ELIMINATOR ZZトップ | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。


自然と音楽の森1日1枚-Oct26ZZTop


◎ELIMINATOR

▼エリミネーター

☆ZZ Top

★ZZトップ

released in 1983

CD-0150 2011/10/26


 ZZトップの8作目にしてバンドに全米大ブレイクをもたらしたアルバム。


 このアルバムはちょうど僕が「ベスト・ヒットUSA」やMTV番組を見始めた頃にヒットしていて、きれいなお姉さんと彼らのトレードマークである古臭いけどカッコいい車が出てくるLegsやGimme All Your Lovinのビデオクリップには強烈なインパクトを受けました。

 

 しかしそれ以上にインパクが大きかったのは、ZZトップのメンバーの見てくれ。


 ギターとベースの2人は小太りというかスリムでもスマートでもなく、胸まで垂れている長いあごひげに着古して色あせたぼろぼろの服装で、まだ駆け出しの洋楽聴きの僕にはおよそロックスターには見えなかった。 

 一方でドラムスの人は町の自動車整備工場のカッコいいお兄さん風だけど、やっぱりなんとなく薄汚れた服装。

 この3ピース、アメリカにはこんな人がいるのかって驚いたものです。

 ギターはビリー・ギボンズ、ベースはダスティ・ヒル、ドラムスはフランク・ベアード。

 3人のうち"Beard"=「あごひげ」という名前の人だけがあごひげを生やしていなくて、これはきっと偶然じゃない、そういうすかしたところがいかにもロック的ユーモアがあって面白い。


 しかもビデオクリップではギターとベースの2人がギターをくるっと回すんです。

 2人のギターとベースは白いふかふかのファーがボディやヘッドについていて演奏しにくそう。

 それが回る、説明が難しいのですが、正面から見てギターとベースが風車のように360度回るんですが(右回りか左回りかは忘れましたが)、ギターの裏に回転軸があってそれが2人の体か服に埋め込まれているのかな。

 若かった僕は、洋楽の奥深さをまた別の面からも思い知らされました。


 僕がさらに驚いたのは彼らのサウンド。


 当時はまだ(今もだけど)音楽をよく知らなかったけど、それでも彼らは曲自体はブルーズの影響が濃い古臭いスタイルの音楽だなって感じました。

 当時はまたギターを弾き始めたばかりだったけど、コード進行も弾いていて分かったくらい。


 しかし古臭い曲がシンセサイザーの音と妙によく合っていて、サウンドとしてはむしろ斬新に響いてきたことが驚きでした。

 彼らの場合、シンセサイザーは80年代によくあったただのピラピラした装飾音ではなく、リズムセクションと一体になっていてサウンド全体の音圧がものすごくてずしっと腹の底に響いてくる、そんなサウンドです。


 そう、もうひとつ彼らがいいと思ったのはハードロックと呼んでもいいギターサウンドで、自分がもともとハードロックが好きらしいと分かったその頃にはそこも訴えた部分です。


 今回は2008年に出たこのアルバムのDVD付きリイシュー盤を聴きながら記事を書いています。

 僕が実際に初めてLPを買ったのはこの次のアルバムでしたが、出会いという点ではやはりこちらのインパクトが大きく、なによりそのアルバムはリイシュー盤が出ていないので今回はこれを記事にしました。


 売れただけあって楽曲がきわめてシンプルでポップ、ついつい口ずさんでしまうものですね。

 これがまた見てくれのイメージとは大きく違う部分でした。

 

 そしてそんな曲とサウンドにぐいぐいと引っ張られるグルーヴ感が爽快ですね。

 見てくれは決して爽快な人たちじゃないけど(笑)、そのギャップがまた面白い。

 ZZトップはギャップを楽しむバンドかもしれない。


 ここではビデオクリップがある曲について触れてゆきます。


 1曲目がGimme All Your Lovin、歌い出しがいきなり「俺はシュモクザメをつかまえちまったぜ」、最初からエンジン全開ロックンロールで押してきます。


 3曲目Sharp Dressed Manは自らをおちょくってるみたいなタイトルだけど、これはほんとに曲がまったくもってブルーズ、曲もシャープなイメージ。


 6曲目Legsがきれいなお姉さんたちがたくさん出てくるビデオで夜中に見るにはなかなか刺激的でした(笑)。 

 アメリカの若者の生活スタイルが映し出されていて、それは多分アメリカ人にはリアルなんだろうけど、若い日本人の僕にはそれはまるで映画の世界であり、逆にエンターティメント的な部分を感じました。

 車のシートが1列しかないのに車の中から女の人が3人も4人も出てくるのが不思議でした。


 8曲目TV Dinners、曲は当時の斬新なサウンドに古臭いリズム&ブルーズ、そこにSF仕立てのビデオクリップと二重のミスマッチ感覚が面白い。

 宇宙船の中のようなスタジオで3人が演奏していて、ベースのダスティがキーボードを演奏しながらポーズを決めているのが、ああやっぱりこの人たちもロックスターなんだって思いました(笑)。

 TVディナーという言葉は当時別のところで何かのきっかけで知ったばかりで英語の復習にもなったんだけど、その中からエイリアンが出てくるのはご愛嬌。


 他の曲もまっすぐで音が厚くてギターが冴えていて歌メロがい、ほんとにこのアルバムは聴きやすいし当時売れたのはよく分かります。

 当時のアメリカでは大人にも子供にも受けたのでしょうね。


 ブルーズに凝った後の今にしてこれを聴いて思うのは、ブルーズの進化形1980年代版、といったところでしょう。

 エルモア・ジェイムスの記事で書いたけど、ブルーズがブルーズというカテゴリに押し込められていなければきっとこうなっていたという音楽です。

 ビリー・ギボンズのギタープレイもブルーズの香りを強く感じます。

 このアルバムではポップな曲の中にハードでへヴィなブルーズの演奏の要素を上手く織り込めて歌と演奏を両立させているのがすごいところです。

 

 そうかこれはブルーズだったのか!


 なんて、ロックを聴いて30年にもなると、いろいろなところでつながってくるもんだなと最近は思います。

 またそうと分かるとまたこの聴きなじんだアルバムが違って聴こえてきて、僕にとっては意味が増してきたように思います。

 


 ZZトップは僕は「ゼットゼットトップ」と敢えて呼んでいましたが、テレビでその姿を見たクラスメートが「じじいトップ」と言っていたのには笑いました。


 下世話な話だけど、ビリーとダスティのあの長いひげでどうやって生活しているんだろうって、それもクラスでいろいろ話したっけ。

 食事ではひげにクリームやらドレッシングやらケチャップやらがやたらとつきそう、ビールを飲んでもジョッキにひげが入る、タバコを吸うのにライターをつけるとひげに引火して危なくないか、車の運転中にひげが風で煽られて前が見えなくなる、猫がひっかいたり引っかかったり、風で飛んだ落ち葉がからみつく、トイレはどうする、エトセトラ、エトセトラ・・・

 きっとひげ専門のマネージャーがいるんだろうな(笑)。



 ところで最後に、なぜいきなり今日はこのアルバムを取り上げたかといいますと。


 一昨日、自分のBLOGの左にある「ブログテーマ一覧」を見てふと、「U」と「X」と「Z」のアーティストだけまだ一人も上げていないことに気づき、その3つのアルファベットで最初に頭に浮かんだのがZZトップだったのです。


 はい、ただそれだけのこと・・・


 でも、記事にすることにして久しぶりに聴くとやっぱりこれはいいなと再評価したのでした。

 車に合うんですよね、これが。


 それにしても音楽にはいろんなきっかけがあること(笑)。

 BLOGの話をすると、残りの「U」と「X」も近々上げられればと。
 「U」は簡単ですけどね、問題は「X」だな、僕がよく聴く音楽という話でいえば・・・