WELCOME BACK ジョン・セバスチャン | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-April03JohnSebastian


◎WELCOME BACK

▼ウェルカム・バック

☆John Sebastian

★ジョン・セバスチャン 

released in 1976

CD-0227 2012/4/3


 ジョン・セバスチャンのソロアルバムを。


 ジョン・セバスチャンはラヴィン・スプーンフルの人であり60年代に大活躍した人であるのは昔から知っていましたが、初めてLSのCDを買って聴いたのはつい数年前。


 しかし、一昨年、さいたまにあったジョン・レノン・ミュージアムが閉館になるというので見に行ったところ、ジョン・レノンが1966年のアメリカツアー中に持ち歩いて聴いていたジュークボックスの41枚のドーナツ盤の中にラヴィン・スプーンフルの曲が複数あったことを知り、ジョン・レノンが一目置いていた人であるならと、僕の中での存在感が変わりました。

 相変わらず現金な・・・(笑)・・・でもやっぱり、自分が好きなアーティストが好んで聴いていた人はやっぱり気になりますよね、ましてやジョン・レノンですからね。

 それを見てから持っていたCDを聴き直すと、なるほど、言われてみれば、ラヴィン・スプーンフルというかジョン・セバスチャンは、きわめてポップなセンスを持ちながらもアヴァンギャルドな部分がどこかに感じられる、多分ジョンはそこが気に入っていたのではないかと思いました。

 なお、ジョン・レノンがジュークボックスを持ち歩いていたと書きましたが、そのジュークボックスは小型の2ドアの冷蔵庫くらいの大きさで、映画やビデオクリップでよく出てくるような人の背丈より高い据え置き型のものではありません。

 でも、かといってそれを持ち運ぶのはやっぱり大変だろうし、ジョンが背負子で持ち歩いていた姿なんてまるで想像できないから(笑)、ローディがトラックから積み下ろしていたのでしょうね。


 そこからは長くなるし他のアルバムの話になるので、今回はいきなり話が飛んで、ジョン・セバスチャンはその前から他のソロアルバムを1枚持っていましたが、このアルバムは今年2月に初めて買って聴きました。

 

 正直言えば、この半年でまったく初めて聴いた旧譜のアルバムではいちばんよかった、それくらい気に入ったアルバムで、素晴らしい。


 ジョン・セバスチャンの音楽をひとことでまとめれば、カントリーやブルーグラスの影響が色濃く感じられるものの野暮ったさがなくスマートで、そこにブルーズの香味をまぶしたようなきわめてポップで分かりやすい曲を書く人、といったところでしょうか。

 

 センス的なものをいえば、真面目さとふざけ具合のさじ加減が絶妙で、コミックバンドというほどではないけれどコミカルな部分が感じられ、大きなユーモアにくるまれているけど音楽は真面目で質が高い、そんな感じの人です。

 ただし、しわがれ系の声で美声ではないし、歌い方も曲によりちょっとふざけたような癖がある歌い方をする人だから、気になる人は気になるかもしれない、その歌い方を味ととるかどうかですね。


 ただしこのアルバムは、LS時代やもう1枚持っている彼のソロアルバムと比べると、ポップすぎるというか、曲としてきれいにまとまり過ぎているような気がしないでもありません。

 ポップスとして捉えればとってもいいけど、ロックとして捉えると何か微妙に物足りない、そんな感じ。


 

 1曲目Hideaway、パン食い競争でせかされているような(!?)アップテンポのポップな曲でつかみは満点。

 2曲目She's FunnyはR&Bバラードをベースに薄いハーモニカが入った味わいがある曲。

 3曲目You Go Your Way And I'll Go Mine、多分別れの歌でちょっと寂しんだけどそれをふざけたような歌い方で気持ちを隠すというかごまかそうとしているのかな、でもポップソングとしては佳曲。

 4曲目Didn't Wanna Have To Do It

 5曲目One Step Forward, Two Steps Back、本格的なレゲエにのってちょっと変わったダンスを踊るこの曲を聴いて、ジョン・セバスチャンではなくジョン・レノンがおどけて踊る姿を想像してしまいました。

 これは楽しいですよ、コミカルだけど真面目なジョン・セバスチャンの個性がよく出ています。


 6曲目Welcome Back、これは当時アメリカのテレビドラマのテーマ曲として取り上げられ全米No.1を記録しました。

 僕は1990年代までのビルボードチャートはある程度知っていて、No.1になった曲を紹介する本も持っていてひと通り読んだはずだけど、この曲が1位になっていたのは実はこれを買うまで知りませんでした、覚えていなかったというか。

 タイトルはドラマのものですが、それはジョン・セバスチャン自身にも当てはまるもので、低迷を続けて復活した姿は視聴者にもアピールしてヒットしたのでしょうね。

 「おお、ジョン・セバスチャン、まだやってたのか、この曲は結構いいな」という感じでドラマを見た人の間に広まっていったのでしょうね。

 7曲目I Need Her Most When I Told Her To Go、どことなくボブ・ディランのJust Like A Womanに似た雰囲気。

 8曲目A Song A Day In Nashville、これはブルーグラスですね、それっぽいというよりは本格的、でもやっぱりどこかスマートな響きですね。

 9曲目Warm Baby、これはカントリー・ブルーズ、フォークブルーズで、さらりとこれをやれるのがカッコいい。
 10曲目Let This Be Our Time To Get Along、最後はハーモニカがしみ渡る、のどかだけどどこか寂しい響き感傷的なインストゥロメンタル、と思ったら最後のほうで小さ目に少しだけ歌が入っている曲。

 

 

 このアルバムはポップで楽しくて聴きやすいんだけど、聴き終わるとどこか寂しさが残ります。

 ジョン・セバスチャンは孤高の人であり、何かひとりで背負いながら進まざるを得ない、そしてだんだんと道が細くなってきた、そんな感じかな。

 なぜかなと思ってジョン・セバスチャンのソロアルバムをWikipeiaで調べると、このアルバムは普通のロックの作品としては最後ということになっていて、そこがのアルバムのポイントだと僕は考えました。

 良く捉えれば、このアルバムはジョン・セバスチャンが自らの活動や音楽感を総括したものである。

 悪く捉えれば、いい曲はまだまだ書けるだろうけど、ロックの表現者としての限界が見えてしまったということか。


 しかし、何も考えずに素直に聴けば、これはほんとうにポップで聴きやすい音である上にすべての楽曲が素晴らしい、そんなアルバムであることは間違いありません。