◎A DIFFERENT KIND OF TRUTH
▼ディファレント・カインド・オブ・トゥルース
☆Van Halen
★ヴァン・ヘイレン
released in 2012
CD-0200 2012/2/9
Van Halen-02
ヴァン・ヘイレンの新譜が出ました。
ポール・マッカートニーと同じ日本発売が昨日2月8日、やはりポールと同じく他からユニヴァーサルに移ってのリリースです。
今週はユニヴァーサルの洋楽担当は忙しいでしょうね、でもうほうほかな(笑)。
今回の売りはなんといっても「ダイアモンド・デイヴ」ことデヴィッド・リー・ロスがおよそ27年振りに復帰したことでしょうね。
ヴァン・ヘイレンとしてのアルバムも14年振りに。
新譜なのでもったいぶらずに結論から先に言うと、かなりいい、ヴァン・ヘイレンが好きであれば最高にいいです、期待値以上でした。
僕が洋楽を聴き始めた頃はまだデイヴがバリバリに活躍していてこれから大ヒットを出すという頃でしたが、僕はかつてはVHはどちらかというと苦手でした。
理由は簡単で、歌メロで聴かせる音楽じゃないから。
でもヴォーカルがデイヴからサミー・ヘイガーに代わり、歌メロ路線に転換してから僕は逆に大好きになりました。
ヴォーカリストが変わったバンドはよく「A派」「B派」という話をしますが、僕はVHに関してはサミー・ヘイガー派でした。
デイヴ時代のアルバムは1stと5thと6th以外の3枚はリマスター盤が出た時に初めて聴いたのですが、その頃はもう30歳を過ぎていて以前よりは歌メロだけにこだわらなくなっていたので、そこで初めてデイヴ時代もいいと思うようになりました。
今は好きです、普通に、かけているとい楽しいし気持ちがいいし、やっぱりこれだけの音楽を作ってきたのはすごい人たちだと思う。
それはエドワード・ヴァン・ヘイレンのギターのみならず、音楽として総合的に見て。
このアルバムは初期の勢いがあって、バカみたいに陽気で楽しく、かつ、圧倒的にすごい音楽がほぼ100%戻ってきていると感じました。
期待値以上と感じたのはそこで、そういう音楽をやるんだろうなという予想はあったのですが、正直、ここまで戻り切っているのは予想を超えていました。
知らない人に他のアルバムに混ぜて聴かせると、これは1980年頃に録音したと言って騙せると思います。
なんて悪い冗談ですが、それくらい、その部分に対しては素直に敬意を表します。
でもまあ、くどいようだけど、だから歌メロとして頭に残る曲はないといえばないんですけどね。
逆にいえば、言葉の語呂の応酬で聴かせてしまうデヴィッド・リー・ロスという人はやはり稀代のヴォーカリストなんだなと思いました。
CDを再生していきなり「たぁ・とぅ たぁ・とぅ」ですからね、もうそこで「おおうどうしたんだどうしたんだ」と心が入ってゆき、全曲そんな感じです。
歌メロとしては残らないけど、逆にサビの言葉の応酬は嫌でも耳について離れないので、強烈な印象が残る音楽ではあります。
今回感心したのは、というか今更ながら気づいたのは、というよりも漠然と思ってはいたことなのですが、VHはよく聴くとアメリカのエンターティメント的な音楽のいい要素を新しいハードな音で再現しているバンドであることでした。
エンターティメントに徹しきっているのもよくて、音楽には特に意味なんかない、楽しければいいんだと。
11曲目のStay Frostyはフォーク・ブルーズ風に始まってハードロックに展開する、僕が今回いちばん気に入った曲ですが、それが特にそう感じさせる部分です。
ひとつ謎が。
ベーシストのマイケル・アンソニーが脱退し、代わりのベーシストがエドワード・ヴァン・ヘイレンの息子のウォルフガング・ヴァン・ヘイレンに代わったのですが、マイケルのあの切れそうなくらいに異様な高音のコーラス風のコーラスが入っていることで、誰が歌っているんだろう。
まさかそれだけマイケルを呼んだとか、ないだろうなあ。
あのコーラスもバカみたいに陽気なVHの音楽を特徴づけるものであるだけに、新作でもそこは外せなかったのでしょうね。
実際にそのコーラスがなければ僕もここまで戻り切ったとは感じなかったと思います。
なお、マイケルはサミー・ヘイガー側について今はチキンフットで活躍していますね。
なんてくどくどと書きましたが、ほんとうにいいですよ。
少なくとも昔のヴァン・ヘイレンが好きで妙な色眼鏡で見ない人であれば文句なしにいいと思うでしょう。
昔のヴァン・ヘイレンは後から好きになった僕のような人減でもすごくいいと思ったのだから。
昔の人が昔のままやってようやく素直に(普通に、正当に)受け入れられる世の中になったのは、よかったのかもしれませんね。
逆にいえば、14年前にデイヴが戻らなくてもよかったのかもしれない。
「違ったかたちの真実」というのも、四半世紀に及ぶ紆余曲折をうまく表したタイトルだと思います。
そして機関車のジャケット、まさに機関車のような重低音で攻めてくる、いいアートワークですね。
最初に聴いて、あまりにも昔のままでほんとうに笑ってしまったくらいのアルバムです。