◎DO THE FUNKY CHICKEN
▼ドゥ・ザ・ファンキー・チキン
☆Rufus Thomas
★ルーファス・トーマス
released in 1970
CD-0184 2012/1/10
ルーファス・トーマスの音楽は今回初めて聴きました。
もっとも、STAXの編集盤などで聞いたことはあったかもしれないけど、音楽記憶力が悪い僕だから覚えていませんでした(笑)。
僕は2008年の8月頃にソウル系に覚醒して、その年の秋から翌年の春くらいまでは聴く音楽の75r%はソウルというくらいに傾聴していました。
今では割合はそれほど高くはないけど、代わりにソウル系は普通に聴くものとしてすっかり定着し、中古CD探しでもソウル系は常に頭の中に入っているようになりました。
2008年の秋に僕が首っ引きで参考にしていた本が、ピーター・バラカン著の「魂(ソウル)のゆくえ」でした。
元々新潮文庫で出ていたものを僕は大学生の頃に買って一応は読みましたが、当時はまだソウルはたまに聴いてみたいというくらいのもので、書かれていたことのほとんどは頭に残っていませんでした。
その本がたまたま僕がソウルに傾聴し始めた頃に、アルテス・パブリッシングから増補改訂版として出直したのは考えてみれば運命だったのかもしれない。
とにかく新しい本を買ってすぐに読み切りましたが、やはりほとんど書かれていることは覚えていませんでした(笑)。
その本では大小さまざまなアーティストが取り上げられていましたが、名前くらいしか知らない人や名前すら知らない人についてはいつか聴いてみたいと思うようにはなったものの、すぐに買うことはありませんでした。
ルーファス・トーマスはその本で「ファンキー親父」と形容されていて、これは面白そう、いつか聴いてみたい人の中でも上位に入っていました。
なぜ親父かというと、スタックスで活躍しオーティス・レディングとのデュエット・アルバムも出したカーラ・トーマスの父だからという直截的なこともあるのですが、でもそれ以上に本で見た写真は、短パンにハイソックスというちょっと恥ずかしい服装、どう見ても親父で、うまいこと言うもんだと印象が強かったのです。
それから3年ほどが経ち、このアルバムのリマスター盤が出ていることを知ってすぐに買い求めました。
僕にとってリマスター盤というのは大きな決め手です。
聴いてみると、これがほんとに楽しい、まさにファンキー親父。
音楽は「音」で「楽」しむと書くように、そもそもは楽しいもの、楽しいだけのものであり、楽しくなければ音楽ではないのではと思います。
もちろんそれはそもそもの話で、複雑な現代社会においては、社会的メッセージを伝えたり、仲良くすることを訴えたり、疲れた心を癒したり、カタルシスを得るなどいろいろな要素が含まれているものでしょう。
僕自身も、そうだと思いながら音楽を聴いているのはもちろんです。
でも、ファンキー親父のこのアルバムを聴くと、何カタイこと抜かすんじゃねぇ、音楽なんて楽くして体が動きゃあそれでいいんだ、とまるでべらんめえ口調で諭されているようであり、そうだそれでいいんだと少なくとも聴いている間は納得してしまう自分に気づきます。
だって、CDをかけていきなり、ニワトリの鳴き真似で始まるんですよ!
Do The Funky Chicken、音楽が始まる前に「こぉーっこっこ、コケコッコー」と、あアメリカだからCock-a-doodle-doかな、とにかくもう最初から心を鷲掴みにされます、鶏だけど鷲掴み(笑)。
しかしただ面白おかしいだけではなく、ジェイムス・ブラウン風にバンドに呼びかけてホーンが入ってまさにJB風ファンクで、曲がまたカッコいい。
2曲目Let The Good Timeはあの有名な曲かなとと思ったけど歌メロも違うし作曲者も違う、でもいい。
3曲目Sixty Minute Manって意味深だな(笑)、これは最初に呪術風のハミングというか唸り声が入って、沈み込むようなリズムに粘つくコーラスは黒人音楽がアフリカがルーツであることがよく分かる、そんな曲。
だけどギターだけ軽快に鳴っていてこの感覚はクールでかつ面白い。
延々と終わりそうにないのがまたクールなグルーヴを醸し出していてますますいい。
4曲目Lookin' For A Loveはこの中に入るとなんだか普通のポップソングで、ファンキー親父も意外とかわいいじゃんと思ったり(笑)。
5曲目Bear Cat (Aka Hound Dog)は要はエルヴィス・プレスリーで有名なビッグ・ママ・ソーントンのあの曲を茶化したもので、ご安心ください作曲者クレジットはちゃんとHound Dogの2人になっています。
でもただ茶化しているだけではなくてカッコよく決めています。
6曲目がOld McDonald Had A Farm (Part 1)、7曲目が(Part 2)となっていますが、これは童謡として日本でも知られている「いーあいいいーあいおーっ」という歌ですね。
パート1ではもったいぶったかのようにゴスペル風に盛り上がる中で朗々と歌うのが芸が細かいというか、しかしそれも付け焼刃的ではなく本物だと感じさせます。
そしてパート2ではクールに決める。
もうここまで来るとこの遊び心に素直に従うしかない、参りました、降参です。
8曲目Rufus Rastus Johnson Brownは言葉遊び感覚もまた楽しいですね。
ルーファス・トーマスの音楽は基本的にはかげりがなくてアクがないひたすらポップなジェイムス・ブラウンという感じです。
9曲目Soul Foodはブルーズですね曲想的には、ソウルフードという言葉は日本ではつい最近聞かれるようになったけど、当時は何のことだろうと思われたでしょうね。
10曲目Turn Your Damper Downはミドルテンポのベースが良く鳴るちょっと重たいファンク。
本編最後11曲目The Preacher And The Bear、牧師と熊って何だろう・・・
ルーファス・トーマスは動物が好きな人のようで、ここに収められた曲以外でもいろんな動物を歌ったり鳴き真似したりしているそうで、生き物好きの僕としてはますます興味が出てきました。
ベースとブラスとカラカラ鳴るギターはやっぱりソウル・ファンク系の醍醐味ですね。
アルバムは最後までひたすら楽しい曲で終わります。
このCDには8曲のボーナストラックが収められていて、中にはブッカーT&MG'sがバックを務める曲もあるのですが、長くなったのでここは2曲だけ。
18曲目Bogie Ain't Nuttin' (But Gettin' Down) (Part 1)、19曲目がその(Part 2)で、E→G#→B→C#→Bという音のベースがずっと鳴り続けているのが中毒になりそうで、やっぱり僕はベースが好きなんだなって思いました。
この2曲は歌詞が少し違うものの演奏は基本的には同じですが、ミックスが違うようで、パート1のほうがベースやヴォーカルの音像がくっきりとしていてまろやかな響き、一方パート2は全体的に平板で金属的な響きというイメージを受けます。
僕はベースを楽しみたいのでパート1のミックスの方が好きですね。
いやあ、世の中にはほんとに面白い音楽があるものだって。
しかも面白いだけではなくカッコいい。
ファンキー親父とはよく言ったもので、ファンキーという言葉のクールさと、親父という言葉のどこか間が抜けた親しみやすさが同居していて、ルーファス・トーマスにとって最大限の賛辞だと僕は思いたいですね。
いかん、病みつきになってしまった(笑)。
このCDは暫く聴き続けることにします。
※追伸:今日はハウの誕生日です、5歳になりました。