっきりとしていてかなりいいとは思うのですが、でもやっぱりつかみにくいかな。

 歌詞が長い曲は多いですけどね(笑)。


 ボスはまた、今の言葉でいえばイケメン、ハンサムとは捉えられていないのもあるかな。

 ビリー・ジョエルは人気があった頃は日本では顔はいいと言われていた、うっすらとそんな記憶がありますが、日本ではハンサムであることはかなり重要だと思っています。

 (クリストファー・クロスくらいじゃないかな、ハンサムじゃなくて大売れしたのは・・・)

 

 ボスは、声も、カッコいいと思わない人にとってはただ粗くて力強いだけの声と感じられるのでしょうね。

 声も日本では顔以上に大切な部分ですからね。


 結局、話は一つに絞られるものではないでしょうけど、でもこれだけ挙げてゆけるというだけでもう分かったようなものですね。

 別に僕は日本で人気が出てほしいと思っているわけではないんだけど、でも人気が出ないと来日公演をしないわけで、コンサートには行きたいから、せめて来日するくらいの人気はあってほしいとは昔から思っています。

 ただし、来日しないから人気がない、人気がないから来日しないというのは卵ニワトリ問題だから、というのもトム・ペティのところで話したような。

 

 ともあれ、人気がないことは分かりました。


 ただ、ひとつだけちょっと言いたいことが。


 ボスがアメリカを背負っているところに引いてしまう日本人というのは、歌詞を具に読んだり聴いて理解した上で引いてしまうのか?

 そうではないと思います。

 歌詞が分からないのに、何かボスには抵抗感があるという例が多いのではないか。

 それはつまり、ボスは、歌詞ではなく音楽で伝える力が強いという証明であると僕は考えます。

 もちろんアメリカを背負っているというマスコミなどの情報操作でそういうイメージで接してしまう場合もあるでしょうけど、でも、それを差し引いても、歌手として、音楽家として、表現者として、伝える者としてのブルース・スプリングスティーンの資質の素晴らしさが、日本では人気がないことで逆に浮き彫りになっている、そんな気もします。

 あまりにも表現力があるので、日本人にとっては伝わってきてほしくないことまで、音楽を通して伝わってきてしまう、だから抵抗感があるというわけです。


 

 アルバムの曲について今回は1曲2行以内で短く書いてみるつもりで進めます(笑)。


 1曲目Born In The U.S.A.、全体の歌メロはそこそこだけどアンセムとしては強烈な印象を残す曲。

 2曲目Cover Meは珍しく歌として独立した感があるけどボスがそれをやると物足りないことも分かってしまう、とってもいい曲だけどボスの中では存在感がいまいち薄い曲かな。

 3曲目Darlington County、アメリカの地名が出てくる曲はやっぱり引いてしまうかな・・・

 4曲目Working On The Highway、僕はこのアルバムの楽譜を買ってギターを弾いていたのですが、この曲の高音のギターリフは簡単そうでかなり運指が速くて驚きました。

 5曲目Downbound Train、ブルージーな曲は結構好き。

 6曲目I'm On Fire、おとなしいバラード風の曲で歌だけ取り出すとどことなくソウル風。

 

 7曲目No Surrender、疾走系の歌メロが流れる曲はボスの大得意だけど、これはカッコいい、今ではこのアルバムでいちばん好きな曲。

 8曲目Bobby Jean、青春系のちょっと感傷的なイディオムともどもいかにもアメリカの曲。

 9曲目I'm Going Down、ボスのこのように鼻から頭に抜けるような声も苦手な人が多そう・・・

 10曲目Glory Days、ボスがピッチャーをやるビデオクリップが話題になった、かな、なったと思う(笑)。LPを聴いて最初に気に入った曲でアメリカのエッセンスが凝縮されたロックンロール。

 11曲目Dancing In The Dark、若々しいビデオクリップが話題になった、かな、ならなかったかな・・・

 ボスのシングルとしては最大のヒット、最高位2位、実はボスは1位がないのです、We Are The World以外は・・・ 

 これはほんとうに大好きだけど今聴くと僕も一応は若くて一応は青春時代があったんだなって恥ずかしくなってくる・・・

 とってもいい曲であるのは確かだけど、でもボスがこれをやると売れ線狙いに走ったのかと勘違いしてしまう、そんな曲ではあるかな。

 12曲目My Hometown、やっぱり家を思う曲はどれを聴いても素晴らしい。

 アルバムの最後がおとなしいしんみりとした曲というのは余韻が大きいですね。


 

 ボスのアルバムの中でも、今聴くと時代をいちばん強く感じさせるアルバムかな。

 実際、僕も、当時はほんとに全曲そらで覚えるくらい聴き込んだだけ余計に、今は選んで聴くことが少ないアルバムでもありますね。

 あ、今回はもちろん記事にするのに聴いてますよ。

 ただやっぱり、売れることをいちばん念頭に置いたアルバムのような気もするし、やり過ぎのような気もしないでもないアルバムではあるかな。

 売れたがために時代から抜け出せない感がありますね。

 

 まあしかし、ボスが日本では人気がないことやそうした時代背景を考えなければ、やっぱり今でもとってもいいアルバムだとは思いますね。


 ただ、て僕も迷っていますが(笑)、今回久しぶりに聴いて、あらためて聴くとこんなによかったか、というような感慨が浮かばないのも確かです。


 でもやっぱり、やっぱり、いいことはいい、とってもいい、と、まあなんとも複雑な思いのアルバムではありますね(笑)。



 ブルース・スプリングスティーン、来日しないかなあ・・・