VANESSA PARADIS ヴァネッサ・パラディ | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

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◎VANESSA PARADIS

▼ヴァネッサ・パラディ

☆Vanessa Paradis

★ヴァネッサ・パラディ

released in 1992 

CD-0183 2012/1/8


 今日はヴァネッサ・パラディのアルバムを。


 僕は30歳の時に札幌に帰ってきてから、毎年正月は弟とブックオフめぐりをしています。

 正月は車が少なくブックオフは開いているから、同じ札幌市内でも普段はいけない少し遠いブックオフに時間をかけて行きます。

 今年も5軒回ってCDを7枚買ってしまいました。

 そのうち3枚は同じアーティストのもので集めている途中だし、他もよかったので今年は特によい収穫でした。


 ブックオフに行くと、1990年代にMTVでよく見て聴いていたけど当時は買わなかったCDを500円以下で見つけるとよく買います。

 今日記事にしたヴァネッサ・パラディもまさにそんな1枚で、これは250円コーナーで見つけました。


 ヴァネッサ・パラディはBe My BabyがMTVで毎日何度も流れていて、もううんざりするほど頭にこびりつきました。

 まあでもそれはポップソングとして単純にいい曲だなと当時も思ってはいたけれど、でも自分が買うものとは少し違うなと感じたのと、何より黙っていても毎日聴けるので買おうとは思いませんでした。

 この辺はMTVの弊害でしょうね。

 

 しかし、東京にいてMTVをよく見ていた90年代が懐かしくなったここ数年、このアルバムは頭の中のブックオフで安く買いたいリストに入っていて、ものはよく見かけるんだけどやっぱりまだ買う時ではないなと素通りしていました。

 それがついに今回買うタイミングが来たのです。


 このアルバムはレニー・クラヴィッツがプロデュースし、曲作りから演奏まで全面的にバックアップしています。

 そのことは当時から知っていたのですが、レニクラは昨年のアルバムがとっても気に入って僕の中で存在感が増してきてより興味が強くなったからです。


 これを買った日はCDアルバム20%引きで250円のものが200円で買えて、しかも250円にしてはかなり状態がよく背焼けもしていませんでした。

 きっと在庫がたくさんあって光が当たらない棚にしまわれていたんだな(笑)。


 彼女の曲としては3曲を知っていましたが、アルバム通して聴くのは初めて。

 聴いてみて思ったのは、ポール・マッカートニーがかつてメアリー・ホプキンに歌わせて自分がやりたいけど普段はできないこと、女性の声で自分の歌を歌わせる、それをやらせたのと同じことだな、でした。


 ヴァネッサ・パラディはフランスの歌手でこの前にも英国でもヒットする曲を出していたということで、彼女を見たレニーは創作意欲が高まっていたこともあり、ひらめいたのかもしれない。

 このアルバムは彼女が初めて英語だけで歌ったアルバムということです。


 実際、意外とというか、アルバムを通して聴いても彼女のキュートでコケティッシュで舌足らずのヴォーカルが不思議とレニーの音楽世界に合っているように感じます。

 基本的な音作りはサイケを経た1960年代後半から1970年代前半のポップスで、懐かしい響き

 これはなかなか以上にいい。

 それにしてもヴァネッサ・パラディはルックスと声のイメージがあまりにもぴったりで、まるでカタログ商品のような感じを受けてしまいます、良くも悪くも。

 レニーとしても、キャラクターとしての彼女の魅力を前面に出したかったのだと思いました。


 1曲目Natural HighはMTVでやってたのかな、覚えがないんだけど曲を知っていたのでやっぱりそうなのだと思う、だって曲覚えが人数倍悪い僕が1回や2回聴いただけでは覚えられないから(笑)。 

 「ナチュラル・ハイ」という言い回しはそういえばこの頃から使われるようになった気がする。

 この曲がきっかけとは言わないけど、ポピュラー音楽は時に時代との奇妙な符号を見せるものだと思い、これもその例ではないかと。

 「ホームレス」という言葉も、ポール・サイモンが1986年に発表したGRACELANDにHomelessという曲があり、それがきっかけではないけどその後から使われるようになり今やNHKのニュースでも普通に使われるくらい一般化していますね。

 

 2曲目I'm Waiting For The Manはヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコのバナナに入っている曲だけど、ヴェルヴェッツの曲をレニクラが歌うと何かが微妙に違う、それは本人も分かっていて、でもオマージュとしてここで歌わせたのではないかな。

 余談ですが、正月ブックオフめぐりをしていて3軒の店でヴェルヴェツのバナナのCDを見ました。

 うちひとつはデラックス・エディション、もうひとつは500円のところにあって、名盤の誉れ高いので聴いてみたけど合わないと感じて売る人が多いのかなって。


 4曲目Be My Babyは当時からいい曲だと思っていたけど20年が経ってこれは90年代の名曲のひとつだとはっきりと思いました。

 ロネッツのあまりにも有名な曲と同名異曲で勝負するなんて大胆不敵だなと当時は思っていましたが、同名異曲でどちらも名曲という例の仲間入りと決めさせていただきました(笑)。


 6曲目Sunday MondaysはMTVでよくやっていたのを見ましたが、ラヴ&ピース的なビデオクリップで確か彼女を先頭にマーチングバンドみたいに歩くシーンがあったような。

 普通の生活を送ることのありがたさを感じるなかなかの曲で、実は当時、Be My Babyの次に流れたこの曲を聴いて、CDを買おうかとかなり傾いたことを思い出しました。


 聴いたことがなかった曲では最後10曲目のJust As Long As You Are Thereがいいですね。

 バラードというか感動的に盛り上がる曲で、最新作のFaith Of A Childにつながってゆく曲。

 やっぱりレニーの心はラヴ&ピースであることがよく分かります。

 とまあ、ヴァネッサ・パラディという女性ヴォーカリストのアルバムではあるんだけど、その向こうというかその外側にレニー・クラヴィッツの姿が丸見え。

 レニーには以前はそれほど興味はなかったけど、昨年のアルバムでそれが変わり、となるとこれは一気に魅力的なアルバムに聴こえてきました。

 つくづく僕はこと音楽に関しては現金なものだと思う(笑)。
 でも、出来は素晴らしいし曲もみないいし、時代の中に閉じ込めておくにはもったいないアルバムという気もしました。


 そして、当時からノスタルジックな響きでしたが、もう20年も前のことで、当時は書店で働いていたけど、そこの雰囲気や帰宅してからMTVを見たことなど、さらに懐かしさが増した感がありました。


 音楽は不思議なもので、かつては嫌いでも、こうして変わることがあるんですね。

 だからますます、ブックオフで90年代のCDを安く探すことが楽しくなってきました(笑)。

 まだまだどんな宝が眠っているか分からない。


 ところでこの記事を書くのにヴァネッサ・パラディをwikipediaで調べたところ、彼女はジョニー・デップとの間に2女を授かっているんですね、知らなかった。

 今は南フランスで生活しているということで、何から何まで僕のイメージ通りの人だなあと(笑)。